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{{For|初等幾何において用いられる用語|合同}} [[抽象代数学]]において、'''合同関係''' (congruence relation)(あるいは単に'''合同''' (congruence))は([[群 (数学)|群]]、[[環 (数学)|環]]、あるいは[[ベクトル空間]]のような)[[代数的構造]]上の、その構造と協調的な[[同値関係]]である。すべての合同関係は対応する{{仮リンク|商 (代数学)|label=商|en|quotient}}構造を持ち、その元はその関係の[[同値類]](あるいは'''合同類''' (congruence class))である。 == 基本的な例 == 合同関係のプロトタイプの例は[[整数]]全体の集合上の[[整数の合同| <math>n</math> を法とした合同]]である。与えられた[[正の整数]] <math>n</math> に対して、2 つの整数 <math>a</math> と <math>b</math> は次のようなとき '''<math>n</math> を法として合同''' (congruent modulo <math>n</math>) と呼ばれ、 : <math>a \equiv b \pmod{n}</math> と書かれる。<math>a - b</math> が <math>n</math> によって[[割り切れる]](あるいは同じことだが <math>a</math> と <math>b</math> は <math>n</math> で割られたときに同じ[[ユークリッド除法|余り]]を持つ)。 例えば、<math>37</math> と <math>57</math> は <math>10</math> を法として合同である : <math>37 \equiv 57 \pmod{10}</math> なぜならば <math>37 - 57 = -20</math> は 10 の倍数であるからだ、あるいは同じことだが、<math>37</math> と <math>57</math> はどちらも <math>10</math> で割ったときに <math>7</math> 余るからである。 (固定された <math>n</math> に対して)<math>n</math> を法とした合同は整数の[[加法]]と[[乗法]]両方と両立する。つまり、 : <math>a_1 \equiv a_2 \pmod{n}</math> かつ <math>b_1 \equiv b_2 \pmod{n}</math> であれば : <math>a_1 + b_1 \equiv a_2 + b_2 \pmod{n}</math> かつ <math>a_1 b_1 \equiv a_2b_2 \pmod{n}</math> である。合同類の対応する加法と乗法は[[合同算術]]として知られている。抽象代数学の観点からは、<math>n</math> を法とした合同は整数[[環 (数学)|環]]上の合同関係であり、<math>n</math> を法とした算術は対応する[[商環]]で起こる。 == 定義 == 合同の定義は考えている[[代数的構造]]のタイプに依存する。合同の定義は[[群 (数学)|群]]、[[環 (数学)|環]]、[[ベクトル空間]]、[[環上の加群|加群]]、[[半群]]、[[束 (束論)|束]]などに対してできる。共通のテーマは合同は、[[演算 (数学)|演算]]が[[同値類]]に関して [[well-defined]] であるという意味で代数的構造と両立する代数的対象上の[[同値関係]]であるということである。 例えば、[[群 (数学)|群]]はある公理を満たすただ1つの[[二項演算]]を伴った1つの[[集合]]からなる代数的対象である。<math>G</math> が演算 ∗ を持った群であれば、''G'' 上の'''合同関係''' (congruence relation) は ''G'' の元についての同値関係 ≡ であって :''g''<sub>1</sub> ≡ ''g''<sub>2</sub> かつ ''h''<sub>1</sub> ≡ ''h''<sub>2</sub> ならば ''g''<sub>1</sub> ∗ ''h''<sub>1</sub> ≡ ''g''<sub>2</sub> ∗ ''h''<sub>2</sub> をすべての ''g''<sub>1</sub>, ''g''<sub>2</sub>, ''h''<sub>1</sub>, ''h''<sub>2</sub> ∈ ''G'' に対して満たすものである。群上の合同に対して、[[単位元]]を含む同値類はいつも[[正規部分群]]であり、他の同値類はこの部分群の[[剰余類]]である。また、これらの同値類は[[商群]]の元である。 代数的構造が 1 つよりも多くの演算を持つとき、合同関係は各演算と両立することを要求される。例えば、環は加法と乗法を両方持ち、環上の合同関係は、''r''<sub>1</sub> ≡ ''r''<sub>2</sub> かつ ''s''<sub>1</sub> ≡ ''s''<sub>2</sub> であるときにはいつでも、 :''r''<sub>1</sub> + ''s''<sub>1</sub> ≡ ''r''<sub>2</sub> + ''s''<sub>2</sub> および ''r''<sub>1</sub>''s''<sub>1</sub> ≡ ''r''<sub>2</sub>''s''<sub>2</sub> を満たさなければならない。環上の合同に対して、0 を含む同値類はいつも両側[[イデアル]]であり、同値類の集合上の 2 つの演算は対応する[[商環]]を定義する。 合同関係の一般の概念は[[普遍代数学]]、すべての[[代数的構造]]に共通するアイデアを研究する分野、の文脈において正式な定義を与えることができる。この設定において、合同関係は次を満たす代数的構造上の同値関係 ≡ である。すべての ''n''-項演算 ''μ'' と、各 ''i'' に対して ''a''<sub>''i''</sub> ≡ ''a''<sub>''i''</sub>′ を満たすすべての元 ''a''<sub>1</sub>,...,''a''<sub>''n''</sub>,''a''<sub>1</sub>′,...,''a''<sub>''n''</sub>′ に対して、 :''μ''(''a''<sub>1</sub>, ''a''<sub>2</sub>, ..., ''a''<sub>''n''</sub>) ≡ ''μ''(''a''<sub>1</sub>′, ''a''<sub>2</sub>′, ..., ''a''<sub>''n''</sub>′) == 準同型写像との関係 == ƒ: ''A'' → ''B'' が2つの代数的構造の間の[[準同型]](例えば[[群準同型|群の準同型]]や[[ベクトル空間]]の間の[[線型写像]])であれば、 :''a''<sub>1</sub> ≡ ''a''<sub>2</sub> if and only if ƒ(''a''<sub>1</sub>) = ƒ(''a''<sub>2</sub>) によって定義される関係 ≡ は合同関係である。[[第一同型定理]]によって、ƒ による ''A'' の[[像 (数学)|像]]は ''A'' のこの合同による商に[[同型]]な ''B'' の部分構造である。 == 群、正規部分群、イデアルの合同<!--Congruences of groups, and normal subgroups and ideals--> == 特に[[群 (数学)|群]]の場合には、合同関係は以下のように初等的な言葉で記述することができる: ''G'' が([[単位元]] ''e'' と演算 * をもった)群で ~ が ''G'' 上の[[二項関係]]であれば、~ は次が成り立つときにはいつでも合同である: #''G'' の{{仮リンク|普遍量子化|label=任意の元 ''a'' が与えられると|en|Given any}}、''a'' ~ ''a'' ('''[[反射関係|反射性]]''' ([[:en:Reflexive relation|reflexivity]])); #''G'' の任意の元 ''a'' と ''b'' が与えられると、''a'' ~ ''b'' [[論理包含|であれば]] ''b'' ~ ''a'' である('''[[対称関係|対称性]]''' ([[:en:Symmetric relation|symmetry]])); #''G'' の任意の元 ''a'', ''b'', ''c'' が与えられると、''a'' ~ ''b'' [[論理積|かつ]] ''b'' ~ ''c'' であれば ''a'' ~ ''c'' である('''[[推移関係|推移性]]''' ([[:en:Transitive relation|transitivity]])); #''G'' の任意の元 ''a'', ''a' '', ''b'', ''b' '' が与えられると、''a'' ~ ''a' '' かつ ''b'' ~ ''b' '' であれば、''a'' * ''b'' ~ ''a' '' * ''b' '' である; #''G'' の任意の元 ''a'' と ''a' '' が与えられると、''a'' ~ ''a' '' であれば、''a''<sup>−1</sup> ~ ''a' ''<sup>−1</sup> である(これは実は他の 4 つから証明できるので、真に冗長である)。 条件 1, 2, 3 は ~ が[[同値関係]]であると言っている。 合同 ~ は単位元に合同な ''G'' の元の集合 {''a'' ∈ ''G'' : ''a'' ~ ''e''} によって完全に決定される。そしてこの集合は[[正規部分群]]である。 具体的には、''a'' ~ ''b'' であるのは ''b''<sup>−1</sup> * ''a'' ~ ''e'' であるとき、かつそのときに限る。 なので群の合同について話す代わりに、群の正規部分群の言葉で普通話す。実は、すべての合同は ''G'' のある正規部分群に一意的に対応する。 === 環のイデアルと一般の場合 === 同様の手法は、合同関係の代わりに[[核 (代数学)|核]]の言葉で([[環論]]であれば[[イデアル (環論)|イデアル]]、[[加群論]]であれば[[部分加群]]によって)述べることもできる。この手法が可能な最も一般の状況は(複数の[[アリティ|項数]] (arity) をもつ作用を許す一般的な意味で)[[作用を持つ群|オメガ-群]]である(核となるのはΩ-安定な正規部分群)。 しかしこれは例えば[[モノイド]]ではできないので、合同関係の研究はモノイド論においてより中心的な役割を果たす。 == 普遍代数 == アイデアは[[普遍代数]]において一般化される: 代数 ''A'' 上の合同関係は ''A'' 上の[[同値関係]]でもあり[[直積]] ''A'' × ''A'' の[[部分代数系|部分代数]]でもあるような ''A'' × ''A'' の[[部分集合]]である。 [[準同型]]の{{仮リンク|核 (普遍代数学)|label=核|en|kernel (universal algebra)}}はいつも合同である。実際、すべての合同は核として生じる。 ''A'' 上の与えられた合同 ~ に対して、[[同値類]]全体の集合 ''A''/~ は自然な方法、{{仮リンク|商代数|en|quotient algebra}}で代数の構造が与えられる。 ''A'' のすべての元をその同値類に写す関数は準同型であり、この準同型の核は ~ である。 代数 ''A'' 上のすべての合同関係の[[束 (束論)|束]] '''Con'''(''A'') は{{仮リンク|代数ラティス|label=代数的|en|algebraic lattice}}である。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} === 注釈 === {{Reflist|group="注"}} === 出典 === {{Reflist|2}} == 関連項目 == *[[:en:Table of congruences]] *[[:en:Linear congruence theorem]] *[[:en:Congruence lattice problem]] == 参考文献 == * Horn and Johnson, ''Matrix Analysis,'' Cambridge University Press, 1985. ISBN 0-521-38632-2. (Section 4.5 discusses congruency of matrices.) {{DEFAULTSORT:こうとうかんけい}} [[Category:合同算術]] [[Category:同値 (数学)]] [[Category:代数学]] [[Category:二項関係]] [[Category:数学に関する記事]]
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