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{{Refimprove|date=December 2009}} [[数学]]の特に[[射影幾何学]]における'''射影直線'''(しゃえいちょくせん、{{lang-en-short|''projective line''}})は、俗に言えば通常の[[直線]]に[[無限遠点]]と呼ばれる補助的な点を付け加えて延長したものである。これにより、[[初等幾何学]]における多くの定理の主張や証明が(特別な場合を除く必要が無くなり)簡素な記述になる。例えば、二つの相異なる射影直線は[[射影平面]]においてちょうど一点において交わる(「[[平行]]」な場合は存在しない)。 射影直線の定式化には同値な多くの方法が存在する。もっとも広く用いられるのは、射影直線を二次元[[ベクトル空間]]内の一次元[[部分線型空間]]全体の成す集合として定義するものである。これはより一般の[[射影空間]]の定義の特別の場合になっている。 == 斉次座標系 == [[可換体|体]] {{mvar|K}} 上の射影直線 {{math|'''P'''{{msup|1}}(''K'')}} の各点は{{仮リンク|斉次座標系|en|homogeneous coordinates|label=斉次座標}}(の[[同値類]])によって表される。これは {{mvar|K}} の同時には零にならない元の対 : <math>[x_1 : x_2]</math> として書かれ、この形の二つの対に対して一方が他方の非零定数倍となるならば[[同値関係|同値]]: : <math>[x_1 : x_2] \sim [\lambda x_1 : \lambda x_2]\quad (\exists\lambda\ne 0)</math> というものである。 == 直線を無限遠点まで延長する == {{math|'''P'''{{msup|1}}(''K'')}} は「直線」{{mvar|K}} を[[無限遠点]]で延長したものと同一視することができる。より具体的には、直線 {{mvar|K}} は {{math|'''P'''{{msup|1}}(''K'')}} の {{math|{{mset|[''x'' : 1] ∈ '''P'''{{msup|1}}(''K'') | ''x'' ∈ ''K''}}}} なる部分集合と同一視され、これは「無限遠点」 {{math|∞ {{=}} [1 : 0]}} をただ一点だけ除く全ての {{math|'''P'''{{msup|1}}(''K'')}} の各点を被覆する。 この標準的な埋め込みに従って {{mvar|K}} 上の[[四則演算|算術]]を、以下のような追加の規則: : <math>\frac{1}{0}=\infty,\quad \frac{1}{\infty}=0,</math> : <math>x\cdot \infty = \infty \quad(x\ne 0),</math> : <math>x+ \infty = \infty \quad(x\ne \infty)</math> を定めて {{math|'''P'''<sup>1</sup>(''K'')}} まで延長することができる。斉次座標に関して書けば、(式中に {{math|[0 : 0]}} が発生しない限りにおいて) : <math>[x_1 : x_2] + [y_1 : y_2] = [x_1 y_2 + y_1 x_2 : x_2 y_2],</math> : <math>[x_1 : x_2] \cdot [y_1 : y_2] = [x_1 y_1 : x_2 y_2],</math> : <math>[x_1 : x_2]^{-1} = [x_2 : x_1]</math> が成り立つ。 == 例 == === 実射影直線 === {{Main|実射影直線}} [[File:Real projective line.svg|right|100px]] [[実数]]体 {{math|'''R'''}} 上の射影直線を'''実射影直線'''と呼ぶ。これは[[実数直線]] {{math|'''R''' {{=}} '''R'''{{msup|1}}}} に理想化された一つの[[無限遠点]] {{math|∞}} を付け加えたものとしても考えられ、{{math|'''R'''{{msup|1}}}} の両端点は無限遠で接合されて閉路([[同相|位相的な意味で]]の円周)を成す。 これは例えば、実平面 {{math|'''R'''{{msup|2}}}} の各点を[[単位円|単位円周]]の上への射影して{{仮リンク|対蹠点 (数学)|en|Antipodal point|label=対蹠点}}を同一視することで得られる。[[群論]]の言葉で言えば、[[円周群]]をその部分群 {{math|{{mset|1, −1}}}} で割った剰余群である。 実数直線 {{math|'''R'''{{msup|1}}}} に相異なる二つの無限遠点 {{math|∞, −∞}} を付け加えて得られる[[補完数直線]]の場合と比較せよ。 === 複素射影直線 === {{main|リーマン球面#複素射影直線としてのリーマン球面}} [[File:RiemannKugel.svg|right|100px]] [[複素数]]体 {{math|'''C'''}} 上の射影直線を'''複素射影直線'''と呼ぶ。複素直線([[複素数平面]]、ガウス平面){{math|'''C''' {{=}} '''C'''{{msup|1}}}} に一つの無限遠点 {{math|∞}} を付け加えて得られる空間は、位相的には[[球面]]となる。故に複素射影直線は[[リーマン球面]]とも呼ばれる(ガウス球面と呼ばれることもある)。これはもっとも単純な{{仮リンク|コンパクトリーマン面|en|compact Riemann surface}}の例として[[複素解析]]、[[代数幾何学]]、[[複素多様体]]論などで常用される。 === 有限射影直線 === {{mvar|q}}-元からなる[[有限体]] {{math|'''F'''{{ind|''q''}}}} 上の射影直線は {{math|''q'' + 1}} 点からなる。他の全ての側面に関して他の種類の体上の射影直線と何ら変わることはない。例えば、斉次座標 {{math|[''x'' : ''y'']}} を用いれば、このうちの {{mvar|q}} 点は {{math|[''a'' : 1] (''a'' ∈ '''F'''<sub>''q''</sub>)}} の形で得られ、残る無限遠点は {{math|[1 : 0]}} で表される。 == 対称性の群 == 極めて一般に、{{mvar|K}} に[[係数]]を持つ[[射影変換]]群が射影直線 {{math|'''P'''{{msup|1}}(''K'')}} に作用する。この群はこれら変換が射影的な特性を持つことを強調して[[一般射影線型群| {{math|''PGL''{{msub|2}}(''K'')}}]] と書かれる。この作用は[[群作用#作用の種類|推移的]]であり、したがって {{math|'''P'''{{msup|1}}(''K'')}} は {{math|''PGL''{{msub|2}}(''K'')}} の[[等質空間]]となる。作用が推移的であるとは、任意の点 {{math|Q}} を別の任意の点 {{math|R}} に写すような射影変換が必ず存在するということである。従って {{math|'''P'''{{msup|1}}(''K'')}} 上の「無限遠点」とは座標系を選んだことによって生じた「人工物」に過ぎないのである。実際、{{仮リンク|斉次座標|en|homogeneous coordinates}} {{math|[''X'' : ''Y''] ~ [''λX'' : ''λY'']}} は二次元平面の非零な点 {{math|(''X'', ''Y'')}} が載った一次元部分空間を表すが、射影直線の対称性によって点 {{math|1=∞ = [1 : 0]}} は他の点に写されるのだから、それらを区別する必要はない。 より強い事実が成立する。相異なる任意の三点 {{math|Q{{ind|''i''}} (''i'' {{=}} 1, 2, 3)}} が与えられたとき、それを適当な射影変換を選んで他の任意の三点 {{math|R{{ind|''i''}} (''i'' {{=}} 1, 2, 3)}} に写すことができる(三重推移性)。組に属する点の数は、{{math|''PGL''{{msub|2}}(''K'')}} は三次元なので、これ以上増やすことができない。即ち、この群作用は鋭三重推移的である。このことの計算論的側面として [[複比]]がある。実際、逆のことが一般化された形で成り立つ: 「体」を「KT-体」(乗法逆元をとる操作を適当な種類の[[対合]]に一般化する)に置き換え、「PGL」もそのような場合の射影線型写像に一般化して考えるとき、任意の鋭三重推移的群作用は必ず射影直線への一般化された {{math|''PGL''{{msub|2}}(''K'')}} の作用に同型である<ref>[http://mathoverflow.net/questions/66865/action-of-pgl2-on-projective-space Action of PGL(2) on Projective Space] – see comment and cited paper.</ref>。 == 代数曲線としての性質 == 射影直線は[[代数曲線]]の基本的な例である。代数幾何学の観点からは、{{math|'''P'''{{msup|1}}(''K'')}} は[[種数]] {{math|0}} の[[代数多様体の特異点|非特異曲線]]になる。{{mvar|K}} が[[代数閉体]]ならば、そのような曲線は{{mvar|K}}-{{仮リンク|有理同値|en|rational equivalence}}の[[違いを除いて]]一意である。一般に、種数 {{math|0}} の非特異曲線は {{mvar|K}} 上の[[円錐曲線]] {{mvar|C}} に {{mvar|K}}-有理同値であり、それ自身が射影直線と双有理同値となるための必要十分条件は {{mvar|C}} が {{mvar|K}} 上定義された点 {{math|P}} を持つことである。幾何学的にはそのような点 {{math|P}} を明示的な双有理同値を作るための原点として利用できる。 射影直線の[[代数多様体の函数体|函数体]]は、一つの不定元 {{mvar|T}} に関する {{mvar|K}} 上の[[有理函数]]体 {{math|''K''(''T'')}} である。{{math|''K''(''T'')}} の {{mvar|K}}-[[自己同型]]群は、上でも述べた {{math|''PGL''{{msub|2}}(''K'')}} に他ならない。 {{mvar|K}} 上の[[代数多様体]] {{mvar|V}} の任意の函数体 {{math|''K''(''V'')}} は(一点を除いて){{math|''K''(''T'')}} に同型な部分体を含む。[[双有理幾何学]]の観点からは、これは {{mvar|V}} から {{math|'''P'''{{msup|1}}(''K'')}} への定数でない{{仮リンク|有理写像|en|rational map}}が存在することを意味する。その像は {{math|'''P'''{{msup|1}}(''K'')}} の有限個の点のみが落ちており、また典型点 {{math|P}} の逆像は次元 {{math|dim ''V'' − 1}} となる。これは代数幾何学における次元に関する帰納的方法の出発点である。有理写像は[[複素解析]]における[[正則函数]]に対応する役割を果たし、そして実際{{仮リンク|コンパクトリーマン面|en|compact Riemann surface}}の場合には両者の概念は一致する。 いま {{mvar|V}} を一次元とすれば、{{math|'''P'''{{msup|1}}(''K'')}} の「上に」存在する典型代数曲線 {{mvar|C}} の描像が得られる。{{mvar|C}} は非特異と仮定して(これは {{math|''K''(''C'')}} から始めて一般性を失わない)、そのような有理写像 {{math|''C'' → '''P'''{{msup|1}}(''K'')}} が実は至るところ定義されることが証明できる(特異点が存在する場合にはこの限りでない。実際、例えば曲線が自己交叉する[[二重点]]を有理写像で写した結果は不定となりうる)。このことが描写する主要な幾何学的特性は[[分岐 (数学)|分岐]]である。 例えば[[超楕円曲線]]のような、多くの直線が射影直線の[[分岐被覆]]として抽象的に表すことができる。[[リーマン–フルヴィッツの公式]]によれば、種数は分岐の種類のみに依存する。 '''有理曲線'''とは射影直線と双有理同値な曲線を言い([[有理多様体]]を参照)、その種数は {{math|0}} である。射影空間 {{math|'''P'''{{msup|''n''}}}} 内の{{仮リンク|有理正規曲線|en|rational normal curve}} は、真の部分線型空間内に含まれることのない有理曲線をいう。その射影同値の違いを除いて唯一知られた例<ref>{{citation|title=Algebraic Geometry: A First Course|volume=133|series=Graduate Texts in Mathematics|first=Joe|last=Harris|publisher=Springer|year=1992|isbn=9780387977164|url=https://books.google.com/books?id=_XxZdhbtf1sC&pg=PA10}}.</ref>は、斉次座標に関して : {{math|[1 : ''t'' : ''t''{{exp|2}} : … : ''t''{{exp|''n''}}]}} と媒介変数を用いて与えられる。最初の興味深い例は{{仮リンク|ひねられた三次曲線|en|twisted cubic|label=三次撓線}}の項を見よ。 == 関連項目 == * [[複比]] * {{仮リンク|Projective range|en|Projective range}} * [[メビウス変換]] * [[代数曲線]] * [[環上の射影直線]] == 参考文献 == {{reflist}} {{Algebraic curves navbox}} {{DEFAULTSORT:しやえいちよくせん}} [[Category:代数曲線]] [[Category:射影幾何学]] [[Category:数学に関する記事]]
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