太陽のソースを表示

{{Otheruses}}
{{Redirect|お日さま・お日様|その他|おひさま}}
{{天体 基本
| 幅 = 320px
| 色 = 恒星
| 和名 = 太陽 [[ファイル:Sun symbol.svg|24px|☉|frameless|class=skin-invert]]
| 英名 = 
| 画像ファイル = The Sun in white light.jpg
| 画像サイズ = 300px
| 画像説明 = 2019年5月8日に[[可視光線]]で撮影された太陽。
| 仮符号・別名 =
| 視等級 = &minus;26.75<sup>m</sup>{{Sfn|理科年表|2012|p=96}}
| 視直径 = （視半径）15&prime;59&Prime;64{{Sfn|理科年表|2012|p=78}}
| 変光星型 =
| 分類 = [[主系列星]]
}}
{{天体 発見
| 色 = 恒星
| 発見日 =
| 発見年 = 有史以前
| 発見者 =
| 発見方法 = 目視
}}
{{天体 位置
| 色 = 恒星
| 距離 = [[1 E11 m|{{val|1.4710|e=11|u=m}} 〜 {{val|1.5210|e=11|u=m}}]]<br/>({{val|0.9833|u=[[天文単位|au]]}} 〜 {{val|1.0167|u=au}})
}}
{{天体 軌道
| 色 = 恒星
| 惑星数 = 8
}}
{{天体 項目|[[銀河系]]を一周する時間|2.2{{e|8}} 年}}
{{天体 物理
| 色 = 恒星
| 赤道直径 =
| 直径 = [[1 E9 m|{{val|1392000|u=km}}]]（[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]）{{R|nssdc}}<br />{{val|1392038|20|u=km}}（[[国立天文台|NAOJ]]）<ref group="注">[[2012年5月21日の日食|2012年5月の金環日食]]の際の観測に基づく。金環日食直後の速報では、太陽半径として {{val|696010|20|u=km}} としていたが、日本天文学会2012年秋季年会での[https://www.asj.or.jp/nenkai/archive/2012b/pdf/Y27a.pdf 報告値]は太陽半径として {{val|696019|10|u=km}}。</ref>
{{天体 項目|地球との直径比 <br />(d<sub>S</sub>/d<sub>E</sub>)|109.2{{R|sse}}}}
| 半径 = R<sub>☉</sub>: {{val|6.9551|e=5|u=km}}{{R|sse}}
| 表面積 = {{val|6.07877|e=12|u=[[平方キロメートル|km{{sup|2}}]]}}{{R|sse}}
| 体積 = {{val|1.40927|e=18|u=[[立方キロメートル|km{{sup|3}}]]}}{{R|sse}}
| 質量 = M<sub>☉</sub>: {{val|1.9891|e=30|u=[[キログラム|kg]]}}{{R|nssdc}}
| 相対対象1 = 地球
| 相対質量1 = {{val|333404.2}}
| 相対対象2 =
| 相対質量2 =
| 平均密度 = 1.411 g/cm<sup>3</sup>{{R|nssdc|sse}}<ref>{{Cite web|url=http://hypertextbook.com/facts/1999/MayKo.shtml|title=The Physics Factbook|editor=Elert, G.|language=英語|accessdate=2010-10-16|archiveurl=https://web.archive.org/web/20101125072428/http://hypertextbook.com/facts/1999/MayKo.shtml|archivedate=2010-11-25}}</ref>
{{天体 項目|地球との相対密度|0.26}}
{{天体 項目|[[水]]との相対密度|1.409}}
| 表面重力 = 274 m/s<sup>2</sup>{{R|nssdc}}
{{天体 項目|相対表面重力|27.9 [[重力加速度|G]]}}
| 脱出速度 = {{val|6.177|e=5|u=m/s}}{{R|sse}}
| 自転周期 = 27日6時間36分（[[赤道]]）<br />28日4時間48分（[[緯度]]30度）<br />30日19時間12分（緯度60度）<br />31日19時間12分（緯度75度）
| スペクトル分類 = G2V{{Sfn|理科年表|2012|p=96}}
| 絶対等級 = +4.82<sup>m</sup>{{Sfn|理科年表|2012|p=96}}
| 光度 = L<sub>☉</sub>: {{val|3.85|e=26|u=W}}{{R|nao2006-8}}
| 光度係数 =
| 赤道傾斜角 = 7.25 [[度 (角度)|&deg;]]{{R|nssdc}}
| 表面温度 = {{val|5772|u=[[ケルビン|K]]}}{{R|nssdc}}
{{天体 項目|中心温度|1.57{{e|7}} K{{R|nssdc}}}}
{{天体 項目|[[コロナ]]の温度|2{{e|6}} K}}
| 最小表面温度 =
| 平均表面温度 =
| 最大表面温度 =
| 可視光明度 =
| 全波長明度 =
| 色指数_BV = +0.650{{Sfn|理科年表|2012|p=96}}
| 色指数_UB = +0.195{{Sfn|理科年表|2012|p=96}}
| 色指数_VI =
| 金属量 =
| 年齢 = 約46億年
| 大気圧 =
| 大気 =
| 外殻 =
}}
{{天体 見出し
| 色 = 恒星
| 見出し = 光球の組成
}}
{{天体 項目|[[水素]]|73.46 %<ref>{{Cite web|url=http://solar-center.stanford.edu/vitalstats.html|title=The Sun's Vital Statistics|language=英語|publisher=Stanford Solar Center|accessdate=2010-10-19|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110105141345/http://solar-center.stanford.edu/vitalstats.html|archivedate=2011-01-05}}</ref>}}
{{天体 項目|[[ヘリウム]]|24.85 %}}
{{天体 項目|[[酸素]]|0.77 %}}
{{天体 項目|[[炭素]]|0.29 %}}
{{天体 項目|[[鉄]]|0.15 %}}
{{天体 項目|[[ネオン]]|0.12 %}}
{{天体 項目|[[その他]]|0.11 %}}
{{天体 項目|[[窒素]]|0.09 %}}
{{天体 項目|[[ケイ素]]|0.07 %}}
{{天体 項目|[[マグネシウム]]|0.05 %}}
{{天体 項目|[[硫黄]]|0.04 %}}
{{天体 別名称
| 色 = 恒星
| 別名称 = 英語: Sun (サン)<br />ラテン語: Sol (ソル)<br />[[ピート・ファンデカンプ|KAMP]] 1<br />[[光世紀世界#光世紀星表|LCC]] 0000
}}
{{天体 終了
| 色 = 恒星
}}
'''太陽'''（たいよう、{{lang-la|Sol}}）は、[[銀河系]]（天の川銀河）の[[恒星]]の一つである。[[地球]]も含まれる[[太陽系]]の物理的中心{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系|pp=9-10}}であり、太陽系の全[[質量]]の99.8&nbsp;[[パーセント|%]]を占め、[[太陽系]]の全天体に[[重力]]の影響を与える<ref name=New2009-30>[[#ニュートン (別2009)|ニュートン (別2009)、2章 太陽と地球、そして月、pp.&nbsp;30–31 太陽とは何か]]</ref>。

太陽は属している[[銀河系]]の中ではありふれた{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系|pp=9-10}}[[主系列星]]の一つで、[[スペクトル分類|スペクトル型]]はG2V（[[金色]]）である{{R|nao2006-2}}。推測年齢は約46億年で、中心部に存在する水素の50&nbsp;%程度を[[原子核融合|熱核融合]]で使用し、主系列星として存在できる期間の半分を経過しているものと考えられている{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.1太陽の概観|pp=10-11}}。なお、内部の状態については未解明な部分が多く、後述する「標準太陽モデル」によって求められているのが現状である。

また、太陽が太陽系の中心の恒星であることから、任意の[[惑星系]]の中心の恒星を比喩的に「太陽」と呼ぶこともある{{R|sorae060126}}。

== 概要と位置 ==
[[太陽半径|太陽の半径]]は約70[[10000|万]] [[キロメートル|km]]で直径約140万 kmとなり地球の直径の約109倍の大きさである。質量（[[太陽質量]]）は地球の約33.3万倍にほぼ等しい約{{val|1.989|e=30|ul=kg}}{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.1太陽の概観|pp=10-11}}であり、太陽系の全質量の99.86&nbsp;%を占める<ref>{{cite web|title=Sun: Facts & Figures|publisher=NASA|url=http://solarsystem.nasa.gov/planets/profile.cfm?Object=Sun&Display=Facts&System=Metric|accessdate=2018-06-17|archiveurl=https://web.archive.org/web/20080102034758/http://solarsystem.nasa.gov/planets/profile.cfm?Object=Sun&Display=Facts&System=Metric|archivedate=2 January 2008}}</ref>。平均密度{{R|nssdc}}は水の1.4倍であり、地球の5.5倍と比べ約1/4となる{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.1太陽の概観|pp=10-11}}。

太陽が属している[[銀河系]]では、その中心から太陽までの距離は約2万5千[[光年]]であり、[[オリオン腕]]に位置する{{Sfn|山崎|2007|loc=第4章 太陽系の広がりと宇宙の果て|pp=102-103}}。[[地球]]から太陽までの平均距離は約1億4960万&nbsp;km（約8[[光分]]19[[光秒]]）である。この平均距離は地球太陽間距離の時間平均と考えても、地球の[[軌道長半径]]と考えてもどちらでも差し支えない。なお、この平均距離のより正確な値は {{val|149597870700|u=m}}（誤差は 3&nbsp;m）で、これを1[[天文単位]] (au) と定義する<ref>{{cite web|url=ftp://tai.bipm.org/iers/conv2010/chapter1/tn36_c1.pdf|title=Table 1.1: IERS numerical standards 1 General definitions and numerical standards
|language=英語|accessdate=2012-06-24}}</ref>{{Sfn|山崎|2007|loc=第1章 太陽とは|pp=32-33}}<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.nao.ac.jp/kimiten/2006/8-tips.pdf|format=PDF|title=君が天文学者になる4日間 予習テキスト 第8章 知っておくべき事、知っておくと便利な事|page=52|publisher=大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 [[国立天文台]]|language=日本語|accessdate=2010-10-19|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120525011604/http://www.nao.ac.jp/kimiten/2006/8-tips.pdf|archivedate=2012-05-25}}</ref>。その後、2012年8月の[[国際天文学連合]] (IAU) の決議で 1&nbsp;au の値は誤差 ±3&nbsp;m を除いて正確に {{val|149597870700|u=m}} であると再定義された<ref>{{Cite web|url=http://www.iau.org/static/resolutions/IAU2012_English.pdf|title=第28回国際天文学連合総会 決議B2|accessdate=2013-06-30|archiveurl=https://web.archive.org/web/20130816112418/http://iau.org/static/resolutions/IAU2012_English.pdf|archivedate=2013-08-16}}</ref>。この距離を光が届くのに要する時間は8.3[[分]]であるので、8.3光分とも表せる。{{要出典範囲|太陽は銀河系内の軌道を一周するのに約2億2500万から2億5000万年ほどかかるとされており、それを太陽の公転軌道とするならば、太陽の自転軸はおよそ60度傾いている。公転運動ではこと座、ヘルクレス座の方向に向かって移動している。|date=2021年6月}}

太陽の数値を[[単位]]に用いるような場合、それらは太陽を表す記号☉をつけて表す{{Sfn|山崎|2007|loc=第1章 太陽とは|pp=32-33}}。例えば太陽質量ならばM<sub>☉</sub>、[[太陽光度]]ならばL<sub>☉</sub>で表示する<ref name=nao2006-8 />。時間の基準も、現在は[[原子時計]]で決まる1[[秒]]を基底にしているが、かつては地球の自転と公転、人間の視点からすると[[日の出]]や[[日の入り]]や[[季節]]の一巡を基準に「[[日]]」や「[[年]]」を決める[[太陽暦]]・[[太陰太陽暦]]が使われた{{Sfn|山崎|2007|loc=第1章 太陽とは|pp=32-33}}。

== 構造 ==
[[ファイル:Sun diagram.svg|thumb|left|太陽の構造{{Image key|list type=ordered|thumb size=wide|[[太陽核]]|[[放射層]]|[[対流層]]|[[光球]]|[[彩層]]|[[コロナ]]|[[太陽黒点]]|[[粒状斑]]|[[紅炎]]}}]]
太陽はほぼ完全な[[球体]]であり、その[[扁平率]]は0.01 %以下である。太陽には、[[地球型惑星]]や[[衛星]]などと異なり、はっきりした[[表面]]が存在しない{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=46-47}}。

太陽は、中心[[核 (天体)|核]]（[[太陽核]]）・[[放射層]]・[[対流層]]・[[光球]]・[[彩層]]・[[遷移層]]・[[コロナ]]からなる<ref name=New2009-32>[[#ニュートン (別2009)|ニュートン (別2009)、2章 太陽と地球、そして月、pp.&nbsp;32–33 太陽は超高温超高圧の核融合反応炉]]</ref>{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=36-37}}。[[可視光]]にて地球周辺から太陽を観察した場合の視野角と概ね一致するため、このうち光球を便宜上太陽の表面としている<ref name=New2009-30 />。また、それより内側を[[光学]]的に観測する手段がない{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}。太陽半径を太陽中心から光球までの距離として定義する。光球には周囲よりも温度の低い[[太陽黒点]]や、まわりの明るい部分であるプラージュと呼ばれる領域が存在することが多い<ref name=New2009-30 />。光球より上層の、光の透過性の高い部分を太陽大気と呼ぶ。プラズマ化した太陽大気の上層部は太陽重力による束縛を受けにくい。このため惑星間空間に漏れ出し[[海王星]]軌道まで及んでいる。これを[[太陽風]]と呼び、オーロラの原因ともなる<ref name=New2009-34>[[#ニュートン (別2009)|ニュートン (別2009)、2章 太陽と地球、そして月、pp.&nbsp;34–36 海王星の先まで届く太陽の風]]</ref>。

太陽は光球より内側が[[電磁波]]に対して不透明であるため、内部を電磁波によって直接見ることができない。太陽内部についての知識は、太陽の大きさ、質量、総輻射量、表面組成・表面振動（5分振動）などの観測データを基にした理論解析（[[日震学]]）によって得るしか方法がないのが現実である。理論解析においては、太陽内部の不透明度と熱核融合反応を[[量子力学]]により推定し、観測データによる制限を境界条件とした数値解析を行う。よって、太陽中心部の温度、[[密度]]などはこのような解析によって得られた数値であり、なおかつ推定値でもある。

=== 中心核 ===
{{main|太陽核}}
太陽の中心には半径10万キロメートルの核（中心核）があり<ref name=New2009-32 />、これは太陽半径の約2割に相当する。密度が156&nbsp;g/cm<sup>3</sup>（およそ[[水]]の156倍）であり、このため太陽全体の2&nbsp;%ほどの体積の中に約50&nbsp;%の質量が詰まった状態になっている{{Sfn|太陽観測|2010|loc=第1章 太陽の基礎知識、1-4 太陽の構造|pp=22-23}}。その環境は2500億[[気圧]]、温度が1500万&nbsp;[[ケルビン|K]]に達するため物質は[[固体]]や[[液体]]ではなく[[理想気体]]的な性質を持つ{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.1太陽の概観|pp=10-11}}、結合が比較的低い量子論的な[[フェルミ縮退|縮退]]した[[プラズマ]]（電離気体）状態にある{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=38-39}}。

太陽が発する光の[[エネルギー]]は、この中心核においてつくられる{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=42-43}}。ここでは熱核融合によって[[物質]]からエネルギーを取り出す[[原子核融合|熱核融合]]反応が起こり{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.1太陽の概観|pp=10-11}}、[[水素]]が[[ヘリウム]]に変換されている。1秒当たりでは約3.6{{e|38}} 個の[[陽子]]（水素原子核）がヘリウム原子核に変化しており、これによって1秒間に430万トンの[[質量]]が3.8{{e|26}} Jの[[エネルギー]] {{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.1太陽の概観|pp=10-11}}（[[トリニトロトルエン|TNT]]火薬換算で9.1{{e|16}} トンに相当する）に変換されている。このエネルギーの大部分は[[ガンマ線]]に変わり、一部が[[ニュートリノ]]に変わる。ガンマ線は周囲のプラズマと衝突・吸収・屈折・再放射などの相互作用を起こしながら次第に「穏やかな」電磁波に変換され、数十万年かけて太陽表面にまで達し、宇宙空間に放出される{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=42-43}}。一方、ニュートリノは物質との反応率が非常に低いため、太陽内部で物質と相互作用することなく宇宙空間に放出される{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=42-43}}{{Sfn|山崎|2007|pp=12-13}}<ref group="注">太陽内部では中心部にある核で生み出されたエネルギーが表面まで伝わるのに、数十万年から数百万年掛かると考えられている。プラズマ状態にある核では核融合反応によってニュートリノとガンマ線が生じている。ニュートリノは周囲の層を構成する物質と相互作用することはほとんどなく、そのまま宇宙空間に出て行く。核内部では生じたガンマ線が原子核に吸収され再び放射されることでジグザグに進むが、それは核の表面から放射層の最下層に達しても同様に原子核によって吸収と放射を繰り返しながらジグザグに進んで容易には外部へ伝わらない。核でエネルギーが生じてから放射層内部を進むのには数十万年から数百万年ほど掛かる。放射層表面に達したガンマ線は対流層の最底部を2百万度程度まで加熱する。対流層の表面は1万度程度であり、温度差によって対流しており、底部から表面まで約10日程度でエネルギーが運ばれる。対流層の外部の光球からは放射光や太陽風となって宇宙空間に出てゆく。</ref>。それ故、[[太陽ニュートリノ]]の観測は、現在の太陽中心部での熱核融合反応を知る有効な手段となっている。

=== 放射層 ===
[[ファイル:太陽内部の放射層と対流層.PNG|thumb|太陽内部の'''放射層'''と'''対流層'''<br />放射層は太陽半径の20&ndash;70&nbsp;%の所にあり、対流層は70&ndash;100&nbsp;%の所にある。]]
{{main|放射層}}
太陽半径の0.2倍から0.7倍まで、中心核を厚さ40万キロメートルで覆う<ref name=New2009-32 />層では、[[放射]]（[[輻射]]）による熱輸送を妨げる程には物質の不透明度が大きくない。したがって、この領域では[[対流]]は起こらず、輻射による熱輸送によって中心核で生じたエネルギーが外側へ運ばれている<ref name=New2009-32 />。放射層をエネルギーが通過するには長い時間がかかり、近年の研究では約17万年が必要とも言われる{{Sfn|太陽観測|2009|loc=第1章 太陽の基礎知識、1-4 太陽の構造|pp=22-23}}。

=== 対流層 ===
{{main|対流層}}
0.7太陽半径から1太陽半径まで、厚さにして20万キロメートルの層<ref name=New2009-32 />では、[[ベナール対流]]現象でエネルギーが外層へ伝わる{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=44-45}}。ここでは微量[[イオン (化学)|イオン]]が原因となって不透明度が増し、輻射によるエネルギー輸送よりも効率が高い対流による熱伝導を行う{{Sfn|秋岡|2008|loc=第8章 太陽ってどんな星? 8-3太陽エネルギーの生成と輸送|pp=190-193}}。

=== 光球 ===
[[File:NSF’s Inouye Solar Telescope First Light (cropped with scale) (NSO-DKIST-firstlight-scalebar-texas).jpg|thumb|太陽の表面はガスの対流により[[粒状斑]]になっている<ref>{{Cite web|url=https://sorae.info/newslink/20240505-sapod|title=太陽の表面。高解像度画像と動画【今日の宇宙画像】|accessdate=2024-05-07|publisher=sorae}}</ref>。]]
{{main|光球}}
光球とは、[[可視光]]を放出する、太陽の見かけの縁を形成する層である<ref name=New2009-30 />。光球より下の層では密度が急上昇するため[[電磁波]]に対して不透明になり{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}、上の層では[[太陽光]]は散乱されることなく宇宙空間を直進するためこのように見える。厚さ約300{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}&ndash;600&nbsp;km{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=46-47}}と薄い。

光球表面から放射される太陽光の[[スペクトル]]は約5800 [[ケルビン|K]]の[[黒体放射]]に近く{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}、これに太陽大気の物質による約600本もの[[吸収線]]（[[フラウンホーファー線]]）が多数乗っている{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=46-47}}。比較的温度が低いため[[水素]]は[[原子]]状態となり、これに電子が付着した負水素イオンになる。これが対流層からのエネルギーを吸収し、可視光を含む光の放射を行う{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=46-47}}。光球の粒子密度は約10<sup>23</sup> 個/m<sup>3</sup>である。これは地球大気の海面上での密度の約1&nbsp;%に相当する。光球よりも上の部分を総称して太陽大気と呼ぶ。太陽大気は[[電波]]から可視光線、ガンマ線に至る様々な波長の電磁波で観測可能である。

光球の表面には、太陽大気ガスの対流運動がもたらす湧き上がる渦がつくる[[粒状斑]]{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}・[[超粒状斑]]<ref>{{Cite web |url=http://www.nasa.gov/centers/goddard/news/topstory/2003/0102wave.html |title=THE SUN DOES THE WAVE |publisher=NASA |language=英語 |year=2003 |accessdate=2010-10-19 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20100311043704/http://www.nasa.gov/centers/goddard/news/topstory/2003/0102wave.html |archivedate=2010-03-11 }}</ref>や、しばしば[[黒点]]と呼ばれる暗い斑点状や[[白斑]]という明るい模様が観察できる。黒点部分の温度は約4000&nbsp;K、中心部分は約3200&nbsp;Kと相対的に低いために黒く見える。また、スペクトル解析からこの黒点部分には[[水]]分子が観測された<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.nao.ac.jp/nao_news/mails/000118.txt|title=天文ニュース(118) 太陽表面で水を検出|author=広報普及室|publisher=国立天文台|year=1997|language=日本語|accessdate=2010-10-19|archiveurl=https://web.archive.org/web/20111006191616/http://www.nao.ac.jp/nao_news/mails/000118.txt|archivedate=2011-10-06}}</ref>。

=== 彩層 ===
{{main|彩層}}
光球表面の上には厚さ約2000 kmの密度が薄く温度が約{{val|7000|-|10000|u=K}}のプラズマ大気層があり{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}、この層から来る光には様々な[[輝線]]や吸収線が見られる。この領域を[[彩層]]と呼ぶ。[[皆既日食]]の始まりと終わりには紅色の彩層を見ることができる{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}。この彩層ではさまざまな活発な太陽活動が観察できる<ref name=New2009-30 />。

=== コロナ ===
[[ファイル:Solar_eclipse_1999_4_NR.jpg|thumb|[[皆既日食]]では、光球が完全に隠れたときに、真珠色に輝く[[コロナ]]を肉眼でも見ることができる。]]
[[File:Moon transit of sun large.ogv|thumb|left|STEREOBの紫外線イメージングカメラのキャリブレーション中にキャプチャされた太陽の月の通過<ref>{{cite web |last=Phillips |first=T. |title=Stereo Eclipse |url=https://science.nasa.gov/headlines/y2007/12mar_stereoeclipse.htm |website=Science@NASA |publisher=NASA |date=2007 |accessdate=19 June 2008 |url-status=dead |archiveurl=https://web.archive.org/web/20080610082213/https://science.nasa.gov/headlines/y2007/12mar_stereoeclipse.htm |archivedate=10 June 2008 |df=}}</ref>]]
[[ファイル:171879main LimbFlareJan12 lg.jpg|thumb|2007年1月12日に人工衛星「ひので」がコロナ放出の瞬間を撮影した貴重な画像]]
{{Main|コロナ}}

彩層のさらに外側には[[コロナ]]と呼ばれる約200万 Kのプラズマ大気層があり{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}、太陽半径の10倍以上の距離まで広がっている。彩層とコロナの間には遷移層と呼ばれる薄い層があり、これを境界に温度や密度が急激に変化する{{R|Asai}}。[[物理学の未解決問題|コロナがなぜ太陽表面より温度が高いのかはわかっていない]]。

コロナからは太陽引力から逃れたプラズマの流れである{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}[[太陽風]]が出ており、太陽系と[[ヘリオポーズ|太陽圏]] (heliosphere) を満たしている。コロナの太陽表面に近い低層部分では、粒子の密度は 10<sup>11</sup> 個/m<sup>3</sup>程度である。[[自由電子]]が光球の光を散乱しており、輝度は光球の1/100万と低いため普段は見えないが、皆既日食の際に白いリング状（またはアーチ状とも表現できる<ref name=New2009-34 />）に輝くコロナが観察できる{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}。

かつてコロナのスペクトル線を分析した際に、既知の元素に見られないスペクトルが発見されたため、地上に存在しない元素「コロニウム」が提唱されたことがある<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/hosizora/astron/astron7/astron7_P2-5.pdf|format=PDF|title=7月22日の日食が世紀の日食と云われるわけ|author=黒河宏企|publisher=[[京都大学]]大学院理学研究科付属天文台 NPO法人花山星空ネットワーク|language=日本語|accessdate=2010-10-19|archiveurl=https://web.archive.org/web/20121019112900/http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/hosizora/astron/astron7/astron7_P2-5.pdf|archivedate=2012-10-19}}</ref>。しかしこれはコロナの温度がもっと低温と考えられていたためであり、このスペクトルは一般的な元素が高階電離状態で発するものであった。例えば最も強い波長530.3&nbsp;nmの緑線は13階電離（軌道電子を13個失った）鉄元素と判明した{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}。

コロナの領域では、X線が観測されない領域が発生することがある。これは「コロナホール」と呼ばれ、磁力線が宇宙空間に向けて開いている箇所であり、ここはコロナガスが希薄で太陽風を発生させる原因のひとつである<ref name=Mext>{{Cite web|和書|url=http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2009/05/21/20051202_02c_1.pdf|format=PDF|title=用語解説|publisher=[[文部科学省]]|language=日本語|accessdate=2010-10-19|archiveurl=https://web.archive.org/web/20130128040808/http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2009/05/21/20051202_02c_1.pdf|archivedate=2013-01-28}}</ref>。

== 太陽活動 ==
=== エネルギー源 ===
{{Main|陽子-陽子連鎖反応}}
光輝く太陽はどのようなエネルギーを源にしているかという問題は、19世紀頃までに続々と発見された[[化学反応]]ではとうてい解明できず、大きな疑問となっていた。当初は[[重力ポテンシャル]]エネルギーという想像もあったが、19世紀末に[[放射能]]が発見されると[[原子核反応]]が候補となった。そして1938年に[[核融合反応]]が発見されると、これが太陽活動のエネルギー源と考えられるようになった{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.4太陽のエネルギー源|pp=20-21}}。

==== 標準太陽モデル ====
太陽の内部構造は直接観測できない。そのため、1950年代&ndash;1960年代にかけてこれを理論的に構築する試みが行われた。これにより、熱核融合反応にて水素をヘリウムへ変換することでエネルギーを生み出す太陽46億年の歴史過程を求め、熱伝導や重力バランスを説明する<ref name=New2009-32 />現在の構造を試算した結果が「標準太陽モデル」と呼ばれる。このモデルによって、太陽中心温度や密度が計算された{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.5太陽ニュートリノの謎|pp=21-33}}。

=== 差動回転 ===
[[ファイル:Sun - August 1, 2010.jpg|thumb|この偽色彩法の紫外線のイメージでは、太陽は星の表面から立ち上がって、磁界に続く[[プラズマ]]のC3クラス太陽フレア (上部の左上の白い部分) 、太陽の津波 (波のような構造、上部の右) および多数のフィラメントを示している。]]
太陽内部の物質は極端な高温のために全てプラズマの状態にあるとされる。このように剛体でないため、太陽は赤道付近の方が高緯度の領域よりも速く自転し、周期は赤道部分で約25日（地球上の観測では地球公転運動の影響から27日となる<ref>{{Cite web|和書|url=https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20180511_01/|title=2018年5月11日ニュース「太陽の自転が日本の雷に影響を与えている」 |publisher=SciencePortal|date=2018-05-11|accessdate=2019-12-18}}</ref>）、極近くでは約30日である{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}。この太陽の赤道加速型{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}「[[差動回転]]」（または「微分回転」）のために、太陽の[[磁力線]]は時間とともにねじれていくことになる。ねじれて変形した磁力線はやがて[[磁場]]のループを作って太陽表面から外へ飛び出して、[[太陽黒点]]や[[紅炎]]（プロミネンス）を作ったり、[[太陽フレア]]と呼ばれる爆発現象を引き起こしたりする。この天体現象については地球からの観察に限って言うと、日食の間であれば比較的観察しやすい条件下にある。

=== 太陽磁場と周期 ===
==== 太陽磁場 ====
[[ファイル:Heliospheric-current-sheet edit.jpg|thumb|[[太陽圏電流シート]]は惑星軌道を越えて広がり、らせん状に展開する。このもようは、しばしばバレリーナのスカートに例えられる<ref name=Machida />。]]
{{main|太陽圏電流シート}}
太陽は固有磁場を持っているが、その様相は地球磁場と大きく異なる。磁力線は太陽風によって放射状に広がり、しかも自転の影響を受けてらせん状に展開する。宇宙空間の一般磁場は1ガウスに満たないが、黒点部分では数千ガウスと強さもまちまちである{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=50-51}}。太陽付近の強い磁場がプラズマを拘束する際にX線が生じる<ref name=ota>{{Cite web|和書|url=http://gwave.ice.uec.ac.jp/lecture/rindoku/ohta.pdf|format=PDF|title=2003年5月12日 福田研輪講資料 太陽|author=太田善久|publisher=[[電気通信大学]]情報理工学研究科情報・通信工学専攻田口研究室|language=日本語|year=2003|accessdate=2010-10-19|archiveurl=https://web.archive.org/web/20050505231424/http://gwave.ice.uec.ac.jp/lecture/rindoku/ohta.pdf|archivedate=2005-05-05|url-status=dead|url-status-date=2019-08}}</ref>。

このような磁場は地球同様に[[ダイナモ理論|ダイナモ効果]]によると考えられるが、差動回転の影響で単純な双極磁場とならず緯度によって差が生まれて、やがて水平方向のトロイダル磁場を作る。しかし磁力線は反発し合うために浮き上がりやループなどが生じ、黒点を生む原因となる。ここに[[コリオリの力]]が影響すると、磁力線の繋ぎ変えやねじれができ水平方向の電流（トロイダル電流）が誘起され、磁場はNS極が逆転した緯度方向のポロイダル磁場となり、上下逆の双極磁場に戻る。この変動は11年を周期に起こり、これは[[太陽活動周期|太陽周期]]と呼ばれる{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=50-51}}。

==== 周期  ====
{{main|太陽活動周期}}
[[File:Sunspot-number.png|left|thumb|upright=1.75|過去250年間の黒点数調査を描いた件数グラフ。11年周期で増減している。]]
太陽黒点は太陽周期で増減する。これは黒点の数で観測され、多くなれば活発な[[太陽極大期|極大期]]へ向かう{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.3太陽の活動現象 |pp=16-20}}。このサイクルは古い磁場が一方の極から引き剥がされてもう一方の極まで達する周期に対応しており、1周期ごとに太陽磁場は反転する。太陽活動の周期には1755年から始まった周期を[[第1太陽周期|第1周期]]とする[[太陽活動周期リスト|通し番号]]が付けられており、2008年1月から第24周期に入っている。この他、[[マウンダー極小期]]のようなさらに長い周期での変化もある。なお、11年周期は磁場極性変動が片方（例えば北から南）へ動く期間であり、一周する期間で考えれば22年周期とも言える{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.3太陽の活動現象 |pp=16-20}}。

この周期は、太陽磁場・差動回転・対流の3つが対流層で相互作用を起こした結果という説明が1950年代に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]のユージン・パーカーが提唱した「[[太陽ダイナモ|ダイナモ]]機構」で行われた。ただし太陽周期を正確に説明するダイナモモデルは完成しておらず、これには対流層での差動回転の様子を解明しなければならない{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.3太陽の活動現象 |pp=16-20}}。

=== 表面現象 ===
[[File:Giant_prominence_on_the_sun_erupted.jpg|thumb|SDOが捕らえたように、2012年8月に[[紅炎]]が発生した。]]
[[ファイル:171879main LimbFlareJan12 lg.jpg|thumb|2007年1月12日に[[ひので (人工衛星)|ひので]]の可視光磁場望遠鏡によって撮影された。この太陽の画像は異なる磁気両極性の地域を繋いでいるプラズマの繊維状の性質を明らかにしている。]]
{{Main|太陽黒点|紅炎|太陽フレア}}
太陽表面には、数時間から数ヶ月にかけて現れては消えるしみのような[[太陽黒点]]などさまざまな現象が生じる。また[[爆発]]現象である[[太陽フレア]]や[[紅炎]]（プロミネンス）、CME（コロナ質量放出）なども観察できる{{R|ota}}。これらを発生させる原因は太陽磁場の磁力線管である。黒点は磁力線管が浮き上がり{{R|Asai}}光球面と交わる部分に2つが対になって生じ{{Sfn|秋岡|loc=第8章 太陽ってどんな星？|pp=197-201}}、太陽エネルギー放出を阻害するためにその領域の温度は相対的に低くなる。

==== 太陽フレア ====
太陽フレアは黒点上のコロナ部分周辺で数分から数十分発生する強力な爆発現象で、高さ1&ndash;10万キロメートルのフレアリボンという明るい帯状の光と強いX線<ref name=Mext />を放ちながら、10{{e|22}}&ndash;10{{e|25}}ジュールの高エネルギー粒子が宇宙空間に放たれる{{R|Asai|ota}}。紅炎は黒点形成に関わる磁力線管に蓄積された2000&ndash;3000&nbsp;Kの高温プラズマに耐えられず、付け根部分が破壊する現象で、これも高エネルギー粒子の放出が伴う{{R|ota}}。

==== コロナ質量放出（コロナガス放出、Coronal mass ejection, CME） ====
コロナ内でもコロナ質量放出（コロナガス放出、Coronal mass ejection, CME）という現象がある。これはコロナ下層から湧き上がる電離高温ガスの塊であり、質量{{val|e=12|u=kg}}程度、速度{{val|10|-|1000|u=km/s}}、エネルギーは{{val|e=26|u=J}}程度{{Sfn|秋岡|loc=第8章 太陽ってどんな星？|pp=197-201}}にもなる。かつては太陽フレア発生による副次作用と思われていたが、観測の結果CMEがフレアよりも先に起こることもあると判明しており<ref>{{Cite web|和書|url=http://mis.edu.yamaguchi-u.ac.jp/kaisetu/bgt2004/bgt-03.pdf|format=PDF|title=3.太陽の活動現象|publisher=[[山口大学]]教育学部数理情報コース|language=日本語|accessdate=2010-10-19}}{{リンク切れ|date=2019年8月 |bot=InternetArchiveBot }}</ref>、CME発生の根本原因は解明されていない<ref name=Mext />{{Sfn|秋岡|loc=第8章 太陽ってどんな星？|pp=197-201}}。

=== 太陽風 ===
{{Main|太陽風}}
コロナ内部でプラズマのガス[[圧力]]が高まり、太陽の引力を超える状態になると宇宙空間へ吹き出す現象が起こる。これは[[太陽風]]と呼ばれ、1951年に[[ドイツ]]のルートヴィヒ・ビーアマンが[[彗星]]の尾が太陽光の圧力以外に何かしらの力を受けていることから予測し、1962年に[[マリナー2号]]の観測で実証された<ref name=Machida>{{Cite web|和書|url=http://www-step.kugi.kyoto-u.ac.jp/~machida/Solarwind.html|title=太陽風 (Solar Wind)|author=町田忍|publisher=[[京都大学]]大学院理学研究科 地球惑星科学専攻 太陽惑星系電磁気学講座|language=日本語|accessdate=2010-10-19|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110817034257/http://www-step.kugi.kyoto-u.ac.jp/~machida/Solarwind.html|archivedate=2011-08-17}}</ref>。

太陽風の密度は粒子が1 cm<sup>2</sup>当たり5個程度、通常速度は300&ndash;500 km/s<ref name=Nankyoku>{{Cite web|和書|url=http://polaris.nipr.ac.jp/~academy/jiten/aurora/07.html|title=南極豆事典 Lesson.4オーロラ 太陽風と磁気圏|publisher=国立極地研究所|language=日本語|accessdate=2010-10-19|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110531164516/http://polaris.nipr.ac.jp/~academy/jiten/aurora/07.html|archivedate=2011-05-31}}</ref>。成分は主に[[水素イオン|プロトン]] (H<sup>+</sup>)次いで[[アルファ粒子]] (He<sup>++</sup>)などイオン<ref name=Machida />と電子などの荷電粒子である<ref name=Nankyoku />。これが太陽から磁力線に沿ったスパイラル状に吹き出している<ref name=u-tokyo>{{Cite web|和書|url=http://www-space.eps.s.u-tokyo.ac.jp/group/stp/kyouyou_kougi/2nd/2nd_lecture.html|title=太陽風|author=向井利典|publisher=[[東京大学]]地球惑星科学専攻宇宙惑星科学講座|language=日本語|accessdate=2010-10-19|archiveurl=https://web.archive.org/web/20140318223657/http://www-space.eps.s.u-tokyo.ac.jp/group/stp/kyouyou_kougi/2nd/2nd_lecture.html|archivedate=2014-03-18|url-status=dead|url-status-date=2019-08}}</ref>。温度は地球付近でも10万度を維持している<ref name=Nagoya1>{{Cite web|和書|url=http://stesun5.stelab.nagoya-u.ac.jp/study/sub3.htm|title=太陽風|publisher=[[名古屋大学]]太陽地球環境研究所|language=日本語|accessdate=2010-10-19|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120112102904/http://stesun5.stelab.nagoya-u.ac.jp/study/sub3.htm|archivedate=2012-01-12|url-status=dead|url-status-date=2019-08}}</ref>。この太陽風は110&ndash;160&nbsp;[[天文単位|au]]まで届き、[[銀河系]]の恒星間ガスと衝突するところまで到達する。この衝突面は[[ヘリオポーズ]]と呼ばれ、これより内側が[[太陽圏]]（ヘリオスフェア）と定義される<ref>{{Cite web|和書|url=http://shnet1.stelab.nagoya-u.ac.jp/ste-www1/naze/planet/pla45.html|title=ヘリオポーズって何?|publisher=[[名古屋大学]]太陽地球環境研究所, りくべつ宇宙地球科学館, [[豊川市]]ジオスペース館|language=日本語|accessdate=2010-10-19|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120114170519/http://shnet1.stelab.nagoya-u.ac.jp/ste-www1/naze/planet/pla45.html|archivedate=2012-01-14|url-status=dead|url-status-date=2019-08}}</ref>。この太陽風が地球磁場の南北極域に達し、[[オーロラ (代表的なトピック)|オーロラ]]が発生する<ref name=Nankyoku />。

太陽風は発生元によって特徴があり、太陽フレアから生じる場合は1000 km/sの高速<ref name=Mext />・高密度となる。CMEからは高密度だが速度は中程度となり、コロナホールからは高速だが密度が低い太陽風が発生する<ref name=Machida />。

== 太陽の謎 ==
=== 太陽の連星 ===
太陽近傍の恒星のほとんどに同時に生まれた恒星が存在し[[連星]]を形成するが<ref>{{Cite web |url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/070800258/ |title=【解説】発見！3つの太陽をもつ奇妙な新惑星 |access-date=2024-12-27 |website=natgeo.nikkeibp.co.jp |language=ja}}</ref>、太陽とペアとなる恒星が見つかっておらず仮説上の連星として[[ネメシス (仮説上の恒星)|ネメシス]]と名付けられている<ref>{{Cite web |url=https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/101560 |title=周期的な大量絶滅の原因「太陽の双子ネメシス」の存在を示す新たな証拠 |access-date=2024-12-27 |date=2021-12-19 |website=ナゾロジー |language=ja}}</ref>。この連星が失われた理由が謎となっている<ref>{{Cite web |url=https://www.bbc.com/future/article/20241223-the-search-for-the-suns-missing-twin |title=Our Sun may once have had a twin. What happened to this stellar sibling? |access-date=2024-12-27 |website=www.bbc.com |language=en-GB}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20110916/284250/?P=3 |title=第3回 かつて太陽は連星だった!? |access-date=2024-12-27 |website=ナショナルジオグラフィック（natgeo.nikkeibp.co.jp） |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20200826_01/index.html |title=太陽はもともと連星だった？ 米グループが可能性示す |access-date=2024-12-27 |website=Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」 |language=ja-jp}}</ref>。

=== 三態においての分類 ===
これは太陽だけでなく他の恒星にも言えるが、太陽には[[固体]]からなる[[地球型惑星]]や衛星、[[液体]]が大半を占める[[木星型惑星]]や[[天王星型惑星]]などと異なり、はっきりした表面が存在しない。かつては、太陽を始めとする[[主系列星]]や未来の太陽の姿とされる[[赤色巨星]]は、[[気体]]で構成される、という説が有力であった。しかしながら、内部の重力の影響で、表面は気体だが、内部は液体ならびに固体で構成されている、とする説もある（前述の通り、核ではかなりの高温高圧になっているため、密度も非常に高くなっている）。21世紀初頭では、太陽の内部は[[プラズマ]]や[[超臨界流体]]といった、固体でも液体でも気体でもない第四の状態となっている、とする説が最も有力となっている（中でも、既述したプラズマ説が最も有力）。このため、太陽の内部構造が[[三態]]のいずれかに該当するかについては結論は出ておらず、いまだにわかっていない。

=== コロナ加熱問題 ===
太陽の表面温度は約6000 &deg;Cであるのに対し、太陽を取り囲むコロナは約200万 &deg;Cという超高温であることが分かっているが、それをもたらす要因は太陽最大の謎とされた。1960年代までは太陽の対流運動で生じた[[音波]]が[[衝撃波]]へ成長し、これが熱エネルギーへ変換されてコロナを加熱するという「音波加熱説」が主流の考えだった{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}。

1970年代から[[スカイラブ計画]]を通じてコロナのX線観測が行われたところ、太陽の磁場がつくるループに影響を受けていることが判明し、ここから太陽磁場の影響による加熱が提唱された。しかし他にも磁場に伴うアルベーン波説や、フレアによる加熱説などもあり、結論には至っていない{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}。

=== 太陽ニュートリノ問題 ===
太陽内部の核融合反応に伴って、太陽からは[[ニュートリノ]]が常時放出されている。これは可視光で調査不能な太陽内部を直接知る手段として注目された。標準太陽モデルで求められた陽子-陽子連鎖反応による太陽ニュートリノは、以下の4種類が想定された{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.5太陽ニュートリノの謎|pp=21-33}}。
<div style="line-height: 3;">
:<math>(1 \text{-} 1) \quad \mathrm{p + p} \to \mathrm{D + e^+} + \nu_{\mathrm{e}}</math>
:<math>(1 \text{-} 2)  \quad \mathrm{p + e^- + p} \to \mathrm{D} + \nu_{\mathrm{e}}</math>
:<math>(6) \ \ \quad {}^7 \mathrm{Be} + \mathrm{e^-} \to {}^7 \mathrm{Li} + \nu_{\mathrm{e}}</math>
:<math>(9) \ \ \quad {}^8 \mathrm{B} \to {}^8 \mathrm{Be}^* + \mathrm{e^+} + \nu_{\mathrm{e}}</math>
</div>
これらの名称およびエネルギー値は上から、p-pニュートリノ (0.42MeV)、pepニュートリノ (1.44MeV)、ベリリウム・ニュートリノ（0.38MeVおよび0.86MeV）、ボロン・ニュートリノ (6.7MeV) である{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.5太陽ニュートリノの謎|pp=21-33}}。

太陽ニュートリノ観測は1960年代にアメリカ、1985年から日本でそれぞれ行われたが、その結果は、恒星内部の核反応の理論から予測される値の半分程度しかないことが分かった。その後行われた高精度が期待される手法による観測でも理論値よりも測定値が低い結果が再現された。複数の観測法で同じ傾向の結果が出たために、方法的欠陥とは考えられなくなった{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.5太陽ニュートリノの謎|pp=21-33}}。

1990年代に複数の仮説が提案された。ひとつは[[素粒子物理学]]における[[ニュートリノ振動]]が影響するというものであった。ニュートリノが質量を持つと仮定すると、その[[フレーバー (素粒子)|フレーバー]]（電子型、ミュー型、タウ型）が宇宙空間を飛来する間に変化する可能性があり、過去の電子型ニュートリノのみを測定する手法では太陽ニュートリノが減衰したように見えるというものだった。他にも標準太陽モデルにおけるニュートリノ発生比率への疑問も呈され、過去の実験では高エネルギーのボロン・ニュートリノを捉えやすい性質があったため、仮に太陽中心の温度が想定よりも低いとするとp-pIII反応の比率は低くなり、結果として太陽ニュートリノの観測値が低くなるという考えが提案された。他にも「太陽では核反応が起こっていない」という極端な説が飛び出る中、新たな観測方法が求められた{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.5太陽ニュートリノの謎|pp=21-33}}。

21世紀に入り稼動した[[スーパーカミオカンデ]]は、同時期に開始された[[カナダ]]の観測法よりも比較的電子型以外のニュートリノも捉えることが可能だった。太陽ニュートリノを観測した結果は、理論値よりも低いながらもスーパーカミオカンデの実測値はカナダのそれを上回り、太陽ニュートリノ問題はフレーバーの変化という説で決着した。スーパーカミオカンデは別な観測でニュートリノ振動を実証し、これを受けて「太陽ニュートリノ問題」提唱者[[レイモンド・デイビス]]とカミオカンデ実験を主導した[[小柴昌俊]]は2002年度の[[ノーベル賞]]を授与された{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.5太陽ニュートリノの謎|pp=21-33}}。

=== 太陽の環 ===
[[1966年]]11月12日に観測された日食の際、アメリカの科学者が赤外線観測によって、太陽から約300万キロメートル離れた地点で数[[マイクロメートル|µm]]程度の微細な塵がリング状に広がっていることを発見した。次いで[[1993年]]11月13日に[[インドネシア]]において観測された日食の際に[[京都大学]]の研究チームが[[環 (天体)|環]]を確認したが、それ以来、環は見えなくなっており、今後の研究が待たれている<ref>[[読売新聞]]2009年7月18日夕刊記事、参照[https://web.archive.org/web/20120112191208/http://www2.sakai.ed.jp/weblog/index.php?id=sakai107&type=2&category_id=641&date=20091101&optiondate=200907 部分日食…少しは体感できた？]。他[https://web.archive.org/web/20210120215356/https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0273117702001898 Dust particles dynamics in the solar ring][https://web.archive.org/web/20160429011931/http://link.springer.com/article/10.1007%2FBF00658972 An explanation for time dependent variability of the solar dust ring]</ref>。

== 太陽の歴史と未来 ==
{{main|恒星進化論|太陽系の形成と進化}}

=== 形成 ===<!--英語版'Formation'、フランス語版'Formation'から-->

太陽は過去の[[超新星]]の残骸である[[星間物質]]から作られた[[星の種族|種族Ⅰの星]]であり<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/~nishio/KOUGI/InSP2003-7Resume.pdf|format=PDF|title=宇宙科学入門第7回資料 恒星の誕生と進化|author=西尾正則|publisher=[[鹿児島大学]]理学部|language=日本語|accessdate=2010-10-19|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110922182228/http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/~nishio/KOUGI/InSP2003-7Resume.pdf|archivedate=2011-09-22|url-status=dead|url-status-date=2019-08}}</ref>、太陽は[[超新星爆発]]で四方八方に散らばった星間物質が何らかの影響によってふたたび集まって形成されたと考えられている。この根拠は、主に質量の大きな高温の星の内部で[[元素合成]]によって作られる[[鉄]]や[[金]]、[[ウラン]]といった[[重元素]]が[[太陽系]]に多く存在していることにある<ref name=Newton2009-134>[[#ニュートン (別2009)|ニュートン (別2009)、6章 太陽系のなりたち、p134 私たちの体は星の死からつくりだされた?]]</ref>。このとき同じ星雲からは1000から2000個程度の星が生まれ星団を形成したが、重力的な束縛がない[[散開星団]]は45億年の間に散逸したと考えられている。[[HD 162826]] や [[HD 186302]] はこのときに同じ星雲から生まれた「太陽の兄弟星 (solar sibling) 」とされている{{R|RamírezBajkova2014}}{{R|Adibekyande Laverny2018}}。

=== 進化 ===<!--フランス語版'Évolution'から-->

==== 主系列 ====<!--英語版'Main sequence'から-->

太陽の中心核では水素原子4個がヘリウム原子1個に変換される熱核融合が起きるが、この反応で圧力がわずかに下がり、それを補うために中心部は収縮し、温度が上がる。その結果核融合反応の効率が上昇し、明るさを増していく。45億年前（太陽誕生から1億年後）に主系列星の段階に入った太陽は、現在までに30&nbsp;%ほど明るさを増してきたとされている<ref>[[#ニュートン (別2009)|ニュートン (別2009)、6章 太陽系のなりたち、pp.&nbsp;130–131 太陽系は現在の秩序ある姿となった]]</ref><ref group="注">[[地球史]]において太古の[[海洋]]の存在を示す地質学的な証拠と相容れないことから「[[暗い太陽のパラドックス]]」と呼ばれる。[http://home.hiroshima-u.ac.jp/yhiraya/er/ES_E_T1.html 田近（1998）『地球進化論』315-320pによる] {{Wayback|url=http://home.hiroshima-u.ac.jp/yhiraya/er/ES_E_T1.html |date=20160630105422 }}[[広島大学]]地球資源論研究室のまとめ、[http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/html/kyo/Rika-B/htmls/faint_young_sun/index.html 岐阜大学教育学部理科教育講座（地学）Web教材 高等学校理科総合B > 暗い初期太陽のパラドックス] {{Wayback|url=http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/html/kyo/Rika-B/htmls/faint_young_sun/index.html |date=20150928141503 }}、及び[[カール・セーガン]]らの原著、{{cite journal | author=Sagan, C.; Mullen, G. | date=1972 | url=http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/177/4043/52?ck=nck | title=Earth and Mars: Evolution of Atmospheres and Surface Temperatures | pmid=17756316 | journal=Science | volume=177 | issue=4043 | pages=52–56 | doi=10.1126/science.177.4043.52 | bibcode=1972Sci...177...52S | accessdate=2015年9月27日 | archiveurl=https://web.archive.org/web/20100809113551/http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/177/4043/52?ck=nck | archivedate=2010年8月9日 | deadurl=no  |issn=0036-8075 }}（[http://courses.washington.edu/bangblue/Sagan-Faint_Young_Sun_Paradox-Sci72.pdf ワシントン大学のサイト上の全文PDF] {{Wayback|url=http://courses.washington.edu/bangblue/Sagan-Faint_Young_Sun_Paradox-Sci72.pdf |date=20151123053527 }}）を参照のこと。</ref> 。今後も太陽は光度を増し続け、主系列段階の末期には現在の2倍ほどの明るさになると予想されている。

==== 中心核の水素の消耗後 ====<!--英語版'After core hydrogen exhaustion'から-->
[[ファイル:Red Giant Earth.jpg|thumb|赤色巨星となって地球の公転軌道近くにまで表層が膨張した太陽の想像図]]
太陽は超新星爆発を起こすのに十分なほど質量が大きくない。20世紀末&ndash;21世紀初頭の研究では太陽の主系列段階は約109億年続くとされており、63億年後<ref name=Newton2009-140>[[#ニュートン (別2009)|ニュートン (別2009)、7章 太陽系の最後、pp.&nbsp;140–141 太陽は超巨大な赤い星に変化するという]]</ref>には中心核で燃料となる水素が使い果たされ、中心核ではなくその周囲で水素の核融合が始まるとされる。その結果、重力により収縮しようとする力と核融合反応により膨張しようとする力の均衡が崩れ、太陽は膨張を開始して[[赤色巨星]]の段階に入る{{Sfn|山崎|2007|loc=第7章 太陽と宇宙の未来|pp=148-149}}。外層は現在の11倍から170倍程度にまで<ref name=Newton2009-140 />膨張する一方、核融合反応の起きていない中心核は収縮を続ける。この時点で[[水星]]と[[金星]]は太陽に飲み込まれ{{Sfn|山崎|2007|loc=第7章 太陽と宇宙の未来|pp=148-149}}、高温のために融解し蒸発するだろうと予想されている。

76億年後には<ref name=Newton2009-140 />中心核の温度は約3億Kにまで上昇し、[[ヘリウムフラッシュ|ヘリウムの燃焼]]が始まる<ref name=Newton2009-140 />。すると太陽は主系列時代のような力の均衡を取り戻し、現在の11&ndash;19倍程度にまで一旦小さくなる<ref name=Newton2009-140 />。中心核では水素とヘリウムが2層構造で核融合反応を始める結果、主系列段階よりも多くの水素とヘリウムが消費されるようになる。この安定した時期はおよそ1億年程度続くとされるが、主系列期の109億年に比べれば1パーセントにも満たない<ref name=Newton2009-140 />。やがて中心核がヘリウムの燃えかすである[[炭素]]や[[酸素]]で満たされると、水素とヘリウムの2層燃焼が外層部へと移動し、太陽は再び膨張を開始する<ref name=Newton2009-140 />。最終的に太陽は現在の200倍から800倍にまで巨大化し<ref name=Newton2009-140 />、膨張した外層は現在の[[地球]]軌道近くにまで達すると考えられる<ref name=Newton2009-142>[[#ニュートン (別2009)|ニュートン (別2009)、7章 太陽系の最後、pp.&nbsp;142–143 太陽が膨らむと地球はどうなる?]]</ref>。このため、かつては地球も太陽に飲み込まれるか蒸発してしまうと予測されていたが、20世紀末&ndash;21世紀初頭の研究では赤色巨星段階の初期に起こる質量放出によって重力が弱まり{{Sfn|太陽観測|2009|loc=第1章 太陽の基礎知識|pp=20-21}}、惑星の公転軌道が外側に移動するため地球が太陽に飲み込まれることはないだろうとされている{{Sfn|山崎|2007|loc=第7章 太陽と宇宙の未来|pp=148-149}}<ref name=Newton2009-142 />。ただし、太陽がどのように膨張し地球がどのような影響を与えるのか正確に予測するのは困難とされる場合もある<ref>ニュートン2016年4月号 p.&nbsp;134</ref>。

赤色巨星の段階に続いて太陽は[[脈動変光星]]へと進化し、これによって外層の物質が四方八方へと放出されて[[惑星状星雲]]を作り、10&ndash;50万年にわたってガスを放出する<ref>[[#ニュートン (別2009)|ニュートン (別2009)、7章 太陽系の最後、pp.&nbsp;144–145 太陽の外側がはがれてなくなる?]]</ref>。その後、太陽は[[白色矮星]]となり、何十億年にもわたってゆっくりと冷えていき{{Sfn|山崎|2007|loc=第7章 太陽と宇宙の未来|pp=148-149}}、123億年後には収縮も止まる<ref>[[#ニュートン (別2009)|ニュートン (別2009)、7章 太陽系の最後、pp.&nbsp;146–147 太陽の最後の姿を想像してみると…]]</ref>。この進化モデルは質量の小さな恒星の典型的な一生であり、恒星としての太陽は非常にありふれた星であると言える。

== 人類の太陽認識と観測 ==
=== 神話信仰 ===
[[File:Origin of the Cave Door Dance (Amaterasu) by Shunsai Toshimasa 1889.jpg|thumb|[[日本神話]]における[[太陽神]]・[[天照大神]]]]
{{main|太陽神|太陽崇拝}}
太古の時代から、太陽を人格として捉えた[[太陽神]]は世界の多くの[[神話]]・[[伝承]]などで最高神などとして描かれることが多く、[[太陽崇拝]]の対象であることも多い。その性質も、昼夜を分け世界を統治する男性神でもあれば、[[植物]]を育て恵みを与える女性神として考えられることもあった{{Sfn|山崎|2007|loc=第1章 太陽とは|pp=10-11}}。[[月]]とともに普遍的な太陽神についての誕生や成立に関する説話は世界各地に伝記および伝承などの形で残されている<ref>{{Cite book|和書|editor1-first=|editor1-last=大林太良大林太良|editor1-link=大林太良|editor2-first=清司|editor2-last=伊藤|editor2-link=伊藤清司|editor3-first=敦彦|editor3-last=吉田|editor4-first=一男|editor4-last=松村|year=2005|title=世界神話事典|page=297|publisher=[[角川書店]]|isbn=4-04-703375-8|ref=世界神話事典}}</ref>。

=== 古代の観測 ===
[[ファイル:Anaxagoras Lebiedzki Rahl.jpg|thumb|アナクサゴラス]]
太陽を[[天文学]]的に観測した初期の例は、[[古代ギリシア]]の[[アナクサゴラス]]（紀元前500年頃 – 紀元前428年頃）が800キロメートル離れたシエネ（[[アスワン]]）と[[アレキサンドリア]]で同時刻の太陽視差を測定し、三角法で距離と大きさを求めた。これは、地球は平面という前提でなされたもので、距離を6400キロメートル、直径を56キロメートルと算出し「太陽は[[ペロポネソス半島]]ほどの大きさ」と述べた。実際とはかけ離れた数字だが、当時の[[ギリシャ|ギリシア]]人はあまりの大きさに誰も信じなかったという{{Sfn|山崎|2007|loc=第1章 太陽とは|pp=14-15}}。

地球が球体という前提で距離を計算した[[アリスタルコス]]（紀元前310年&ndash;紀元前230年）が[[日食]]時に月と太陽の視差がほぼ同じという観察を根拠に[[三角関数]]を用いて月と太陽までの距離を計算した<ref name=gakushuin>{{Cite web|和書|url=http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~851051/maed/%90%94%8Aw%8Ej1.pdf|format=PDF|title=古代ギリシアの数学者たちの新しい姿|author=中村滋|publisher=[[学習院大学]]|language=日本語|accessdate=2010-10-19}}{{リンク切れ|date=2019年8月 |bot=InternetArchiveBot }}</ref>。さらに[[ヒッパルコス]]（紀元前160年&ndash;紀元前125年）が精度を高めた計算を行った{{Sfn|山崎|2007|loc=第1章 太陽とは|pp=14-15}}。

=== 宇宙の中心の座 ===
{{main|天動説|地動説}}
歴史に残る最初の[[地動説]]は、紀元前500年頃の[[フィロラオス]]だが、彼の唱える宇宙の中心は太陽ではなく仮想的な「火」だった。太陽中心の地動説は[[サモス島]]の[[アリスタルコス]]（紀元前310年&ndash;紀元前）が観測を元に唱えた{{Sfn|山崎|2007|loc=第1章 太陽とは|pp=16-17}}。

しかし、[[クラウディオス・プトレマイオス]]（83年頃&ndash;168年頃）が確立した[[天動説]]型太陽系モデルの体系化を成し遂げた{{Sfn|山崎|2007|loc=第1章 太陽とは|pp=18-19}}。これを含む古代ギリシア学問はアラビア世界を経て[[12世紀]]に[[ヨーロッパ]]が取り入れ、キリスト教的世界観に組み込まれた<ref>{{Cite book|和書|author=村上陽一郎|authorlink=村上陽一郎|year=1996|title=宇宙像の変遷|publisher=[[講談社]]|edition=第一刷|pages=97–98|isbn=4-06-159235-1}}</ref>。

中世ヨーロッパで[[地動説]]は、[[ニコラウス・コペルニクス]]（1473年&ndash;1543年）によって唱えられ、[[ガリレオ・ガリレイ]]（1564年&ndash;1642年）が[[望遠鏡]]を用いた天体観測を重ね、[[木星]]の[[衛星]]（[[ガリレオ衛星]]）軌道から地動説を提唱したが、二度の[[宗教裁判]]の末に敗れた{{Sfn|山崎|2007|loc=第1章 太陽とは|pp=20-21}}。しかし地動説は[[ヨハネス・ケプラー]]（1571年&ndash;1630年）が堅持し、[[アイザック・ニュートン]]（1642年&ndash;1727年）が[[万有引力]]の法則で理論的に説明したことで広く受け入れられるようになった{{Sfn|尾崎|2010|loc=第7章宇宙の中の人間|p=241}}。

=== 太陽観察 ===
太陽の観察は古代から行われ、皆既日食から彩層やコロナは観察されていたことが観察記録から判明している。ガリレオは黒点の観察を記録し{{Sfn|山崎|2007|loc=第1章 太陽とは|pp=20-21}}、1859年には[[リチャード・キャリントン]]が太陽フレアのスケッチを描いた{{R|Asai|Carrington1859}}。太陽光を[[プリズム]]で分析する観察はニュートンも行ったが、[[ヨゼフ・フォン・フラウンホーファー]]（1787年&ndash;1826年）が分光の中に黒い線を発見した{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=48-49}}。1850年代に、[[グスタフ・キルヒホフ]]（1824年 – 1887年）と[[ロベルト・ブンゼン]]（1811年&ndash;1899年）がこの黒線が特定の元素によって吸収された光の波長であることを突き止め、これによって太陽大気の元素成分が判明した<ref name=Issac>{{Cite book|和書|author1=アイザック・アシモフ|authorlink1=アイザック・アシモフ|translator=玉虫文一、竹内敬人|year=2010|title=化学の歴史|publisher=[[ちくま学芸文庫]]|edition=第一刷|chapter=第8章 周期表|pages=172–173, 179|isbn=978-4-480-09282-3}}</ref>。分光による輝線と元素の関連が判明した後の1868年に、[[ピエール・ジャンサン]]（1824年&ndash;1907年）が日食時の太陽光スペクトルを観察していた際に未知の元素を示す輝線が発見され、後にこれは太陽の[[ギリシア語]]にちなみ「[[ヘリウム]]」と名づけられた<ref name=Issac />。[[ゼーマン効果]]による黒点磁場は1908年に発見された{{Sfn|太陽観測|loc=第7章 太陽観測の変遷、7-1-1 太陽観測の概観|pp=118-120}}。

=== 太陽観測時の注意点 ===
[[ファイル:Solar Eclipse Observation - Kolkata 1220425.JPG|サムネイル|溶接用の[[保護面|遮光面]]で日食を観測する人。]]
[[ファイル:Crescent Shadows from tree on wall May 20 2012 Partial Solar Eclipse .theora.ogv|サムネイル|[[木漏れ日]]も太陽像を呈する<ref name="mext120418" />。]]
日光には[[可視光線]]の青色光、[[紫外線]]、[[赤外線]]が含まれるため、肉眼で直接太陽を観測すると[[日食網膜症]]を引き起こし、[[網膜]]の[[やけど]]や[[後遺症]]、[[失明]]の危険がある<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.solar2012.jp/hazard/eclipse_retinopathy.pdf |title=日食網膜症 eclipse retinopathy、日光網膜症 solar retinopathy 聖隷浜松病院眼科 尾花 明 |accessdate=2013-06-30 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20120528204930/http://www.solar2012.jp/hazard/eclipse_retinopathy.pdf |archivedate=2012-05-28 |url-status=dead|url-status-date=2019-08 }}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=http://www.astronomy2009.jp/ja/webproject/soecl/ng.html|title=世界天文年2009 日食観察ガイド|website=www.astronomy2009.jp|accessdate=2013-06-30|archiveurl=https://web.archive.org/web/20121023235605/http://www.astronomy2009.jp/ja/webproject/soecl/ng.html|archivedate=2012-10-23}}</ref>。観察には日食グラスや太陽観測専用の遮光フィルターなどの専用の器具を使用する（すすのついたガラスや黒い下敷き、カラーネガフィルムによる減光では不十分とされている）。太陽の位置を瞬間的に肉眼で確認してから、グラスやフィルターを目に当てる方法では、網膜のやけどによる影響が蓄積される（そのため、先にフィルターに目を当ててから、観測をはじめるように勧告されている）<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.solar2012.jp/nichigan_gankaikai_.pdf |title=財団法人 日本眼科学会 『日食観察で目を痛めないために』 |accessdate=2013-06-30 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20120523102420/http://www.solar2012.jp/nichigan_gankaikai_.pdf |archivedate=2012-05-23 |url-status=dead|url-status-date=2019-08 }}</ref>。

望遠鏡や双眼鏡を使用する場合には、太陽投射板に太陽像を投射する方法、対物レンズの前にフィルターを装着する方法の他<ref name="mext120418">日本天文協議会、日本眼科学会、日本眼科医会、2012 「[http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2012/03/27/1319109_1_1.pdf 別紙 2012年5月21日（月曜日） 日食を安全に観察するために] {{Wayback|url=http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2012/03/27/1319109_1_1.pdf |date=20160304211937 }}」『[http://www.mext.go.jp/a_menu/kaihatu/space/urishitsu/detail/1319960.htm 平成24年5月21日の日食の観察における幼児・児童・生徒の安全確保に係る注意事項について（平成24年4月18日文部科学省研究開発局参事官（宇宙航空政策担当）付事務連絡）] {{Wayback|url=http://www.mext.go.jp/a_menu/kaihatu/space/urishitsu/detail/1319960.htm |date=20120619232323 }}』2012年2月</ref>、（不適切な導入によって事故の危険があるが）接眼レンズに専用のサングラスを装着する方法や、サンプリズムで減光した後に接眼レンズに専用のサングラスを装着する方法もある<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.vixen.co.jp/cs/support9.htm|title=株式会社ビクセン サポート情報|accessdate=2013-06-30|archiveurl=https://web.archive.org/web/20130727155914/http://vixen.co.jp/cs/support9.htm|archivedate=2013-07-27|url-status=dead|url-status-date=2019-08}}</ref>。

上記のように適切な専用機器を使って正しい観測方法を行ったとしても、長時間の観測によって日食網膜症を引き起こすこともあり、1分観測するごとに2〜3分程度の休憩を取ることが最良かつ最適だとされており、市販されている日食グラスにもその旨の警告が記されている<ref name="mext120418" />。

太陽光は赤外線もかなり強力で、分厚い雲に覆われて肉眼では太陽が見えない場合でも、[[デジタルカメラ]]などでは雲越しに写る事が多い。黒点の[[太陽極大期|極大期]]には[[ピンホールカメラ]]で黒点観測ができる事もある。ピンホールカメラと同じ理屈で、日食時の木漏れ日は欠けた太陽の形になる。

=== 太陽望遠鏡 ===
{{main|太陽望遠鏡}}
光量が非常に多く、しかも観測目標が光球表面の見かけ上微細かつ変化が激しい現象である太陽観察には、特別な望遠鏡が開発された。一般的には、焦点距離が長く拡大率を高められ、収差を小さくするために[[F値]]が30以上のものに、分散性能が高い分光器が求められる。これらを満たす装置は大型になるため、太陽を追尾する部分・集光部分・分光部分が独立していることが必須となる{{Sfn|太陽観測|2009|loc=第7章 太陽観測の変遷、7-1-2 太陽望遠鏡の特徴|pp=118-120}}。

これらを満たすものとして、追尾部分は「シーロスタット式」や「[[ヘリオスタット]]式」、反真空望遠鏡では「タロット式」が採用される。太陽観測は日中であるため夜間より大気の揺らぎが大きく、[[シーイング]]向上を目指した設置場所や方法も工夫が必要となる。高地や、海や森林などで囲まれた場所がよく選ばれるが、初期には[[太陽塔望遠鏡]]のような構造物の上に設置された。太陽観測用では、1998年に[[アメリカ国立光学天文台|サクラメントピーク天文台]]で初めて設置された[[補償光学]]も、シーイングに成果をもたらしている{{Sfn|太陽観測|2009|loc=第7章 太陽観測の変遷、7-1-2 太陽望遠鏡の特徴|pp=118-120}}。

=== 日震学 ===
[[ファイル:太陽内部の定在波.PNG|thumb|'''太陽内部の定在波'''。太陽内部では音速が場所により変化することから音波は[[屈折]]し、光球面近くで[[反射]]するため内部に閉じ込められて[[定在波]]となる。]]
{{main|日震学}}
太陽内部では乱流的対流とともに音波的[[波動]]（太陽の固有振動）が存在し、この2つが表面の運動速度場を決定している。太陽光、特に吸収線の[[ドップラー効果]]から、光球表面の各部分についてこれを知ることができる{{Sfn|山崎|2007|loc=第2章 太陽内部はエネルギーの宝庫|pp=36-37}}。これは1960年にアメリカのロバート・レイトンらが粒状斑を観察する中で発見したもので、「5分振動」と呼ばれる。これは当初、太陽大気の局在が原因と思われたが、1970年代にpモードと呼ばれる太陽が持つ固有の振動が原因と判明した。太陽光球上で非常に目立つ<ref name=New2009-32 />5分振動は、量子力学で扱われる[[球面調和関数]]で記述できる、量子数が異なる様々な音波の固有振動が重なり合った結果だった。この理論は可視光で観察不能な太陽内部を調査できるために注目され、また地球内部を地震波で調査する手段と基本的に同じであるため、「日震学」(helioseismology) と呼ばれる{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.6日震学|pp=33-38}}。

日震学は、対流層の深さを明らかにした。外部から対流を観察するだけでは不明瞭だった対流の深さが固有振動の分析で判明し、それまで考えられていたよりも対流層は厚かった。また、音波が伝わる速度が温度に依存する点から、太陽内部の温度分布が計算可能となった。これは、後述する「太陽ニュートリノ問題」が解決される前に提示された中心温度への疑問に対し、計算値は標準太陽モデルに近いことを示した。さらに太陽内部の自転速度分析にも回答を与え、表面のような差動回転は内部には大きく見られないことが解明された{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.6日震学|pp=33-38}}。

=== 太陽探査機 ===
[[ファイル:SOLAR-B artists concept.jpg|thumb|太陽観測衛星[[ひので (人工衛星)|ひので]]。可視光、紫外線、X線と複数の観測手段を搭載した。]]
{{main|Category:太陽探査機}}
地球周回軌道から太陽を観測する探査機と、太陽周回軌道を目指す探査機では求められる性能が大きく異なる。
特に太陽周回軌道を目指す探査機については、恒星である太陽の接近探査は他の惑星探査とは大きく異なる課題が多く、地球からの距離、強力な引力、超高熱、強力で多種な宇宙線などを考慮しなければならない。

X線による太陽観測は1970年代から活発に行われ、アメリカの「[[スカイラブ計画|スカイラブ]]」や「[[ソーラーマックス]]」、[[欧州宇宙機関|ESA]] と [[アメリカ航空宇宙局|NASA]] が共同で「[[SOHO (探査機)|SOHO]]」、日本の「[[ひのとり (人工衛星)|ひのとり]]」や「[[ようこう]]」および「[[ひので (人工衛星)|ひので]]」などが打ち上げられた。「スカイラブ」はコロナの詳細な像をもたらし、さらに「ようこう」は空間分解能の高いコロナ像を提供した{{Sfn|尾崎|2010|loc=第2章 太陽と太陽系、2.1太陽 2.1.2太陽の表面およびその外層|pp=11-16}}。

光球の基本的な組成は[[分光]]観測によってよく知られているが、太陽内部の組成についてはあまりよく分かっていない。そこで太陽風に含まれる粒子のサンプルリターンミッションである「[[ジェネシス (探査機)|ジェネシス]]」は、研究者が太陽の物質を直接測定することを目的に計画された。このミッションでは[[2004年]]に機体が地球に帰還し、サンプルの解析が現在も進行中だが、試料カプセルが大気圏へ再突入する際にパラシュートが何らかの原因で正常に作動せず、カプセルが地表に激突したために、サンプルの一部が損傷を受けた。
{{clear}}

== 人類との関係 ==
=== 占星術 ===
太陽は[[七曜]]・[[九曜]]のひとつで、[[10大天体]]のひとつである。また、太陽は惑星ではなく恒星であるが、[[西洋占星術]]では他の天体と同様に「惑星」として扱われ、[[獅子宮]]（[[しし座]]）の[[守護惑星]]で、吉星（ベネフィック）である。西洋占星術において太陽は月と並んで最も重要な惑星として扱われ、「生命力」と「エネルギー」のシンボルである。象徴するキーワードは「意志」「尊厳」「独立心」「活力」「輝かしいもの」「明らかなもの」「公の領域」「プライド（尊大さ、自己中心的）」などで、象徴する人物は「父親」「夫」「権力者」「英雄」などがあり、特定の人物を読む場合には月と対を成す、その人自身の基本的な性質を表すとされる<ref>まーさ『一番わかりやすい はじめての西洋占星術』日本文芸社、2024年、46頁。ISBN 978-4-537-22215-9</ref><ref>[[ルネ・ヴァン・ダール・ワタナベ|ルネ・ヴァン・ダール研究所]]『CD-ROM付き いちばんやさしい西洋占星術入門』ナツメ社、2018年、36頁。ISBN 978-4-8163-6418-1</ref>。

=== 関連作品 ===
{{main|[[地球以外の実在天体を扱った事物#太陽|地球以外の実在天体を扱った事物]]<!--各種作品についてはこちらにお願いします-->}}

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}

=== 注釈 ===
{{Reflist|40em|group=注}}

=== 出典 ===
{{Reflist|25em|refs=
<ref name="sse">{{Cite web
  |url=https://solarsystem.nasa.gov/solar-system/sun/by-the-numbers/
  |title=By the Numbers - Sun - Solar System Exploration: NASA Science
  |accessdate=2018-10-15
  |website=Solar System Exploration: NASA Science
  |archiveurl=https://web.archive.org/web/20190523230455/https://solarsystem.nasa.gov/solar-system/sun/by-the-numbers/
  |archivedate=2019-05-23
    }}</ref>
<ref name=nssdc>{{Cite web
  |last=Williams
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  |title=Sun Fact Sheet
  |publisher=[[NASA]]
  |language=英語
  |date=2016-12-16
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  |archivedate=2010-07-15
    }}</ref>
<ref name=nao2006-8>{{Cite web|和書
  |url=http://www.nao.ac.jp/kimiten/2006/8-tips.pdf|format=PDF
  |title=君が天文学者になる4日間 予習テキスト 第8章 知っておくべき事、知っておくと便利な事
  |pages=55|publisher= [[国立天文台]]|accessdate=2010-10-19
  |archiveurl=https://web.archive.org/web/20120525011604/http://www.nao.ac.jp/kimiten/2006/8-tips.pdf|archivedate=2012-05-25}}</ref>
<ref name="nao2006-2">{{Cite web|和書
  |url=http://www.nao.ac.jp/kimiten/2006/2-spectrum.pdf|format=PDF
  |title=君が天文学者になる4日間 予習テキスト 第2章 星の色と分類
  |page=10|publisher= [[国立天文台]] |accessdate=2010-10-19
  |archiveurl=https://web.archive.org/web/20120525015242/http://www.nao.ac.jp/kimiten/2006/2-spectrum.pdf|archivedate=2012-05-25}}</ref>
<ref name="sorae060126">{{Cite web|和書
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  |title=最軽量の系外惑星を発見
  |publisher=sorae.jp|date=2006-01-26 |accessdate=2010-10-19
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<ref name="RamírezBajkova2014">{{cite journal|display-authors=1
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  |title=Elemental Abundances of Solar Sibling Candidates
  |journal=[[アストロフィジカルジャーナル|The Astrophysical Journal]]|volume=787|issue=2|year=2014|pages=154|issn=0004-637X
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<ref name="Adibekyande Laverny2018">{{cite journal|display-authors=1
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  |title=The AMBRE project: searching for the closest solar siblings
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<ref name="Carrington1859">{{cite journal
  |last1=Carrington|first1=R. C.
  |title=Description of a Singular Appearance seen in the Sun on September 1, 1859
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<ref name=Asai>{{Cite web|和書
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  |title=太陽観測による最近の磁気プラズマ研究の進展
  |author=浅井歩
  |publisher=社団法人日本流体力学会
  |language=日本語
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  |archivedate=2011-10-06
    }}</ref>
}}

== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author=編集長：水谷仁|authorlink=水谷仁|year=2005|title=[[ニュートン (雑誌)|ニュートン]]別冊 宇宙創造と惑星の誕生|publisher=[[ニュートンプレス]]|location=東京都渋谷区代々木2-1-1新宿マインズタワー|isbn=4-315-51724-0|ref=ニュートン (別2005)}}
* {{Cite journal|和書|author=編集長：水谷仁|year=2005|title=[[ニュートン (雑誌)|ニュートン]]2005年12月号、雑誌07047-12|publisher=[[ニュートンプレス]] |ref=ニュートン (2005-12)}}
* {{Cite book|和書|author=編集長：水谷仁|coauthors= |year=2009|title=[[ニュートン (雑誌)|ニュートン]]別冊 太陽と惑星 改訂版|publisher=[[ニュートンプレス]] |isbn=978-4-315-51859-7|ref=ニュートン (別2009)}}
* {{Cite book|和書|editor=関昌弘|title=核融合炉工学概論|publisher=[[日刊工業新聞社]]|year=2001|isbn=4-526-04799-6|ref={{SfnRef|関|2001}}}}
* {{Cite book|和書|author=尾崎洋二|title=宇宙科学入門|publisher=[[東京大学]]出版会|year=2010|edition=第2版第1刷|isbn=978-4-13-062719-1|ref={{SfnRef|尾崎|2010}}}}
* {{Cite book|和書|author=山崎耕造|authorlink=山崎耕造|title=トコトンやさしい太陽の本|publisher=[[日刊工業新聞社]]|date=|year=2007|edition=第1刷|isbn=978-4-526-05935-3|ref={{SfnRef|山崎|2007}}}}
* {{Cite book|和書|author=秋岡真樹|title=太陽からの光と風|publisher=[[技術評論社]]|year=2008|edition=第1刷|isbn=978-4-7741-3298-3|ref={{SfnRef|秋岡|2008}}}}
* {{Cite book|和書|title=太陽観測|publisher=[[誠文堂新光社]]|year=2009|isbn=978-4-416-20919-6|ref={{SfnRef|太陽観測|2009}}}}
* {{Cite book|和書|title=理科年表|edition=第86冊|date=2012-11-30|publisher=[[丸善出版]]|editor=国立天文台|editor-link=国立天文台|isbn=978-4-621-08606-3|ref={{SfnRef|理科年表|2012}}}}

== 関連項目 ==
{{ウィキポータルリンク|天文学}}
* [[デリンジャー現象]]
* [[幻日]]
* [[地球温暖化]]
* [[太陽フレア]]
* [[太陽風]]/[[太陽嵐]]
* [[太陽活動周期]]/[[太陽極大期]]
* [[HD 162826]]（太陽と兄弟関係にあると思われる恒星）
* [[HD 186302]]（太陽と兄弟関係にあると思われる恒星）

== 外部リンク ==
{{Sisterlinks|s=no|n=no|v=no|d=Q525}}
* {{Wayback|url=https://rika-net.com/contents/cp0320a/contents/taiyoukei/taiyou/index.html |title=理科ねっとわーく 太陽系図鑑（太陽） |date=20211210121335}}
* [https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/sun/sun00.html 国立科学博物館 宇宙の質問箱（太陽）]
* [https://www.cgh.ed.jp/TNPJP/nineplanets/sol.html ザ・ナインプラネッツ 日本語版（太陽）]
* [https://nineplanets.org/the-sun/ The Nine Planets The Sun Facts] - ザ・ナインプラネッツ 原語版（太陽）{{En icon}}
* {{Kotobank}}
* [https://soho.nascom.nasa.gov/data/realtime-images.html SOHO による現在の太陽のスナップショット]
* [https://swc.nict.go.jp/ SWE宇宙天気情報センター] 現在の黒点数や太陽風など、最新の太陽活動情報が提供される。
* [https://web.archive.org/web/20080311101543/http://sunearth.gsfc.nasa.gov/eclipse/eclipse.html NASA Eclipse homepage]
* [https://soho.nascom.nasa.gov/ Nasa SOHO (Solar & Heliospheric Observatory) satellite] ([https://soho.nascom.nasa.gov/classroom/faq.html FAQ])
* [https://solarscience.msfc.nasa.gov/ NASA/Marshall Solar Physics website]

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