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{{出典の明記|date=2011年6月}} [[File:ConvectionCells.svg|thumb|right|300px|上と下とで温度差のある流体での、対流の一例。下から入力された熱は、対流によって流体上部へと運ばれ、流体表面からの熱放出によって冷やされた後は流体下部へと潜る。流体中の矢印はセルの形状を示し、レーリー数やプラントル数によって大きく変化する。]] '''対流'''(たいりゅう、{{lang-en|convection}})とは、[[流体]]において[[温度]]や[[表面張力]]などが原因により不均質性が生ずるため、その内部で重力によって引き起こされる流動が生ずる現象である。 [[地球]]の[[大気]]においては、大気の鉛直方向の運動は高度 0 [[キロメートル]]から約 11 キロメートルの層に限られ、この領域を[[対流圏]]と呼ぶ。また地球や[[惑星]]の内部では、対流により内部の熱源から地表面への熱輸送が生じており、地表面の変動を引き起こす原因となっている。 近年、計算機の性能が向上し、流体の[[運動方程式]]([[ナビエ-ストークスの式]])を高精度に計算することが可能となったため、コンピュータを用いた[[シミュレーション]]による対流現象の研究が盛んに行われており、[[工学]]的な技術としても重要な分野である。また[[惑星]]内部の対流など、実験・観測が不可能な領域における流体の挙動を理論的に解明する研究も行われている。 == 鉛直対流 == 上層ほど密度の大きな流体が静力学的不安定となり、流体の運動が生ずる対流を鉛直対流と呼ぶ。温度による流体の密度の変化が原因となる'''熱対流'''が最も一般的な例である。 熱対流の体系的な研究は、[[1900年]]にフランスの{{仮リンク|アンリ・ベナール|fr|Henri Bénard}}による実験から始まった。[[パラフィン]]、鯨油などの粘性の高い流体層の下面を一様に加熱すると、加熱された流体は[[浮力]]により上昇するため、流体内部に半定常的な[[細胞]]状の模様(対流セル)が形成されることがある。細胞の中心付近では上昇流、境界付近では下降流になっている。これを'''[[ベナール・セル]]'''と呼ぶ。[[1916年]]にレーリー卿は、その理論的な解析を行った。そのことから細胞状のパターンが生ずる熱対流を'''レーリー=ベナール型対流'''と呼ぶ。 [[ブジネスク近似]]([[熱膨張]]による[[密度]]変化に比べて、膨張圧縮による密度変化が無視できる流体)が成り立つ流体におけるレーリー=ベナール型対流は、実際の流体の厚さには直接関係無く、[[レーリー数]]<math>Ra</math>と[[プラントル数]]<math>Pr</math>と呼ばれる無次元の物理量によってその形状が決まる。対流が発生する最小のレーリー数を'''臨界レーリー数'''と呼び、その値は(流体系の上下とも固定境界の時は)約1,708である。それを超えると順に2次元の円筒形の対流セル、3次元の規則性の対流セルへと対流が発達する。レーリー数が非常に大きくなると(流体上下の温度差が大きくなるなど)[[乱流]]に遷移し、この時定常的なセルは生じず空間スケールがより小さな不規則な流れとなる。またレーリー数が大きい場合には、流体の流れにより鉛直方向への熱の輸送量が大きくなる。 地表付近の大気などの密度成層(下層ほど密度が高くなる状態)、あるいは回転系における流体などでは、対流の程度についてそれぞれの系に合わせた別の定義がされる。[[雲]]の形成など大気中の現象では、[[水蒸気]]の凝結による[[潜熱]]の影響が現れる。[[惑星]]など中心に向けて重力場を持つ回転球体における流体では、回転軸の周囲に、平行に円筒系のセルが並ぶような対流の形状を取ることが知られている。 地球内部の[[マントル]]における対流により、地球表面の大規模な変動(テクトニクス)が引き起こされる[[プルームテクトニクス]]理論が提唱されている。この場合のプルームとは、対流セルによって生ずる上昇流や下降流のことを意味する。 [[海洋]]内部においても密度によって循環が生じている([[熱塩循環]])。ただしこの場合は[[塩分濃度]]の影響が大きいことから、対流には含まないことが多い。 == 水平対流 == 流体に水平方向の温度差が与えられた場合に生ずる流体の運動が水平対流である。大気においては、大陸と海洋の温度差によって生ずる'''季節風'''、海岸の近くにおける地表面と海面の温度差によって生ずる'''海陸風'''、都市部の気温が上昇すること([[ヒートアイランド]]現象)により都心に吹き込む風が生ずる'''郊外風'''などが水平対流に分類される。 地球大気において、緯度によって太陽放射の吸収量が異なるために生ずる熱帯から極への水平対流([[大気大循環]])は、大きく3つに分類でき、熱帯にあるものを'''[[ハドレー循環]]'''、中緯度にあるものを'''[[フェレル循環]]'''、極にあるものを'''[[極循環]]'''と呼ぶ。 == マランゴニ対流 == マランゴニ対流とは、流体表面の[[表面張力]]が不均質になることが原因で流体の流れが駆動される対流のことである。名前はイタリアの物理学者{{仮リンク|カルロ・マランゴニ|en|Carlo Marangoni}}にちなむ。マランゴニ対流が起きると表面張力の低いほうから高いほうへ流れが生じ、周りの液体の表面張力を下げるように広がっていく。最初の表面張力の変化は主に[[温度]]差、[[濃度]]差が原因となる。ひとたびマランゴニ対流が発生すると、流れにより温度や濃度が不均質になるため、ある条件では準定常的な対流が持続する。 [[珪素|シリコン]]などの半導体材料を溶融し、冷却して再結晶させる過程でマランゴニ対流が発生するため、均質な単結晶を生成することが難しくなることが知られている。 マランゴニ対流の解析には、次のマランゴニ数''Ma'' という[[無次元量]]が用いられる<ref>{{cite|和書 |title=コンピュータによる流体力学 |author=Joel H. Ferziger |author2=Milovan Perić |translator=小林敏雄、谷口伸行、坪倉誠 |publisher=シュプリンガー・フェアラーク東京 |year=2003 |isbn=4-431-70842-1 |page=378}}</ref>。 : <math> Ma=-\frac{\partial\sigma}{\partial T}\frac{\Delta T L}{\mu\kappa}</math> ここで * σ:表面張力 * ''T'' :温度(温度差によるマランゴニ対流の場合) * Δ''T'' :代表温度差 * ''L'' :代表長さ * μ:粘性 * κ:[[温度拡散率]] である。 定常状態では表面張力{{math|σ}}の勾配と流れが次式で関連付けられる<ref>{{cite|和書 |editor= |author=Hans-Jürgen Butt, Karlheinz Graf, Michael Kappl; 鈴木祥仁, 深尾浩次 共訳 |title=界面の物理と科学 |edition= |publisher=丸善出版 |year=2016 |isbn=978-4-621-30079-4 |page=50}}</ref>: :<math>\mu\frac{d v_x}{dz} = \frac{d \sigma}{dx}</math> ここで{{math|''x''}}と{{math|''z''}}はそれぞれ水平方向と鉛直方向の座標、{{math|''v{{sub|x}}''}}は水平方向の流速である。 == 強制対流 == 流体力学や伝熱工学の分野では上記の特に熱対流を'''自然対流'''や'''自由対流'''(natural convection)と呼び、ブロアやポンプ等の外部から引き起こされた'''強制対流'''(forced convection)と区別することが多い. == 参考文献 == {{reflist}} == 関連項目 == {{Commonscat|Convection}} * [[流体力学]] * [[地球物理学]] - [[熱塩循環]] * [[ナビエ-ストークスの式]] * [[浮力]] * [[乱流]] * [[対流圏]] * [[ハドレー循環]] * [[プルームテクトニクス]] * [[雲形]]、[[積乱雲]] * [[伝熱]]、[[熱伝導]]、[[放射]] * [[移流]] == 外部リンク == {{節スタブ}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:たいりゆう}} [[Category:流体力学]] [[Category:地球物理学]] [[Category:物理化学の現象]] [[Category:熱]] [[Category:伝熱]] [[Category:対流|*]]
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