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'''崩壊定数'''（ほうかいていすう、'''decay constant'''、'''disintegration constant'''<ref>小田稔他編 『[http://webshop.kenkyusha.co.jp/book/978-4-7674-7100-6.html CDーROM版理化学英和辞典]』、研究社、1998年、項目「崩壊定数」より。ISBN 978-4-7674-7100-6</ref>）または'''壊変定数'''（かいへんていすう、現在崩壊定数に変わり壊変定数が使われる）<ref name="c" > 吉村壽次ほか編、『[http://www.morikita.co.jp/books/book/661 化学辞典 第2版]』、森北出版、2009年、項目「崩壊定数」より。ISBN 978-4-627-24012-4</ref>とは、[[放射壊変]]をする原子核または素粒子が微小時間d''t'' 内に壊変する[[確率]]を&lambda;d''t'' と表したときの&lambda;のことである<ref name="decayconstant">{{Cite book|1=和書|author=長倉三郎ほか編集|year=1998|month=2|title=理化学辞典|publisher=岩波書店|isbn=4-00-080090-6|url=http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/08/6/0800900.html|archiveurl=https://web.archive.org/web/20130927144110/http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/08/6/0800900.html|archivedate=2013年9月27日|deadlinkdate=2017年10月}}
</ref>。[[素粒子物理学]]では半値幅(half-width)という<ref> 日本数学会編、『岩波数学辞典 第4版』、岩波書店、2007年、項目「素粒子論」より。ISBN 978-4-00-080309-0 C3541 </ref>。

== 放射壊変の微分方程式 ==
{{see also|指数関数的減衰}}
放射壊変による原子数の減少は以下の式のように原子数に[[比例]]するが、この比例定数&lambda;のことを崩壊定数と呼ぶ<ref name="c" />。

:<math>\frac{dN}{dt}=-\lambda{N}</math>

また、[[半減期]]''T''<sub>1/2</sub> との関係は

{{Indent|<math>\lambda=\frac{\ln(2)}{T_{1/2}}</math>}}

である<ref name="c" />。すなわち、崩壊定数と半減期は[[反比例]]の関係にあり、また[[平均寿命#素粒子・放射性同位体の平均寿命|平均寿命]]&tau;とも

:<math>\tau=\frac{1}{\lambda}</math>

と逆数の関係となっている。崩壊定数は崩壊する確率を表しており、崩壊定数が大きいほど短時間で数が減少すると理解できる。

もう少し具体的にいえば、微分方程式 d''N'' (t) = -&lambda;''N'' (0)d''t'' を[[一次関数|一次近似]]とみなせば、微小時間d''t''を 普通の時間''t'' とおいて、単位時間''t'' 後に崩壊している原子数が

{{Indent|<math>N(1)=-\lambda N(0)\times 1</math>}}

で表せる。ここで、差分で[[ベクレル|ある時点の放射能]]を求めるとき、簡単のため原子数を1とおけば

{{Indent|<math>N(1)-N(0)=e^{-\lambda\times0}-e^{-\lambda\times1}=1-e^{-\lambda\times1}</math>}}

が単位時間後の残留放射能である。これを[[微分]]で一次近似するとまず

{{Indent|<math>N(t)=1-e^{-\lambda\times{t}}</math>}}

とする。これが差分でのある時点''t'' での残留放射能の割合である（原子数まで考えるならば両辺に原子数''A'' を掛ける）。半減期ではある時点での残っている割合を計算するが、この式では減った割合を計算していることに注意せよ（1はe<sup>0</sup> でもあるが、そのように式をみなせば補確率''q'' = 1 - ''p'' とも理解できる）。この時刻''t'' での微分係数を比例定数とする''t'' に関する一次式が微分での一次近似となるから、まず導関数を求めて

{{Indent|<math>\frac{dN(t)}{dt}=-(-\lambda{e^{-\lambda{t}}})=\lambda{e^{-\lambda{t}}}</math>}}

''t'' = 0とおけばe<sup>0</sup> = 1であるから&lambda;が比例定数となる。つまり、

{{Indent|<math>N(t)=1-e^{-\lambda\times{t}}\simeq{N'(0)t}=\lambda{t}</math>}}

で表せる。

簡単な例をあげれば10個の原子核が単位時間内に崩壊する確率が10%であれば、確率ゆらぎや測定誤差を無視すれば単位時間後には10×0.1×1 = 9個となっている。同様に2単位時間後には8個となっている・・・と一次式で近似して計算できる。あくまで半減期ではなく一次式で近似しているのであるため、時間が大きいほど、あるいは崩壊定数が大きいほど（指数関数の変数、つまり崩壊定数が小さくて時間が大きいとも数学的にはみなせるため）誤差が大きくなる。この考えを応用すれば[[ベクレル]]などの物理量を微分で計算することができる。

崩壊定数は粒子のエネルギー準位の幅に比例する<ref name="decayconstant" />。

== 数値例 ==
例えば[[プルトニウム239]]の半減期を24000年とおけば、崩壊定数は

{{Indent|<math>\lambda=\frac{0.693}{24000\times365\times24\times60^2}\simeq9.16\times10^{-13}\quad \mathrm{s}^{-1}</math>}}

で与えられるが、これは1秒間に1個のプルトニウム239が崩壊する確率を表していると解釈できる。1gの比放射能を計算すれば、原子量を計算すると、[[アボガドロ数]]を6×10<sup>23</sup>とおくと1グラムあたりのプルトニウム239の原子量は

{{Indent|<math>A=\frac{6\times10^{23}}{239}\simeq2.51\times10^{21}\quad \mathrm{g}^{-1}</math>}}

である。これが1秒間に崩壊したとすれば

{{Indent|<math>A\lambda=(2.51\times10^{21})\times(9.16\times10^{-13})\simeq2.30\times10^{9}\quad \mathrm{Bq/g}</math>}}

となり、[[比放射能]]が求められる。実際、差分で比放射能を計算してみると

{{Indent|<math>A(1-e^{-\lambda})=2.51\times10^{21}(1-e^{-9.16\times10^{-13}})\simeq2.30\times10^{9}\quad \mathrm{Bq/g}</math>}}

と一致する。プルトニウムを例に用いたのは上にも述べた通り、半減期が長いため崩壊定数が小さく、微分での近似との誤差が問題とならないからであるが、実用上は崩壊定数が十のマイナス何乗[[オーダー (物理学)|オーダー]]であれば十分誤差は小さい。

== 実験的に求める方法 ==
崩壊定数は実験的にも求めることができる<ref>真田順平　『[http://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320001633 原子核・放射線の基礎]』　共立出版〈共立全書163〉、1966年、28〜29頁。ISBN 4-320-00163-X</ref>。1種類の1回壊変して[[娘核種]]が安定核である任意の放射性同位体の放射線を計測すれば、

{{Indent|<math>dN=-\lambda{Ndt}</math>}}

より計数率（カウント数）は

{{Indent|<math>\lambda N=\lambda N_{0} e^{-\lambda t}</math>}}

に比例する。定義により微小時間d''t'' （≒単位時間）あたりの崩壊数は&lambda;''N'' に比例するが、微分方程式の解に元の定義である微分方程式の比例式のように&lambda;を掛けている。この[[常用対数]]を取れば（対数を取るために比例式のマイナスを取り除いたが、右辺の指数関数の中身が負となるため結局矛盾しない）

{{Indent|<math>\begin{align}\log\lambda N = -(\log e) \lambda t + \log{\lambda N_0}\\
= -0.4343\lambda t + \log{\lambda N_0}\end{align}</math>}}

と[[微分|傾き]]が -0.4343&lambda;となるため、崩壊定数が求められる。つまり、1種類の放射性同位体のカウント数を時系列で横軸に時間、縦軸にカウント数の常用対数という[[片対数グラフ]]にプロットすれば1次関数となり、その傾きから崩壊定数を実験的に求めることができる。

==脚注==
{{脚注ヘルプ}}
<references/>

==関連項目==
*[[壊変定数]]
*[[半減期]]
*[[ベクレル]]
*[[放射能]]
*[[比放射能]]
*[[放射性崩壊]]
*[[指数関数的減衰]]

{{放射線}}

{{DEFAULTSORT:ほうかいていすう}}
[[Category:放射線]]
[[Category:原子核物理学]]