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[[代数幾何学]]において[[アフィン多様体]]の間の写像が'''正則写像'''(せいそくしゃぞう、{{lang-en-short|'''regular map'''}})であるとは、それが多項式によって与えられることを言う。陽に書けば、{{math|''X'', ''Y''}} がそれぞれアフィン多様体 {{math|'''A'''<sup>''n''</sup>, '''A'''<sup>''m''</sup>}} の{{仮リンク|部分代数多様体|en|subvariety}}(あるいは代数的集合)であるとき、{{mvar|X}} から {{mvar|Y}} への正則写像 {{mvar|f}} は、各 {{mvar|f{{sub|i}}}} が[[座標環]] {{math|''k''[''x''{{sub|1}}, …, ''x''{{sub|''n''}}]/''I''}}(''I'' は ''X'' を定義するイデアル)に属するものとして、 : <math>f = (f_1, \ldots, f_m)</math> なる形に書ける。ゆえに像 {{math|''f''(''X'')}} は {{mvar|Y}} に含まれる(つまり、{{mvar|Y}} の定義方程式を満たす)。<ref>これがおそらくもっとも単純な定義であり、かつより従来的な定義(たとえば {{harvnb|Milne|loc=Proposition 3.16}}など)とも一致する</ref> より一般に、[[代数多様体|抽象代数多様体]]間の写像 {{math|''ƒ'': ''X'' → ''Y''}} が'''一点 {{mvar|x}} において正則''' ('''regular at a point {{mvar|x}}''')とは、{{mvar|x}} の近傍 {{mvar|U}} と {{math|''f''(''x'')}} の近傍 {{mvar|V}} が存在して、制限写像 {{math|''ƒ'': ''U'' → ''V''}} が {{mvar|U}} と {{mvar|V}} との{{仮リンク|座標パッチ|en|coordinate patch}} 上の写像として正則となることを言う。さらに {{mvar|ƒ}} が {{mvar|X}} の任意の点において正則であるとき、{{mvar|ƒ}} は'''正則''' ('''regular''') であるという。 代数多様体間の射は、その始域と終域に[[ザリスキー位相]]を入れたとき[[連続写像|連続]]でなければならない。より厳密に、抽象代数多様体をある種の[[局所環付き空間]]として定義するとき(例えば射影多様体に対する「環付き構造」は[[射影多様体]]の項を参照せよ)、この定義のもとでの代数多様体間の射とは台とする局所環付き空間の間の射のことを言う(故にたとえばこの射は定義により連続になる)。 {{math|''Y'' {{=}} '''A'''<sup>1</sup>}} となる特別の場合を考えるとき、正則写像 {{math|''ƒ'': ''X'' → '''A'''<sup>1</sup>}} は'''正則函数''' ('''regular function''') と呼ばれ、これは微分幾何における[[スカラー場|スカラー函数]]に対応するものである。即ち、スカラー函数が一点 {{mvar|x}} において正則 (regular) となるのは、{{mvar|x}} の適当な近傍においてそれが[[有理函数]](つまり[[多項式]]の商)に書けて、かつその分母が {{mvar|x}} において消えていないときに限られる<ref>{{harvnb|Hartshorne|loc=Ch. I, § 3.}}</ref>。[[アフィン多様体|正則函数環]](つまり、[[座標環]]あるいはより抽象的に構造層の大域切断の環)はアフィン代数幾何において基本的対象である。一方、連結[[射影多様体]]上の正則函数は定数しかない(これは複素解析における[[リウヴィルの定理 (解析学)|リウヴィルの定理]]の類似とみなせる)から、射影代数幾何では(正則函数ではなくて)[[直線束]](あるいは[[因子 (代数幾何学)|因子]])の大域切断を考えるのが普通である。 事実として、[[既約代数多様体|既約]][[代数曲線]] {{mvar|V}} 上の[[代数多様体の函数体|函数体]] {{math|''k''(''V'')}} を取ると、この函数体に属する任意の函数 {{mvar|F}} は {{mvar|V}} から {{mvar|k}} 上の[[射影直線]]への射として実現することができる。その像 {{math|''F''(''V'')}} は一点か、さもなくば射影直線全体である(これは{{仮リンク|射影多様体の完備性|en|completeness of projective varieties}}の帰結である)。つまり、{{mvar|F}} が実際に定数なのでない限り、{{mvar|F}} は {{mvar|V}} のどこかの点において値が {{math|∞}} となることを認めなければならない。いま、{{mvar|F}} のそのような(値が {{math|∞}} となる)点における振る舞いは、そのほかの点におけるよりも(ある意味で)悪くはならない。つまり、{{math|∞}} は射影直線上にとった[[無限遠点]]として、それは[[メビウス変換]]によってどこでも好きなところに移すことができる。しかし幾何学的な必要により、函数の終域を(射影直線ではなく)アフィン直線に限らねばならないとすれば、有限な値しかとれないので、不十分である。 {{仮リンク|正規代数多様体|en|normal variety}}上の有理函数が正則であるための必要十分条件は、それが極を持たぬことである<ref>証明: アフィンの場合を考えれば十分である。ネーター[[整閉整域]]が高さ 1 の素イデアルにおける局所化全ての交わりであるという事実を用いる。</ref>。これは[[ハルトークスの拡張定理]]の類似である。 正則写像は定義により[[代数幾何学|アフィン多様体の圏]]における射である。特にアフィン多様体の間の正則写像は、その座標環の間の[[環準同型]]に反変的に一対一対応する。 逆もまた正則であるような正則写像は'''双正則'''(そうせいそく、{{lang-en-short|'''biregular'''}})であるといい、代数多様体の圏における[[同型射]]である。代数多様体間の射で台となる位相空間の間の同相となるものは必ずしも同型射ではない(反例は[[フロベニウス自己準同型|フロベニウス射]] <math>t \mapsto t^p</math> で与えられる)。他方、{{mvar|f}} が双射双有理かつ {{mvar|f}} の終域が[[正規代数多様体]]ならば {{mvar|f}} は双正則である({{仮リンク|ザリスキーの主定理|en|Zariski's main theorem}}参照)。 正則および双正則は非常に強い条件(射影空間上の定数でない正則函数は存在しない)から、それより弱い条件である{{仮リンク|有理写像|en|Rational mapping}}や[[双有理写像]]が同じくらいよく用いられる。 {{mvar|f}} が代数多様体の間の射ならば、{{mvar|f}} の像はその閉包の稠密開集合を含む({{仮リンク|可設的集合|en|constructible set (topology)}}を参照)。 [[複素代数多様体]]の間の正則写像は(複素解析的な意味での)正則写像 (holomorphic map) である(実際には少し差異があって、本項に言う代数幾何的な意味で正則 (regular) となるのは特異点が[[可除特異点|除去可能]]であるような[[有理型函数|有理型写像]]なのであるが、実用上はこの差異は無視されるのが普通)。特に、複素数平面の中への正則写像は、まさに通常の(複素解析的な意味の)[[正則函数]]に他ならない。 == 関連項目 == * [[代数函数]] * [[滑らかな射]] * [[エタール射]]: [[局所微分同相写像|局所可微分同相]]の代数的類似物。 == 脚注 == {{reflist}} == 参考文献 == {{参照方法|date=2016年11月|section=1}} *{{cite book | author = [[Robin Hartshorne]] | year = 1997 | title = [[Hartshorne's Algebraic Geometry|Algebraic Geometry]] | publisher = [[Springer Science+Business Media|Springer-Verlag]] | isbn = 0-387-90244-9 }} *{{cite book | author = [[Igor Shafarevich]] | year = 1995 | title = Basic Algebraic Geometry I: Varieties in Projective Space | edition = 2nd | publisher = [[Springer Science+Business Media|Springer-Verlag]] | isbn = 0-387-54812-2 }} *Milne, [http://www.jmilne.org/math/CourseNotes/ag.html Algebraic geometry] {{DEFAULTSORT:たいすうたようたいのしや}} [[Category:代数多様体|*]] [[Category:写像]] [[Category:数学に関する記事]]
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