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{{出典の明記|date=2014-02-09}} [[Image:Priestley Burning Lens Replica.jpg|thumb|[[ジョゼフ・プリーストリー]]が所有していたバーニング・グラス(天日取りレンズ)の原寸大レプリカ]] '''収斂火災'''(しゅうれんかさい)とは、[[凸レンズ]]状の透明な物体、あるいは[[凹面鏡]]状の反射物によって、[[太陽光]]が収束し[[可燃物]]が発火することによって起こる[[火災]]である。この火災の発生原因全体に占める割合は決して高くないが、年間で数件から十数件の事例が見られるため、火災の原因としては無視できない。 また、この現象を利用した[[発火法]]は'''収斂発火'''と呼ばれることがある。 ==歴史== [[File:Specchi di Archimede.svg|thumb|[[紀元前212年]][[アルキメデス]]の熱光線(実際には太陽光は事実上の平行光線である)]] この現象の利用は、古くから知られており、[[焼灼止血法]]を行っていた神聖な寺院で使用されていたとされる {{要出典|date=2016年5月}}。[[紀元前424年]]に書かれた[[プルタルコス]]の[[戯曲]]『[[雲 (戯曲)|雲]]』の中で、[[ウェスタの処女]]寺院に設置された『鏡によって燃焼させる装置』が登場している<ref>http://classics.mit.edu/Aristophanes/clouds.html</ref>。 この発火方式は、[[オリンピック聖火]]の「採火」にも使われている。 [[File:Lentilles ardentes Lavoisier.png|thumb|ラヴォアジエとフランスアカデミーの化学者たち ''lentilles ardentes'']] 18世紀の化学者[[ジョゼフ・プリーストリー]]と[[アントワーヌ・ラヴォアジエ]]は、バーニング・グラス(天日取りレンズ)を用いた「密閉容器内での金属の灰化」の確認により、[[フロギストン説]]を否定し、[[酸素]]の[[発見]]に成功した<ref>Joseph Priestley, Experiments and Observations on Different Kinds of Air Vol.2 (1776)</ref>。 ==利用== キャンプなどで使われる [[太陽炉|ソーラークッカー]]などに利用される。 == 火災の事例 == 以下のいずれにおいても予想外のものが原因であるため、予防を難しくしていることがうかがえる。 * 車内のアクセサリー取付用[[吸盤]]<ref>[[1991年]][[8月17日]]、[[和歌山県]]で無人の[[自動車]]が爆発した。原因は、まず[[ダッシュボード (自動車)|ダッシュボード]]に置かれた[[ライター]]に充填された[[ブタン]]ガスが高温により漏れ出し、次にフロントガラスに貼り付けられていたアクセサリー取付用吸盤が、太陽光を集めてブタンガスを発火させたためだと推定されている。</ref> * 水晶玉<ref>[[1991年]][[3月19日]]17時頃、[[東京都]][[台東区]]の[[貴金属]]店で[[ボヤ]]が発生した。このボヤの原因は[[ショーウインドー]]に置かれていた[[水晶]]玉であった。ショーウインドーに差し込んだ太陽光を水晶玉が集光し、水晶玉の置かれていた座布団に焦点を作って、火災を発生させた。</ref> * ビルのミラーガラス<ref>[[1994年]][[3月]]、[[東京都]][[大田区]]で、[[オフィスビル|ビル]]のミラーガラスに反射した太陽光が、路上に置かれていた[[オートバイ]]のシートに収束して火災が発生した。</ref> * 水が入ったペットボトル<ref>[[1994年]][[11月]]、[[東京都]][[江戸川区]]で、材木置き場に置かれていた[[ネコ]]避けのための[[ペットボトル]]が太陽光を収束させ、火災を引き起こした。</ref> * [[ビニールハウス]]の屋根(水が溜まって垂れ下がったもの) * 調理用[[ステンレス鋼|ステンレス]][[ボウル]] * ステンレス容器のふた(凹面鏡状になっているもの) * 自動車のアルミ[[ホイール]]([[めっき|メッキ]]処理によって鏡面状になっているもの) === 収斂火災が発生しやすい時期 === '''収斂'''火災は、日差しの強い昼間、あるいは夏に発生しやすいと思われがちであるが、夕方{{要出典|date=2022年1月|title=東京消防庁報道発表資料中「時間帯別火災状況 (平成21年~平成30年)」によれば15時台がもっとも多く16時以降は少ない}}あるいは冬に比較的多く発生する<ref> {{Cite web|和書 |url=https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-kouhouka/pdf/310307.pdf |title=(報道発表資料)メイク用ミラーの取扱いに注意を!! ~思わぬ場所・物から収れん火災が発生します~ |date=2019-03-07 |format=PDF |publisher=東京消防庁 |page=4 |accessdate=2022-01-20}} </ref>ことが知られている。夕方や冬の方が、昼間や夏に比べて太陽の高度が低いため、室内に太陽光がより差し込みやすいためであると考えられている。 === 収斂火災の予防 === 凸レンズおよび凹面鏡の役割を果たす可能性のある物体は、直射日光の当たらない場所に置くこと、外出時は[[カーテン]]を閉めて室内に直射日光を入れないことなどが有効である。 なお平面の鏡であってもアルキメデスの熱光線のように凹面を構成するように並べて配置したり、またはカットされたガラスのように多面体であっても凸状の形状であれば、効率は低下するものの、やはり光を収束させることは可能である。したがって平面で構成されているから安全とは言えない。さらに構成する平面が全体と比べて十分に小さければ事実上の凹面鏡や凸レンズとして機能する <ref>5,800枚の小さな鏡を貼り付けて太陽光を収束する装置をつくり、さらには装置を保管していた小屋が火事になったことがニュースになった。{{Cite web | url = https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-1351935/Eric-Jacqmain-invented-Death-ray-dish-intensity-5-000-suns.html | title = Look what I made, mum! Teenager builds 'death-ray' which can burn through almost anything | publisher = Daily Mail | accessdate = 2022-01-17 }} {{Cite web|和書 | url = https://www.narinari.com/Nd/20110214973.html | title = 殺人光線の発生装置が「自殺」、19歳が5,800枚の鏡使い製作もパーに。 | publisher = ナリナリドットコム | accessdate = 2022-01-17 }} </ref> <ref>例えば底面が[[三角形]]の[[プリズム]]と円形のガラス柱とは明らかに異なるが、[[正多角形]]の項にある図を見れば明らかなように、[[八角形]]、[[十二角形]]、[[二十角形]]、… と辺の数が増えていくにつれ(つまりカットが細かくなるにつれ)円形との差はなくなっていく。</ref> 。 水晶玉、ガラス玉など完全な球体に近いと見做せるものであれば、日光が差し込む角度によらず同じ形状のレンズとして中心からの[[焦点距離#単レンズの焦点距離|焦点距離]]をある程度推定することが可能である<ref> 光学レンズなどと違い、正確な屈折率や分散を知ることは困難であり、また通常は球体を硬い平面上には置かず(転がっていってしまう)、沈みこむ座布団などに置くために位置を厳密に求めることも困難であることも多い。火災リスクを低減させる観点からは正確な計算にはあまり意味がない。 </ref>。球体は凸レンズとしてみるといわゆる[[ディオプトリ|度数]]が高く、焦点距離はかなり近距離となるため、布や木材など可燃物の上に置かない、カーテンなどが近寄らないようにするなどの配慮により太陽光に照らされた状態でもリスクを減らすことができる。 直径<math>R</math>の球体は、[[焦点距離]]の項にある近似式 :<math>\frac{1}{f} = (n-1) \left( \frac{1}{r_1} - \frac{1}{r_2} + \frac{(n-1)d}{n r_1 r_2} \right)</math> ::<math>f</math>: 焦点距離 ::<math>n</math>: レンズ材質の[[屈折率]] ::<math>r_1, r_2</math>: レンズの[[曲率半径]] ::<math>d</math>: レンズの厚さ において、<math>r_1=\frac{2}{R}, r_2=-\frac{2}{R}, d=R</math>を代入すると、 :<math>f = \frac{n}{4 \left ( n-1 \right ) } R</math> となり、中心から直径の<math>\frac{n}{4 \left ( n-1 \right ) }</math>倍の位置付近に焦点がくることがわかる。 これは半径<math>\frac{1}{2}R</math>を引くと<math>\left ( \frac{n}{4 \left ( n-1 \right ) } - \frac{1}{2} \right ) R</math>となり、球面より直径の<math>\frac{n}{4 \left ( n-1 \right ) } - \frac{1}{2}</math>倍程度離れた位置付近である。 屈折率は材質のみならず光の波長によって異なるが、[[分散 (光学)|分散]]の項にあるガラスの屈折率などからガラスや水晶などは 1.4〜1.9 程度とみなして<ref>光学ガラスと赤外線の組み合わせなどはこの範囲よりも屈折率が大きいが、焦点距離が短くなるもしくは球体の内側になるため、球面から直径の 0.4 倍以内など範囲で考える場合にはそこに含まれる。</ref>上の式に当てはめると、球面からの距離は非常に近い直径の 0.03 倍弱 (1.9 のとき) から 0.4 倍弱 (1.4 のとき) となる。つまり、日光など平行な光線が差し込む場合、直径 10 cmの水晶玉やガラス玉であれば表面からおおよそ 4cm 以内、直径 30 mmであれば表面からおおよそ 12mm 以内の範囲に焦点がくることがわかる。 == 関連項目 == *[[カモシダせぶん]] - お笑い芸人。2019年12月23日に自宅が収斂火災に遭う。 ==参考文献== <references /> {{デフォルトソート:しゆうれんかさい}} [[Category:火災]] [[Category:点火]] [[Category:技術史]] [[Category:野外活動]]
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