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{{Expand English|Large numbers|date=2024年5月}} '''巨大数'''(きょだいすう、large numbers)とは、日常生活において使用される数よりも巨大な[[数]]([[実数]])のことである。非常に巨大な数は、[[数学]]、[[天文学]]、[[宇宙論]]、[[暗号理論]]、[[インターネット]]や[[コンピュータ]]などの分野でしばしば登場する。'''天文学的数字'''(てんもんがくてきすうじ)と呼ばれることもある。 主にインターネット上で、巨大数やその定義、およびそれを支える理論等を研究する数学のコミュニティがあり、その理論は'''巨大数論'''(きょだいすうろん)、あるいは[[グーゴル]]にちなんで<ref name=":0" />グーゴロジー (googology) と呼ばれる。 == 例 == 身近な事物にまつわる数字の中で特に大きいものを挙げる。 * 人間の[[血管]]を全て合わせた長さ - 約100億 cm = 10<sup>8</sup> m * 人間の脳の[[シナプス]]の数 - 約10兆本 = 10<sup>14</sup> 本 * 人間の体の[[細胞]]の数 - 100兆個 = 10<sup>14</sup> 個以上 * 一般的なコンピュータの[[ハードディスクドライブ]]の容量 - 約10<sup>13</sup> ~ 約10<sup>15</sup> [[ビット]] ※参考:1TB([[テラ]][[バイト (情報)|バイト]])= 10<sup>12</sup> バイト = 8 × 10<sup>12</sup> ビット * [[日本]]の[[2007年]]の[[国内総生産]] - 561兆円 = 5.61 × 10<sup>14</sup> 円 * [[国際連合加盟国]]の20世紀のGDP合計 - 30[[京 (数)|京]]円 = 3 × 10<sup>17</sup> 円 * [[アボガドロ定数]] - 6.022 140 76 × 10<sup>23</sup> mol<sup>-1</sup>(定義値) * [[プランク単位系#基本プランク単位|プランク温度]] - 1.416784(16) × 10<sup>32</sup> [[ケルビン|K]] * [[MD5]]のハッシュ値の数 - 2<sup>128</sup>(約 3.402 × 10<sup>38</sup>)通り<ref>{{IETF RFC|1321}}</ref> * [[IPv6]]の[[IPアドレス]]の数 - 上記のMD5のハッシュ値の数と同じ * [[無量大数]] - 10<sup>68</sup> * [[ジンバブエ・ドル]]の[[インフレーション]]率(2009年1月)- 6.5 × 10<sup>108</sup> パーセント<ref>[http://www.irinnews.org/Report.aspx?ReportId=82500 ZIMBABWE: Inflation at 6.5 quindecillion novemdecillion percent] 2009年1月21日、Forbes ASIA、2019年1月26日閲覧</ref> ==天文学の巨大数 == 億や兆を大きく超えた数字のことを「天文学的」と形容するように、宇宙および天文学に関連する話題では巨大数が登場することが多い。 * 1[[光年]] ≒ 9.46 × 10<sup>15</sup> m * [[地球]]の質量 ≒ 5.972 × 10<sup>24</sup> kg * [[太陽]]の質量 ≒ 1.9891 × 10<sup>30</sup> kg * エディントン数 = 136 × 2<sup>256</sup> ≒ 1.575 × 10<sup>79</sup>([[観測可能な宇宙]]に存在する[[陽子]]の数として[[アーサー・エディントン]]が予想した数<ref>{{Cite web|title=Eddington Number|url=https://mathworld.wolfram.com/EddingtonNumber.html|website=mathworld.wolfram.com|accessdate=2021-09-17|language=en|first=Eric W.|last=Weisstein}}</ref>) * 観測可能な宇宙の体積 ≒ 1.6 × 10<sup>81</sup> m<sup>3</sup> 以下の数値は数があまりにも巨大であるため、単位をどのように取っても(すなわち長さの場合は「[[メートル]]」でも「[[光年]]」でも、時間の場合は「[[秒]]」でも「[[年]]」でも)無視できる範囲で近似する。 * 全ての物質が[[鉄56]]に変換するまでにかかる時間([[陽子崩壊]]が起こらない場合) - 10<sup>1500</sup>([[鉄の星]]も参照) * [[宇宙のインフレーション|インフレーション]]後の[[宇宙]]の大きさとして出された物理学者[[レオナルド・サスキンド]]による解の一つ - <math>10^{10^{10^{122}}}</math><ref>[https://arxiv.org/abs/hep-th/0610199 "Susskind's Challenge to the Hartle-Hawking No-Boundary Proposal and Possible Resolutions"]</ref> * 複数の[[宇宙]]の全質量を1個の[[ブラックホール]]に圧縮しそれが蒸発した後に、[[ポアンカレの回帰定理]]に従い再びブラックホールができる時間の近似値(宇宙論で使われた最大の数)- <math>10^{10^{10^{10^{10^{1.1}}}}}</math> == 組合せ論の巨大数 == [[組合せ数学]]において、組合せの場合の数などは急激に大きくなる数で、[[組合せ爆発]]といった語もある。 * {{Math|16 × 16}}マスに区切られた格子状の道路を、同じ交差点を2度通らずに左上から右下まで向かう道順の数 - 約{{Math|6.87 × 10<sup>61</sup>}}通り<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.youtube.com/watch?v=ge8vy4tc_kQ|title=「フカシギの数え方」 同じところを2度通らない道順の数|accessdate=2021-03-24}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://oeis.org/A007764|title=A007764 - OEIS|accessdate=2021-03-24|publisher=The OEIS Foundation Inc.}}</ref> * トランプ52枚を一列に並べる並べ方 - {{Math|52! ≈}} 約{{Math|8.066 × 10<sup>67</sup>}}通り * [[囲碁]]で[[碁盤|19路盤]]の着点の総数は19<sup>2</sup> (361目)、ここに黒石、白石、空点をランダムに配置する組合せの総数は3<sup>361</sup>、この中からルール上合法な局面の総数は約2.1×10<sup>170</sup>となる<ref name=":02">{{Cite journal|author1=John Tromp|year=2007|title=Combinatorics of Go|url=https://tromp.github.io/go/gostate.pdf|volume=4630|publisher=Springer|doi=10.1007/978-3-540-75538-8_8|author2=Gunnar Farnebäck|series=Lecture Notes in Computer Science}}</ref>。 * [[グラハム数]] == 歴史 == 19世紀以前で見られる巨大な数への言及は例えば以下のようなものがある: * 『[[砂粒を数えるもの]]』(アルキメデス) * [[劫]]や[[三千大千世界]]に代表される、[[インド哲学]]および[[仏教]]の世界観・宇宙観に基づく記述。 * 日本では『[[塵劫記]]』にて纏められた、[[命数法]]のための記述([[西洋の命数法]]も参照)。 アルキメデスが『砂粒を数えるもの』で想定した最大の数である「第億期の数」の10<sup>8×10<sup>16</sup></sup>や、仏教の経典の[[華厳経]]における「[[不可説不可説転]]」(八十華厳の10<sup>7×2<sup>122</sup></sup>≒10<sup>3.7×10<sup>37</sup></sup>の値が有名)などは、古代において[[テトレーション]]レベルに接近するほどの巨大な数を想定した数少ない例である。 [[1976年]]に[[ドナルド・クヌース]]は、「巨大な数量をどれほど上手く取り扱えるか」ということを論じる「Mathematics and Computer Science: Coping with Finiteness」という記事<ref>{{Cite journal|last=Knuth|first=Donald E.|date=1976-12-17|title=Mathematics and Computer Science: Coping with Finiteness|url=https://science.sciencemag.org/content/194/4271/1235|journal=Science|volume=194|issue=4271|pages=1235–1242|language=en|doi=10.1126/science.194.4271.1235|issn=0036-8075|pmid=17797067}}</ref>を発表し、この本文中で[[クヌースの矢印表記]]を提案した。翌[[1977年]]にはこの矢印表記を用いて、[[マーティン・ガードナー]]が自身の連載「数学ゲーム」で[[グラハム数]]を紹介しており、以降も[[スタインハウスのメガ|レオ・スタインハウス]]、[[コンウェイのチェーン表記|ジョン・ホートン・コンウェイ]]といった人々が巨大数にまつわる記事を執筆している。 インターネットにおける巨大数の活動としては、[[1996年]]にロバート・ムナフォが『Large Numbers』というページを開設している<ref>https://mrob.com/pub/math/largenum.html</ref><ref name=":0">{{Cite journal|和書|author=フィッシュ|editor=樫田祐一郎|date=2019-12-01|title=巨大数論発展の軌跡|journal=現代思想|pages=19-28|publisher=青土社|ISBN=978-4-7917-1389-9}}</ref>。以来、アマチュアの(しばしばプロの)数学者たちによるコミュニティが活動を続けている<ref name=":0" />。 == 巨大数の表記法 == 科学技術分野において大きな数量を表す際には[[指数表記]]が使われるが、非常に巨大な数(例えば[[スキューズ数]])はもはや指数で表記しても巨大な数量となってしまい、[[二重指数関数]]やそれ以上の関数を用いた表記が必要となる。特に現実世界の事物で例えることが不可能なほどの巨大数の表現が可能である表記法については、例えば以下のような事例がある: * [[ルーディ・ラッカー]]は{{Math|10<sup>''N''</sup>}}を「{{Mvar|N}}-plex」と呼ぶことを提案した<ref>{{Cite book|title=Mind tools : the five levels of mathematical reality|url=https://www.worldcat.org/oclc/867771556|date=2013|location=Mineola, New York|isbn=978-0-486-78219-5|oclc=867771556|first=Rudy v. B.|last=Rucker}}</ref>。 * [[クヌースの矢印表記]]は、指数の積み重なりである[[指数タワー]]を記述するための、非常に単純な表記法である。 * [[ハイパー演算子]]は、[[加法]]の繰り返しで[[乗法]]、乗法の繰り返しで[[冪乗]]を作ることを発展し、新たな演算を作っていくものであり、本質的にはクヌースの矢印表記の別表記である。 * [[コンウェイのチェーン表記]]は、クヌースの矢印表記の「矢印の増加」そのものの繰り返し、『「矢印の増加」に繰り返しを入れること』の繰り返しなどを表現できるようにし、さらに巨大な数を表せるようにしたものである。 * [[多角形表記|スタインハウス・モーザーの多角形表記]]は、巨大数を示すために[[多角形]]を使用している。 * [[超階乗]]および[[階冪]]は[[階乗]]を拡張したものである。 * [[アッカーマン関数]]は、どのような[[原始再帰関数]]よりも早く増大する帰納的関数の例である。すなわち、どのような原始再帰関数であっても、その引数が十分大きいならば、アッカーマン関数の方が値が大きくなる。<!-- アッカーマン関数を、多変数に拡張したものが[[アッカーマン関数|多変数アッカーマン関数]]である。--> * [[配列表記]]はコンウェイのチェーン表記および[[コンウェイのチェーン表記#拡張チェーン系の表記|その拡張表記]]よりも効率的に数の大きさを爆発させることができるようにした記法であり、アッカーマン関数の拡張である[[アッカーマン関数#多変数アッカーマン関数|多変数アッカーマン関数]]と同程度の増加速度である。 * [[BEAF]]は配列表記の拡張の最終形態の一つである。 * [[急成長階層]]は、[[順序数]]でパラメータ付けられた自然数関数の階層であり、最初の{{Math|ω}}層の合併が[[PR (計算複雑性理論)|原始再帰関数のクラス]]に一致することと、より大きい順序数で添え字づけられた関数は小さいものを最終的に支配する(eventually majorize)という性質を持つために巨大数およびそれを生み出す関数の大小評価に用いられる。 == 出典 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist|2}}{{巨大数|state=expanded}} {{DEFAULTSORT:きよたいすう}} [[Category:巨大数|*]] [[Category:数]] [[Category:整数の類]] [[Category:数学の表記法]] [[Category:数学に関する記事]]
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