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{{Otheruses|数学の定義域|データベースの定義域|定義域 (データベース)}} [[数学]]における写像の'''定義域'''(ていぎいき、{{lang-en-short|domain of definition}})あるいは'''始域'''(しいき、{{lang-en-short|domain}}; '''域''', '''領域'''<ref group="注釈">領域という語を充てている文献として、例えば {{harvtxt|ケリー|1968|p=7}}, {{harvtxt|銀林|1971}} など。ただし「領域」というと複素解析などで「連結開集合」の意味で用いることが多く紛らわしい。</ref>)とは、[[写像]]の値の定義される[[引数]](「入力」)の取り得る値全体からなる[[集合]]である。つまり、写像はその定義域の各元に対して(「出力」としての)値を与える。 例えば、実数の範囲での議論において、余弦函数の定義域はふつう実数全体の成す集合([[実数直線]])であるし、正の平方根函数の定義域は {{math|0}} 以上の実数全体の成す集合であるものとする。定義域が実数から成る集合(実数全体の成す集合の部分集合)であるような実数値函数は、その定義域が {{mvar|x}}-軸上にあるものとして {{mvar|xy}}-[[座標平面|直交座標系]]に表すことができる。 [[Image:Codomain2.SVG|right|thumb|写像 {{mvar|f}} の定義域は {{mvar|X}}。]] == 定義 == [[対応 (数学)|対応]] {{math|''f'': ''A'' → ''B''}}(あるいは[[二項関係]] {{math|''R''<sub>''f''</sub> ⊂ ''A'' × ''B''}})が与えられたとき、{{mvar|A}} を {{mvar|f}} の'''始集合'''あるいは'''始域'''、'''域''' (domain) と呼び、対して {{mvar|B}} を'''終集合'''、'''終域'''、余域 (codomain) などと呼ぶ。対応、特に部分写像(あるいは右一意的二項関係){{math|''f'': ''A'' → ''B''}} に対し、{{math|(''a'', ''b'') ∈ ''R''<sub>''f''</sub>}} なる {{math|''b'' ∈ ''B''}} が存在するような {{math|''a'' ∈ ''A''}} 全体から成る始域の部分集合 {{math|''X'' ⊂ ''A''}} を {{mvar|f}} の'''定義域''' (domain of definition) という<ref>{{harvtxt|松坂|1968|pp=24-25}}など。</ref>。これは {{mvar|f}} の制限(後述)として得られる対応 {{math|''f'': ''X'' → ''B''}} が[[写像]]となることといっても同じである。対して、{{math|(''a'', ''b'') ∈ ''R''<sub>''f''</sub>}} なる {{math|''a'' ∈ ''A''}} が存在するような {{math|''b'' ∈ ''B''}} 全体からなる終域の部分集合 {{math|''Y'' ⊂ ''B''}} を {{mvar|f}} の'''値域'''という。 従って特に、写像 {{math|''f'': ''A'' → ''B''}} において、その定義域は始集合 {{mvar|A}} それ自身であるから、しばしば始域と定義域の概念は特に区別されない。写像 {{math|''f'': ''A'' → ''B''}} の定義域 {{mvar|A}} の各元 {{mvar|x}} に対応する終域 {{mvar|B}} の元を {{math|''f''(''x'')}} なる式で表すとき、{{mvar|x}} を {{mvar|f}} の[[引数]]と呼び、{{math|''f''(''x'')}} は {{mvar|f}} の {{mvar|x}} における'''値'''または {{mvar|x}} の {{mvar|f}} による[[像 (数学)|像]]と呼ぶ。{{mvar|f}} の[[値域]]または'''像'''は、定義域 {{mvar|A}} の各元の {{mvar|f}} による像となることのできる {{mvar|B}} の元全体の成す集合 {{math|''f''(''A'') {{=}} {''f''(''x'') ∈ ''B'' {{!}} ''x'' ∈ ''A''}}} に一致する。 == 定義域の制限と延長 == 任意の写像は、定義域をその任意の[[部分集合]]に限ることができる。写像 {{math|''g'': ''A'' → ''B''}} の {{math|''S'' ⊆ ''A''}} なる集合への'''[[制限 (数学)|制限]]''' (restriction) は {{math|''g''|<sub>''S''</sub>: ''S'' → ''B''}} と書く。逆に、写像 {{math|''f'': ''S'' → ''B''}} が {{math|''f'' {{=}} ''g''|<sub>''S''</sub>}} を満たすとき、''g'' は {{mvar|f}} の ''A'' への'''拡張'''あるいは'''延長''' (extension) であるという。 == 自然な定義域 == 数式の'''自然な定義域''' {{lang|en|(natural domain)}} とは、その式の値が(典型的には実数として、あるいは整数として、複素数としてなど)定義されるような引数(変数)として取りうる限りの値全体の成す集合をいう。例えば、平方根函数の自然な定義域は(それを実函数として考える限りにおいては)非負実数全体の成す集合である。また特に定義域に言及することなく写像の値域を扱う場合、それは自然な定義域を考えたときの、写像のとりうる値全体の成す集合のことであるのが普通である<ref>{{cite book|title=Calculus: basic concepts and applications|first1=Robert A.|last1=Rosenbaum|first2=G. Philip|last2=Johnson|page=60|year=1984|isbn=0-521-25012-9|publisher=Cambridge University Pressd}}</ref>。 == 例 == [[well-defined|きちんと定義された]]函数は、定義域の各元を終域の元へ写すものでなければならない。例えば、実函数 {{math|''f''(''x'') {{=}} 1⁄''x''}} は値 {{math|''f''(0)}} を持たないから、実数全体の成す集合 {{math|'''R'''}} はその定義域にはなり得ない。この場合、{{math|'''R''' ∖ {0}}} を自然な定義域と考えたり、{{math|''f''(0)}} を明示的に与えて「穴埋め」を考えたりすることもできる。例えば : <math>f(x)=\begin{cases} 1/x & (x\ne 0)\\ 0 & (x=0)\end{cases}</math> として {{mvar|f}} を延長すれば、これは任意の実数 ''x'' に対して定義することができるので、{{math|'''R'''}} を {{mvar|f}} の定義域に採用することができる。 このような函数の定義域の「穴埋め」は、しばしばそこで函数の持つ一貫した性質([[連続写像|連続性]]、[[微分可能函数|可微分性]]など)が失われ、[[特異点 (数学)|特異点]]を生じうる。それとは対照的に、[[複素解析]]において、見かけ上[[孤立点|孤立]]した特異点であるものが、[[滑らかな函数|滑らか]]または[[解析函数|解析的]]に延長して特異性を解消できる場合がある。このような特異点は[[可除特異点]]と呼ばれる。また、局所的に与えられた解析函数は[[解析接続|解析的延長]]の原則に基づいて大域的に定義域の延長を受ける。そのような可能な限りの延長を行って得られる(一価の)解析函数の定義域を自然な定義域<ref>{{MathWorld|urlname=NaturalDomain|title=Natural Domain}}</ref>と呼ぶことがある。 [[函数解析学]]においてしばしば部分写像であるような作用素が扱われ、作用素 {{math|''f'': ''X'' → ''Y''}} の定義域 {{math|''D''(''f'')}} が始域 {{mvar|X}} において[[稠密部分集合|稠密]]であるようなものがしばしば重要な役割を果たす。このように定義域が始域の中で稠密であるような部分写像は、[[密定義作用素|稠密に定義されている]]という。 == 注意 == 写像 {{math|''f'': ''X'' → ''Y''}} の場合には始域 (domain) {{mvar|X}} の全ての元 {{mvar|x}} に対して値 {{math|''f''(''x'')}} が定義されるから、その意味において定義域 (domain of definition) は {{mvar|X}} であり、始域と定義域を区別することは必要でない。しかし値 {{math|''f''(''x'')}} が未定義であることを許す[[部分写像]]に対しては差異が生じる。ゆえにこの場合、"domain of definition" を短く "domain" と呼ぶか否かは問題になる。 現代数学的な用法において部分写像 {{math|''f'': ''X'' → ''Y''}} の domain とは、定義域 (domain of definition) の事であるのが殆どであり、従って {{mvar|f}} の domain とは制限 {{math|''f'': ''X''′ → ''Y''}} が写像となるような {{mvar|X}} の最大の部分集合 {{mvar|X′}} である。 一方、[[圏論]]では写像のかわりに[[射 (圏論)|射]](対象から対象への矢印)を扱うが、射の'''域''' (domain) とは矢印のでている対象のことであり(矢の指している対象は射の'''余域''' (codomain) と呼ぶ)、部分写像などの場合に domain が定義域の事を指すのとでは流儀が異なる。この文脈では domain に関する集合論的な考え方の多くが使えなかったりより抽象的な形に定式化しなおされなければならない。例えば、射の域を[[部分対象]]へ制限するという概念は、写像の場合から修正を加えなければならない。そういった意味でこの文脈では、圏の射が部分写像で与えられるような圏の場合でも、上記とは異なり射としての部分写像 {{math|''f'': ''X'' → ''Y''}} の domain は(各点 {{math|''x'' ∈ ''X''}} で {{math|''f''(''x'')}} が定義されるか否かに関わらず){{mvar|X}} のことを言う。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} === 注釈 === {{Notelist}} === 出典 === <references /> == 参考文献 == * {{cite book|和書|author=松坂和夫|title=集合・位相入門|publisher=岩波書店|year=1968|isbn=978-4000054249}} * {{cite book|和書|author=銀林浩|title=集合の数学|publisher=明治図書出版|year=1971}} * {{cite book|和書|author=ジョン.L.ケリ-|translator=児玉之宏|title=位相空間論|publisher=吉岡書店|year=1968}} == 関連項目 == * [[単射]] * [[全射]] * [[全単射]] == 外部リンク == * {{MathWorld|urlname=Domain|title=Domain}} * {{PlanetMath|urlname=Domain|title=function}} {{DEFAULTSORT:ていきいき}} [[Category:写像]] [[Category:集合の基本概念]] [[Category:数学に関する記事]]
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