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[[ファイル:PedalConstruction.svg|右|サムネイル|250x250ピクセル|点{{Mvar|P}}に対する曲線{{Mvar|C}}の垂足の幾何学的な構築]] '''垂足曲線'''(すいそくきょくせん、{{Lang-en-short|pedal curve}})は、[[曲線]]の[[接線]]に対する、固定された[[点 (数学)|点]]の[[射影作用素|直交射影]]が成す曲線である<ref>{{Cite book|和書 |title=近世幾何学 |year=1947 |publisher=[[岩波書店]] |pages=148 |author=[[窪田忠彦]] |doi=10.11501/1063410}}</ref><ref>{{Cite book|和書 |title=微分積分学綱要 |year=1930 |publisher=富山房 |author=[[沢田吾一]] |doi=10.11501/1031308 |pages=141-143}}</ref><ref>{{Cite book|和書 |title=歯車の幾何学 |year=1948 |publisher=河出書房 |page=15 |author=[[窪田忠彦]] |doi=10.11501/1159825}}</ref><ref>{{Cite book|和書 |title=積分学 |year=1946 |publisher=岩波書店 |pages=78-79 |author=[[掛谷宗一]] |doi=10.11501/1229809}}</ref><ref>{{Cite book|和書 |title=初等幾何學 第2卷 空間之部 |year=1915 |publisher=[[山海堂 (出版部)|山海堂]] |page=308 |doi=10.11501/1082037 |translator=[[小倉金之助]] |author=[[ジョージ・サーモン]]}}</ref>。より正確に言えば、[[平面曲線]]{{Mvar|C}}と点{{Mvar|P}} (Pedal point<!-- 「垂足点」という訳は、垂足そのものを指す場合が多く適さないと考える。また出典内には「極」という訳が与えられているものもある。 -->)について、{{Mvar|P}}を通る{{Mvar|C}}の[[接線]]の垂足(接線と[[垂線]]の交点){{Mvar|X}}の[[軌跡 (数学)|軌跡]]を垂足曲線という。逆に、曲線{{Mvar|C}}上の任意の点{{Mvar|R}}で接する接線{{Mvar|T}}のある垂線が、ある点{{Mvar|P}}を通るなら、その接線の垂足は垂足曲線を成す。 垂足曲線を補完するために、[[四角形]]{{Mvar|PXRY}}が[[長方形]]となるように点{{Mvar|Y}}を取る。点{{Mvar|Y}}の軌跡は'''contrapedal curve'''と呼ばれる。 曲線の'''orthotomic'''は、{{Mvar|P}}を[[相似の中心|拡大の中心]]として垂足を2倍に拡大した曲線である。これは、{{Mvar|P}}を接線{{Mvar|T}}で[[鏡映]]した点の軌跡である。 垂足曲線は、曲線{{Math|''C''{{sub|''n''}}}}の垂足曲線を{{Math|''C''{{sub|''n''+1}}}}として、{{Math|''C''{{sub|0}},''C''{{sub|1}},''C''{{sub|2}},''C''{{sub|3}}...}}と定義していったときの一連の曲線の最初の曲線である。この曲線内で、{{Math|''C''{{sub|''n''}}}}を{{Math|''C''{{sub|0}}}}の n th positive pedal curveという。逆に{{Math|''C''{{sub|0}}}}は{{Math|''C''{{sub|''n''}}}}のn番目の負垂足線 (nth negative curve) または逆垂足曲線と呼ばれる<ref>{{Cite book|和書 |title=微分積分学 |year=1922 |publisher=大倉書店 |pages=486-491 |author=[[下田卯市]] |doi=10.11501/960420}}</ref><ref>{{Cite book|和書 |title=微分学講義 |year=1910 |publisher=積善館 |pages=340-345 |author=[[寺沢寛一]] |doi=10.11501/828996}}</ref><ref>Edwards p. 165</ref><ref>{{Cite book|和書 |title=数学解析 第1篇 |year=1940 |publisher=[[内田老鶴圃]] |page=148 |doi=10.11501/1212195 |author=[[藤原松三郎]]}}</ref><ref>垂足線と言う語は[[シムソンの定理|シムソン線]]を指す場合もある。</ref>。 == 方程式 == === 直交座標によるアプローチ === {{Mvar|P}}を[[原点 (数学)|原点]]とする。また、曲線{{Mvar|C}}を{{Math|1=''F''(''x'', ''y'')=0}}とする。{{Mvar|C}}上の点{{Math|1=''R''=(''x''{{sub|0}}, ''y''{{sub|0}})}}の接線は次の形で書くことができる。 : <math>\cos \alpha x + \sin \alpha y = p</math> このとき[[位置ベクトル]]{{Math|(cos ''α'', sin ''α'')}}は[[線分]]{{Mvar|PX}}(接線の垂線)と[[平行]]で長さが等しい。したがって、{{Mvar|X}}は[[極座標]]で{{Math|(''p'', ''α'')}} と表せる。{{Math|(''p'', ''α'')}}を{{Math|(''r'', ''θ'')}}で置き換えると極形式の垂足曲線の形を得る<ref>Edwards p. 164</ref>。 [[ファイル:PedalCurve1.gif|右|サムネイル|464x464ピクセル|[[楕円]](黒)の垂足曲線(赤)。楕円はa=2,b=1で垂足曲線は4''x''<sup>2</sup>+y<sup>2</sup>=(''x''<sup>2</sup>+y<sup>2</sup>)<sup>2</sup>。]] 例として、[[楕円]]の垂足曲線を挙げる<ref>Follows Edwards p. 164 with ''m''=1</ref>。楕円の方程式は次の式で表される。 : <math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1</math> 楕円上の点{{Math|1=''R''=(''x''{{sub|0}}, ''y''{{sub|0}})}}における接線は : <math>\frac{x_0x}{a^2}+\frac{y_0y}{b^2}=1</math> である。これを上記の形に書き換えると次のようになる。 : <math>\frac{x_0}{a^2}=\frac{\cos \alpha}{p},\,\frac{y_0}{b^2}=\frac{\sin \alpha}{p}.</math> 楕円の方程式から{{Math|''x''{{sub|0}}, ''y''{{sub|0}}}}を{{仮リンク|消去理論|en|Elimination theory|label=消去}}して : <math>a^2 \cos^2 \alpha + b^2 \sin^2 \alpha = p^2,\,</math> を得る。{{Math|(''r'', ''θ'')}}に置き換えると : <math>a^2 \cos^2 \theta + b^2 \sin^2 \theta = r^2,\,</math> となる。この式は容易に[[デカルト座標]]の方程式に置き換えることができる。 : <math>a^2 x^2 + b^2 y^2 = (x^2+y^2)^2.\,</math> === 極方程式によるアプローチ === {{Mvar|P}}を[[原点 (数学)|原点]]とする。曲線{{Mvar|C}}を極座標{{Math|1=''r''=''f''(''θ'')}}で与える。{{Math|1=''R''=(''r'', ''θ'')}}を{{Mvar|C}}上の点、{{Math|1=''X''=(''p'', ''α'')}}を前項と同様に定義する。{{Mvar|''ψ''}}を接線及び[[動径]]の[[偏角 (数学)|偏角]]として、 : <math>r=\frac{dr}{d\theta}\tan \psi</math> より <math>p=r\sin \psi,\quad \alpha = \theta + \psi - \frac{\pi}{2}.</math> これらの方程式は{{Math|(''r'', ''θ'')}}を垂足曲線の等式の変数{{Math|(''p'', ''α'')}}に置き換えることができる<ref>Edwards p. 164-5</ref>。 例として、[[円 (数学)|円]]{{Math|1=''r'' = ''a'' cos ''θ''}}の垂足曲線を考える<ref>Follows Edwards p. 165 with ''m''=1</ref>。 : <math>a \cos \theta = -a \sin \theta \tan \psi</math> であるから : <math>\tan \psi = -\cot \theta,\, \psi = \frac{\pi}{2} + \theta, \alpha = 2 \theta.</math> と、 : <math>p=r\sin \psi\ = r \cos \theta = a \cos^2 \theta = a \cos^2 {\alpha \over 2}.</math> が成り立つ。これらを解いて、 : <math>r = a \cos^2 {\theta \over 2}.</math> === 垂足方程式によるアプローチ === 曲線の[[垂足座標]]による表示と垂足曲線は深い関係にある。原点{{Mvar|P}}をpedal pointとして取る。{{Math|''R''}} における動径と曲線の成す角{{Mvar|''ψ''}}は、垂足曲線の対応する{{Mvar|X}}における角と等しい。{{Mvar|p}}を垂線の長さ({{Mvar|P}}から垂足{{Mvar|X}}までの距離{{Mvar|PX}})、{{Mvar|q}}を対応する垂足曲線の{{Mvar|P}}を通る垂線の長さとすれば、[[三角形]]の[[図形の相似|相似]]より、 : <math>\frac{p}{r}=\frac{q}{p}.</math> これより、曲線の垂足方程式を{{Math|1=''f''(''p'', ''r'')=0}}として、垂足曲線の垂足方程式は次の式で表せる<ref>Williamson p. 228</ref>。 : <math>f(r,\frac{r^2}{p})=0</math> この式から曲線のnth positive/negative pedal curveの垂足方程式は簡単に求めることができる === パラメトリック方程式によるアプローチ === [[ファイル:Contrapedal.gif|右|サムネイル|458x458ピクセル|同じ楕円のContrapedal curve]] [[ファイル:PedalCurve3.gif|右|サムネイル|461x461ピクセル|楕円の[[縮閉線|エボリュート曲線]]の垂足曲線。楕円のcontrapedal curveと一致する。]] <math>\vec{v} = P - R</math>とする。また、<math>\vec{v}</math>を{{仮リンク|接成分と法成分|en|Tangential and normal components|label=接線ベクトルと法線ベクトル}}に分解して次のように書く。 : <math>\vec{v} = \vec{v}_{\parallel}+\vec{v}_\perp</math>, <math>\vec{v}_{\parallel}</math>は{{Mvar|RX}}方向のベクトルとなる。 {{Mvar|t}}を[[媒介変数|パラメタ]]として曲線{{Mvar|c}}の垂足曲線の[[パラメトリック方程式]]は : <math>t\mapsto c(t)+{ c'(t) \cdot (P-c(t))\over|c'(t)|^2} c'(t)</math> で表される({{Mvar|c'}}が0または定義できない点は無視する)。 曲線を媒介的に定義して、pedal pointが(0,0)である曲線の垂足曲線は、 : <math>X[x,y]=\frac{(xy'-yx')y'}{x'^2 + y'^2}</math> : <math>Y[x,y]=\frac{(yx'-xy')x'}{x'^2 + y'^2}.</math> と表せる。contrapedal curveは次の式で与えることができる。 : <math>t\mapsto P-{ c'(t) \cdot (P-c(t))\over|c'(t)|^2} c'(t)</math> 同じpedal pointでは、contrapedal curveは曲線の[[縮閉線]]の垂足曲線と一致する。 == 幾何学的な性質 == 点{{Mvar|P}}を通る直線と、曲線の接線が[[直角]]を成すような[[剛体]]移動を考える。この角の頂点{{Mvar|X}}は曲線と{{Mvar|P}}の垂足曲線をたどる。角が動けば{{Mvar|P}}に対する動く方向は{{Mvar|PX}}と平行になり、{{Math|''R''}}の動く方向は接線{{Math|1=''T'' (=''RX'')}}に平行になる。したがって[[瞬間中心]]は、{{Mvar|PX}}の{{Mvar|P}}を通る垂心と、{{Mvar|RX}}の{{Math|''R''}}を通る垂線の交点{{Mvar|Y}}である。{{Mvar|X}}における垂足曲線の接線は{{Mvar|XY}}の{{Mvar|X}}を通る垂線と一致する。 直径を{{Mvar|PR}}とする円は[[長方形]]{{Mvar|PXRY}}に外接し、また{{Mvar|XY}}を直径に持つ。したがって円と垂足曲線はどちらも{{Mvar|XY}}と直交し、{{Mvar|X}}で接する。 故に、垂足曲線はもとの曲線上の点を{{Math|''R''}}として、直径を{{Mvar|PR}}とする円の[[包絡線]]となる。 直線{{Mvar|YR}}は曲線の[[法線]]であり、その包絡線は曲線の[[縮閉線]]である。故に{{Mvar|YR}}は縮閉線の接線で、{{Mvar|Y}}は{{Mvar|P}}を通る縮閉線の接線の垂足である。つまり{{Mvar|Y}}は縮閉線の垂足曲線である。よってcontrapedal curveは元の曲線の縮閉線の垂足曲線であることが従う。 {{Mvar|C}}を{{Mvar|P}}を中心に2倍縮小した図形を{{Mvar|C'}}とする。 {{Mvar|R}}に対応する点{{Mvar|R'}}は長方形{{Mvar|PXRY}}の中心であり、{{Mvar|R'}}における{{Mvar|C'}}の接線は{{Mvar|PY,XR}}と平行な直線で、長方形を[[二等分線|二等分]]する。{{Mvar|P}}から発射され、{{Mvar|R'}}で {{Mvar|C'}}に衝突して反射する交線は{{Mvar|Y}}を通る。この反射された交線は{{Mvar|C}}の垂足曲線と直交する直線である{{Mvar|XY}}と一致する。垂足曲線に直交する直線の包絡線は、反射された交線の包絡線、{{Mvar|C'}}の{{仮リンク|火線|en|Caustic (mathematics)}}となる。 これは、曲線の火線はorthotomicの縮閉線と一致することの証明に使われる。 前述の様に、{{Mvar|PR}}を直径とする円が垂足曲線に接する。この円の中心{{Mvar|R'}}はである。 {{Mvar|D'}}を{{Mvar|C',D'}}の共通接線で鏡映の関係にある[[図形の合同|合同]]な曲線として、{{仮リンク|輪転曲線|en|Roulette (curve)}}の定義の様に、{{Mvar|C'}}上を滑らせずに転がす。ニ曲線が点{{Mvar|R'}}で接するとすれば、 {{Mvar|P}}と対応する点は{{Mvar|X}}となる。また輪転曲線は垂足曲線となる。同様に、曲線のorthotomicは輪転曲線の鏡映像の輪転曲線となる。 === 例 === [[ファイル:PedalCurve2.gif|サムネイル|274x274px|[[パスカルの蝸牛形|蝸牛形]] - [[円 (数学)|円]]の垂足曲線]] {{Mvar|C}}が[[円 (数学)|円]]であるとき、上記の議論から[[パスカルの蝸牛形|蝸牛形]]は以下の様な定義ができる。 * 円の垂足曲線。 * ある固定点と円上の点を直径の両端とする円の包絡線。 * 中心が円上にあり固定点を通る円の包絡線。 * 同半径の円上を転がる円の輪転曲線。 円の火線は蝸牛形の縮閉線である。 == 例 == 有名な曲線の垂足曲線を挙げる<ref>Edwards p. 167</ref>。{{Clear|left}} {| class="wikitable" !曲線 !方程式 !垂足点 !垂足曲線 |- |円 | |円周上の点 |[[カージオイド]] |- |円 | |任意の点 |[[パスカルの蝸牛形|蝸牛形]](リマソン) |- |放物線 | |焦点 |頂点における接線 |- |放物線 | |頂点 |[[シッソイド|ディオクレスのシッソイド]] |- |[[デルトイド]] | |中心 |[[バラ曲線|Trifolium]] |- |楕円または双曲線 | |焦点 |[[楕円|副円]] |- |楕円または双曲線 |<math>\frac{x^2}{a^2}\pm\frac{y^2}{b^2}=1</math> |中心 |<math>{a^2}\cos^2\theta\pm{b^2}\sin^2\theta = r^2</math> {{Enlink|Hippopede}} |- |直角双曲線 | |中心 |[[ベルヌーイのレムニスケート]] |- |[[対数螺旋]] | |極 |対数螺旋 |- |[[正弦波螺旋]] |<math>r^n=a^n \cos n\theta</math> |極 |<math>r^\tfrac{n}{n+1}=a^\tfrac{n}{n+1} \cos \frac{n}{n+1}\theta</math> (別の正弦波螺旋) |} == 関連項目 == * {{仮リンク|曲線の一覧|en|List of curves}} * [[垂足三角形]] == 出典 == {{Reflist|30em}}{{Refbegin}} *{{Cite book |author=J. Edwards |title=Differential Calculus |publisher=MacMillan and Co. |location=London |pages=[https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.109607/page/n169 161] ff |year=1892 |url=https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.109607}} *{{Cite book |author=Benjamin Williamson |title=An elementary treatise on the differential calculus |publisher=Logmans, Green, and Co. |year=1899 |pages=[https://archive.org/details/anelementarytre05willgoog/page/n247 227] ff |url=https://archive.org/details/anelementarytre05willgoog}} {{Refend}} == 参考文献 == {{Refbegin}} *''Differential and integral calculus: with applications'' by [[George Greenhill]] (1891) p326 ff. ([https://archive.org/details/differentialand03greegoog Internet Archive]) *{{cite book |author=J. Dennis Lawrence |title=A catalog of special plane curves |publisher=Dover Publications |year=1972 |isbn=0-486-60288-5 |page=[https://archive.org/details/catalogofspecial00lawr/page/60 60] |url-access=registration |url=https://archive.org/details/catalogofspecial00lawr/page/60}} *[https://books.google.com/books?id=L3gAAAAAMAAJ&pg=PA113 "Note on the Problem of Pedal Curves" by Arthur Cayley] {{Refend}} == 外部リンク == * {{MathWorld|title=Pedal Curve|urlname=PedalCurve}} * {{MathWorld|title=Contrapedal Curve|urlname=ContrapedalCurve}} * {{MathWorld|title=Orthotomic|urlname=Orthotomic}} {{Normdaten|qid=Q1423838}}{{デフォルトソート:すいそくきよくせん}} [[Category:曲線]] [[Category:微分幾何学]] [[Category:数学に関する記事]]
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