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{{出典の明記|date=2015年11月}} [[画像:Newton Cannon.svg|thumb|300px|[[地表]]から[[水平]]に打ち出された[[砲弾]]は[[重力]]に引かれて地表に[[落下]]する (A)。<br/>射出[[速度]]を上げても第一宇宙速度未満ならいつかは地表に落下する (B)。<br/>第一宇宙速度で打ち出された場合は[[人工衛星]]となる (C)。<br/>それ以上の速度では[[楕円軌道|楕円を描き]] (D)、<br/>第二宇宙速度以上の場合は[[地球]]の[[重力]]を振り切る (E)。<br/>(ただし[[大気]]の[[抗力|抵抗]]による影響などは考慮していない)。]] {{Astrodynamics}} {{読み仮名|'''宇宙速度'''|うちゅうそくど|{{lang-en|Cosmic Velocity}}}}とは、特に[[地球]]および[[太陽]]に対して、[[軌道力学]]的に、[[地表]]において[[物体]]にある初速度を与えたとして、[[人工衛星の軌道|衛星軌道]]などの「宇宙飛行」と言えるような[[軌道 (力学)|軌道]]に乗せるために必要な[[速度]]のことである。対象に合わせて、'''第一宇宙速度'''・'''第二宇宙速度'''・'''第三宇宙速度'''と呼ばれている速度がある<ref>{{Cite book|和書 |title=時事年鑑 昭和35年版 |year=1959 |publisher=時事通信社 |page=514 |doi=10.11501/3018603}}</ref>。軌道力学一般的には[[軌道速度]]、[[脱出速度]]と呼ばれる。なお、通常は重力のみを考慮し、空気抵抗・浮力等は加味しない。 == 第一宇宙速度(地表面軌道速度) == 第一宇宙速度とは、地球において、その[[高度]]を海抜ゼロ([[海面]]もしくは地表すれすれ)とした(仮想上の)[[円軌道]]の[[人工衛星の軌道|衛星軌道]]の軌道速度で、約 7.9 km/s (= 28,400 km/h) である。地表において、ある物体にある初速度を与えたと仮定した場合、その速度がこの速度未満の場合はどのように打ち出したとしても、[[弾道飛行]]({{lang-en-short|sub-orbital flight}})の後に、地球の地表に戻ってしまう。逆に、これを越えて({{lang-en-short|super-orbital}})(第二宇宙速度未満で)[[水平]]に打ち出した場合、その地点を近地点とする[[楕円軌道]]に投入される。 == 第二宇宙速度(地球脱出速度) == 第二宇宙速度とは、[[地球]]の[[重力]]を振り切るために必要な、地表における初速度である。約 11.2 km/s(40,300 km/h)で、第一宇宙速度の <math>\sqrt{2}</math>倍である。この速度以上に加速すれば永久に地球から離れていくことができる。地球から打ち上げる[[宇宙機]]を、深[[宇宙探査機]]などのように太陽を回る[[人工惑星]]にするためには第二宇宙速度が必要である。地球の重力圏を脱出するという意味で'''地球脱出速度'''とも呼ばれる。 == 第三宇宙速度(太陽系脱出速度) == 第三宇宙速度とは、第二宇宙速度と同様の考え方で地球軌道・地表においてある初速度を与えたとして、[[地球]]さらには[[太陽]]の[[重力]]を振り切るために必要な速度で、約 16.7 km/s (60,100 km/h) である。太陽の質量、地球の質量、太陽と地球の距離、地球の半径、[[万有引力定数]]から求めることができる。現実的には地球の公転速度を利用する側に飛び出すか逆かでΔvとしては違ってくる。この速度に達するために必要なエネルギーが膨大になるため、惑星探査機では[[スイングバイ]]を利用して加速する。これまでに第三宇宙速度を超えた人工物体は多くなく、[[太陽系を離れる人工物の一覧]]に記載されている。 <!-- この部分はボイジャー1号の話であり、第三宇宙速度の話ではないのでコメントアウトします。 2013年9月、[[アメリカ航空宇宙局|米航空宇宙局]](NASA)は36年前(1977年)に打ち上げられた米探査機「[[ボイジャー1号|ボイジャー1号]]」が太陽系の端の領域を越え、人工物体として初めて太陽系外に広がる星間空間に旅立ったことが確認されたと、科学誌『[[サイエンス]]』電子版に発表した。太陽系を出た時期は昨年8月25日ごろとみられ、太陽から約190億キロ離れたところを時速約6万キロで飛行中。<ref>{{Cite news|title=米探査機ボイジャーついに太陽系外へ 打ち上げから36年、人工物で初|newspaper=MSN産経ニュース|date=2013-9-13|author=産経デジタル|url=https://web.archive.org/web/20130913172847/http://sankei.jp.msn.com/science/news/130913/scn13091309160001-n1.htm|accessdate=2013-9-13}}</ref> --> == 導出 == 各定数を、 *[[万有引力定数]]:<math>G = 6.67 \times 10^{-11} \, \mathrm{m}^3 \, \mathrm{s}^{-2} \, \mathrm{kg}^{-1}</math> *[[地球質量]]:<math>M = 5.97 \times 10^{24} \, \mathrm{kg} </math> *地球半径:<math>R = 6.36 \times 10^{6} \, \mathrm{m}</math> *[[太陽質量]]:<math>M_{S} = 1.99 \times 10^{30} \, \mathrm{kg} </math> *地球の公転半径:<math>R_{E} = 1.50 \times 10^{11} \, \mathrm{m} </math> とする。 === 第一宇宙速度 === 地球の重心を中心として速さ <math>v</math> の等速円運動をした時に物体の質点を原点とする慣性系で観測した場合質量 <math>m</math> の物体に働く遠心力は <math>mv^2/R</math> である。このとき物体に働く重力は <math>GmM/R^2</math> である。第一宇宙速度 <math>v_1</math> は遠心力と重力が釣り合うとして求める。すなわち、 :<math>\frac{m v_{1}^2}{R} = \frac{GmM}{R^2}</math> より、 :<math>v_{1} = \sqrt{\frac{GM}{R}} = 7.91 \times 10^{3} \, \mathrm{m/s} = 7.91 \, \mathrm{km/s} </math> である。 [[Google 検索]]で天体の半径などの[[天文学]]の[[定数]]が計算可能で、<code>sqrt(<var>天体名</var>の質量*万有引力定数/<var>天体名</var>の半径)</code>という検索式で <math>v</math> を求めることができる。 === 第二宇宙速度 === 地球から無限遠を基準とすると、質量 ''m'' の物体の地球表面における地球重力によって生じる位置エネルギーは、 :<math>U = -\int_{\infty}^{R}\left(-\frac{GMm}{r^2} \right) dr = -\frac{GMm}{R}</math> と表される。この物体に、負の位置エネルギーを打ち消す速さ ''v''<sub>2</sub> の運動エネルギー (1/2)''m''{{subsup|v|2|2}} を与えれば無限遠に達する、即ち地球の重力圏から脱出することができるとして求める。すなわち、 :<math>\frac{1}{2}mv_{2}^2-\frac{GMm}{R}=0</math> より、 :<math> v_2 = \sqrt{\frac{2GM}{R}} = \sqrt{2}v_1 = 11.2 \, \mathrm{km/s}</math> となる。なお、地球の自転速度は小さいのでここでは無視している。 === 第三宇宙速度 === 第二宇宙速度と同様に、地球公転軌道近辺における太陽からの脱出速度は、 :<math> v_{S} = \sqrt{\frac{2GM_{S}}{R_{E}}} = 42.1 \, \mathrm{km/s}</math> である。ただし、これは太陽から見た速さなので、地球からの場合、地球の公転運動を差し引かなければならない。地球の公転速度 ''v''<sub>''E''</sub> は地球の公転による遠心力と太陽と地球の引力が釣り合うという関係から求めることができるので、 :<math> v_{E} = \sqrt{\frac{GM_{S}}{R_{E}}} = 29.8 \, \mathrm{km/s}</math> である。したがって地球公転軌道からの脱出速度 ''v''<sub>''E''0</sub> は : <math> v_{E0} = v_{S} - v_{E} = 12.3 \, \mathrm{km/s} </math> である。地表から打ち上げる場合には地球の重力を振り切る分だけ速くする必要がある。これは地表での位置エネルギーを打ち消した後に ''v''<sub>''E''0</sub> の速度になればよいということなので、質量 ''m'' の物体の場合に :<math> \frac{1}{2}mv_{3}^2 - \frac{GMm}{R} = \frac{1}{2}mv_{E0}^2</math> という関係が成り立つ。したがって、 :<math> v_3 = \sqrt{\frac{2GM}{R} + v_{E0}^2} = 16.7 \, \mathrm{km/s}</math> である。 === 精度 === 以上の値は、星を球・公転軌道を円として計算したものである。実際には、地球の赤道半径と極半径の差は約 2×10<sup>4</sup> m(平均半径の0.3%)、地球の近日点と遠日点の差は約 5×10<sup>9</sup> m(同3%)といったズレがあるので、3桁目以降の正確な値を求めるには、これらを考慮する必要がある。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{reflist}} ==関連項目== * [[人工衛星の軌道]] * [[スイングバイ]] * [[弾道飛行]] * [[V速度]] * [[軌道速度]] * {{仮リンク|第四宇宙速度|ru|Четвёртая_космическая_скорость}} {{軌道}} {{宇宙飛行}} {{デフォルトソート:うちゆうそくと}} [[Category:力学]] [[Category:天文学に関する記事]]
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