嫌気性生物のソースを表示

{{雑多な内容の箇条書き|date=2024年10月}}
'''嫌気性生物'''（けんきせいせいぶつ）は増殖に[[酸素]]を必要としない生物である。多くは[[細菌]]であるが、[[古細菌]]や[[真核生物|真核]][[微生物]]の中にも存在する。

これらは主に、酸素存在下で酸素を利用できる'''[[通性嫌気性生物]]'''と、大気レベルの濃度の酸素に暴露することで死滅する'''[[偏性嫌気性生物]]'''に分けられる。酸素を利用することはできないが、大気中でも生存に影響がない生物は、'''[[耐酸素性細菌]]'''などと呼ばれる。<!--[[ナネローブ]](Nanaerobe)はマイクロモーラー程度の濃度の酸素が存在する中では増殖することができないが、[[ナノ]]モーラーレベルの濃度の酸素の存在下では増殖することができる。-->

== エネルギーの獲得 ==
偏性嫌気性生物は[[発酵]]および[[嫌気呼吸|嫌気性呼吸]]を行う。[[通性嫌気性生物]]は酸素の存在下では[[呼吸|好気呼吸]]を行い、酸素がない場合には発酵を行うものもあれば嫌気性呼吸を行うものもある。
耐酸素性細菌は厳格に発酵的である。

[[微好気性生物]]は好気呼吸を行い、それらのうちのあるものは嫌気性呼吸をも行うことができる。

嫌気的発酵反応にはいくつかの化学式がある。発酵的嫌気性生物の多くは[[嫌気呼吸#発酵との違い|乳酸発酵]]経路を利用する。
:<chem>{C6H12O6} + {2ADP} + 2{\it{phosphate}} -> {2lactic acid} + 2ATP</chem>

:（[[グルコース|ブドウ糖]] 1分子 ＋ [[アデノシン二リン酸|ADP]] 2分子 ＋ [[リン酸]] 2分子 → [[乳酸]] 2分子 ＋ [[アデノシン三リン酸|ATP]] 2分子）

この化学式において糖から放出されるエネルギーは1モル当たりおよそ150 [[ジュール#キロジュール|kJ]]である。このエネルギーにより、ブドウ糖1分子当たり2分子のATPがADPより再生される。これは典型的な好気的反応によって糖1分子から産み出されるエネルギーのほんの5%にすぎない。

[[植物]]および[[菌類|真菌]]（たとえば[[酵母]]）は、酸素が限られている場合には一般に[[アルコール]]（[[エタノール]]）発酵を利用する。
: <chem>{C6H12O6} + {2ADP} + 2{\it{phosphate}} -> {2C2H5OH} + {2CO2} + 2ATP</chem>

:（ブドウ糖 1分子 ＋ ADP 2分子 ＋ リン酸 2分子 → エタノール 2分子 ＋ [[二酸化炭素]] 2分子 ＋ ATP 2分子）

ここで糖から放出されるエネルギーは1モル当たり約180 kJである。このエネルギーにより、ブドウ糖1分子当たり2分子のATPがADPより再生される。

嫌気性細菌と[[古細菌]]は、たとえばプロピオン酸発酵、酪酸発酵、混合酸発酵、ブタンジオール発酵、Stickland発酵、酢酸生成経路、または[[メタン生成経路]]などのような、これらとは異なるいくつかの発酵経路を利用している。

== 毒素産生能 ==
いくつかの嫌気性細菌は、人を含む[[高等生物]]に対して極めて危険な[[毒|毒素]]（たとえば[[破傷風菌#毒素|破傷風毒素]]や[[ボツリヌストキシン|ボツリヌス毒素]]のような）を産生する。

== 菌体内酵素の欠損 ==
酸素が存在することによって細胞内に形成される致死性の[[スーパーオキシドアニオン|スーパーオキシド]]を変化させる
[[スーパーオキシドディスムターゼ]]や[[カタラーゼ]]を欠くことにより、偏性嫌気性生物は酸素の存在下では死滅する。

== 汚水処理施設での利用 ==
[[汚水]]を浄化させるための[[汚水処理施設]]では、[[曝気槽]]の前段に[[脱窒]]を目的として[[嫌気槽]]を設けることがある。嫌気槽には嫌気性の微生物が利用されている。

== 新しいエネルギー源 ==
下水や廃棄物などに含まれる有機物を嫌気性生物により分解することにより燃料として使える炭化水素ガスを生成する試みが各地で進められている。<ref>[http://www.gesui.metro.tokyo.jp/oshi/in103.htm 不用のメタンガスを利用した発電]</ref><ref>[http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.1270770.article.html メタンガスで自家発電計画]</ref><ref>[http://www.nagasaki-np.co.jp/kiji/20100413/08.shtml 下水汚泥からメタンガス急速抽出]</ref><ref>[https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/35/12-13.html 嫌気性排水処理（メタン発酵）技術の研究動向]</ref>

== 多細胞生物 ==
嫌気性代謝では十分なエネルギーが確保できないため、多細胞生物の嫌気性生物はほとんどいない。

2010年、地中海の海底で酸素不要の多細胞生物が初めて見つかった。<ref>{{Cite web|和書|title=酸素不要の多細胞生物を初めて発見|url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2580/|website=natgeo.nikkeibp.co.jp|accessdate=2021-09-26|language=ja}}</ref>

== 脚注 ==
<references />

== 関連項目 ==
*[[好気性生物]]
*[[微好気性生物]]
*[[通性嫌気性生物]]
*[[通性嫌気性生物|通性好気性生物]]
*[[呼吸|好気呼吸]]
*[[嫌気呼吸]]
*[[発酵]]
*[[みそ]]
*[[バイオガス]]
*[[メタン菌]]

=== 翻訳元 ===
[[:en:Anaerobic organism]]

{{Normdaten}}
{{デフォルトソート:けんきせいせいふつ}}
[[category:微生物学]]
[[Category:細菌学]]
[[Category:分類学 (生物学)]]
[[Category:細胞呼吸]]
[[Category:ルイ・パスツール]]