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対称性の破れ
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[[ファイル:Spontaneous symmetry breaking from an instable equilibrium.svg|サムネイル|対称性の破れを説明する簡単な図。上の図で示された、中央の山の上にボールが乗っている[[系 (自然科学)|系]]は、初期状態では左右対称である。しかし、このボールは不安定であり、[[摂動]]によって左右どちらかに転がり落ちた時、対称性は失われる。]] '''対称性の破れ'''(たいしょうせいのやぶれ, Symmetry breaking, Symmetry violation)とは、[[物理学]]において、対象の[[対称性 (物理学)|対称性]]が失われることをいう<ref>{{Cite web|和書|title=対称性の破れとは|url=https://kotobank.jp/word/%E5%AF%BE%E7%A7%B0%E6%80%A7%E3%81%AE%E7%A0%B4%E3%82%8C-1612389|website=コトバンク|accessdate=2022-01-02|language=ja|last=日本大百科全書(ニッポニカ),デジタル大辞泉}}</ref>。 == 概要 == 無秩序な系は、どの方向から見ても同様に無秩序であるという意味で、高い対称性をもつ([[等方的と異方的|等方的]]である)と考えることできる。ここで、そういった高い対称性をもつ無秩序な系が、より規則的で、より対称性が低い状態へと変わることを、対称性の破れという。対称性の破れは、[[臨界点]]を交差して[[系 (自然科学)|系]]に作用する[[摂動]]が、系の[[分岐 (力学系)|分岐]]の方向を決定する[[現象]]であり、[[w:Pattern formation|パターン形成]]において主要な役割を担うと考えられている。 1972年、[[ノーベル物理学賞|ノーベル賞受賞者]][[フィリップ・アンダーソン]]は、[[還元主義]]のいくつかの欠点を示すために''More is different''というタイトルの[[サイエンス]]誌の論文<ref>{{cite journal | last=Anderson | first=P.W. | title=More is Different | journal=Science | volume=177 | issue=4047| pages=393–396 | year=1972 | url=http://www.isnature.org/Files/Anderson_More_is_Different.pdf | doi=10.1126/science.177.4047.393 | pmid=17796623}}</ref>で、対称性の破れの概念を用いた。 対称性の破れには、大きく分けて次の三種類が知られている。 * 明示的な対称性の破れ * 自発的な対称性の破れ * 量子異常による対称性の破れ ==明示的な対称性の破れ== {{main|明示的対称性の破れ}} 理論には対称性が高い精度で存在するが、[[ラグランジアン]]および[[運動方程式]]に対称性を破る小さな項が含まれていることを指す。対称性を満たすとして理論計算したところを出発点とした[[摂動]]によって系を理解することが出来る。明示的対称性の破れは、系を記述している法則がそれ自身、問題になっている対称性の下で不変ではない時に起こる。 [[標準模型|標準モデル]]における「[[CP対称性の破れ]]」がこの一例である。1981年において最新の観測結果であった[[ボトムクォーク]]の寿命が理論予測よりも大きいという事実に基づき、B中間子系で観察できるという事が、A.B.Carterと[[三田一郎]]によって指摘された。これによって、B中間子系がクォーク混合とCP対称性の破れを観測するには重要であると認識されることとなった。なお、[[クォーク]]混合に関しては、理論から予測されるよりも数が少ない[[太陽ニュートリノ]]の減少を説明できる[[ニュートリノ振動]]とも密接な繋がりを持つ現象である。 ==自発的な対称性の破れ== {{main|自発的対称性の破れ}} [[自発的対称性の破れ]]は、理論のラグランジアンや運動方程式自体は対称性を持つが、[[真空]]が対称性を破っている場合を言う。このとき、系の背景([[真空]])が非不変であるため、系の法則は不変だが系自体が不変でないように見える。そのような対称性の破れは[[秩序パラメータ]]によってパラメータ化される。自発的対称性の破れの特別なものが[[w:dynamical symmetry breaking|力学的対称性の破れ]]である。 ワインの瓶は回転対称であるが、系がもっとも低エネルギーの点を探した結果、ワインの瓶底の一点に落ちると、その点は回転対称でないことを想像すればイメージが掴みやすい。その際、ワイン底に沿って小さなエネルギーで転がることが出来るが、これを量子化した粒子を南部ゴールドストーン・[[ボーズ粒子|ボソン]]と言う。 [[ヒッグス粒子|ヒッグス機構]]は、この南部ゴールドストーンボソンが[[ゲージ場]]と結合して質量のあるベクトル粒子となる機構である。 == 量子異常による対称性の破れ == [[古典論]]の段階では理論の[[ラグランジアン]]に対称性があるが、[[量子化 (物理学)|量子化]]に伴ってその対称性が失われてしまう現象を''量子異常による対称性の破れ''と言う。代表的な例として、古典的には<math>\pi^0</math>[[中間子]]は二つの[[光子]]には対称性のため崩壊できないが、場の量子論では崩壊できることが示され実験と一致している。 == 関連項目 == * [[CPT定理]] * [[小林・益川理論]] * [[ヒッグス機構]] == 脚注 == {{reflist}} ==外部リンク== *[http://www.kek.jp/newskek/2003/janfeb/belle-cp2.html KEKニュース・ベル実験]{{リンク切れ|date=2020年5月}} * {{Kotobank}} {{DEFAULTSORT:たいしようせいのやふれ}} [[Category:素粒子物理学]] [[Category:対称性]] [[Category:数学に関する記事]]
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