天体衝突のソースを表示

{{複数の問題|
独自研究=2013年12月|
出典の明記=2013年12月|
正確性=2013年12月}}
[[File:Impact event.jpg|thumb|250px|衝突のイメージ]]
'''天体衝突'''（てんたいしょうとつ）とは、[[小惑星]]や[[彗星]]といった[[宇宙]]にある[[天体]]が、[[地球]]など他の天体に衝突することである。[[隕石]]の落下を伴う場合は、'''隕石衝突'''、'''隕石落下'''とも言われ、衝突された側の天体に、[[クレーター]]（衝突クレーター・隕石孔）を残すこともある。

天体衝突は[[太陽系の形成と進化|太陽系天体の形成・進化]]に大きく寄与してきた。[[月]]やその他の岩石天体が多くのクレーターに覆われているという事実は、天体衝突が[[太陽系]]の歴史において普遍的な現象であることを示している。また、[[K-Pg境界]]のように、地球への天体衝突イベントには地質学的に記録されているものもあり、こうした衝突は[[地球生命圏]]の進化に大きな影響を与えたと考えられている。

== 衝突のエネルギー ==
衝突のエネルギーは衝突天体のもつ[[運動エネルギー]]で与えられ、[[速度]]と[[質量]]で特徴づけられる。[[ニュートン力学]]では、[[等速直線運動]]をする物体の運動エネルギー E は、質量 m、速さ vとして

{{Indent|<math>E = {1 \over 2}mv^2</math>}}
である。よって、質量 m と速さ v の2乗に比例する。つまり、速さが2倍になればエネルギーは4倍になる。

衝突天体が球体であれば、質量 m は衝突天体のサイズから見積もることができる。ρを天体の密度、Rを半径とすれば、
{{Indent|<math>m = \rho  {4 \over 3}\pi R^3</math>}}

である。よって質量 m は半径 R の3乗に比例する。つまり、サイズが2倍になれば、質量及びエネルギーは8倍になる。

== 衝突が与える影響 ==
互いに衝突する二天体のサイズが大きく異なり、衝突・被衝突を区別できる場合、衝突する側の天体を衝突天体（impactor; インパクタ)、衝突される側の天体をターゲット天体（target）と呼ぶ。ここではターゲット天体に及ぼす影響について論じる。

地球のような[[大気]]のあるターゲット天体への天体衝突では、大気による空力加熱が衝突天体に生じる。一般に、天体が大きく、遅いほど空力加熱による[[蒸発]]に時間がかかり、[[大気圏]]内での加熱でも分解・[[気化]]（蒸発）しきらず、地上まで形を保つものもある。これが隕石である。そうした隕石が[[陸地]]に落ちた場合、[[人類]]によって発見されたり、衝撃によってクレーターを形成したりすることがある。なお、大気が無い場合は、衝突天体は空力加熱による蒸発および減速を経験しないままターゲット天体の地表面に到達し、衝突エネルギーに応じたクレーターを形成する。

大規模なクレーターができるほどの天体衝突が起きた場合、衝突天体から供給された物質と、衝撃でターゲット天体から飛散した物質とが舞い上がる。これを{{仮リンク|イジェクタ|en|Ejecta}}（衝突放出物）という<ref>{{Cite book|和書 |author = 後藤和久, 小松吾郎 |year = 2012 |title = Google Earthで行く火星旅行 |publisher = [[岩波書店]] |page = 46 |isbn = 978-4-00-029596-3}}</ref>。このイジェクタが降り積もることで、クレーター周辺には{{仮リンク|イジェクタブランケット|en|Ejecta blanket}}と呼ばれる特徴的な堆積地形を形成することがある。ターゲット天体に大気がある場合は、細かいイジェクタ粒子が大気に滞留して全球的に拡がることもあり、この場合、ターゲット天体の地表の広い範囲にイジェクタ粒子を含む新たな地層が形成される。こうしてできた地層を、[[イジェクタ層]]と呼ぶ。この地層には、{{仮リンク|衝撃変成作用|en|shock metamorphism}}を受けた鉱物が含まれていたり、[[イリジウム異常]]が観察されたりすることがある<ref>松井 孝典・永原 裕子・藤原 顕・渡邊 誠一郎・井田 茂・阿部 豊・中村 正人・小松 吾郎・山本 哲生，岩波講座 地球惑星科学〈12〉「比較惑星学」，岩波書店，1997年．</ref>。

大規模な天体衝突は、局地的な衝突加熱を引き起こしたり[[衝撃波]]を発生させる。地球の場合は、落下地点が[[海洋]]である場合は[[津波]]を、比較的浅い水域や陸地である場合は舞い上がった粉塵が[[太陽光]]を遮断することによる気温の低下（隕石の冬）を引き起こし、[[生物]]に甚大な被害を与える。[[恐竜]]や[[アンモナイト]]などが絶滅したK-Pg境界は、[[中生代]][[白亜紀]]末に直径約10kmの天体が[[メキシコ]]・[[ユカタン半島]]に衝突したことで引き起こされたと考えられている。このように、大量絶滅には天体衝突が原因と推定されるものもある。

さらに巨大な天体が衝突した場合、大規模な衝突加熱によってターゲット天体の固体表面が全溶融したり、ターゲット天体の周領域にイジェクタによる{{仮リンク|デブリ円盤|en|Debris disk}}を生じ、月のような[[衛星]]を形成すると考えられている（[[ジャイアントインパクト説]]）。また、[[天王星]]の[[自転軸]]が大きく傾いているのは、過去に惑星サイズの天体が衝突したためとも言われている。このような大事変を伴う天体衝突は、太陽系の歴史の初期にしばしば起こっていた。

== 過去の天体衝突 ==
[[ファイル:Взрыв метеорита над Челябинском 15 02 2013 avi-iCawTYPtehk.ogv|thumb|2013年チェリャビンスク州の隕石落下を捉えた映像]]
以下は、近代の主な天体衝突、および過去の天体衝突と推測されている事例である。

; [[2013年チェリャビンスク州の隕石落下]]
: 人口密集地帯上空を隕石が通過し、衝撃波や[[熱線]]により多数の人が負傷した。原因が天体衝突と確定している中では初の大規模災害。
; {{Mpl|2008 TC|3}}(2008年)
: 直径4.1m。隕石として地球に衝突する前に小惑星として観測された初の事例。衝撃力はTNT火薬換算で1.1〜2.1[[TNT換算|キロトン]]（戦術[[核兵器]]級）。
; [[ツングースカ大爆発]](1908年)
: [[空振]]により広大な森林の樹木が薙ぎ倒された。爆発直後には十分な調査が行われなかったため長らく原因が断定されなかったが、科学的再調査の結果2012年に隕石破片を発見、2013年には隕石であることが確定した。天体直径は60m〜100m、衝撃力はTNT火薬換算で5〜15[[TNT換算|メガトン]]（[[ブラボー実験|ビキニ水爆]]級）と推定されている。
; 中国の古文書に記録された隕石衝突
: [[ジェット推進研究所]](JPL)の研究グループは中国の古文書を調査し、7件の隕石災害とみられる記述を報告している<ref>{{Cite web |url=http://adsabs.harvard.edu/full/1994Metic..29..864Y |title=Meteorite falls in China and some related human casualty events |accessdate=2013-02-17}}</ref>。最古の記録は[[隋書]]にある616年1月14日の隕石で、反乱軍陣地の[[攻城塔]]が破壊され10名が死亡<ref>{{Cite web |url=http://adsabs.harvard.edu/full/1997JIMO...25..222G |title=Human Casualties in Impact Events |accessdate=2020-02-22}}</ref>。{{要出典範囲|date=2013年12月|1490年の陝西省での隕石では1万人以上の犠牲が記録されている。}}({{仮リンク|慶陽流星雨|en|1490 Ch'ing-yang event}})<ref>[http://www.astro.ncu.edu.tw/people/chang_kh/crater7.htm] - [[国立中央大学]]</ref>
; [[カーリ・クレーター]]
: 紀元前660年頃、現在のエストニア、バルト海の[[サーレマー島]]に直径約100mのカーリ・クレーターを代表とする、少なくとも9つのクレーター群が形成される。古代[[ヴァイキング]]の叙事詩には恐ろしい悲劇と描写され、人的被害があったと考えられている。
; [[ケビラ・クレーター]]
: 約2800万年前、現在のエジプトに直径約31kmのクレーターを形成。古代エジプト人が装飾に使用した[[リビアングラス]]の生成原因について、かつては彗星衝突説などもあったが、2008年に当クレーターが発見されたことにより天体衝突説が確定したとされる。
; [[チクシュルーブ・クレーター]]
: メキシコのユカタン半島にある約6550万年前の[[チクシュルーブ衝突体]]の落下跡。直径150km。衝突エネルギーは広島原爆10億個分。恐竜絶滅の原因とされている（ただし、シバ・クレーターを形成した衝突が恐竜絶滅の原因とする説もある）。
; [[シバ・クレーター]]（Shiva crater）
: 約6550万年前の小惑星の衝突跡であると、一部の古生物学者が主張する地形。インドのムンバイ西海底にある。長さ600km、幅400kmの長方形の形状。白亜紀の動植物絶滅の原因とする者もいるが、地球科学者は衝突痕とは認めていない。
; {{仮リンク|ウィルクスランド・クレーター|en|Wilkes Land crater}}
: 約2億5100万年前の天体衝突によってできた直径490~500kmのクレーターが南極大陸[[ウィルクスランド]]氷床下にあると、2006年に報告された。天体直径は50km以上と推定される。地質年代区分的には、[[P-T境界]]とも呼ばれる[[ペルム紀末の大絶滅]]の原因と考えられ、研究が進められている。
; [[ジャイアントインパクト説]]
: 惑星形成論と月の岩石の観察から示唆されている地球誕生直後の衝突。月の起源の有力な説である。

{{See also|隕石の一覧|隕石の空中爆発の一覧}}

== 地球に衝突する可能性のある小惑星 ==
太陽系には多数の小惑星が存在しているが、その中には地球の[[太陽周回軌道|公転軌道]]と近接した軌道を有する小惑星も存在することが知られている。このような小惑星を[[地球近傍小惑星]]（Near Earth Asteroid, NEAs）と言う。また、その中でも地球への衝突リスクが高い小惑星は[[潜在的に危険な小惑星]]（Potentially Hazardous Asteroid, PHA）に分類されている。過去には[[2014年]]に接近する[[(143649) 2003 QQ47]]や[[2029年]]に接近する[[アポフィス (小惑星)|アポフィス]]、[[2048年]]に接近する{{Mpl|2007 VK|184}}、2880年に接近する[[(29075) 1950 DA]]が地球に衝突するのではと騒がれたこともあったが、後に衝突確率はほぼゼロとなっている。地球に衝突する確率及び予測被害状況を表す尺度に[[トリノスケール]]が提案されており、アポフィスは一時的にトリノスケール4、[[2024 YR4]]はトリノスケール3と評価されていた。

小惑星を含む地球近傍天体は[[摂動 (天文学)|惑星摂動]]によって軌道が大きく変化することも知られている。基本的に太陽に近いほど公転速度は速いため、地球近傍天体は頻繁に水星、金星、地球、火星に接近する。これらの惑星からの重力の影響で地球近傍天体は軌道が変化し得ることが{{誰2範囲|date=2013年12月|指摘されている}}。また、これらの天体とは比べものにならないほど強い引力を持った木星などの引力の影響を受けて{{要出典範囲|date=2013年12月|軌道が変化する可能性もある}}。したがって、衝突リストは変更されることもある。

なお、前述のトリノスケールでは「局所的大被害が起こり得る衝突は数百年から数千年に1回」、「全地球的大被害の起こり得る衝突は1万年〜10万年に1回」の発生確率としている。ちなみに、{{mp|2008 TC|3}}程度の非常に小型の天体であれば、年間2〜3個の割合で地球に落下している<ref>[https://www.spaceguard.or.jp/RSGC/results/ASTEROID_23_4/Vol.23-99-103.pdf 隕石落下のリスク評価─100年間の落下隕石─] - [[日本スペースガード協会]]</ref>。

== 天体衝突への警戒と対策 ==
小さい地球近傍小惑星は、未発見のものも多いと考えられるため、既知小惑星の追跡観測だけでなく、新規発見への努力が続けられている。日本では[[美星スペースガードセンター]]（[[井原市|岡山県井原市]]）が取り組んでいる。地球に衝突する可能性が高い小惑星が見つかった場合を想定した避難などの対策も検討されている。[[国際宇宙航行アカデミー]]（IAA）は{{仮リンク|小惑星衝突対策|en|Asteroid impact avoidance}}を議論する国際会議「PLANETARY DEFENSE CONFERENCE」を開催しており、日本は第5回会議（2017年5月15日 - 19日）の会場となった<ref>{{Cite web|和書|url=https://web.archive.org/web/20170516185144/http://www.sankei.com/life/news/170515/lif1705150023-n1.html|title=小惑星衝突から地球守れ 東京で国際会議開幕|publisher=[[産経新聞]]ニュース 2017年5月15日|accessdate=2017-05-19}}</ref>。

この会議で日本側責任者を務めた[[宇宙航空研究開発機構]]（JAXA）吉川真[[准教授]]によると、[[アメリカ航空宇宙局]]（NASA）や[[欧州宇宙機関]]（ESA）、[[国際連合]]（UN）では隕石衝突への対策組織を設けている。地球衝突への10年程度前に発見できれば、現在の技術でも回避が可能であるという<ref>{{Cite news|url=https://mainichi.jp/articles/20170619/org/00m/070/004000c|title=＜そこが聞きたい＞天体の地球衝突 宇宙航空研究開発機構准教授・吉川真氏|work=|publisher=『[[毎日新聞]]』朝刊|date=2017年6月19日}}</ref>。

小惑星の地球衝突を未然に防ぐ対策としては、人類が打ち上げた宇宙機の微小な[[重力]]による牽引や接触で軌道を変更する、[[核爆発]]などで破砕するといった方法が提案されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.usss.kyoto-u.ac.jp/etc/symp4/usss4_bando.pdf|title=小惑星衝突回避|publisher=[[京都大学]]宇宙総合学研究ユニット資料|accessdate=2017-05-19}}</ref>。

NASAなどの研究チームは、2135年に地球へ衝突する可能性が僅かにある[[ベンヌ (小惑星)|小惑星「ベンヌ」]]（直径約500m）を例として、全長9mの大型宇宙船を10年間に50回ぶつけて徐々に軌道を変えるか、[[核兵器]]の使用検討が必要であると試算している<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2856678026032018CR0000/ 小惑星はじき飛ばすには…宇宙船50回ぶつける／NASA、衝突回避で試算]『日本経済新聞』夕刊2018年3月26日（社会・スポーツ面）2018年3月26日閲覧</ref>。
2022年、探査機の衝突による軌道変更実験「DART」が実行された<ref>{{Cite web|url=https://www.nasa.gov/feature/nasa-s-first-asteroid-deflection-mission-enters-next-design-phase|title=NASA’S First Asteroid Deflection Mission Enters Next Design Phase|publisher=NASAホームページ|accessdate=2017-8-19}}</ref><ref>[https://www.bbc.com/japanese/63224629 NASA、小惑星の軌道変更に成功　無人探査機衝突実験] - [[BBC]]</ref>。
{{See also|DART (探査機)}}
またNASAは2016年に「{{仮リンク|惑星防衛調整局|en|Planetary Defense Coordination Office}}」（PDCO）を設立している。

== 天体衝突を扱った作品 ==
{{main|Category:隕石を題材とした作品|Category:天体衝突を題材とした映画作品}}
{{preview warning|{{Notice|提示する作品は、Wikipediaのガイドライン[[Wikipedia:関連作品]]に準拠した作品であることを出典付きで記述してください。}}}}
天体衝突に伴う社会の混乱を描く作品や、人為的に衝突を回避させようとする計画を描いたSFが多く発表されている。自然の天体を、地球などに落下させる質量兵器として利用（隕石爆撃や[[遊星爆弾]]）する作品もある。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references/>

== 関連項目 ==
* [[隕石]]
* [[隕石の一覧]]
* [[クレーター]]、{{ill2|地球上のクレーターの一覧|en|List of impact craters on Earth}}、{{ill2|天体衝突構造|en|Impact structure}}(隕石によって作られたクレーターと周辺地質構造)
* {{ill2|隕石衝突の階級|en|Meteorite shock stage}} - 災害スケール
* [[ジャイアントインパクト説]]
* [[後期重爆撃期]]
* [[火球]]
* [[衝撃波]]
* [[地殻津波]]
* {{ill2|隕石の冬|en|Impact winter}}(衝突の冬)
* [[トール・エル・ハマム]] ‐ 約3600年前に隕石が落下し、ツングースカ大爆発を上回る規模の破壊により失われた都市。
* [[地球近傍天体]]
** [[地球近傍小惑星]]
** [[地球横断小惑星]]
** [[潜在的に危険な小惑星]]
* {{ill2|小惑星衝突回避|en|Asteroid impact avoidance}}
* [[流星塵]] - 流星由来の塵も地表に落下する。
* {{ill2|地球上の天体衝突構造一覧|en|List of impact structures on Earth}}
** {{仮リンク|バーバートン・グリーンストーン・ベルト|en|Barberton Greenstone Belt}}

{{Modern impact events}}
{{Normdaten}}
{{デフォルトソート:てんたいしようとつ}}

[[Category:隕石落下|*]]
[[Category:天文現象]]
[[Category:天体衝突| ]]