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[[数学]]における'''単項式'''(たんこうしき、{{lang-en-short|''monomial''}})とは、大ざっぱに言えばただひとつの項しかもたない[[多項式]](整式)のことをいう。単項式は[[多項式]](あるいは[[形式冪級数]])の'''項'''として、一般の多項式(形式冪級数)を構成する構成ブロックの役割を果たす。{{lang|en|"polynomial"}}(多項式)という単語は「多数」を意味する接頭辞 {{lang|la|"poly-"}} に(「部分」を意味する)ギリシャ語 {{lang|el|"νομός"}} {{lang|la|(nomós)}} を足したものに由来するので、{{lang|en|monomial}}(単項式)は理論上は {{lang|en|"mononomial"}} と呼ばれるべきであり、{{lang|en|"monomial"}} は {{lang|en|"mononomial"}} の[[語中音消失]] ([[haplology]]) である<ref>''American Heritage Dictionary of the English Language'', 1969.</ref>。 == 定義 == '''単項式'''とは、[[変数 (数学)|変数]]の'''冪積'''(べきせき、{{lang|en|''power product''}}){{efn|group="注釈"|1= 「いくつかの冪を積で結んだもの」という意味。同様の語法に「{{仮リンク|冪和|en|power sum}}」や「和積」「積和」<ref>例えば [https://books.google.co.jp/books?id=rnvSIEqK_3cC&pg=PA110&lpg=PA110&dq=和積+積和 ]</ref>などがある。語順に注意。}}と[[係数]]と呼ばれる[[定数]]との積として書ける[[多項式]]の一種を言う。任意の変数 {{mvar|x}} に対する {{math|''x''{{exp|0}}}} に関して[[空積]]の規約のもと {{math|1 ({{=}}''x''{{exp|0}})}} と見なされるから、定数も定数項のみからなる単項式と考えるのが普通である。 変数を {{math|''x'', ''y'', ''z''}} とし、係数を[[複素数]]にとれば : {{math|big=1|−7''x''{{exp|5}}}} や {{math|big=1|(3 − 4''i'')''x''{{exp|4}}''yz''{{exp|13}}}} などを単項式の例に挙げることができる。多項式における変数の冪指数は[[自然数|非負整数]]に限られるから、ここでの冪積に現れる冪指数もそのようなものに限る。ただし、特定の文脈において多項式を一般化する概念を単に「多項式」と呼ぶような場合には、それに対応する意味での「単項式」の冪指数も非負整数以外の値を取り得る。例えば[[ローラン級数]]の文脈における「単項式」('''ローラン単項式''')の指数は負でもよく、{{仮リンク|ピュイズー級数|en|Puiseux series}}の文脈における「単項式」('''ピュイズー単項式''')の指数は[[有理数]]となり得る。 係数を持たない変数の(非負整数冪の)冪積という意味に限って「単項式」と呼ぶ場合も少なからずある{{refnest|group=注釈|1= 冪積として定義する例<ref>{{cite book | last = Cox | first = David | authorlink = |author2=John Little |author3=Donal O'Shea | title = Using Algebraic Geometry | publisher = Springer Verlag | year = 1998 | location = | pages = | url = | doi = | id = | isbn = 0-387-98487-9 }}</ref>{{rp|1}}と冪積と係数の積としての定義の例<ref>{{SpringerEOM|title=Monomial|urlname=Monomial}}</ref>と不明瞭な定義の例<ref>{{PlanetMath|urlname=Monomial|title=monomial}}</ref>を見よ。}}。この意味における単項式は、一変数の場合 非負整数 {{mvar|n}} を冪指数とする {{mvar|x}} の冪 {{math|''x''<sup>''n''</sup>}} に限られる({{math|''n'' {{=}} 0}} のときは {{math|1}} になる)。多変数の場合、例えば変数が {{math|''x'', ''y'', ''z''}} のとき任意の単項式は {{math|''a'', ''b'', ''c''}} を非負整数として : <math>x^a y^b z^c</math> の形である。厳密な議論を要しない多くの場合において、係数を考慮するか否かは問題にならない。係数を持たない冪積は係数 {{math|1}} が掛かっていると見做すことができるし、多項式の項であるという場合には必ず係数が考慮されている。 == 基底として == 変数の冪積としての単項式についての最も明らかな事実は、任意の多項式がそれらの[[線型結合]]として書けるという性質を持つことである。このことは数学において絶えず暗黙に使用される(例えば[[多項式環]]の{{仮リンク|単項式基底|en|Monomial basis}}やその[[単項式順序]])。 より明確に書けば、[[可換体|体]] {{mvar|K}} 上の {{math|''X''{{ind|1}}, …, ''X''{{ind|''n''}}}} を変数とする多項式全体の成す集合 {{math|''K''[''X''{{ind|1}}, …, ''X''{{ind|''n''}}]}} を {{mvar|K}} 上の[[ベクトル空間]]とみるとき、{{math|''X''{{ind|1}}, …, ''X''{{ind|''n''}}}} に関する単項式の全体は {{math|''K''[''X''{{ind|1}}, …, ''X''{{ind|''n''}}]}} の[[基底 (線型代数学)|基底]]をなす。 特に一変数 {{mvar|X}} の多項式全体 {{math|''K''{{bracket|''X''}}}} の基底は、単項式列 {{math|1, ''X'', ''X''{{ind|2}}, …, ''X''{{ind|''k''}}, …}} で与えられる。 == 単項式の総数について == (係数を持たない){{mvar|n}}-変数の {{mvar|d}}-次の単項式の数は {{mvar|n}} 個の変数から {{mvar|d}} 個の元を選ぶ[[重複組合せ]](変数は一回よりも多く選んでもよいが、順番は気にしない)の総数である。これは[[多重集合係数]] <math>\textstyle{\left(\!\!{n\choose d}\!\!\right)}</math> で与えられる。この式はまた {{mvar|d}} についての多項式として[[二項係数]]の形でも与えられるし、{{math|''d'' + 1}} の[[上昇階乗冪]]を使っても与えられる。 :<math>\begin{align}\left(\!\!{n\choose d}\!\!\right) & = \binom{n+d-1}{d} = \binom{d+(n-1)}{n-1}\\[5pt] & = \frac{(d+1)\times(d+2)\times\cdots\times(d+n-1)}{1\times2\times\cdots\times(n-1)} = \frac{1}{(n-1)!}(d+1)^{\overline{n-1}}. \end{align}</math> 後者の形は変数の数を固定して次数を変化させるときに特に役に立つ。これらの式から、固定した {{mvar|n}} について {{mvar|d}}-次単項式の総数は、最高次係数が {{math|{{sfrac|1|(''n''−1)!}}}} の {{mvar|d}} を変数とする {{math|''n'' − 1}} 次の多項式であることがわかる。 例えば、三変数 ({{math|1=''n'' = 3}}) の {{mvar|d}}-次単項式の数は {{math|1={{sfrac|1|2}}(''d'' + 1){{exp|{{overline|2}}}} = {{sfrac|1|2}}(''d'' + 1)(''d'' + 2)}} である。これらの数は[[三角数]]の列 {{math|1, 3, 6, 10, 15, …}} をなす。 [[ヒルベルト–ポアンカレ級数|ヒルベルト級数]]は与えられた次数の単項式の数を表現するコンパクトな方法である。{{mvar|n}} 変数の {{mvar|d}} 次単項式の数は :<math> \frac{1}{(1-t)^n}</math> の[[形式的ベキ級数]]展開の次数 {{mvar|d}} の係数である。 == 単項式の表記法 == {{main|多重指数}} [[偏微分方程式]]論などの分野では単項式を書き表す必要に駆られることが常である。使われる変数が {{math|''x''{{ind|1}}, ''x''{{ind|2}}, ''x''{{ind|3}}, …}} のように添字づけられた族のときには[[多重指数]]記法に従い、たとえば多重指数 {{math|1=''α'' = (''a'', ''b'', ''c'')}} に対して、 :<math>x^{\alpha} = x_1^a\, x_2^b\, x_3^c</math> のように定めることが有効である。これにより紙幅の大きな節約を図ることができる。 == 単項式の次数 == 単項式の'''次数'''は、変数のすべての冪指数(指数が書かれない変数の指数は {{math|1}} と考える)の和として定義される。例えば、{{mvar|x{{exp|a}}y{{exp|b}}z{{exp|c}}}} の次数は {{math|''a'' + ''b'' + ''c''}} である。より具体的に、{{math|''xyz''{{exp|2}}}} の次数は {{math|1=1 + 1 + 2 = 4}} である。また、{{math|0}} でない定数多項式の次数は {{math|0}} である。例えば、(単項式と見た){{math|−7}} の次数は {{math|0}} である{{efn|係数の「変数としての」冪指数(つまり次数)を {{math|0}} と考える限り、「単項式」が変数の冪積の意味か係数が掛かっている意味かにはよらず、「単項式の次数は現れる変数の冪指数の総和である」ということに矛盾は起きない}}。 * 単項式は[[斉次多項式]]である。 主に級数の文脈において、単項式の次数が'''位数'''と呼ばれることもある{{efn|多項式の「次数」が零でない係数を持つ項の最'''大'''の番号であったのに対し、形式冪級数の「位数」は零でない係数を持つ項の最'''小'''の番号の事であった。単項式においてこの二つが一致するのはあきらかであろう。}}。変数の1つに対する次数と区別する必要のあるときは'''全次数'''とも呼ばれる。 単項式の次数は一変数や多変数の多項式の理論の基礎である。明示的には、[[多項式の次数]]や[[斉次多項式]]の概念を定義したり、[[グレブナー基底]]を作り計算するのに使われる次数付き[[単項式順序]]のために使われる。暗黙には、[[テイラー展開#多変数関数のテイラー展開|多変数のテイラー展開]]の項をまとめるのに使われる。 == 単項式の幾何 == [[代数幾何学]]において、多重指数 {{mvar|α}} の集合に対して単項式方程式系 {{math|1=''x{{exp|α}}'' = 0}} で定義される代数多様体は斉次性の特別な性質をもっている。これは [[代数群]]の言葉によって {{仮リンク|代数トーラス|en|Algebraic torus}} の[[群作用]]の存在の観点から(同じことだが対角行列の乗法群によって)表現することができる。このような研究を行う分野は[[トーリック多様体|トーラス多様体]]論あるいはトーラス埋め込み論 (torus embeddings) と呼ばれる。 == 脚注 == === 注釈 === {{reflist|group=注釈}} === 出典 === {{Reflist}} == 関連項目 == * {{仮リンク|単項式表現|en|Monomial representation}} * [[一般化置換行列]] * [[斉次多項式]] * [[斉次函数]] * [[多重線型形式]] * [[両対数グラフ]] * [[冪乗則]] {{DEFAULTSORT:たんこうしき}} {{polynomials}} {{Normdaten}} [[Category:斉次多項式]] [[Category:代数学]] [[Category:数学に関する記事]]
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