塩化チタン(II)のソースを表示

{{Infobox 無機化合物
| name=塩化チタン(II)
| 画像=
| IUPAC名=
| 別名=二塩化チタン
| 組成式=TiCl<sub>2</sub>
| 式量=118.77
| 形状=黒色結晶<ref name="Merck">Merck Index 13th ed., 9548.</ref>
| 結晶構造=
| CAS登録番号=[10049-06-6]
| 密度= 3.13<ref name="Merck" /> | 相 = 固体
| 水への溶解度=  | 温度=
| 融点= 1035 | 融点注=<ref name="Merck" />
| 沸点=  | 沸点注=
| 出典=
}}
'''塩化チタン(II)'''（えんかチタン、titanium(II) chloride）とは、組成式が TiCl<sub>2</sub> と表される[[無機化合物]]で、[[チタン]]の塩化物の一種。'''二塩化チタン'''とも呼ばれる。水で容易に分解し、空気中で加熱すると発火する黒色の固体<ref name="Merck">Merck Index 13th ed., 9548.</ref>。

[[塩化チタン(IV)]] や[[塩化チタン(III)]] よりも一般に高価だが、市販品が入手可能である。4族元素のチタンで最も安定な価数は +4価であるため、+2価の塩化チタン(II) は強い[[還元]]力を持つ。さらに[[酸|ルイス酸]]としての配位性を持つことを利用して、合成反応における反応試剤としての用途がいくつか知られる。

== 合成 ==
塩化チタン(II) の合成法として代表的なものは、熱による塩化チタン(III) の[[不均化]]反応である。副生する塩化チタン(IV) が揮発し、塩化チタン(II) が残る。
: <chem>2TiCl3\ + \mathit{heat}</chem>''(500℃)''<chem> -> TiCl2\ + TiCl4 \uparrow</chem>


塩化チタン(IV) を熱した[[石英ガラス]]管中で[[水素]]により還元して得る手法も知られる。

== 結晶構造 ==
塩化チタン(II) の結晶構造は[[ヨウ化カドミウム]]型である。6個の塩化物イオンが作る正八面体の中心にチタン(II)イオンが位置する<ref>Gal'perin, E. L.; Sandler, R. A. ''Kristallografiya'' '''1962''', ''7'', 217-19.</ref><ref>Baenziger, N. C.; Rundle, R. E. ''Acta Crystallographica'' '''1948''', ''1'', 274ff.</ref>。

== 用途 ==
=== C-C結合生成 ===
[[アルデヒド]]または[[ケトン]]に塩化チタン(II) と亜鉛、または塩化チタン(IV) と亜鉛とを作用させると[[ピナコールカップリング]]が起こり、メソ体の 1,2-ジオールが選択的に得られる。この反応は[[向山光昭]]らによって報告された<ref>Kagayama, A.; Igarashi, K.; Mukaiyama, T. ''Can. J. Chem.'' '''2000''', ''78'', 657-665.</ref>。

: <chem>2R-CHO\ + TiCl2\ + Zn -> R-CH(OH)-CH(OH)-R</chem>

向山らはさらにこの C-C結合生成反応を、[[パクリタキセル|タキソール]]骨格のシクロヘキセン環合成へと展開させた<ref>Mukaiyama, T.; Ogawa, Y.; Kuroda, K.; Matsuo, J. ''Chem. Lett.'', '''2004''', ''33'', 1412-1413.</ref>。

塩化チタン(II) と銅の組み合わせにより、α-ブロモケトンまたはチオエステルをアルデヒドと還元的に縮合させられる。この反応も高い立体選択性を示す<ref>Kagayama, A.; Igarashi, K.; Shiina, I; Mukaiyama, T. ''Bull. Chem. Soc. Jpn.'' '''2000''', ''73'', 2579-2585.</ref>。
: <chem>R-CHO\ + Br-CH(R')-C(=O)-R''\ + TiCl2\ + Cu -> R-CH(OH)-CH(R')-C(=O)-R''</chem>

=== 還元反応 ===
[[ニトロ化合物]]に塩化チタン(II) を加えると、還元が起こり対応する[[アミン]]が得られる<ref>Heer, J. P.; Harling, J. D.; Thompson, M. ''Synth. Commun.'' '''2002''', ''32'', 2555-63. DOI: [https://doi.org/10.1081/SCC-120005939 10.1081/SCC-120005939]</ref><ref>Somei, M.; Tsuchiya, M. ''Chem. Pharm. Bull.'' '''1981''', ''29'', 3145-57.</ref>。
: <chem>R-NO2\ + TiCl2 -> R-NH2</chem>

== 関連項目 ==
* [[塩化チタン(IV)]]
* [[塩化チタン(III)]]

== 参考文献 ==
{{Reflist}}

{{チタンの化合物}}
{{DEFAULTSORT:えんかちたん,2}}
[[Category:塩化物]]
[[Category:チタンの化合物]]
[[Category:有機反応試剤]]