塩化アンチモンのソースを表示

'''塩化アンチモン'''（えんかアンチモン、antimony chloride）は[[アンチモン]]の[[塩化物]]である。アンチモンの価数が異なる'''塩化アンチモン(III)''' と'''塩化アンチモン(V)''' が知られている。

== 塩化アンチモン(III) ==
{{Infobox_無機化合物
| name=塩化アンチモン(III) | 画像= | IUPAC名= | 別名=三塩化アンチモン | 組成式=SbCl<sub>3</sub> | 式量=228.12 | 形状=無色固体
| 結晶構造= | CAS登録番号=[10025-91-9] | 密度=3.140 | 相=固体 | 水への溶解度= | 温度= 
| 融点=73.4 | 融点注= | 沸点=222.6 | 沸点注= | 出典=<!-- en:Antimony trichloride より -->
}}

'''三塩化アンチモン'''（さんえんか—）とも呼ばれる。 金属[[アンチモン]]に乾いた[[塩素]]ガスを作用させると得られる。 
: <chem>2Sb\ + 3 Cl2 -> 2SbCl3</chem>

[[錬金術師]]たちは「アンチモンのバター (butter of antimony)」と呼んでいた。常温常圧下では無色の柔らかい固体で、刺激性の悪臭を持つ。ジクロロメタン、ベンゼン、アセトンに可溶。水に触れると加水分解し、[[塩化水素]]を発生しながら[[オキシ塩化アンチモン]]となる。
: <chem>SbCl3\ + H2O -> SbOCl\ + 2HCl</chem>
[[ルイス酸]]としての性質を示し、塩化物イオン <chem>Cl^-</chem> と反応して付加体 <chem>[SbCl5]^{2-}</chem> を作る。この錯体のブチルアンモニウム塩は固体状態で、ジグザグ状に &minus;Cl&minus;Sb&minus;Cl&minus;Sb&minus;構造が連なった構造をとる<ref>Zarychta, B.; Zaleski, J. "Phase transitions mechanism and distortion of SbCl<sub>6</sub><sup>3&minus;</sup> octahedra in bis(''n''-butylammonium) pentachloroantimonate(III) (C<sub>4</sub>H<sub>9</sub>NH<sub>3</sub>)<sub>2</sub>[SbCl<sub>5</sub>]". ''Z. Naturforsch. B'' '''2006''', ''61'', 1101–1109. [http://www.znaturforsch.com/ab/v61b/61b1101.pdf Abstract (PDF)]</ref>。

[[ビタミンA]]や類似の[[カロテノイド]]の検出試薬として用いられ、その方法は[[カール・プライス反応]] (Carr-Price reaction) あるいはカール・プライス試験と呼ばれる。塩化アンチモン(III) はカロテノイドと反応させると青色の[[錯体]]を形成するので、これを[[比色分析]]によって測定する。

==塩化アンチモン(V)==
{{Infobox_無機化合物
| name=塩化アンチモン(V) | 画像= |I UPAC名= | 別名=五塩化アンチモン | 組成式=SbCl<sub>5</sub> | 式量=299.03 | 形状=無色または黄色の液体
| 結晶構造= | CAS登録番号=[7647-18-9] | 密度=2.36 | 相=液体 (25 ℃) | 水への溶解度= | 温度= 
| 融点=2.8 | 融点注= | 沸点=92  | 沸点注=/30 mmHg | 出典=<!-- Aldrich -->
}}</div>

<div class="toccolours" style="float: right; font-size: smaller; margin: 0 0 0.5em 0.5em">
他の言語
* [[:en:Antimony pentachloride|English]]
* [[:pl:Chlorek antymonu(V)|Polski]]
</div>

'''五塩化アンチモン'''（ごえんか—）とも呼ばれる。 塩化アンチモン(III) の融解したものの中に、塩素ガスを通じて得られる。
: <chem>SbCl3\ + Cl2 -> SbCl5</chem>
全く純粋なものは無色であるが、普通はわずかに黄味を帯びている。腐食性が強く、湿った空気中では発煙する。水と激しく反応し、加水分解して[[塩酸]]を含む強酸性の水溶液を与えるが、少量は塩化アンチモン(V) のまま溶質となる。塩酸や塩化物イオンを含む溶液に溶けやすく、以下に示す反応によって錯イオンを形成する。
: <chem>SbCl5\ + Cl^- -> SbCl6^-</chem>
常圧のもとで熱すると、140{{℃}}で沸騰を始めるとともに、塩化アンチモン(III) と塩素に分解してしまう。
: <chem>SbCl5 -> SbCl3\ + Cl2</chem>
塩化アンチモン(V) は、他のものに対して塩素を与える性質があり、有機化学において、しばしば塩素化剤として用いられている。

==参考文献==
<div class="references-small"><references /></div>

==関連項目==
* [[塩化物]]
* [[アンチモン]]

{{アンチモンの化合物}}
{{DEFAULTSORT:えんかあんちもん}}
[[Category:アンチモンの化合物]]
[[Category:塩化物]]