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{{混同|x1=ラテン文字の|Ǝ}} {{記号文字|∃}} '''存在記号'''(そんざいきごう、existential quantifier)とは、[[数理論理学]](特に[[述語論理]])において、少なくとも1つのメンバーが述語の特性や関係を満たすことを表す記号である。通常「'''∃'''」と表記され、'''存在量化子'''(そんざいりょうかし)、'''存在限量子'''(そんざいげんりょうし)、'''存在限定子'''(そんざいげんていし)などとも呼ばれる。この記号('''∃''')は[[1897年]]に[[ジュゼッペ・ペアノ]]によって導入された<ref>{{cite book |last = Cajori |first = F. |author-link = フロリアン・カジョリ |title = A History of Mathematical Notations |year = 1993 |publisher = Dover |isbn = 0-486-67766-4 |location = [[¶]]689 |url = {{google books|plainurl=yes|_byqAAAAQBAJ}} }}</ref><ref>{{internet archive2|id=formulairedemat02peangoog|page=55|name=Formulaire de mathématiques}}</ref>。 これとは対照的に[[全称記号]]は、全てのメンバーについての[[量化]]である。 == 概要 == 例として、「ある[[自然数]]の平方が25である」を表す式を考える。最も素朴な方法として、次のように式を書いていく: : 0·0 = 25, '''または''' 1·1 = 25, '''または''' 2·2 = 25, '''または''' 3·3 = 25, などなど これは 「または」を繰り返しているので、一種の[[論理和]]となっている。しかし、「などなど」があるため[[形式論理]]の論理和であるとは言えない。その代わりに以下のような文を書く: : ある自然数 <math>n</math> について、<math>n\cdot n = 25</math> である。 これは'''存在量化'''(existential quantification)を用いた、形式論理として妥当な単一の文である。 この文は前者の書き方よりも正確である点に注意されたい。前者は「などなど」が全ての[[自然数]]を指し、それ以外を含まないことを汲み取れはするが、明確には述べられていない。そのため、形式的表現に変換できない。一方、後者の量化された文では、自然数について明確に言及しているため、解釈の誤りは通常の場合生じない。 5 は自然数のもとで、5 を <math>n</math> に代入すると "5·5 = 25" となり、式は真となる。"<math>n\cdot n = 25</math>" が5以外の自然数 <math>n</math> で偽となることは関係がない。少なくとも1つの解が存在すれば、存在量化で真となるに十分である。 一方、「ある[[偶数]] <math>n</math> について、<math>n\cdot n = 25</math> である」という文は、偶数の解が存在しないため偽となる。また、「ある[[奇数]] <math>n</math> について、<math>n\cdot n = 25</math> である」という文は、5 が奇数であるため真となる。この事実は変数 <math>n</math> が取りうる値の範囲を示す「[[議論領域]](domain of discourse)」が重要であることを示している。 何らかの述語を満たす値だけを議論領域としたい場合、存在量化では[[論理積]]を使用すればよい。 例として、「ある[[奇数]] <math>n</math> について、<math>n\cdot n = 25</math> である」という文は「ある自然数 <math>n</math> について、<math>n</math> は奇数であり、かつ <math>n\cdot n = 25</math> である」という文と論理的に同値である。この場合、「かつ」は論理積を表している。 [[数理論理学]]で存在量化を表す存在記号は "<math>\exists</math>"([[サンセリフ]]体の "E" を裏返した字)で表される。なお、これは英語で存在を意味するexistに由来する{{要検証|date=2022-11-22|title=ペアノの本は仏語だから常識的に考えて英語には由来しないだろう。}}。 故に、<math>P(a, b, c)</math> が "<math>a\cdot b = c</math>" を表す述語で、<math>\mathbf{N}</math> が自然数の集合であるとすると、 : <math> \exists{n} \in \mathbf{N}\, P(n,n,25) </math> という論理式が以下の文を表すことになる{{refnest| この記法はより正確には :<math> \exists n [n \in \mathbf N \land P(n, n, 25)] </math> の略記である<ref>{{cite book |和書 |title=数学基礎論 |year=2011 |author=新井敏康 |authorlink=新井敏康 |publisher=岩波書店 |isbn=978-4-00-005536-9 |page=1 }}</ref>。}}。 : ある自然数 <math>n</math> について、<math>n\cdot n = 25</math> である。 同様に、<math>Q(n)</math> が 「<math>n</math> は偶数である」を表す述語とすると : <math> \exists{n} \in \mathbf{N}\, \big(Q(n)\;\!\;\! {\wedge}\;\!\;\! P(n,n,25)\big) </math> という論理式が以下の文を表すことになる。 : ある偶数 <math>n</math> について、<math>n\cdot n = 25</math> である。 存在記号の各種記号法は[[全称記号]]の項目に参照されたし。 == 符号位置 == {| class="wikitable" style="text-align:center;" !記号!![[Unicode]]!![[JIS X 0213]]!![[文字参照]]!!名称 {{CharCode|8707|2203|1-2-48|存在限定子|exist}} |} == 注 == {{reflist}} == 関連項目 == * [[一意性 (数学)#述語論理|一意性]] {{math|∃!}} * [[一階述語論理]] * [[存在汎化]] * [[存在例化]] * [[量化]] * [[全称記号]] == 参考文献 == *{{cite book | author = Hinman, P. | title = Fundamentals of Mathematical Logic | publisher = A K Peters | date = 2005年 | id = ISBN 1-568-81262-0}} {{logic}} {{Common logical symbols}} {{DEFAULTSORT:そんさいきこう}} [[Category:約物]] [[Category:数理論理学]] [[Category:量化]] [[Category:数学記号]] [[Category:ジュゼッペ・ペアノ]] [[Category:数学に関する記事]]
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