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[[数学]]の分野における'''弱微分'''(じゃくびぶん、{{Lang-en-short|weak derivative}})とは、通常の意味での[[関数 (数学)|関数]]の[[微分]](強微分)の概念を、[[微分可能関数|微分可能]]とは限らないが[[積分法|積分可能]]である関数([[ルベーグ空間]]に属する関数)に対して一般化したものである。より一般的な定義については、[[シュワルツの超関数|分布]]([[:en:Distribution_(mathematics)<!-- [[:ja:シュワルツ超函数]] とリンク -->|distribution]])を参照されたい。 == 定義 == <math>u</math> をルベーグ空間 <math>L^1([a,b])</math> に属する関数とする。<math>L^1([a,b])</math> に属する関数 <math>v</math> は、<math>\varphi(a)=\varphi(b)=0</math> を満たす任意の[[滑らかな関数|無限回微分可能関数]] <math> \varphi </math> に対して :<math>\int_a^b u(t)\varphi'(t)\,dt=-\int_a^b v(t)\varphi(t)\,dt</math> が成立するとき、<math>u</math> の'''弱微分'''と呼ばれる。この定義は[[部分積分]]の手法に基づくものである。 <math>n</math> 次元への一般化を考える。ある[[開集合]] <math>U \subset \mathbb{R}^n</math> に対する[[局所可積分関数]]の空間 <math>L_{\text{loc}}^1(U)</math> に <math>u</math> と <math>v</math> が属するとし、<math>\alpha</math> をある[[多重指数]] とする。すべての <math>\varphi \in C^{\infty}_{\text{c}} (U)</math>、すなわち、<math>U</math> に[[関数の台|コンパクトな台]]を持つすべての無限回微分可能関数 <math>\varphi</math> に対して、 :<math>\int_U u D^{\alpha} \varphi=(-1)^{|\alpha|} \int_U v\varphi</math> が成立するとき、<math>v</math> は <math>u</math> の '''<math>\alpha</math>-次の弱微分'''と呼ばれる。<math>u</math> に弱微分が存在するなら、それは([[測度]]ゼロの集合に関する差異を除いて)一意であるため、<math>D^{\alpha}u</math> としばしば表記される。 == 例 == * [[絶対値]]関数 ''u'' : [−1, 1] → [0, 1], ''u''(''t'') = |''t''| は ''t'' = 0 において微分可能ではないが、次の[[符号関数]] :<math>v \colon [-1,1] \ni t \mapsto v(t) := \begin{cases} 1, & \mbox{if } t > 0; \\ 0, & \mbox{if } t = 0; \\ -1, & \mbox{if } t < 0 \end{cases}\ \in [-1,1] </math> :がその弱微分となる。しかしこれは ''u'' の唯一つの弱微分という訳ではない。[[ほとんど (数学)|ほとんど至る所]]で ''v'' と等しい任意の ''w'' も、''u'' の弱微分となる。しかし、[[Lp空間]]および[[ソボレフ空間]]の理論において、ほとんど至る所で等しい関数は同一のものと見なされるため、このことは通常、問題にはならない。 * 有理数の[[指示関数|特性関数]] <math> \chi_{\mathbb{Q}} </math> はどの点においても微分可能ではないが、それには弱微分が存在する。有理数の集合の[[ルベーグ測度]]はゼロであるため、 ::<math> \int \chi_{\mathbb{Q}}(t) \varphi(t)\, dt = 0 </math> :が成立する。したがって、<math> v(t)=0 </math> が <math> \chi_{\mathbb{Q}} </math> の弱微分である。この結果はLp空間の元と見なされたとき <math> \chi_{\mathbb{Q}} </math> はゼロ関数と同一視されるためであることに注意されたい。 == 性質 == 二つの関数がある同じ関数の弱微分であるとき、それらは[[ルベーグ測度]]ゼロの集合を除いて等しい。すなわち、それらは[[ほとんど (数学)|ほとんど至る所]]で等しい。ほとんど至る所で等しい関数を同一視するような関数の[[同値類]]を考えるとき、弱微分は一意である。 また ''u'' が通常の意味で微分可能であるなら、その(強)微分と、その(上述の意味での)弱微分は一致する。したがって、弱微分は強微分の一般化ということになる。また、関数の和や積についての古典的な微分のルールは、弱微分に対しても適用される。 == 拡張 == 弱微分の概念は[[ソボレフ空間]]における[[弱解]]の定義につながる。それは、[[微分方程式]]や[[関数解析学]]の諸問題を解決する上で有用となる。 == 関連項目 == * [[劣微分]] * [[シュワルツの超関数]] * [[部分積分]] * [[ソボレフ空間]] * [[弱解]] == 参考文献 == * {{Cite book | author2-link=:en:Neil Trudinger|first1=D.|last1=Gilbarg|first2=N.|last2=Trudinger| title=Elliptic partial differential equations of second order | year=2001 | publisher=Springer | location=Berlin | isbn=3-540-41160-7 | page=149}} *{{Cite book | author=Evans, Lawrence C. | authorlink= | coauthors= | title=Partial differential equations | year=1998 | publisher=American Mathematical Society | location=Providence, R.I. | isbn=0-8218-0772-2 | page=242}} * {{Cite book | author=Knabner, Peter; Angermann, Lutz | authorlink= | coauthors= | title=Numerical methods for elliptic and parabolic partial differential equations | year=2003 | publisher=Springer | location=New York | isbn=0-387-95449-X | page=53}} {{DEFAULTSORT:しやくひふん}} [[Category:関数解析学]] [[Category:微分積分学]] [[Category:微分の一般化]] [[Category:数学に関する記事]]
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