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定圧モル熱容量
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{{出典の明記|date=2011年11月}} '''定圧モル熱容量'''(ていあつモルねつようりょう、[[英語]]:molar heat capacity at constant pressure)とは[[定圧過程]]における1[[モル]]当たりの[[熱容量]]のことである。すなわち、[[圧力]]一定の条件のときに[[物質]](特に[[気体]]について用いられる)を単位[[物質量]]あたり単位[[温度]]上昇させるのに必要な[[熱量]]を意味する。 '''定圧モル比熱'''(ていあつモルひねつ、英語:molar specific heat at constant pressure)とも呼ばれ、[[2009年|平成21年]]現在、日本の[[高等学校]]の「物理II」の教科書では「定圧モル比熱」と記述されている<ref>中村英二ほか『高等学校 改訂 物理II』([[第一学習社]])など各種教科書</ref>。 == 概要 == 定圧モル熱容量<math>c_P</math>は以下の式によって表される。 :<math>c_P=\frac{1}{n}\left(\frac{\partial H}{\partial T}\right)_P</math> ここで''n''は気体の[[物質量]]、''H'' は[[エンタルピー]]、''T'' は[[絶対温度]]である。 上式は以下のように求めることができる。 熱力学第一法則より、''n''モルの気体の内部エネルギーの微小変化d''U''と圧力''P''、微小体積変化d''V''、微小温度変化d''T''、微小過程中に気体に与えられた熱量d''Q''の間には以下の関係が成立する。 :<math>dU=dQ-PdV</math> ''P''は一定なのでd''Q''は次のように表すことができる。 :<math>dQ=dU+PdV=d(U+PV)=dH</math> またここで熱容量(比熱)の定義より :<math>dQ=nc_PdT</math> 以上より :<math>nc_PdT=dH</math> :<math>c_P=\frac{1}{n}\left(\frac{\partial H}{\partial T}\right)_P</math> == 定積モル熱容量との関係 == 理想気体の場合、[[定積モル熱容量]]<math>c_V</math>との間には[[マイヤーの法則]]といわれる関係がある。この法則によると次の関係が成り立つ。 :<math>c_P=c_V+R</math> ここで''R''は[[気体定数]]である。 [[単原子気体]]の定積モル熱容量は :<math>c_V=\frac{3}{2}R</math> と表されるため、単原子気体の定圧モル熱容量は次のように表される。 :<math>c_P=\frac{5}{2}R</math> また、定積モル比熱×物質量は内部エネルギーの変化であり、(その内部エネルギーの変化は温度の変化のみに依存していて、加熱されている気体は定積、定圧問わず内部エネルギーが3/2Rを比例定数として、温度に比例して大きくなる。)熱力学第一法則からその内部エネルギの変化と、気体の外部にした仕事の和は気体に与えた熱量Qとおなじであり、Q=⊿U+Wと表される。 定圧変化する場合は、W=P⊿V=nR⊿Tとなり、結局nmolの気体を定圧変化させるためには必要な熱量は5/2nR⊿Tとなる。 == 標準定圧モル熱容量 == [[標準状態]] (298.15[[ケルビン|K]], 10<sup>5</sup>[[パスカル (単位)|Pa]])の理想系(気体では10<sup>5</sup> Paの仮想的な[[理想気体]]の状態)における物質1[[モル]]の定圧熱容量を'''標準定圧モル熱容量'''と呼び''C<sub>P</sub>''ºで表す。'''標準定圧モル比熱'''とも呼ばれる。 化学反応において生成系の各物質の定圧モル熱容量の合計と、反応系の各物質の定圧モル熱容量の合計の差を定圧モル熱容量変化Δ''C<sub>P</sub>''ºと呼び、[[エンタルピー]]変化の温度依存性を表すものである。 :<math>\Delta C_P^\circ = \sum C_P^\circ \mbox{(products)} - \sum C_P^\circ \mbox{(reactants)}</math> :<math>\Delta C_P = \left(\frac{\partial \Delta H}{\partial T} \right)_P</math> 各物質の標準定圧モル熱容量は、標準生成エンタルピー変化および標準生成[[ギブス自由エネルギー]]変化と伴に以下の文献にまとめられ、『化学便覧』などには各温度における定圧モル熱容量が掲載されている。 * D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, ''J. Phys. Chem''. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982). [[水溶液]]中の[[イオン (化学)|イオン]]については常に[[陽イオン]]および[[陰イオン]]の合計として測定されるため、単独イオンの標準定圧モル熱容量は[[水素イオン]]を0とし、無限希釈の状態である仮想的な1 mol kg<sup>−1</sup>の[[理想溶液]]の状態とする。 {| class="wikitable" style="float:left; text-align: center" |+ 主な物質の標準定圧モル熱容量 ''C<sub>P</sub>''º ! !! 物質 !! 化学式 !! ''C<sub>P</sub>''º ''/'' J mol<sup>−1</sup>K<sup>−1</sup> |- | rowspan="3" | [[単原子分子]] | [[水素]]原子 || H(g) || 20.784 |- | [[ヘリウム]] || He(g) || 20.786 |- | [[酸素]]原子 || O(g) || 21.912 |- | rowspan="3" | [[二原子分子]] | 水素分子 || H<sub>2</sub>(g) || 28.824 |- | 酸素分子 || O<sub>2</sub>(g) || 29.355 |- | [[塩化水素]] || HCl(g) || 29.12 |- | rowspan="4" | [[多原子分子]] | [[水]] || H<sub>2</sub>O(l) || 75.291 |- | [[水蒸気]] || H<sub>2</sub>O(g) || 33.577 |- | [[アンモニア]] || NH<sub>3</sub>(g) || 35.06 |- | [[メタン]] || CH<sub>4</sub>(g) || 35.309 |- | rowspan="2" | [[イオン (化学)|イオン]] ([[水溶液]]) | [[水素イオン]] || H<sup>+</sup>(aq) || 0 |- | [[水酸化物イオン]] || OH<sup>−</sup>(aq) || −148.5 |} {{-}} == 脚注 == {{Reflist}} == 関連項目 == * [[定圧過程]] * [[比熱容量]] * [[比熱比]] * [[エンタルピー]] * [[標準モルエントロピー]] * [[マイヤーの法則]] * [[ポアソンの法則]] {{DEFAULTSORT:ていあつもるねつようりよう}} [[Category:比熱]] [[Category:物理化学]]
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