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[[Image:Real projective line.svg|right|thumb|実射影直線は{{仮リンク|射影的補完実数直線|en|projectively extended real line}}([[実数直線]]にただひとつの[[無限遠点]]を付け加えた、{{math|'''R'''}} の[[一点コンパクト化]])でモデル付けできる]] [[初等幾何学]]における'''実射影直線'''(じつしゃえいちょくせん、{{lang-en-short|''real projective line''}})は、通常の[[直線]]の概念の拡張で、歴史的には[[遠近法|透視図法]]に基づいて設定された問題を解決するために導入された。例えば[[平行線]]は決して交わらないが、透視図では「無限遠」で交叉するように見える。この問題の解決に際して[[無限遠点]]が導入され、そうして得られた[[実射影平面]]において、相異なる二つの射影直線はただ一点のみで交わる。このような無限遠点全体の成す集合は、平面透視図法における「地平線」であり、それ自身がひとつの実射影直線となる。これは任意の点に位置する観測者から発せられた方向を持つ円の、反対にある点を同一視したものである。実射影直線のモデルとして{{仮リンク|射影補完実数直線|en|projectively extended real line}}がある。透視図に地平線を表す直線を描くことで、無限遠に余分な点が地平線へ伸びる平行線の集まりを表現するために追加される。 厳密には、実射影直線は[[実数]][[可換体|体]]上[[次元 (線型代数学)|二次元]]のベクトル空間内の一次元[[部分線型空間]]全体の成す空間として定義される。これにより、[[実二次正方行列|2 × 2]] の[[正則行列]]全体の成す[[一般線型群]]が自然に作用する。このとき[[群の中心|中心]]に属する行列の作用は自明となるから、[[射影一般線型群]] {{math|''PGL''(2, '''R''')}} もまた射影直線に自然に作用する。これらは射影直線上の[[幾何学的変換]]群である。射影直線を実数直線位無限遠点を加えたものとして表すとき、射影線型群の元は[[一次分数変換]]として作用する。これら実射影直線上の変換は[[射影変換]]と呼ばれる。 位相幾何学的には、実射影直線は[[円周]]に[[同相]](位相的円周)である。実射影直線は[[双曲幾何学|双曲平面]]の境界を成すが、双曲平面上の任意の等距変換は境界である実射影直線上の幾何学的変換を一意的に誘導し、逆もまた成り立つ。さらに言えば、双曲平面上の任意の[[調和函数]]は、等距変換群の作用と両立する仕方で、射影直線上の分布の[[ポアソン核|ポワソン積分]]として与えられる。この位相的円周上には無数の両立可能な射影構造を持ち、そのような構造を持つ空間は(無限次元){{仮リンク|普遍タイヒミューラー空間|en|universal Teichmüller space}}と呼ばれる。実射影直線の複素数版は[[複素射影直線]]、いわゆる[[リーマン球面]]である。 == 定義 == 実射影直線上の各点は、ふつう適当な[[同値関係]]に関する[[同値類]]として定義される。出発点は二次元の[[ベクトル空間|実線型空間]] {{mvar|V}} で、{{math|''V'' ∖ 0}} 上の[[二項関係]] {{math|'''v''' ~ '''w'''}} を、適当な非零実数 {{mvar|t}} が存在して {{math|1='''v''' = ''t'''''w'''}} と書けることと定める。これが同値関係を定めることは線型空間の定義からほほ直ちにわかる。同値類は各ベクトルの張る直線から零ベクトルを除いたものになる。そうして、実射影直線 {{math|'''P'''(''V'')}} とはこの同値類全体の成す集合と定める。この集合において各同値類は単なる一点として考える(実射影直線上の「点」とはこの各同値類のことと定めると言ってもよい)。 {{mvar|V}} の基底を一つとれば、各ベクトルをその{{仮リンク|座標ベクトル|en|coordinates vector}}と同一視することにより、{{mvar|V}} は直積 {{math|1='''R''' × '''R''' = '''R'''{{msup|2}}}} と同一視できて、上記の同値関係は {{math|(''x'', ''y'') ~ (''w'', ''z'')}} となることを非零実数 {{mvar|t}} が存在して {{math|1=(''x'', ''y'') = (''tw'', ''tz'')}} とできることと言い換えられる。この場合、射影直線 {{math|'''P'''('''R'''{{msup|2}})}} のことは {{math|'''P'''{{msup|1}}('''R''')}} あるいは {{math|'''RP'''{{msup|1}}}} と書くのが望ましい。対 {{math|(''x'', ''y'')}} の属する同値類は、伝統的に {{math|[''x'' : ''y'']}} と書かれ、このコロン ":" は {{math|''y'' ≠ 0}} なるときの[[比]] {{math|''x'' : ''y''}} が同じ同値類に属する全ての対において同じ値であることを想起させる。点 {{math|''P''}} が同値類 {{math|{{bracket|''x'' : ''y''}}}} であるとき、代表元 {{math|(''x'', ''y'')}} を点 {{math|''P''}} の{{仮リンク|射影座標|en|projective coordinates}}対とも呼ぶ<ref>この {{math|'''P'''{{msup|1}}('''R''')}} の構成に用いた論法は任意の[[可換体|体]] {{mvar|K}} と任意の次元において用いることができて、[[射影空間]] {{math|'''P'''{{msup|''n''}}(''K'')}} が構成できる。</ref> {{math|'''P'''(''V'')}} が同値関係を通じて定義されたのに伴い、{{mvar|V}} から {{math|'''P'''(''V'')}} への[[商写像|標準射影]]が位相([[商位相]])を定め、射影直線上に{{仮リンク|可微分構造|en|differential structure}}が定まる。しかし、同値類が有限でないという事実は、この可微分構造を定義することを難しくする。これらのことは {{math|'''V'''}} を[[ユークリッドベクトル空間]]と看做せば解決できる。{{math|'''R'''{{msup|2}}}} の場合に、[[単位ベクトル]]全体の成す[[円周]]([[単位円]])は {{math|1= ''x''{{exp|2}} + ''y''{{exp|2}} = 1}} を満足する座標を持つベクトル全体の成す集合である。単位円は各同値類とちょうど対極にある二点で交わるから、{{math|'''v''' ~ '''w'''}} は {{math|1='''v''' = '''w'''}} または {{math|1='''v''' = −'''w'''}} なるときと定めて得られる単位円上の同値関係で単位円を割った商空間として射影直線を理解することができる。 {{see also|{{仮リンク|射影化|en|projectivization}}}} == チャート == 射影直線は[[位相多様体]]である。このことは上記の同値関係による構成を通じて確認することができるが、以下の二つの[[チャート (位相幾何学)|チャート]](地図)が[[アトラス (位相幾何学)|アトラス]](地図帳)を与えることを見るのが簡明である: * {{math|''φ''{{ind|1}}: {{bracket|''x'' : ''y''}} {{mapsto}} {{frac|''x''|''y''}} (''y'' ≠ 0)}} * {{math|''φ''{{ind|2}}: {{bracket|''x'' : ''y''}} {{mapsto}} {{frac|''y''|''x''}} (''x'' ≠ 0)}} 上記の同値関係によれば、同じ同値類に入る任意の代表元がこれらチャートのもとで同じ実数に写されるから、これは[[well-defined|定義可能]]である。 {{mvar|x}} か {{mvar|y}} の何れか一方は零となり得るが、ともに零となることはないので、この二つのチャートは射影直線を被覆しなければならない。この二つのチャートの間の[[座標変換写像]]は[[乗法逆元|逆数函数]]で与えられる。逆数函数は({{math|0}} を除いて)[[可微分函数]]であり、さらに[[解析函数]]でさえあるから、実射影直線は[[可微分多様体]]であり、さらに{{仮リンク|解析的多様体|en|analytic manifold}}でさえある。 チャート {{math|''φ''{{ind|1}}}} の[[逆函数]]は : <math> x \mapsto [x : 1]</math> なる写像であり、これは[[実数直線]]の射影直線の中への[[埋め込み (数学)|埋め込み]]を定義するが、その埋め込み像の射影直線に対する補集合はただ一点 {{math|{{bracket|1 : 0}}}} のみである。この埋め込みと射影直線との組を{{仮リンク|射影的補完数直線|en|projectively extended real line}}と呼ぶ。実数直線をこの埋め込みによる像と同一視することで、射影直線を実数直線と一点 {{math|{{bracket|1 : 0}}}}(これは射影的補完数直線上の[[無限遠点]] {{math|∞}} と呼ばれる)との[[合併 (集合論)|合併]]と看做すことができることが理解される。この埋め込みで点 {{math|[''x'': ''y'']}} を {{math|''y'' ≠ 0}} なるとき実数 {{math|{{sfrac|''x''|''y''}}}} と、さもなくば {{math|∞}} と同一視することができる。 もう一方のチャート {{math|''φ''{{ind|2}}}} についても同じことができて、今度は無限遠点は {{math|[0: 1]}} になる。このことから、無限遠点の概念は実射影直線において内在的なものではなく、実数直線の射影直線への埋め込みの取り方に依存して決まるものであることであることが理解される。 == 構造 == 実射影直線は[[実射影平面]]内の、あるいは[[複素射影直線]]内の、[[完備距離空間|完備]]な{{仮リンク|射影領域|en|projective range}}である。したがって、その構造はこれら外部構造 (superstructure) から遺伝する。そのような構造の中で第一は、射影領域内の点の間に成り立つ[[射影調和共軛]]である。 実数直線が[[全順序]]かつ{{仮リンク|順序完備|en|Completeness (order theory)|label=完備}}であったのに対し、実射影曲線は{{仮リンク|巡回順序|en|cyclic order}}を持つことは重要な[[数学的構造]]である<ref>Bruce E. Meserve (1955) {{Google books|Y6jDAgAAQBAJ|Fundamental Concepts of Geometry|page=89}}</ref>。巡回順序は適切な演繹に必要となる性質である{{仮リンク|分離関係|en|separation relation}}によって対処される。 == 自己同型群 == {{math|'''P'''{{msup|1}}('''R''')}} 上の写像は[[射影変換]] (homography, projectivity) と呼ばれる。これら自己同型は{{仮リンク|中心射影|en|central projection}}あるいは{{仮リンク|平行射影|en|parallel projection}}およびそれらの合成によって人為的に構成することができる。斉次座標系を用いれば、[[自己同型群|自己同型の全体]]は[[射影線型群]] {{math|''PGL''(2, '''R''')}} によって与えられる。これは[[実二次正方行列|実二次の正方行列]]を互いに定数倍のみ異なるもの同士で同一視したものによって得られる。 具体的には、{{math|''PGL''(2, '''R''')}} の元は、{{mvar|x}} を射影直線上のアフィン座標とする[[一次分数変換]] :<math>x\mapsto \frac{ax+b}{cx+d}\quad (ad-bc \ne 0)</math> によって実現される。 群 {{math|PGL(2, '''R''')}} は実射影直線上三重推移的、つまり相異なる点の三つ組が二つ与えられたとき、必ず一方の三つ組を他方の三つ組に写す自己同型写像がただ一つ存在する。任意の一点の(特に「無限遠点」の)一点固定群は、直線のアフィン群になる。 {{math|''PGL''(2, '''R''')}} は、[[ローレンツ群]]の部分群である擬直交群 {{math|SO{{msub|o}}(1,2)}} に同型であるから、実射影直線上の自己同型はローレンツ変換として表すことができる。例えば[[ローレンツブースト]] : <math>f(x)=\frac {x + v/c}{xv/c + 1}</math> {{math|1=''f''(1) = 1, ''f''(–1) = –1, ''f''(0) = ''v''/''c''}} なる性質を持つ<ref>V.V. Prasolov & V.M. Tikhomirov, O.V. Sipacheva translator (2001) ''Geometry'', pages 90, 138, 139, Translations of Mathematical Monographs 200, [[American Mathematical Society]] ISBN 0-8218-2038-9</ref> {{math|{{unicode|ℤ ⊂ ℝ ⊂ ℂ}}}} であるから、射影変換群 {{math|''PGL''(2, '''R''')}} は[[モジュラー群]] {{math|''PGL''(2, '''Z''')}} と[[メビウス群]] {{math|''PGL''(2, '''C''')}} の中間にある。 == 注 == {{Reflist}} == 参考文献 == * Juan Carlos Alvarez (2000) [http://www.math.poly.edu/courses/projective_geometry/chapter_two/chapter_two.html The Real Projective Line], course content from [[New York University]]. * Santiago Cañez (2014) [http://math.northwestern.edu/~scanez/courses/math340/winter14/handouts/projective.pdf Notes on Projective Geometry] from [[Northwestern University]]. {{DEFAULTSORT:しつしやえいちよくせん}} [[Category:射影幾何学]] [[Category:多様体論]] [[Category:数学に関する記事]]
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