多胞体のソースを表示

{{Otheruseslist|'''[[4次元]]の多胞体 (polychoron)'''|一般次元の多胞体 (polytope)|ポリトープ}}
{{出典の明記|date= 2017年8月}}
{| class=wikitable style="float: right; margin-left: 1em;"
|+ 六種の[[凸正多胞体]]のグラフ
|- 
!{3,3,3}
!{3,3,4}
!{4,3,3}
|- valign=top align=center
|[[file:4-simplex t0.svg|120px]]<br />[[五胞体]]<br />Pentatope<br />4-[[単体 (数学)|単体]]
|[[file:4-cube t3.svg|121px]]<br />[[十六胞体]]<br />Orthoplex<br />4-[[正軸体]]
|[[file:4-cube t0.svg|120px]]<br />八胞体<br />Tesseract<br />4-[[超立方体|立方体]]
|- 
!{3,4,3}
!{5,3,3}
!{3,3,5}
|- valign=top align=center
|[[file:24-cell t0 F4.svg|120px]]<br />Octaplex<br />[[二十四胞体|24胞体]]
|[[file:120-cell graph H4.svg|120px]]<br />Dodecaplex<br />[[百二十胞体|120胞体]]
|[[file:600-cell graph H4.svg|120px]]<br />Tetraplex<br />[[六百胞体|600胞体]]
|}
[[初等幾何学]]における'''四次元超多面体'''(''4-polytope'') または'''多胞体'''（たほうたい、{{lang-en-short|''polychoron'', ''polycell'', ''polyhedroid''}}）は四次元の[[超多面体]]である<ref>{{Cite book | last = Vialar | first = T. | title = Complex and Chaotic Nonlinear Dynamics: Advances in Economics and Finance | publisher = Springer | year = 2009 | page = 674
  | url = {{google books |id=uf20taaf-VgC|pg=PA674|text==polychoron|plainurl=1}} | isbn = 978-3-540-85977-2}}</ref><ref>{{Cite book
  | last = Capecchi | first = V. |author2=Contucci, P. |author3=Buscema, M. |author4=D'Amore, B.  | title = Applications of Mathematics in Models, Artificial Neural Networks and Arts
  | publisher = Springer | year = 2010 | page = 598 | url = {{google books|id=oNy5MxGXLEwC|pg=PA598|text=polychoron|plainurl=1}} | doi = 10.1007/978-90-481-8581-8
  | isbn = 978-90-481-8580-1}}</ref>。四次元超多面体は連結かつ閉な図形で、より低次の超多面体図形（[[頂点]]、[[辺]]、[[多角形]][[面 (幾何学)|面]]、[[多面体]]{{ill2|胞 (幾何学)|fr|Cellule (géométrie)|label=胞}}）から組み立てられる。各面はちょうど二つの胞に共有される。

多くの胞からなる図形という意味で多胞体とも呼ばれるが、「多胞体」を任意の超多面体を表す ''polytope'' の訳語としても用いることがある{{efn|「胞」(cell) が余次元 1 の要素を表す<ref>例えば {{harvnb|Coxeter|1973|p= {{google books quote|id=iWvXsVInpgMC|text=cell|pg=PA127|127}}}}</ref>という語法に基づけば任意の polytope を多胞体と呼ぶのは自然である。}}ため注意が必要である。以下、誤解の虞が無いならば、断りなく四次元超多面体の意味で多胞体と呼ぶことにする。

多胞体は二次元の[[多角形]]および三次元の[[多面体]]の四次元における対応物である。

位相的には、多胞体は{{ill2|凸一様ハニカム|en|Convex uniform honeycomb|label=一様ハニカム}}に近い関係を持つ。例えば、三次元空間を充填する{{ill2|立方体ハニカム|en|cubic honeycomb}}との関係は、三次元[[立方体]]が無限[[正方形]]平面充填に関係するのと同様である。凸多胞体を「切ったり開いたり」して三次元[[展開図]]を作ることができる。

== 定義 ==
多胞体は四次元の閉じた図形で、[[頂点]]、[[辺]]、[[面 (幾何学)|面]]、{{ill2|胞 (幾何学)|wikidata|Q2733626|label=胞}}）から組み立てられる。胞は面の三次元版で、それ自身は一つの[[多面体]]になっている。多面体の辺がちょうど二つの面と接続されていたことと対応することとして、多胞体の各面はちょど二つの胞に接続する。任意の超多面体がそうであるように、多胞体の要素全体の成す集合を適当に分割して、それ自身多胞体を成す二つ以上の部分集合にすることはできない。その意味で多胞体は素であり、合成的なものではない。

もっともよく知られた多胞体は、テッセラクトとも呼ばれる[[正八胞体]]（[[超立方体|立方体の四次元版]]）である。

== 図示法 ==
{| class=wikitable style="float: right; margin: 1ex auto 1ex 1em; text-align: center;"
|+ [[二十四胞体]]の図示例
!colspan=2| 断面図
! {{ill2|展開図 (超多面体)|en|Net (polytope)|label=展開図}}
|-
|colspan=2|[[File:24cell section anim.gif|200px]]
|[[File:Polychoron 24-cell net.png|150px]]
|-
!colspan=3| 投影図
|-
! {{ill2|シュレーゲル図|en|Schlegel diagram}}
! 二次元直交射影
! 三次元直交射影
|- 
|[[File:Schlegel wireframe 24-cell.png|100px]]
|[[File:24-cell t0 F4.svg|100px]]
|[[File:Orthogonal projection envelopes 24-cell.png|150px]]
|}

多胞体は四次元的な広がりを持つのだから三次元空間内では見ることができない。しかし、それを三次元空間内の情報から視覚的に推察するための図示方法がいくつか存在する。

; 直交射影
: 多胞体の様々な対称方向を示すために[[直交射影]]は有効に用いられる。それにより頂点&ndash;辺グラフは二次元に表示でき、また目に見える[[射影被覆]]として立体面が三次元に示される。
; 投影図
: 三次元図形を平面の紙に投影するように、四次元図形を三次元に（あるいはさらに二次元に）投影することができる。よく用いられる投影図は、[[三次元球面]]上の点から三次元空間への[[立体射影]]を用いる{{ill2|シュレーゲル図|en|Schlegel diagram}}で、三次元空間内に描かれた辺、面、胞が真っ直ぐに接続される。
; 断面図
: 多面体を曲面による切断の断面によって調べるのと同じく、多胞体を三次元「超曲面」で切った断面から明らかにすることができる。つまり、そのような断面の列を組み立てて全体の形を理解するのである。余剰の空間次元を時間的変化で代用して、これら横断面の滑らかなアニメーションを作ることもできる。
; 展開図
: 多面体の展開図が多面体の全ての多角形面が辺で繋がれた状態で同じ平面上に描かれるように、多胞体の全ての多面体胞を同じ一つの三次元空間上に面で繋げて描くことで多胞体の展開図が得られる。

== 位相的特徴付け ==
[[Image:Hypercube.svg|150px|thumb|テッセラクトのシュレーゲル図]]

与えられた多胞体の位相はその[[ベッチ数]]および{{ill2|ねじれ係数|en|torsion coefficient (topology)}}によって決定される<ref name="richeson">Richeson, D.; ''Euler's Gem: The Polyhedron Formula and the Birth of Topoplogy'', Princeton, 2008.</ref>。

多面体を特徴付ける<ref>{{Mathworld|urlname=PolyhedralFormula|title=Polyhedral formula}}</ref>ために用いられる[[オイラー標数]]の値は、そのままでは4次元を含む偶数の高次元に対して意味を持たせることはできない（任意の多胞体に対して、その基礎にある位相が何であれ、その値は 0 である。下記の「多胞体公式」参照。）。このようにオイラー標数が高次元の異なる位相を区別するのに不十分であったことが、より洗練されたベッチ数の発見に繋がった<ref name="richeson"/>。

同様に、多面体の向き付け可能性の概念は、トロイダル多胞体のひねり面を特徴付けるのには不十分であったから、ねじれ係数が用いられるようになった<ref name="richeson"/>。

== 多胞体の種類 ==
=== 正多胞体 ===
四次元における'''[[正多胞体]]'''とは、3次元空間でいう[[正多面体]]に相当する多胞体のことである。定義も正多面体と似ており概要は、
* 全ての胞が一種類の正多面体でできている。
* 一つの頂点に集まる正多面体の数が同じである（頂点は合同である）。

である。正多面体をあらわす記号である[[シュレーフリ記号]]を四次元では、構成面の形を ''p''、構成胞の1つの頂点に集まる面の数を ''q''、1つの辺に集まる胞の数を ''r''として{''p'', ''q'', ''r''} とあらわす。

4次元の正多胞体は、6種類存在する。

{| class = "wikitable sortable" style="text-align:center;"
|-
! 名前と三次元投影図
! 構成胞
! 構成面
! 面
! 辺
! 頂点
! シュレーフリ記号
! 対応する正多面体
|-
| '''[[正五胞体]]'''<br /> 
| [[正四面体]]
| [[正三角形]]
| 10
| 10
| 5
| {3,3,3}
| [[正四面体]]
|-
|-
| '''[[正八胞体]]'''<br />（超立方体）<br /> 
| [[正六面体]]
| [[正方形]]
| 24
| 32
| 16
| {4,3,3}
| [[正六面体]]
|-
|-
| '''[[正十六胞体]]'''<br /> 
| [[正四面体]]
| [[正三角形]]
| 32
| 24
| 8
| {3,3,4}
| [[正八面体]]
|-
|-
| '''[[正二十四胞体]]'''<br /> 
|[[正八面体]]
| [[正三角形]]
| 96
| 96
| 24
| {3,4,3}
| （なし）
|-
|-
| '''[[正百二十胞体]]'''<br /> 
| [[正十二面体]]
| [[正五角形]]
| 720
| 1200
| 600
| {5,3,3}
| [[正十二面体]]
|-
|-
| '''[[正六百胞体]]'''<br />[[Image:Zm 600cell.png|125px]]
| [[正四面体]]
| [[正三角形]]
| 1200
| 720
| 120
| {3,3,5}
| [[正二十面体]]
|}

[[#双対|双対]]関係は、
* 正八胞体⇔正十六胞体
* 正百二十胞体⇔正六百胞体
で、正五胞体と正二十四胞体はそれぞれ自己双対である。

=== 半正多胞体 ===
四次元における'''[[半正多胞体]]'''とは、3次元でいう[[半正多面体]]に相当する多胞体のことである。その定義は
* 全ての胞が数種類の正多面体、または半正多面体でできている。
* 全ての頂点が合同である。

4次元の場合、半正多胞体は全部で58種類ある（正多面体、半正多面体を底胞とする超角柱を含む。ただし角柱を底胞とする超角柱などの無限系列は除く）。その中には、正多胞体の頂点や辺、面を削ったものなどがある。四次元における例外的な立体が存在として[[捩れ二十四胞体]]と[[大反角柱]]の2つがある。3次元では一般的と考えられる、捩れ操作による半正多胞体は高次元では一般的ではないのである。

=== 星型正多胞体 ===
'''[[星型正多胞体]]'''とは、3次元空間でいう[[星型正多面体]]に相当する多胞体のことである。シュレーフリ･ヘスの多胞体とも言う。4次元の星型正多胞体は、10種類存在する。

{| class="wikitable"
! 名前 !! シュレーフリ記号
|-
| Icosahedral 120-cell || {3,5,5/2}
|-
| Great 120-cell || {5,5/2,5}
|-
| Grand 120-cell || {5,3,5/2}
|-
| Small stellated 120-cell || {5/2,5,3}
|-
| Great grand 120-cell || {5,5/2,3}
|-
| Great stellated 120-cell || {5/2,3,5}
|-
| Grand stellated 120-cell || {5/2,5,5/2}
|-
| Great icosahedral 120-cell || {3,5/2,5}
|-
| Grand 600-cell || {3,3,5/2}
|-
| Great grand stellated 120-cell || {5/2,3,3}
|}

広く定着している日本語名は現在のところない。

3次元の星型正多面体は4種類、4次元の星型正多胞体は10種類あるが、5次元以上の空間には星型正多胞体は存在しない。

=== 一様多胞体 ===
'''一様多胞体'''とは、3次元でいう[[一様多面体]]に相当する多胞体のことである。4次元の一様多胞体は現在、1849種類が確認されている。

=== 準正多胞体 ===
'''準正多胞体'''とは、3次元でいう[[準正多面体]]に相当する多胞体のことであり、一様多胞体のうち、辺の形状が合同な立体のことである。4次元の準正多胞体は、凸なものは5種類ある。

=== 角柱・双角柱 ===
3次元図形を4次元方向に平行移動すれば、そのまま角柱の4次元版が得られる。また4次元以上に現れる図形として[[双角柱]] (duoprism) がある。これは2種類の角柱が4次元空間で絡まりあったような形状をしており、''n''角柱''m''個と''m''角柱''n''個からなる双角柱を(''n'' - ''m'')角柱と呼ぶ。

== 双対 ==
四次元多胞体の[[双対多面体|双対]]とは、立体の数と頂点の数、面の数と辺の数を入れ替えたものをいう。

== 多胞体公式 ==
[[レオンハルト・オイラー|オイラー]]の[[多面体]]定理の拡張として[[ルートヴィヒ・シュレーフリ|シュレーフリ]]の多胞体公式が成立する<ref>{{cite|和書 |editor= |author=宮崎興二 |title=4次元図形百科  |edition= |publisher=丸善出版 |year=2020 |isbn=978-4-621-30482-2  |page=83}}</ref>。
:<math>V-E+F-C=0</math>
ここで{{math|''V''}}は頂点の数、{{math|''E''}}は辺の数、{{math|''F''}}は面の数、{{math|''C''}}は胞の数である。右辺が0となるのは多面体定理とは異なり、2次元空間の多角形で常に
:<math>V-E=0</math>
となるのと同様である。奇数次元で2となるのは、[[空集合]]と全体集合（いずれも全次元共通で1個、ただし-1次元では同一）を考慮しないためであり、これらを含めて[[交項級数|交代和]]を取れば全次元共通（[[0次元]]を含み、-1次元を除く）で0となる（[[パスカルの三角形]]を参照）。また全体集合のみを含む場合は全次元共通で1となり、空集合のみを含む場合は1と-1で振動する。

== 関連項目 ==
* {{ill2|正四次元超多面体|en|Regular 4-polytope}}（正多胞体）
* [[三次元球面]] (glome): 超多面体でない、よく知られた四次元図形のひとつ
* {{ill2|双円柱|en|duocylinder}}: {{ill2|双角柱|en|duoprism}}と関連する四次元図形。これが多胞体でないことは、包含立体が多面体的でないことによる。

== 注 ==
=== 注釈 ===
{{notelist}}

=== 出典 ===
{{Reflist}}

== 参考文献 ==

== 関連文献 ==
* [[Harold Scott MacDonald Coxeter|H.S.M. Coxeter]]:
** H. S. M. Coxeter, [[M. S. Longuet-Higgins]] and [[J. C. P. Miller]]: ''Uniform Polyhedra'', Philosophical Transactions of the Royal Society of London, Londne, 1954
** {{Citation |last=Coxeter |first=H. S. M. |authorlink=Harold Scott MacDonald Coxeter |title=[[:en:Regular Polytopes (book)|Regular Polytopes]] |edition=3rd|publisher=[[Dover Publications]] |location=New York |isbn=978-0-486-61480-9 |year=1973|ref=harv}}
* '''Kaleidoscopes: Selected Writings of H.S.M. Coxeter''', edited by F. Arthur Sherk, Peter McMullen, Anthony C. Thompson, Asia Ivic Weiss, Wiley-Interscience Publication, 1995, {{ISBN2|978-0-471-01003-6}} [http://www.wiley.com/WileyCDA/WileyTitle/productCd-0471010030.html]
** (Paper 22) H.S.M. Coxeter, ''Regular and Semi Regular Polytopes I'', [Math. Zeit. 46 (1940) 380–407, MR 2,10]
** (Paper 23) H.S.M. Coxeter, ''Regular and Semi-Regular Polytopes II'', [Math. Zeit. 188 (1985) 559–591]
** (Paper 24) H.S.M. Coxeter, ''Regular and Semi-Regular Polytopes III'', [Math. Zeit. 200 (1988) 3–45]
* [[John Horton Conway|J.H. Conway]] and [[Michael Guy (computer scientist)|M.J.T. Guy]]: ''Four-Dimensional Archimedean Polytopes'', Proceedings of the Colloquium on Convexity at Copenhagen, page 38 und 39, 1965
* [[Norman Johnson (mathematician)|N.W. Johnson]]: ''The Theory of Uniform Polytopes and Honeycombs'', Ph.D. Dissertation, University of Toronto, 1966
* [http://www.polytope.de Four-dimensional Archimedean Polytopes] (German), Marco Möller, 2004 PhD dissertation  [http://www.sub.uni-hamburg.de/opus/volltexte/2004/2196/pdf/Dissertation.pdf]

== 外部リンク ==
* {{MathWorld|urlname=Polychoron|title=Polychoron}}
* {{Mathworld | urlname=RegularPolychoron | title=Regular polychoron}}

{{次元}}
{{Polytopes}}
{{多胞体}}
{{DEFAULTSORT:たほうたい}}
[[Category:多胞体|*]]
[[Category:数学に関する記事]]