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{{Otheruses|流体による抗力|固体による抗力|垂直抗力}} {{出典の明記|date=2011年6月}} [[ファイル:W1-2.jpg|サムネイル|流体の中にある板の揚力と抗力]] '''抗力'''(こうりょく、{{lang-en-short|drag}})とは、[[流体]](液体や気体)中を移動する、あるいは流れの中におかれた物体にはたらく[[力 (物理学)|力]]の、流れの[[速度]]に平行な方向で同じ向きの成分(分力)である。流れの速度方向に垂直な成分は[[揚力]]という。 追い風で水面をかき分けて進んでいる[[帆船]]は、空気から進行方向の抗力を、それより弱い逆方向の抗力を水から受けている。また、[[レーシングカー]]等ではマイナスの揚力で[[ダウンフォース]]を発生させている。抗力も揚力もケースバイケースで、その方向が字義通りではない場合がある。 == 数学的表現 == 抗力は物体の[[相似比]]の2乗(あるいは投影面積)に比例する。また、[[レイノルズ数]]が小さいときは速度に、大きいときは流体の密度と流速の2乗に比例し<ref name=mochiduki>{{cite|和書 |author=望月修|author2=市川誠司 |title=生物から学ぶ流体力学 |publisher=養賢堂 |year=2010 |isbn=978-4-8425-0474-2 |page=63}}</ref>、後述する抗力係数 ''C''<sub>D</sub> を用いて以下のような数式[[数理モデル|モデル]]で表されるのが一般的である。このモデルは[[係数]]が異なるだけで揚力と同形式である。 :<math> D = {1 \over 2} \rho V^2 S C_\mathrm{D} </math> ここで * ''D'' は、発生する抗力 * ρ は流体の[[密度]]([[海面高度]]の[[大気]]中なら、[[気温]]15℃で 1.2250 kg/m<sup>3</sup>) * ''V'' は物体と流体の[[相対速度]] * ''S'' は物体の代表[[面積]] === 抗力係数 === 抗力係数 ''C''<sub>D</sub> は、抗力を[[動圧]] <math> {1 \over 2}\rho V^2</math> と代表面積 ''S'' で[[無次元化]]したもので、流れに対する物体の[[形状]]([[迎角|迎え角]])・流体の[[粘性]]・流れの速さ([[レイノルズ数]])、[[マッハ数]]によって変化する。 [[飛行機]]等の[[翼]](よく)の場合、 * 流れが[[音速]]より十分遅いときは、抗力係数は、およそ迎え角の2乗に比例する。 * 迎え角が[[失速|失速角]]以上になると、抗力係数は急激に増加する。 いくつかの単純な形状に対する抗力係数を次の表に示す<ref>{{cite|和書 |author=牛山泉 |title=風車工学入門 |edition=2 |publisher=森北出版 |year=2013 |isbn=978-4-627-94652-1 |page=50}}</ref>。球体に対する抗力係数については[[終端速度]]を参照のこと。 {|class=wikitable !物体形状!!抗力係数!!レイノルズ数 |- |円柱||1.2||10<sup>3</sup> - 10<sup>5</sup> |- |角柱||2.0||> 10<sup>4</sup> |- |半円筒(凹)||2.3||> 10<sup>4</sup> |- |半円筒(凸)||1.2||> 10<sup>4</sup> |- |楕円柱(長径:短径 = 2 : 1)||0.6||10<sup>4</sup> - 10<sup>5</sup> |- |半球(凹)||1.33||> 10<sup>4</sup> |- |半球(凸)||0.34||> 10<sup>4</sup> |- |円錐(頂角60°)||0.51||> 10<sup>4</sup> |- |円錐(頂角30°)||0.34 ||> 10<sup>4</sup> |} == 抗力の成分 == 抗力(ないし抗力係数)を以下のような成分に分けて考えることがある。誘導抗力については、主翼において翼端のある三次元[[翼]]ないしは翼を含む構造物([[固定翼機]]、[[回転翼機]]など)、あるいは[[リフティングボディ]]のように、[[揚力]]を発生する物体について考える。 === 物理的要因による分類 === ; 誘導抗力(lift-induced drag、induced drag、drag due to lift) :[[File:Induced Drag.png|thumb|right|300px|'''誘導抗力発生の原理:''' 図は翼周りの流れ場を a は前方、b は左翼側から見ている(非粘性流れを想定)。1. 翼端渦, 2. 吹き下ろし, 3. 気流, 4. 吹き下ろしによる下向きの気流, 5. 下向きの気流により発生した揚力, 6. 気流により発生した揚力(いわゆる揚力), 7. 誘導抗力]] : 翼端を持つ三次元翼(つまり、一般の翼)において、揚力の発生に伴って発生する抗力。 : 無限翼(二次元翼)に気流が翼に当たった場合には、翼を通過した気流は当たる前の同じ方向に流れ、揚力は流れる気流に対して垂直に発生する。ところが翼端を持つ三次元翼は、翼上面は[[ベルヌーイの定理]]により翼下面よりも[[圧力]]が低くなっているため、翼端では下から上へと回り込む[[渦]](翼端渦)が発生している。この渦の持つ下向きの速度(吹き下ろし downwash)によって、気流が翼に当たった場合には、翼を通過した気流は下向きに傾いて流れる。これにより、流れる気流に垂直に対して発生する揚力は下流方向に傾くことになり、その傾いた分が誘導抗力となる。また、翼によって下向きに傾かれた気流により、翼と下向きに傾かれた気流とのなす角度の迎角が発生するため、これを誘導迎角と呼んでいる。<!--垂直な成分は「揚力」であるが、吹き下ろしによる迎角変化(φとする)が一般に小さいため、局所流による揚力(<math>L_{\mathrm{local}}</math> とする)とあまり変わらない: <math>L \simeq L_{\mathrm{local}} \cos{\phi}</math>--><!--厳密には粘性による抗力成分も局所流に平行に生じるはずだが、同じ論理/原理で D_{form} \simeq D_{form_{local}} \cos{\phi} ということだろう--><ref name="Azuma1993"> {{Cite book|和書 |author=東昭 |year=1993 |title=流体力学 |publisher=朝倉書店 |pages=pp. 103-104 |isbn=4-254-23623-9 }}</ref><ref name="Anderson2001"> {{Cite book |author=Anderson, Jr., John D. |year=2001 |title=Fundamentals of Aerodynamics, 3rd International ed. |publisher=McGraw-Hill |location=New York |pages=pp. 354-355 |isbn=0-07-118146-6 }}</ref>. : 主翼がより細長く、つまり[[アスペクト比]]が大きくなる(二次元翼に近づく)につれて、翼全体に対して翼端が占める割合は小さくなり、吹き下ろしの影響も小さくなる。したがって、誘導抗力を低減することができる。[[亜音速]]の飛翔体では、十分に[[流線形]]をしている限り圧力抗力は小さく、一方で摩擦抗力の大幅な低減は難しい。そこで、誘導抗力を減らすためにアスペクト比 (''A''R) を大きく(翼を細長く)する努力が払われることが多い。この極端な例が[[ルータン ボイジャー]]や[[ヘリオス (航空機)|ヘリオス]]、あるいは[[グライダー]]や[[人力飛行機]]といった機体であり、''A''R = 40 近いものまで存在する。 : 主翼において誘導抗力は主翼の抗力の1つとなるため、主翼翼端に[[ウィングレット]]を取り付けて、主翼の翼端で発生する翼端渦を抑えることで誘導抗力を減らし抗力を減少させることができる。 ; 有害抗力(parastic drag, parasite drag) : 揚力の有無には無関係に存在する抗力。干渉抗力と形状抗力とに大別される。 :; 干渉抗力 (interference drag) :: [[翼]]と胴体の結合部分などで部分的に気流が[[剥離]]することにより生ずる抗力。[[フィレット (機械工学)|フィレット]]などにより低減が図られる。 :; 形状抗力(form drag, proflie drag) :: 物体の形状のみに依存する抗力。原因となる力の方向によって2つに分けられる。 ::; 垂直力によるもの ::: 物体後方で[[圧力]]が低下することに起因する。とくに流れが剥離した場合に著しく増大する。 ::: この抗力を圧力抗力と呼ぶこともある。 ::; [[せん断力]]によるもの ::: 物体表面に沿った力による抗力で、流れとの[[摩擦]]による抗力に等しい。[[境界層]]の状態に大きく影響され、[[層流]]であるほうが[[乱流]]であるよりも小さい。 ::: この抗力を摩擦抗力と呼ぶこともある。 :<!--リストの分断防止行--> ; [[造波抗力]](wave drag) : [[衝撃波]]による抗力。 === 力の向きによる分類 === ; 摩擦抗力 : 物体表面に沿った力に起因する抗力。[[粘性抵抗]]とも呼ばれる。せん断力による形状抗力に等しい。半径<math>a</math>の球が[[粘性係数]]<math>\eta</math>の流体中で受ける粘性抵抗は[[ストークスの法則]]より、以下の式で表せる。 ::<math> F = 6 \pi a \eta V </math> ; 圧力抗力 : 物体表面に垂直な力に起因する抗力。[[慣性抵抗]]とも呼ばれる。せん断力による形状抗力以外の抗力はすべて[[圧力]]抗力である。半径<math>a</math>の球が[[密度]]<math>\rho_\mathrm{0}</math>の流体中で受ける慣性抵抗は以下の式で表せる。 ::<math> F = {1 \over 4} \pi \rho_\mathrm{0} a^2 V^2 </math> == 画像 == <gallery widths="200" style="font-size:90%"> ファイル:Captive_Red-tailed_Hawk_at_Bacara.jpg|鳥の[[風切羽|初列風切]]には翼端に発生する翼端渦を抑えて誘導抗力を減らすことで翼への抗力を減少させる効果がある ファイル:DSC 8030-F-WZGG - MSN 003 (10512622646).jpg|飛行機の主翼翼端に取付けられた[[ウィングレット]]は主翼翼端に発生する翼端渦を抑えて誘導抗力を減らすことで主翼への抗力を減少させる効果がある([[A350]]) ファイル:LS6.jpg|細長い翼をもつグライダー。アスペクト比は20程度 ファイル:Daedalus-human-powered-aircraft.jpg|世界記録を持つ人力飛行機、[[ダイダロス (航空機)|MIT Daedalus]](ダイダロス)。アスペクト比は約38 </gallery> == 脚注 == {{Reflist}} == 関連項目 == * [[スリップストリーム]] * [[摩擦力]] * [[ベルヌーイの定理]] * [[航空工学]] * [[宇宙工学]] * [[自動車工学]] * [[船舶工学]] * [[境界層]] * [[マグヌス効果]] * [[コアンダ効果]] * {{ill2|ノーズコーン|en|Nose cone}} * {{ill2|オージャイブ|en|Ogive}} * [[弾道学]] * {{ill2|ベースブリード|en|Base bleed}} - 先端部の空気抵抗は減らせないが、後部に発生する低圧部での損失を減らすために空気などを噴出させて砲弾の射程を伸ばす技術 {{Physics-stub}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:こうりよく}} [[Category:流体力学]] [[Category:力 (自然科学)]]
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