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{{単位 |名称=太陽質量 |英字=Solar mass |記号=''M''{{sub|☉}}, ''M''{{sub|o}}, ''S'' |単位系=天文単位系 |物理量=[[質量]] |定義=[[太陽]]の質量 |SI=~1.9884×10{{sup|30}} [[キログラム|kg]] |画像=[[File:Sun920607.jpg|200px|太陽]] }} '''太陽質量'''(たいようしつりょう、{{lang-en-short|Solar mass}})は、[[天文学]]で用いられる[[質量]]の[[単位]]であり、また我々の[[太陽系]]の[[太陽]]の質量を示す[[天文定数]]である。 単位としての太陽質量は、[[惑星]]など太陽系の[[天体]]の運動を記述する[[天体暦]]で用いられる'''[[天文単位系]]'''における質量の単位である。 また[[恒星]]、[[銀河]]などの天体の質量を表す単位としても用いられている。 == 太陽質量の値 == 太陽質量を表す記号としては多く <math>M_\odot</math> が用いられている<ref name="shimadzu">{{cite book|和書|author=島津康男|title=地球内部物理学|publisher=裳華房|year=1966}}</ref>。 <math>\odot</math> は歴史的に太陽を表すために用いられてきた記号であり、活字やフォントの制限がある場合には ''M''<sub>o</sub> で代用されることもある。 天文単位系としては記号 ''S'' が用いられることが多い。 [[キログラム]]単位で表した太陽質量の値は、次のように求められている<ref name="USNO_asa_k">{{cite web | url= http://asa.usno.navy.mil/SecK/Constants.html | title= Astronomical constants | work= The Astronomical Almanac Online!, Naval Oceanography Portal | accessdate= 2010-05-16}} ここで示した太陽質量、太陽と地球の質量比の値は、IAU 2009 で採用された推測値から算出されたものである。</ref>。 :<math>M_\odot=(1.988 4\pm0.000 2)\times10^{30}\hbox{ kg}</math> このキログラムで表した太陽質量の値は 4–5 桁程度の精度でしか分かっていない。和式単位で記述すれば198[[穣]]8400[[𥝱]]kgとなる。 しかしこの太陽質量を単位として用いると他の惑星の質量は精度よく表すことができる。 例えば太陽質量は[[地球]]の質量の 332 946.048 7 ± 0.000 7 倍である<ref name="USNO_asa_k" />。 == 太陽質量の精度 == 太陽系の天体の運動を観測することで、[[万有引力定数]] ''G'' と太陽質量との積である[[日心重力定数]] ([[:en:heliocentric gravitational constant|heliocentric gravitational constant]])''GM''{{sub|☉}} は比較的精度よく求めることができる。 例えば、初等的に太陽以外の質量を無視する近似を行えば、ある惑星の[[公転周期]] ''P'' と[[軌道長半径]] ''a'' を使って[[ケプラーの法則|ケプラーの第3法則]]より日心重力定数は ''GM''{{sub|☉}} = (2<span style="font-family:serif;">π</span>/P){{sup|2}}a{{sup|3}} として容易に計算することができる。 しかし、''P'', ''a'' を高い精度で測定したとしても、その精度が受け継がれるのはこの日心重力定数であり、キログラムで表した太陽質量自体は ''G'' と同程度以下の精度でしか決定できないという本質的困難が存在する。 測定が難しい万有引力定数 ''G'' の値は現在でも 4 桁程度の精度でしか知られていないため<ref name="CODATAbg">{{cite web|url=http://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?bg|title=CODATA Value: Newtonian constant of gravitation|work=Physics Laboratory, NIST|accessdate=2009-12-27}}</ref>、太陽質量に関する我々の知識もこれに限定される。 例えば、『[[理科年表]]』(2012年)において日心重力定数 1.327 124 400 41×10<sup>20</sup> m<sup>3</sup>s<sup>−2</sup> が12桁の精度で表記されているにもかかわらず、太陽質量の値が1.988×10<sup>30</sup> kgと、4桁の精度しかないのはこのような理由による。 歴史的には、この太陽質量の地上の単位での値を追究することなく、逆にこれを単位とすることで太陽系の運動は記述されてきた。 19世紀の[[カール・フリードリッヒ・ガウス|ガウス]]は太陽系の運動を精度よく記述できる[[単位系]]として、長さの単位に地球の軌道長半径 ''A'' を、時間の単位に[[太陽日]] ''D'' を、質量の単位に太陽質量 ''S'' を取っている。 このガウスの単位系は現在でも形を変えて[[天文単位系]]と[[天文単位]]の概念に引き継がれている。 ガウスの単位系で表したとき、''G'' の平方根に相当する値は[[ガウス引力定数]]と呼ばれ、地球の平均角速度として精度を保ったまま記述することができる。 こうして長い間、地上での単位系と太陽系での単位系はしっかりと結びつくことなく、それぞれの世界でその役割を担ってきた。 現在では、太陽系の天体までの距離は極めて正確に求められるようになり、時間も[[一般相対性理論|一般相対論]]的効果を考慮しなければならない程になっている。 しかし、重力という非常に弱い力と直結した質量に関しては依然として地上と太陽系とは分断されたままである。 このため単位としての太陽質量は、現在でも天体の運動を記述するための重要な「ものさし」であり、太陽系の天体位置を精度良く記述しようとする位置天文学者は、キログラムでの天体の質量ではなく太陽質量との比としての質量を扱い続けている。 == 質量の減少と惑星への影響 == 太陽の中心部で起こっている[[核融合]]は莫大な熱エネルギーを生み出しているが、このとき対応するだけの[[質量]]が失われている。 さらに太陽の表面では太陽の大気が[[太陽風]]として飛び出していく。 これらにより太陽質量は一定ではなく時間とともに減少していく。 推計では太陽質量の減少のうち 7 割ほどが電磁波としての放射に対応し、残りのほとんどが太陽風によるものである。 また正体不明の[[暗黒物質]]の候補のひとつであり、その存在が予測されている[[アクシオン]]が、質量の減少に少なからず寄与する可能性があるとされる。 全体で失われる質量は 1 秒あたり 600万 t 弱と見積もられている<ref name="Noerdlinger08">{{cite journal |first=Peter D.|last=Noerdlinger | title= Solar mass loss, the astronomical unit, and the scale of the solar system | journal= Celestial Mechanics and Dynamical Astronomy (submitted) |url=https://arxiv.org/abs/0801.3807v1 | volume= | pages= | year= 2008 | doi=10.48550/arXiv.0801.3807 }} (arXiv:0801.3807v1])</ref>。 太陽質量は十分に大きいため、これは1年に換算して太陽質量がおよそ 10兆分の 1 減ずるだけであるが、長期的には天体の動きに無視できない変化をもたらす。 太陽質量の減少は、同じだけの太陽からの重力の減少を意味するので、惑星の軌道は太陽質量に反比例して大きくなり、公転周期は太陽質量の 2 乗に反比例して長くなる。 計算上、地球の軌道はこれによって 100 年で 1.5 m ほど増大する。 一方、公転周期のずれによる天体の位置のずれは公転ごとに積算していくため、わずかなずれであっても非常に長い時間には目に見えるずれとして現れることになる<ref name="Noerdlinger08" />。 さらに長期間を考えると、太陽質量の減少は惑星の運命ともかかわってくる。 太陽が[[赤色巨星]]となるとき太陽の半径は最も拡大したときで現在の地球の軌道の 1.2 倍になる。 一方で減少する質量の割合も急増して、惑星は大幅に太陽から離れた軌道へ追いやられる。 [[水星]]や[[金星]]は太陽に飲み込まれ中心へと落下していくものの、はたして地球がその運命を避けることができるかどうかについては議論が続いている<ref name="PhysicsWorld08">{{cite web | url= http://physicsworld.com/cws/article/news/33056 | first=Jon|last=Cartwright | title= Earth is doomed (in 5 billion years) | work= News, physicsworld.com | date= 2008-02-26 | accessdate= 2009-02-03}}</ref>。 == 参考文献・注釈 == {{脚注ヘルプ}} {{reflist}} == 関連項目 == * [[質量の比較]] * [[地球質量]] * [[木星質量]] * [[月質量]] {{太陽}} {{恒星}} {{DEFAULTSORT:たいようしつりよう}} [[Category:天文学の質量の単位]] [[Category:太陽]] [[Category:太陽エネルギー]] [[Category:天文学に関する記事]]
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