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{{出典の明記|date=2014年3月}} '''寄生容量'''(きせいようりょう、{{Lang-en-short|stray capacity}})は、'''浮遊容量'''(ふゆうようりょう)、'''漂遊容量'''(ひょうゆうようりょう){{sfn|電子情報通信学会編|1984|p=686}}とも呼ばれ、[[電子部品]]の内部、あるいは[[電子回路]]の中、またモーターコイルなどの導体とフレームや外部筐体などの導体間、さらに電源ケーブルと床(大地)間など、それらの物理的な構造(導体‐絶縁体-導体の構成)に起因する、設計者が意図しない電荷を蓄えることができる[[静電容量|容量成分]]のことである。長い電源ケーブルは特に大きな静電容量があり、大電流がスイッチング制御されるモーターやヒーターでは高周波の強い[[電波障害|EMI]]が発生する為、対地間との寄生容量に大きな電荷が蓄積されることがある。金属の筐体を接地する目的は、人体を感電から守る保護接地が知られているが、誘導により蓄積する電荷を大地へ逃がす機能接地の役割も大きい。電磁波が発生しやすい素子を静電シールドし筐体へボンディングすることも、寄生容量の電荷を逃がす目的である。 [[インダクタ]]、[[トランジスタ]]、[[ダイオード]]、[[抵抗器|抵抗]]などの電子部品は、回路図の上では目的の機能のみを持つ理想的な[[素子]]として扱われる。しかし、現実の部品には本来の機能だけではなく、[[電気抵抗|抵抗成分]]、[[静電容量|容量成分]]、[[誘導成分]]などが必然的に現れる。 また、[[プリント基板]]上において複数の導線パターンが近接していると、それぞれの導線を電極とする微少な容量成分が寄生容量となる。同じ現象は複数の配線が接近している場合にも発生する。フォトカプラで使用されるLEDはスイッチングノイズなどが素子内の寄生容量に誘導し、誤点弧することが知られている。その為、誤点弧に弱いモノリシック構造を改善した分離構造型のフォトカプラも開発されている。 == 状況の描写 == 異なった[[ポテンシャル |電位]]における二つの伝導体が互いに近いとき、[[コンデンサ]]のように、それらは互いに他方の[[電場]]によって影響を受け、向かい合った[[電荷]]を貯める。伝導体の間のその電位の変化 <math> v </math> は、それら伝導体を蓄電または放電するかのような中へのまたは外への、ある電流 <math>i</math> を要求する。 :<math>i = C \frac{dv}{dt} \,</math> ここに、 <math>C</math> はその伝導体の間の容量である。たとえば、[[インダクタ]]は、それの立体的に密集した[[コイル]]のゆえに、しばしばそれがあたかも平行なコンデンサを含んでいるかのような振る舞いをする。 == 例 == 例えば[[コイル]]は、近接する[[巻線]]間の容量により、コイルに並列して[[コンデンサ]]が接続されているような振る舞いをする。コイルの両端に[[電位差]]があると、それぞれが異なった電位で隣接している各巻線は、コンデンサの電極板のように振る舞い、[[電荷]]を蓄積する。コイルにかかる[[電圧]]がどのように変化しても、これらの微少な容量に[[蓄電]]や[[放電]]をするための余分な[[電流]]が流れることになる。 [[低周波回路]]のように、電圧変化が比較的低速で行われるなら、この余分な電流は通常は無視できる。しかし、電圧変化がすばやく行われる場合は、この充電電流も大きくなり、回路の動作を支配するようになる。 == 影響 == 低周波回路では寄生容量は通常無視できるが、[[高周波回路]]においては重要な問題になる。 [[増幅回路]]において、入出力間の寄生容量は回路を[[発振]]させる[[帰還路]]として働く。この意図せざる発振は寄生発振と呼ばれる。 [[オペアンプ]]の出力に接続される[[負荷]]回路の容量成分は[[帯域]]を狭める。 高周波回路では、寄生容量の影響を下げるため、配線や部品を注意深く分離するような特別な実装技術が要求される。その手法として、[[ガードリング]]、[[グラウンドプレーン]]、[[電源プレーン]]、入出力のシールド、[[ラインターミネート]]、[[ストリップライン]]などの技法が使われる。 トランジスタのような能動素子においては、[[コレクター|コレクタ]]=ベース間の寄生容量が素子の[[高周波特性]]を制限する主要な要素となる。 1930年代に[[真空管]]の[[コントロールグリッド]]と[[プレート]]の間に[[スクリーングリッド]]が設けられ、利用周波数の増大につながった。 [[コンピュータ]]では、[[バス (コンピュータ)|バス]]や[[ケーブル]]の距離が近いと、寄生容量による結合で[[クロストーク]]が発生する。その結果として信号の混乱や誤動作が発生することがある。 === ミラー容量 === {{main|[[ミラー効果]]}} [[トランジスター]]のベースとコレクターの間のような、''転回増幅装置''({{lang-en-short|inverting amplifying device}})の入力と出力の電極の間の寄生容量は厄介である。<ref>真空管の場合については、{{harv|三戸|1956}}, pp. 8-11 を参照のこと。以下同じ。</ref>なぜならそれはその装置の[[利得 (電気工学)|利得]]によって増えるからである。この''ミラー容量''(1920年に{{日本語版にない記事リンク|ジョン・ミルトン・ミラー|en|John Milton Miller}}によって真空管において最初に注目された)は、トランジスターや[[真空管]]のような''能動装置''({{lang-en-short|active device}})の高周波性能を制限する主要な要素である。<ref>{{harv|三戸|1956}}, pp. 10</ref> == 集積回路における寄生容量 == 初期の[[集積回路]]は集積度も動作周波数も低かったため、配線の影響は無視できた。その当時の回路においては、配線は回路要素としては考えられなかった。しかしながら0.5ミクロンプロセスルールのもとでは、内部交差の抵抗と容量が回路の動作に重要な影響を与え始めている。内部寄生容量における重要な影響として、[[信号ノイズ]]と[[信号遅れ]]が含まれる。 == 脚注 == {{Reflist}} == 参考文献 == * {{cite book |和書 |author =電子情報通信学会編 |year =1984 |title =電子通信用語辞典 |publisher =[[コロナ社]] |ref =harv }} * {{cite book |和書 |last =三戸 |first =左内 |year =1956 |title =超短波真空管 |series =電子工学講座 |publisher =[[オーム社]] |ref =harv }} == 関連項目 == * {{日本語版にない記事リンク|寄生要素 (電気回路)|en|parasitic element (electrical networks)}} [[Category:電子部品|きせいようりょう]] [[Category:電気回路|きせいようりょう]] [[Category:電子工学|きせいようりょう]]
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