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[[数学]]の、特に[[測度論]]の分野における'''可測関数'''(かそくかんすう、{{Lang-en-short|measurable function}})とは、([[積分|積分論]]を展開する文脈として自然なものである)[[可測空間]]の間の、[[準同型|構造を保つ写像]]である。具体的に言えば、可測空間の間の関数が'''可測'''であるとは、各[[可測集合]]に対するその[[逆像|原像]]が[[可測集合|可測]]であることを言う(これは[[位相空間]]の間の[[連続関数]]の定義の仕方と似ている)。 この定義は単純なようにも見えるが、[[完全加法族|σ-代数]]も併せて考えているということに特別な注意が払われなければならない。特に、関数 ''f'': '''R''' → '''R''' が[[ルベーグ可測]]であるといったとき、これは実際には <math>f\colon (\mathbb{R}, \mathcal{L}) \to (\mathbb{R}, \mathcal{B})</math> が可測関数であることを意味する。すなわち、その定義域と値域は、同じ台集合上で異なる σ-代数を持つものを表している(ここで <math>\mathcal{L}</math> は[[ルベーグ可測]]集合全体の成す σ-代数であり、<math>\mathcal{B}</math> は '''R''' 上の[[ボレル集合|ボレル集合族]]である)。結果として、ルベーグ可測関数の合成は必ずしもルベーグ可測とはならない。ただし任意のルベーグ可測関数 <math>f\colon (\mathbb{R}, \mathcal{L}) \to (\mathbb{R}, \mathcal{B})</math> に対し ''f'' と[[ほとんど (数学)|ほとんど至るところ]]一致するボレル可測関数 <math>g\colon (\mathbb{R}, \mathcal{B}) \to (\mathbb{R}, \mathcal{B})</math> が存在するので、ルベーグ測度0の集合上での違いを無視する文脈では可測関数同士の合成は再び可測関数となる。 慣例では、特に断りの無い限り、[[位相空間]]にはその開部分集合全体により生成される[[ボレル集合|ボレル代数]]が与えられるものと仮定される。最もよくある場合だと、この空間として[[実数]]全体あるいは[[複素数]]全体からなる空間をとる。例えば、'''実数値可測関数'''とは、各[[ボレル集合]]の原像が可測となるような関数を言う。'''複素数値可測関数'''も同様に定義される。実用においては、ボレル集合族に関する実数値可測関数のみを指して'''可測関数'''という語を使用するものもある<ref name="strichartz">{{cite book | last = Strichartz | first = Robert | title = The Way of Analysis | publisher = Jones and Bartlett | year = 2000 | isbn = 0-7637-1497-6}}</ref>。関数の値が '''R''' や '''C''' の代わりに[[ハメル次元|無限次元ベクトル空間]]に取られるのであれば、[[弱可測関数|弱可測性]]や[[ボホナー可測関数|ボホナー可測性]]などの、可測性に関する他の定義が用いられることが普通である。 [[確率論]]の分野において、σ-代数はしばしば、利用可能な情報すべてからなる集合を表し、ある関数(この文脈では[[確率変数]])が可測であるとは、それが利用可能な情報に基づいて知ることの出来る結果(outcome)を表すことを意味する。対照的に、少なくとも[[解析学]]の分野においては、ルベーグ可測でない関数は一般に[[病的な (数学)|病的]]であると見なされる。 == 厳密な定義 == <math>(X, \Sigma)</math> と <math>(Y, \Tau)</math> を[[可測空間]]、つまり ''X'' および ''Y'' はそれぞれ σ-代数 <math>\Sigma</math> および <math>\Tau</math> を備えた集合とする。関数 :<math>f\colon X \to Y</math> が可測であるとは、すべての <math>E\in\Tau</math> に対して <math>f^{-1}(E)\in \Sigma</math> が成り立つことを言う。この可測性の概念は、σ-代数 <math>\Sigma</math> および <math>\Tau</math> に依存する。そのことを強調するために、<math>f\colon X\to Y</math> が可測関数であるとき :<math>f\colon (X,\Sigma)\to (Y,\Tau) </math> と書くことがある。 あるいは、<math>f</math> を <math>(\Sigma,\Tau)</math>-可測ということがある。<ref>[[小谷眞一]]『[[測度と確率 1]]』[[岩波講座 現代数学の基礎]], [[岩波書店]], 1997年</ref> == 特別な可測関数 == * <math>(X, \Sigma)</math> および <math>(Y, \Tau)</math> が[[ボレル集合|ボレル空間]]であるなら、可測関数 <math>f\colon (X, \Sigma) \to (Y, \Tau)</math> は'''ボレル可測関数'''または単に'''ボレル関数'''とも呼ばれる。[[連続 (数学)|連続関数]]はボレル関数だが、必ずしもすべてのボレル函数が連続函数となるわけではない。しかしながら、可測関数はほとんど連続関数である; {{仮リンク|ルージンの定理|en|Lusin's theorem}}を参照されたい。ボレル関数がある写像 <math>Y\stackrel{\pi}{{}\to{}} X</math> の切断となるとき、それはボレル切断と呼ばれる。 * [[ルベーグ可測]]関数とは、<math>\mathcal{L}</math> を[[ルベーグ可測]][[完全加法族|集合族]]、<math>\mathcal{B}_\mathbb{C}</math> を[[複素数]]全体の成す集合 '''C''' 上の[[ボレル集合|ボレル集合族]]とするときの、可測関数 <math>f\colon (\mathbb{R}, \mathcal{L}) \to (\mathbb{C}, \mathcal{B}_\mathbb{C})</math> を言う。ルベーグ可測関数は、[[ルベーグ積分|被積分函数]]とすることができるという意味で、[[解析学]]において研究の興味の対象となる。 * 定義より、[[確率変数]]は[[標本空間]]上で定義される可測関数である。 == 可測関数の性質 == * 二つの複素数値可測関数の和や積は、可測である<ref name="folland">{{cite book | last = Folland | first = Gerald B. | title = Real Analysis: Modern Techniques and their Applications | year = 1999 | publisher = Wiley | isbn = 0-471-31716-0}}</ref>。[[ゼロ除算|ゼロによる除算]]が起こらない限りは、商についても同様のことが成立する<ref name="strichartz" />。 * 可測関数の合成は、可測である。すなわち、<math>f: (X, \Sigma_1) \rightarrow (Y, \Sigma_2)</math> および <math>g: (Y, \Sigma_2) \rightarrow (Z, \Sigma_3)</math> が可測関数であるなら、<math>g \circ f: (X, \Sigma_1) \rightarrow (Z, \Sigma_3)</math> も可測関数である<ref name="strichartz" />。ただし、導入部でのルベーグ可測関数についての議論に注意されたい。 * 実数値可測関数の可算列の(各点の)[[上限 (数学)|上限]]や[[下限]]、[[上極限]]および[[下極限]]は、すべて同様に可測である<ref name="strichartz" /><ref name="royden">{{cite book | last = Royden | first = H. L. | title = Real Analysis | year = 1988 | publisher = Prentice Hall | isbn = 0-02-404151-3 }}</ref>。 * <math>Y</math> を距離空間とすると、[[各点収束]]する可測関数列 <math>f_n: X \to Y</math> の極限も可測である。この性質は、<math>Y</math> が距離空間でない一般の場合には正しいとは限らない(<ref name="dudley">{{cite book | last = Dudley | first = R. M. | title = Real Analysis and Probability | year = 2002 | edition = 2 | publisher = Cambridge University Press | isbn = 0-521-00754-2 }}</ref> の 125 および 126 ページを参照)。ここで、連続関数について同様のことが成り立つためには、各点収束よりも強い一様収束などの条件が必要とされることに注意されたい。 == 非可測関数 == 応用の場面で現れる実数値関数は、可測関数であることが多い。しかしながら、非可測関数を見つけることは難しいことではない。 * 距離空間に非可測集合が存在している限り、その空間上の非可測関数が存在する。<math>(X, \Sigma)</math> を可測空間とし、<math>A \subset X</math> が{{仮リンク|非可測集合|en|non-measurable set}}、すなわち、<math>A \not \in \Sigma</math> であるなら、[[指示関数]] <math>1_A : (X, \Sigma) \rightarrow \mathbb{R}</math> は、可測集合 <math>\{1\}</math> の原像が非可測集合 <math>A</math> であることから、非可測である。ここで、<math>\mathbb{R}</math> は通常どおり[[ボレル集合|ボレル代数]]を備えるものであり、<math>1_A</math> は : <math>1_A(x) = \begin{cases} 1 & \text{ if } x \in A \\ 0 & \text{ otherwise} \end{cases}</math> :によって与えられる。 * どのような非定数関数であっても、その定義域と値域に適切な <math>\sigma</math>-代数を備えることによって、非可測とすることが出来る。<math>f : X \rightarrow \mathbb{R}</math> を任意の非定数実数値関数としたとき、<math>X</math> に離散的でない代数 <math>\Sigma = \{0, X\}</math> が備えられるのであれば、<math>f</math> は非可測である。なぜならば、その値域の任意の点の原像は <math>X</math> の空でない真部分集合であり、したがって <math>\Sigma</math> に含まれないからである。 == 関連項目 == *可測関数のベクトル空間について: [[Lp空間|<math>L^p</math> 空間]] *[[測度保存力学系]] ==脚注== {{Reflist}} == 参考文献 == * {{cite book|和書 | author=伊藤清三 | title= ルベーグ積分入門 | publisher= 裳華房 | year= 1963 | isbn= 4-7853-1304-8}} == 外部リンク == * {{MathWorld|urlname=MeasurableFunction|title=Measurable Function|author=Rowland, Todd.}} * {{nlab|urlname=measurable+function|title=Measurable functions}} * {{PlanetMath|urlname=MeasurableFunction|title=measurable function}} * {{ProofWiki|urlname=Definition:Measurable_Function|title=Definition:Measurable Function}} * {{SpringerEOM|urlname=Measurable_function|title=Measurable function|author=Sazonov, V.V.}} {{DEFAULTSORT:かそくかんすう}} [[Category:測度論]] [[Category:関数の種類]] [[Category:数学に関する記事]]
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