四重極型質量分析計のソースを表示

{{出典の明記|date=2016年11月25日 (金) 08:46 (UTC)}}
[[File:Mass spectrometer quadrupole.JPG|thumb|right|400px|四重極]]
'''四重極型質量分析計'''（{{lang-en|quadrupole mass analyzer; quadrupole mass spectrometer, QMS}}）とは、[[質量分析計]]の一種。

4本の電極ロッド（[[四重極]]）に[[直流電圧]]と[[交流電圧]]を与えることで、ある特定の質量（m/z値）のイオンだけがはじき飛ばされずに通過できる[[電場]]を形成させる。

== 原理 ==
[[File:Paul Patent 2939952 Fig5.gif|thumb|right|400 px|四重極型質量分析器の概略図<ref>{{Cite patent|US|2939952}} ''Apparatus For Separating Charged Particles Of Different Specific Charges'' Jun 1960; Paul et al.</ref>]]
[[File:Quadrupole mass analyzer.svg|thumb|right|400px|四重極を通過するイオンの運動]]
電場中のイオンの[[運動方程式]]は、<math>x</math>方向については次のように書ける。<math>y</math>方向についても同様である。

:<math>m\frac{d^2 x}{dt^2}=zE_x</math>
4本の円柱状電極に正と負の直流電圧<math>U</math>と高周波交流電圧<math>V\cos \omega t</math>を組み合わせた電圧を印加して電場を作る。イオンは通常10～20Vの低加速電圧で加速されて四重極に導かれ、電場によって振動する。
:<math>E_x=-\frac{d\Phi}{dx}</math>
:<math>\Phi=\frac{x^2 - y^2}{r_0}(U+V\cos \omega t)</math>
これらを運動方程式に代入し、
:<math>\tau =\frac{\omega t}{2}</math>
:<math>a_x = \frac{8zU}{m r_0^2 \omega^2}</math>
:<math>q_x=-\frac{4zV}{mr_0^2 \omega^2}</math>
を用いて書き換えると[[マシュー方程式]]が得られる。
:<math>\frac{d^2x}{d\tau^2}+(a_x-2q_x\cos2\tau)x=0</math>

この微分方程式に0でない周期解が存在するとき、その周期解を[[マシュー関数]]という。

この解を与える条件について<math>q</math>を横軸、<math>a</math>を縦軸にとった図で表現でき、<math>x</math>についての安定領域と<math>y</math>についての安定領域が重なるような<math>a</math>および<math>q</math>のときだけイオンが四重極内を安定的に通過することができる。つまりこの振動は電圧と周波数に応じてある一定のm/z値をもつイオンのみ安定な振動をして、電極内を通過し検出器に到達することができる。しかしそれ以外の高m/zイオン群は振動が大きくなり負電極に衝突する。逆に低m/zイオン群は正電極に衝突し電極を通過することができない。
したがって、直流電圧と交流電圧の比を一定に保ちつつ、交流電圧を直線的に変化させることで、全イオンを通過させることができる。

== 質量範囲 ==
測定されるイオンの質量ｍは電極に与える交流電圧の大きさ<math>V</math>とその周波数<math>\omega</math>および電極間の距離<math>r_0</math>で決まり、次の式で与えられる。
:<math>\frac{m}{z}=13.9\frac{V}{r_0\omega^2 }</math>
この式から、質量の大きいイオンを分析するには<math>V</math>を大きくし、<math>r_0</math>と<math>\omega</math>を小さくすればよい。
しかし実際には<math>r_0</math>は数mm以下にはできず、周波数<math>\omega</math>を小さくするとイオンが十分に振動できなくなる。
そのため、測定可能な質量範囲は交流電圧<math>V</math>で決まり、現在の装置では上限が3000程度である。

== 質量分解能 ==
質量分析計の質量分解能Rとは、識別できる質量差<math>\Delta m</math>で表される。
:<math>R=\frac{m}{\Delta m}</math>

四重極型の質量分解能は、原理的には質量に比例し、通常<math>\Delta m</math>が0.5程度である。したがって質量範囲3000まで測定できる装置での最大質量分解能は6000程度となる。

== 脚注 ==
<!--=== 注釈 ===
{{Reflist|group="注釈"}}-->
=== 出典 ===
{{Reflist}}

{{質量分析法}}

{{DEFAULTSORT:ししゆうきよくかたしつりようふんせきけい}}
[[Category:質量分析]]