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'''拡張周期表'''（かくちょうしゅうきひょう、{{Lang|en|'''extended periodic table'''}}）とは、[[ドミトリ・メンデレーエフ]]の[[周期表]]を未知の[[超重元素]]の領域まで論理的に発展させた周期表である。未知の元素については[[国際純正・応用化学連合|IUPAC]]の[[元素の系統名]]に準じて表記される。[[原子番号]]119（[[ウンウンエンニウム]]）以降の元素は全て未発見である（発見報告無し）。

現在発見されているよりも大きい原子番号の元素が発見された場合には、既存の周期と同様に、その元素の性質が周期的に繰り返される傾向を示すようにレイアウトされた、追加の周期に置かれることになるだろう。追加される周期は、第7周期よりも多くの元素を含むことが予想される。これは、いわゆる''gブロック''が追加され、g[[原子軌道|軌道]]の一部が満たされた少なくとも18個の元素が含まれると計算されるからである。gブロックと[[第8周期元素|第8周期]]を含む周期表は、1969年に[[グレン・シーボーグ]]によって提案された<ref name=LBL>{{cite web|url=http://www.lbl.gov/LBL-PID/Nobelists/Seaborg/65th-anniv/29.html|title= An Early History of LBNL|first=Glenn T.|last=Seaborg|author-link=グレン・シーボーグ|date=August 26, 1996|access-date=2011-02-25}}</ref><ref name=SHE78>{{cite journal | doi = 10.2307/3963006 | last1 = Frazier | first1 = K. | title = Superheavy Elements | journal = Science News | volume = 113 | issue = 15 | pages = 236–238 | year = 1978 | jstor = 3963006}}</ref>。 gブロックの最初の元素は原子番号121である可能性があり、その場合[[ウンビウニウム]]という[[元素の系統名|系統名]]を持つことになる。この領域の元素は、多くの探索にもかかわらず、[[人工放射性元素|合成]]されたり自然界で発見されたりしていない<ref>[[ウンビビウム|Element 122]] was claimed to exist naturally in April 2008, but this claim was widely believed to be erroneous. {{cite web |url=http://www.rsc.org/chemistryworld/News/2008/May/02050802.asp |title=Heaviest element claim criticised |publisher=Rsc.org |date=2008-05-02 |access-date=2010-03-16}}</ref>。

原子構造の[[量子力学]]的記述における軌道近似計算によれば、gブロックは部分的にg軌道が充填された元素に対応するが、[[スピン軌道相互作用]]により、原子番号の高い元素では軌道近似計算の有効性が大幅に低下する。シーボーグの拡張周期表では相対論的効果を考慮していなかったため、重い元素が軽い元素のパターンに従っていたが、[[相対論効果]]を考慮したモデルでは異なる。[[ペッカ・ピューッコ]]と[[ブルクハルト・フリッケ]]はコンピュータモデルを用いて''Z'' = 172までの元素の配置を計算し、いくつかの元素が[[構造原理]]からずれていることを発見した<ref name="Fricke">{{cite journal |last1=Fricke |first1=B. |last2=Greiner |first2=W. |last3=Waber |first3=J. T. |year=1971 |title=The continuation of the periodic table up to Z = 172. The chemistry of superheavy elements |journal=Theoretica Chimica Acta |volume=21 |issue=3 |pages=235–260 |doi=10.1007/BF01172015|s2cid=117157377 }}</ref>。 原子番号120を超える元素の化学的・物理的性質の予測には不確実性とばらつきがあるため、現在のところ拡張周期表における元素の配置についてはコンセンサスが得られていない。

この領域の元素は、[[放射能|放射性崩壊]]に対して非常に不安定であり、[[半減期]]が極めて短い[[アルファ崩壊]]や[[自発核分裂]]を起こす可能性が高いが、[[ウンビヘキシウム|126番元素]]は自発核分裂には耐性があるがアルファ崩壊を起こす[[安定の島]]にあると考えられている。既知の元素以降にも安定の島が存在する可能性があり、その中には164番元素を中心に理論化されたものも含まれるが、閉じた[[殻模型|核の殻]]による安定化効果がどの程度あるかは不明である。予測される安定の島を超えて元素が物理的にどのくらい存在可能なのか、第8周期に終わりがあるのか、第9周期があるのかは明らかではない。[[国際純正・応用化学連合]](IUPAC)では、原子核が[[原子軌道|電子雲]]を形成する時間である10<sup>-14</sup>秒(0.01ピコ秒、10フェムト秒)よりも寿命が長い元素を存在の定義としている<ref>{{Cite web|url=http://www.kernchemie.de/Transactinides/Transactinide-2/transactinide-2.html|title=Kernchemie|website=www.kernchemie.de|access-date=2014-11-09}}</ref>。

1940年には、[[相対性理論|相対論]]的な[[ディラック方程式]]を単純に解釈すると、''Z'' > 1/α ≈ 137の電子軌道が問題となることが指摘されていた。137番元素より先には中性原子が存在できず、電子軌道に基づく元素周期表はこの時点で破綻することが示唆されていた<ref>{{cite journal|last1=Schiff |first1=L. I. |last2=Snyder |first2=H. |last3=Weinberg |first3=J. |title=On the Existence of Stationary States of the Mesotron Field |journal=[[Physical Review]] |volume=57 |issue=4 |pages=315–318 |year=1940 |doi=10.1103/PhysRev.57.315|bibcode=1940PhRv...57..315S }}</ref>。 一方、より厳密な分析では、類似の限界を''Z'' ≈ 168から172までと計算し、ここで1s電子軌道が[[ディラックの海]]に飛び込むとした。ただし、これを超えて存在できないのは中性原子ではなく裸の原子核であり、周期系のさらなる拡張を妨げるものではないとしている。この臨界原子番号を超える原子を「超臨界原子」と呼ぶ。

== 歴史 ==
[[アクチノイド]]より重い元素の存在は既に1895年には提案されており、デンマークの化学者[[ユリウス・トムセン]]が、[[ウラン]]や[[トリウム]]を含む32元素の周期(第7周期)は、化学的に不活性な原子量292の元素で終わることを予測していた。これは、[[オガネソン]]で現在唯一発見されている同位体の原子量294に近い。1913年、スウェーデンの物理学者[[ヨハネス・リュードベリ]]は、[[ラドン]]の次の[[第18族元素|貴ガス]]は原子番号118であると同様に予測し、ラドンより重い同族体は ''Z''&nbsp;=&nbsp;168, 218, 290, 362, 460 であることを、純粋に[[構造原理]]より導き出した。[[ニールス・ボーア]]は1922年に、ラドンの次となる貴ガスの電子構造を ''Z''&nbsp;=&nbsp;118 と予測し、また自然界でウランより原子番号が大きい元素が見られないのは、あまりにも不安定だからであると指摘した。ドイツの物理学者で技術者でもあるRichard Swinneは、1926年に[[超ウラン元素]]<!--（この言葉は彼の造語かもしれない）-->についての予測を含むレビュー論文を発表し、[[安定の島]]という現代の予測を先取りしていた。彼は1914年より、半減期は厳密には原子番号とともに減少しないという仮説を立て、''Z''&nbsp;=&nbsp;98–102 と ''Z''&nbsp;=&nbsp;108–110 に長寿命の元素があるかもしれないと示唆し、こうした元素は[[地球の構造#核|地球の核]]、[[鉄隕石]]、あるいは宇宙起源の物質がグリーンランド氷床([[:en:Greenland ice sheet]])の中に閉じ込められて存在しているのではないかと推測していた<ref>{{cite book |last=Kragh |first=Helge |date=2018 |title=From Transuranic to Superheavy Elements: A Story of Dispute and Creation |publisher=Springer |pages=6–10 |isbn=9783319758138}}</ref>。1955年には、これらの元素は[[超アクチノイド元素|超重元素]]と呼ばれるようになった<ref name=Transuraniumppl>{{cite book|last1=Hoffman|first1=D.C |last2=Ghiorso|first2=A.|last3=Seaborg|first3=G.T.|title=The Transuranium People: The Inside Story |publisher=Imperial College Press|date=2000|isbn=978-1-86094-087-3}}</ref>。

未発見の超重元素の性質について最初の予測がなされたのは1957年のことで、[[殻模型]]の概念が初めて検討され、126番元素近辺に安定の島が存在することが理論的に示された<ref name=fossilfission>{{cite journal|last1=Maly|first1=J.|last2=Walz|first2=D.R.|title=Search for superheavy elements among fossil fission tracks in zircon|date=1980|url=https://inspirehep.net/literature/154317|volume=ReportNumber:SLAC-PUB-2554|access-date=2021-11-28}}</ref>。1967年にはより厳密な計算が行われ、安定の島は当時未発見の[[フレロビウム]](114番元素)を中心にしていることが理論づけられた。この研究やその後の研究により、多くの研究者が自然界での超重元素の探索や、加速器での[[人工放射性元素|合成]]を試みるようになった<ref name=Transuraniumppl />。1970年代に超重元素の多くの検索が行われたが、いずれも否定的な結果だった。元素合成は、ウンビトリウム (''Z''&nbsp;=&nbsp;123) を除くウンビセプチウム (''Z''&nbsp;=&nbsp;127) までの元素で試みられ<ref name="emsley">{{cite book|last=Emsley|first=John|title=Nature's Building Blocks: An A-Z Guide to the Elements|edition=New|year=2011|publisher=Oxford University Press|location=New York, NY|isbn=978-0-19-960563-7|page=588}}</ref>
<ref name=beyonduranium>{{cite book |last=Hofmann |first=Sigurd |date=2002 |title=On Beyond Uranium |publisher=Taylor & Francis |page=[https://archive.org/details/onbeyonduraniumj0000hofm/page/105 105] |isbn=978-0-415-28496-7 |url=https://archive.org/details/onbeyonduraniumj0000hofm/page/105 }}</ref><ref name=superlourds>{{cite journal|last1=Epherre|first1=M.|last2=Stephan|first2=C.|date=1975|title=Les éléments superlourds|language=fr|journal=Le Journal de Physique Colloques|volume=11|issue=36|pages=C5-159-C5-164|url=https://doi.org/10.1051/jphyscol:1975541|doi=10.1051/jphyscol:1975541}}</ref>、合成に成功した最も重い元素は2002年の[[オガネソン]]、最も新しい元素の発見は2010年の[[テネシン]]である<ref name="emsley" />。

一部の超重元素は周期表の第7周期を超えると予測されたため、これらの元素を含む追加の第8周期が、1969年に[[グレン・シーボーグ]]によって最初に提案された。このモデルは既存元素のパターンを継承しつつ、gブロックおよび121番元素から始まる超アクチノイド系列を導入し、今までの周期よりも第8周期の元素数が増えている<ref name=LBL /><ref name=Transuraniumppl />。しかしこれら初期の計算では、周期的な傾向を崩し、単純な予測が不可能になる相対論的な効果を考慮していなかった。

1971年、ドイツの化学者Frickeは ''Z''&nbsp;=&nbsp;172 までの周期表を計算し、いくつかの元素が既存のパターンと異なる特性を持つことを発見した。また、2010年に[[ペッカ・ピューッコ]]が行った計算でも、いくつかの元素が予想とは異なる振る舞いをする可能性があるとされている<ref name="PT172">{{Cite journal|last1=Pyykkö|first1=Pekka|s2cid=31590563|author-link=Pekka Pyykkö|title=A suggested periodic table up to Z≤ 172, based on Dirac–Fock calculations on atoms and ions|journal=Physical Chemistry Chemical Physics|volume=13|issue=1|pages=161–8|year=2011|pmid=20967377|doi=10.1039/c0cp01575j|bibcode = 2011PCCP...13..161P }}</ref>。重い元素ほどより不安定になると予測されているため、周期表が既知の118元素を超えてどこまで拡張されるかは未知数である。グレン・シーボーグは、実際には核の不安定性のために、早ければ ''Z''&nbsp;=&nbsp;120 付近で周期表の終わりが来るのではないかと示唆している<ref name=EB>{{cite encyclopedia|last1=Seaborg|first1=Glenn T.|url=https://www.britannica.com/EBchecked/topic/603220/transuranium-element|title=transuranium element (chemical element)|encyclopedia=Encyclopædia Britannica|date=c. 2006|access-date=2010-03-16}}</ref>。

==拡張周期表の予想される構造==
周期表における原子番号120を超える元素の配置については、現在合意が得られていない。

すべての仮説上の元素には、国際純正・応用化学連合(IUPAC)の体系的な元素名が与えられる。それらの元素が発見および確認され、正式名称が承認されるまで使用される。これらの名前は通常、文献では使用されず、元素は原子番号で参照される。したがって、164番元素は、「ウンヘキサクアジウム」または「Uhq」(体系名と記号))ではなく「164番元素」、または記号で「164」、「(164)」、または「E164」と呼ばれる<ref name=Haire/>。

===シーボーグの拡張周期表===
[[1969年]]に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[化学者]][[グレン・シーボーグ]]が提案した周期表である。[[第7周期元素|第7周期]]までの法則に合わせて、素直にGブロックを配置した形をしている。[[構造原理]]からの単純な外挿では、8行目は8s、5g、6f、7d、8pの順序で軌道が満たされると予測されるが、121番元素以降では電子殻のエネルギーが近接しているため、単純な表に配置することが困難になる。

{| border="0" cellpadding="0" cellspacing="1" style="font-size:75%; text-align:center"
!{{Color|#ff0000|Period}}!!{{Color|#0000ff|s<sup>1</sup>}}!!{{Color|#0000ff|s<sup>2</sup>}}
|colspan="48"|&nbsp;
|-
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|-
!{{Color|#ff0000|2}}
|style="background-color:#ff60a0"|3<br/>[[リチウム|Li]]||style="background-color:#ff60a0"|4<br/>[[ベリリウム|Be]]||colspan="42"|&nbsp;||style="background-color:#a0c0ff"|5<br/>[[ホウ素|B]]||style="background-color:#a0c0ff"|6<br/>[[炭素|C]]||style="background-color:#a0c0ff"|7<br/>[[窒素|N]]||style="background-color:#a0c0ff"|8<br/>[[酸素|O]]||style="background-color:#a0c0ff"|9<br/>[[フッ素|F]]||style="background-color:#a0c0ff"|10<br/>[[ネオン|Ne]]
|-
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!{{Color|#0000ff|d<sup>1</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>2</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>3</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>4</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>5</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>6</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>7</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>8</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>9</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>10</sup>}}
|style="background-color:#a0c0ff"|13<br/>[[アルミニウム|Al]]||style="background-color:#a0c0ff"|14<br/>[[ケイ素|Si]]||style="background-color:#a0c0ff"|15<br/>[[リン|P]]
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|-
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|style="background-color:#c0ffa0"|23<br/>[[バナジウム|V]]||style="background-color:#c0ffa0"|24<br/>[[クロム|Cr]]||style="background-color:#c0ffa0"|25<br/>[[マンガン|Mn]]
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|style="background-color:#c0ffa0"|39<br/>[[イットリウム|Y]]||style="background-color:#c0ffa0"|40<br/>[[ジルコニウム|Zr]]||style="background-color:#c0ffa0"|41<br/>[[ニオブ|Nb]]
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|style="background-color:#c0ffa0"|48<br/>[[カドミウム|Cd]]||style="background-color:#a0c0ff"|49<br/>[[インジウム|In]]||style="background-color:#a0c0ff"|50<br/>[[スズ|Sn]]||style="background-color:#a0c0ff"|51<br/>[[アンチモン|Sb]]||style="background-color:#a0c0ff"|52<br/>[[テルル|Te]]||style="background-color:#a0c0ff"|53<br/>[[ヨウ素|I]]||style="background-color:#a0c0ff"|54<br/>[[キセノン|Xe]]
|-
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|style="background-color:#ff60a0"|55<br/>[[セシウム|Cs]]||style="background-color:#ff60a0"|56<br/>[[バリウム|Ba]]||colspan="18"|&nbsp;||style="background-color:#60ffc0"|57<br/>[[ランタン|La]]||style="background-color:#60ffc0"|58<br/>[[セリウム|Ce]]||style="background-color:#60ffc0"|59<br/>[[プラセオジム|Pr]]
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|style="background-color:#60ffc0"|89<br/>[[アクチニウム|Ac]]||style="background-color:#60ffc0"|90<br/>[[トリウム|Th]]||style="background-color:#60ffc0"|91<br/>[[プロトアクチニウム|Pa]]||style="background-color:#60ffc0"|92<br/>[[ウラン|U]]||style="background-color:#60ffc0"|93<br/>[[ネプツニウム|Np]]||style="background-color:#60ffc0"|94<br/>[[プルトニウム|Pu]]||style="background-color:#60ffc0"|95<br/>[[アメリシウム|Am]]||style="background-color:#60ffc0"|96<br/>[[キュリウム|Cm]]||style="background-color:#60ffc0"|97<br/>[[バークリウム|Bk]]||style="background-color:#60ffc0"|98<br/>[[カリホルニウム|Cf]]||style="background-color:#60ffc0"|99<br/>[[アインスタイニウム|Es]]||style="background-color:#60ffc0"|100<br/>[[フェルミウム|Fm]]||style="background-color:#60ffc0"|101<br/>[[メンデレビウム|Md]]||style="background-color:#60ffc0"|102<br/>[[ノーベリウム|No]]||style="background-color:#c0ffa0"|103<br/>[[ローレンシウム|Lr]]||style="background-color:#c0ffa0"|104<br/>[[ラザホージウム|Rf]]||style="background-color:#c0ffa0"|105<br/>[[ドブニウム|Db]]||style="background-color:#c0ffa0"|106<br/>[[シーボーギウム|Sg]]||style="background-color:#c0ffa0"|107<br/>[[ボーリウム|Bh]]||style="background-color:#c0ffa0"|108<br/>[[ハッシウム|Hs]]||style="background-color:#c0ffa0"|109<br/>[[マイトネリウム|Mt]]||style="background-color:#c0ffa0"|110<br/>[[ダームスタチウム|Ds]]||style="background-color:#c0ffa0"|111<br/>[[レントゲニウム|Rg]]||style="background-color:#c0ffa0"|112<br/>[[コペルニシウム|Cn]]||style="background-color:#a0c0ff"|113<br/>[[ニホニウム|Nh]]||style="background-color:#a0c0ff"|114<br/>[[フレロビウム|Fl]]||style="background-color:#a0c0ff"|115<br/>[[モスコビウム|Mc]]||style="background-color:#a0c0ff"|116<br/>[[リバモリウム|Lv]]||style="background-color:#a0c0ff"|117<br/>[[テネシン|Ts]]||style="background-color:#a0c0ff"|118<br/>[[オガネソン|Og]]
|-
!{{Color|#ff0000|8}}
|style="background-color:#ff60a0"|119<br/>[[ウンウンエンニウム|Uue]]||style="background-color:#ff60a0"|120<br/>[[ウンビニリウム|Ubn]]||style="background-color:#ffa060"|121<br/>Ubu||style="background-color:#ffa060"|122<br/>Ubb||style="background-color:#ffa060"|123<br/>Ubt||style="background-color:#ffa060"|124<br/>Ubq||style="background-color:#ffa060"|125<br/>Ubp||style="background-color:#ffa060"|126<br/>[[ウンビヘキシウム|Ubh]]||style="background-color:#ffa060"|127<br/>Ubs||style="background-color:#ffa060"|128<br/>Ubo||style="background-color:#ffa060"|129<br/>Ube||style="background-color:#ffa060"|130<br/>Utn||style="background-color:#ffa060"|131<br/>Utu||style="background-color:#ffa060"|132<br/>Utb||style="background-color:#ffa060"|133<br/>Utt||style="background-color:#ffa060"|134<br/>Utq||style="background-color:#ffa060"|135<br/>Utp||style="background-color:#ffa060"|136<br/>Uth||style="background-color:#ffa060"|137<br/>Uts||style="background-color:#ffa060"|138<br/>Uto||style="background-color:#60ffc0"|139<br/>Ute||style="background-color:#60ffc0"|140<br/>Uqn||style="background-color:#60ffc0"|141<br/>Uqu||style="background-color:#60ffc0"|142<br/>Uqb||style="background-color:#60ffc0"|143<br/>Uqt||style="background-color:#60ffc0"|144<br/>Uqq||style="background-color:#60ffc0"|145<br/>Uqp||style="background-color:#60ffc0"|146<br/>Uqh||style="background-color:#60ffc0"|147<br/>Uqs||style="background-color:#60ffc0"|148<br/>Uqo||style="background-color:#60ffc0"|149<br/>Uqe||style="background-color:#60ffc0"|150<br/>Upn||style="background-color:#60ffc0"|151<br/>Upu||style="background-color:#60ffc0"|152<br/>Upb||style="background-color:#c0ffa0"|153<br/>Upt||style="background-color:#c0ffa0"|154<br/>Upq||style="background-color:#c0ffa0"|155<br/>Upp||style="background-color:#c0ffa0"|156<br/>Uph||style="background-color:#c0ffa0"|157<br/>Ups||style="background-color:#c0ffa0"|158<br/>Upo||style="background-color:#c0ffa0"|159<br/>Upe||style="background-color:#c0ffa0"|160<br/>Uhn||style="background-color:#c0ffa0"|161<br/>Uhu||style="background-color:#c0ffa0"|162<br/>Uhb||style="background-color:#a0c0ff"|163<br/>Uht||style="background-color:#a0c0ff"|164<br/>Uhq||style="background-color:#a0c0ff"|165<br/>Uhp||style="background-color:#a0c0ff"|166<br/>Uhh||style="background-color:#a0c0ff"|167<br/>Uhs||style="background-color:#a0c0ff"|168<br/>Uho
|}

{| style="margin:0 auto"
|style="background-color:#ff60a0"|[[Sブロック元素]]||style="background-color:#a0c0ff"|[[Pブロック元素]]||style="background-color:#c0ffa0"|[[Dブロック元素]]||style="background-color:#60ffc0"|[[Fブロック元素]]||style="background-color:#ffc060"|Gブロック元素
|}

===Frickeの拡張周期表===
すべてのモデルが、より軽い元素によって確立されたパターンに従って、より重い元素を示しているわけではない。[[ドイツ]]の[[化学者]]であるBurkhard Frickeらは、1971年に発表された論文で、172番元素までおよび184番元素の計算を行った。電子軌道のエネルギーが重なった結果として、一部の元素がマーデルング則([[:en:Aufbau principle#Madelung energy ordering rule|en:Madelung rule]])から外れることも発見した。これは、重い元素における[[相対論効果]]の役割が増大していることが原因である<ref name="Fricke"/><ref name="BFricke" />。

Frickeらの形式は、起こり得る化学的挙動よりも、形式的な電子配置に重点を置いている。彼らは156番元素から164番元素を4族から12族に配置しているが、これらの電子配置が7d<sup>2</sup>から7d<sup>10</sup>になると考えたためである。ただし、それらは、8s電子殻が化学結合に利用できず、代わりに9s電子殻が利用できる点で、今までのdブロック元素と異なる。例えば、7d<sup>10</sup>9s<sup>0</sup>の164番元素は、4d<sup>10</sup>5s<sup>0</sup>の[[パラジウム]]と類似しているとFrickeらに指摘されており、157番元素から172番元素までは、第3族から第18族までと化学的に類似していると考えられている(ただし、165と166番元素がそれぞれ第1族と第2族の元素に近いのか、それとも第11族と第12族の元素に近いのかについては意見が分かれている)。そのため、彼らの表において157番元素から164番元素までは、著者らが化学的に最も類似していると予想したものとは異なる族に分類されている<ref name=actrev/>。

{| border="0" cellpadding="0" cellspacing="1" style="font-size:75%; text-align:center"
!{{Color|#ff0000|Period}}!!{{Color|#0000ff|s<sup>1</sup>}}!!{{Color|#0000ff|s<sup>2</sup>}}
|colspan="50"|&nbsp;
|-
!{{Color|#ff0000|1}}
|style="background-color:#ff60a0"|1<br/>[[水素|H]]||style="background-color:#ff60a0"|2<br/>[[ヘリウム|He]]||colspan="44"|&nbsp;
!{{Color|#0000ff|p<sup>1</sup>}}!!{{Color|#0000ff|p<sup>2</sup>}}!!{{Color|#0000ff|p<sup>3</sup>}}!!{{Color|#0000ff|p<sup>4</sup>}}!!{{Color|#0000ff|p<sup>5</sup>}}!!{{Color|#0000ff|p<sup>6</sup>}}
|-
!{{Color|#ff0000|2}}
|style="background-color:#ff60a0"|3<br/>[[リチウム|Li]]||style="background-color:#ff60a0"|4<br/>[[ベリリウム|Be]]||colspan="44"|&nbsp;||style="background-color:#a0c0ff"|5<br/>[[ホウ素|B]]||style="background-color:#a0c0ff"|6<br/>[[炭素|C]]||style="background-color:#a0c0ff"|7<br/>[[窒素|N]]||style="background-color:#a0c0ff"|8<br/>[[酸素|O]]||style="background-color:#a0c0ff"|9<br/>[[フッ素|F]]||style="background-color:#a0c0ff"|10<br/>[[ネオン|Ne]]
|-
!{{Color|#ff0000|3}}
|style="background-color:#ff60a0"|11<br/>[[ナトリウム|Na]]||style="background-color:#ff60a0"|12<br/>[[マグネシウム|Mg]]||colspan="34"|&nbsp;
!{{Color|#0000ff|d<sup>1</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>2</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>3</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>4</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>5</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>6</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>7</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>8</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>9</sup>}}!!{{Color|#0000ff|d<sup>10</sup>}}
|style="background-color:#a0c0ff"|13<br/>[[アルミニウム|Al]]||style="background-color:#a0c0ff"|14<br/>[[ケイ素|Si]]||style="background-color:#a0c0ff"|15<br/>[[リン|P]]
|style="background-color:#a0c0ff"|16<br/>[[硫黄|S]]||style="background-color:#a0c0ff"|17<br/>[[塩素|Cl]]||style="background-color:#a0c0ff"|18<br/>[[アルゴン|Ar]]
|-
!{{Color|#ff0000|4}}
|style="background-color:#ff60a0"|19<br/>[[カリウム|K]]||style="background-color:#ff60a0"|20<br/>[[カルシウム|Ca]]||colspan="34"|&nbsp;||style="background-color:#c0ffa0"|21<br/>[[スカンジウム|Sc]]||style="background-color:#c0ffa0"|22<br/>[[チタン|Ti]]
|style="background-color:#c0ffa0"|23<br/>[[バナジウム|V]]||style="background-color:#c0ffa0"|24<br/>[[クロム|Cr]]||style="background-color:#c0ffa0"|25<br/>[[マンガン|Mn]]
|style="background-color:#c0ffa0"|26<br/>[[鉄|Fe]]||style="background-color:#c0ffa0"|27<br/>[[コバルト|Co]]||style="background-color:#c0ffa0"|28<br/>[[ニッケル|Ni]]||style="background-color:#c0ffa0"|29<br/>[[銅|Cu]]||style="background-color:#c0ffa0"|30<br/>[[亜鉛|Zn]]||style="background-color:#a0c0ff"|31<br/>[[ガリウム|Ga]]||style="background-color:#a0c0ff"|32<br/>[[ゲルマニウム|Ge]]||style="background-color:#a0c0ff"|33<br/>[[ヒ素|As]]||style="background-color:#a0c0ff"|34<br/>[[セレン|Se]]||style="background-color:#a0c0ff"|35<br/>[[臭素|Br]]||style="background-color:#a0c0ff"|36<br/>[[クリプトン|Kr]]
|-
!{{Color|#ff0000|5}}
|style="background-color:#ff60a0"|37<br/>[[ルビジウム|Rb]]||style="background-color:#ff60a0"|38<br/>[[ストロンチウム|Sr]]||colspan="20"|&nbsp;
!{{Color|#0000ff|f<sup>1</sup>}}!!{{Color|#0000ff|f<sup>2</sup>}}!!{{Color|#0000ff|f<sup>3</sup>}}!!{{Color|#0000ff|f<sup>4</sup>}}!!{{Color|#0000ff|f<sup>5</sup>}}!!{{Color|#0000ff|f<sup>6</sup>}}!!{{Color|#0000ff|f<sup>7</sup>}}!!{{Color|#0000ff|f<sup>8</sup>}}!!{{Color|#0000ff|f<sup>9</sup>}}!!{{Color|#0000ff|f<sup>10</sup>}}!!{{Color|#0000ff|f<sup>11</sup>}}!!{{Color|#0000ff|f<sup>12</sup>}}!!{{Color|#0000ff|f<sup>13</sup>}}!!{{Color|#0000ff|f<sup>14</sup>}}
|style="background-color:#c0ffa0"|39<br/>[[イットリウム|Y]]||style="background-color:#c0ffa0"|40<br/>[[ジルコニウム|Zr]]||style="background-color:#c0ffa0"|41<br/>[[ニオブ|Nb]]
|style="background-color:#c0ffa0"|42<br/>[[モリブデン|Mo]]||style="background-color:#c0ffa0"|43<br/>[[テクネチウム|Tc]]||style="background-color:#c0ffa0"|44<br/>[[ルテニウム|Ru]]||style="background-color:#c0ffa0"|45<br/>[[ロジウム|Rh]]||style="background-color:#c0ffa0"|46<br/>[[パラジウム|Pd]]||style="background-color:#c0ffa0"|47<br/>[[銀|Ag]]
|style="background-color:#c0ffa0"|48<br/>[[カドミウム|Cd]]||style="background-color:#a0c0ff"|49<br/>[[インジウム|In]]||style="background-color:#a0c0ff"|50<br/>[[スズ|Sn]]||style="background-color:#a0c0ff"|51<br/>[[アンチモン|Sb]]||style="background-color:#a0c0ff"|52<br/>[[テルル|Te]]||style="background-color:#a0c0ff"|53<br/>[[ヨウ素|I]]||style="background-color:#a0c0ff"|54<br/>[[キセノン|Xe]]
|-
!{{Color|#ff0000|6}}
|style="background-color:#ff60a0"|55<br/>[[セシウム|Cs]]||style="background-color:#ff60a0"|56<br/>[[バリウム|Ba]]||colspan="20"|&nbsp;||style="background-color:#60ffc0"|57<br/>[[ランタン|La]]||style="background-color:#60ffc0"|58<br/>[[セリウム|Ce]]||style="background-color:#60ffc0"|59<br/>[[プラセオジム|Pr]]
|style="background-color:#60ffc0"|60<br/>[[ネオジム|Nd]]||style="background-color:#60ffc0"|61<br/>[[プロメチウム|Pm]]||style="background-color:#60ffc0"|62<br/>[[サマリウム|Sm]]||style="background-color:#60ffc0"|63<br/>[[ユウロピウム|Eu]]||style="background-color:#60ffc0"|64<br/>[[ガドリニウム|Gd]]||style="background-color:#60ffc0"|65<br/>[[テルビウム|Tb]]||style="background-color:#60ffc0"|66<br/>[[ジスプロシウム|Dy]]||style="background-color:#60ffc0"|67<br/>[[ホルミウム|Ho]]||style="background-color:#60ffc0"|68<br/>[[エルビウム|Er]]||style="background-color:#60ffc0"|69<br/>[[ツリウム|Tm]]||style="background-color:#60ffc0"|70<br/>[[イッテルビウム|Yb]]||style="background-color:#c0ffa0"|71<br/>[[ルテチウム|Lu]]||style="background-color:#c0ffa0"|72<br/>[[ハフニウム|Hf]]||style="background-color:#c0ffa0"|73<br/>[[タンタル|Ta]]||style="background-color:#c0ffa0"|74<br/>[[タングステン|W]]||style="background-color:#c0ffa0"|75<br/>[[レニウム|Re]]||style="background-color:#c0ffa0"|76<br/>[[オスミウム|Os]]||style="background-color:#c0ffa0"|77<br/>[[イリジウム|Ir]]||style="background-color:#c0ffa0"|78<br/>[[白金|Pt]]||style="background-color:#c0ffa0"|79<br/>[[金|Au]]||style="background-color:#c0ffa0"|80<br/>[[水銀|Hg]]||style="background-color:#a0c0ff"|81<br/>[[タリウム|Tl]]||style="background-color:#a0c0ff"|82<br/>[[鉛|Pb]]||style="background-color:#a0c0ff"|83<br/>[[ビスマス|Bi]]||style="background-color:#a0c0ff"|84<br/>[[ポロニウム|Po]]||style="background-color:#a0c0ff"|85<br/>[[アスタチン|At]]||style="background-color:#a0c0ff"|86<br/>[[ラドン|Rn]]
|-
!{{Color|#ff0000|7}}
|style="background-color:#ff60a0"|87<br/>[[フランシウム|Fr]]||style="background-color:#ff60a0"|88<br/>[[ラジウム|Ra]]
!{{Color|#0000ff|g<sup>1</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>2</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>3</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>4</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>5</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>6</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>7</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>8</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>9</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>10</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>11</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>12</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>13</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>14</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>15</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>16</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>17</sup>}}!!{{Color|#0000ff|g<sup>18</sup>}}!!{{Color|#0000ff|p<sup>1</sup>}}!!{{Color|#0000ff|p<sup>2</sup>}}
|style="background-color:#60ffc0"|89<br/>[[アクチニウム|Ac]]||style="background-color:#60ffc0"|90<br/>[[トリウム|Th]]||style="background-color:#60ffc0"|91<br/>[[プロトアクチニウム|Pa]]||style="background-color:#60ffc0"|92<br/>[[ウラン|U]]||style="background-color:#60ffc0"|93<br/>[[ネプツニウム|Np]]||style="background-color:#60ffc0"|94<br/>[[プルトニウム|Pu]]||style="background-color:#60ffc0"|95<br/>[[アメリシウム|Am]]||style="background-color:#60ffc0"|96<br/>[[キュリウム|Cm]]||style="background-color:#60ffc0"|97<br/>[[バークリウム|Bk]]||style="background-color:#60ffc0"|98<br/>[[カリホルニウム|Cf]]||style="background-color:#60ffc0"|99<br/>[[アインスタイニウム|Es]]||style="background-color:#60ffc0"|100<br/>[[フェルミウム|Fm]]||style="background-color:#60ffc0"|101<br/>[[メンデレビウム|Md]]||style="background-color:#60ffc0"|102<br/>[[ノーベリウム|No]]||style="background-color:#c0ffa0"|103<br/>[[ローレンシウム|Lr]]||style="background-color:#c0ffa0"|104<br/>[[ラザホージウム|Rf]]||style="background-color:#c0ffa0"|105<br/>[[ドブニウム|Db]]||style="background-color:#c0ffa0"|106<br/>[[シーボーギウム|Sg]]||style="background-color:#c0ffa0"|107<br/>[[ボーリウム|Bh]]||style="background-color:#c0ffa0"|108<br/>[[ハッシウム|Hs]]||style="background-color:#c0ffa0"|109<br/>[[マイトネリウム|Mt]]||style="background-color:#c0ffa0"|110<br/>[[ダームスタチウム|Ds]]||style="background-color:#c0ffa0"|111<br/>[[レントゲニウム|Rg]]||style="background-color:#c0ffa0"|112<br/>[[コペルニシウム|Cn]]||style="background-color:#a0c0ff"|113<br/>[[ニホニウム|Nh]]||style="background-color:#a0c0ff"|114<br/>[[フレロビウム|Fl]]||style="background-color:#a0c0ff"|115<br/>[[モスコビウム|Mc]]||style="background-color:#a0c0ff"|116<br/>[[リバモリウム|Lv]]||style="background-color:#a0c0ff"|117<br/>[[テネシン|Ts]]||style="background-color:#a0c0ff"|118<br/>[[オガネソン|Og]]
|-
!{{Color|#ff0000|8}}
|style="background-color:#ff60a0"|119<br/>[[ウンウンエンニウム|Uue]]||style="background-color:#ff60a0"|120<br/>[[ウンビニリウム|Ubn]]||style="background-color:#ffa060"|121<br/>Ubu||style="background-color:#ffa060"|122<br/>Ubb||style="background-color:#ffa060"|123<br/>Ubt||style="background-color:#ffa060"|124<br/>Ubq||style="background-color:#ffa060"|125<br/>Ubp||style="background-color:#ffa060"|126<br/>[[ウンビヘキシウム|Ubh]]||style="background-color:#ffa060"|127<br/>Ubs||style="background-color:#ffa060"|128<br/>Ubo||style="background-color:#ffa060"|129<br/>Ube||style="background-color:#ffa060"|130<br/>Utn||style="background-color:#ffa060"|131<br/>Utu||style="background-color:#ffa060"|132<br/>Utb||style="background-color:#ffa060"|133<br/>Utt||style="background-color:#ffa060"|134<br/>Utq||style="background-color:#ffa060"|135<br/>Utp||style="background-color:#ffa060"|136<br/>Uth||style="background-color:#ffa060"|137<br/>Uts||style="background-color:#ffa060"|138<br/>Uto||style="background-color:#a0c0ff"|139<br/>Ute||style="background-color:#a0c0ff"|140<br/>Uqn||style="background-color:#60ffc0"|141<br/>Uqu||style="background-color:#60ffc0"|142<br/>Uqb||style="background-color:#60ffc0"|143<br/>Uqt||style="background-color:#60ffc0"|144<br/>Uqq||style="background-color:#60ffc0"|145<br/>Uqp||style="background-color:#60ffc0"|146<br/>Uqh||style="background-color:#60ffc0"|147<br/>Uqs||style="background-color:#60ffc0"|148<br/>Uqo||style="background-color:#60ffc0"|149<br/>Uqe||style="background-color:#60ffc0"|150<br/>Upn||style="background-color:#60ffc0"|151<br/>Upu||style="background-color:#60ffc0"|152<br/>Upb||style="background-color:#60ffc0"|153<br/>Upt||style="background-color:#60ffc0"|154<br/>Upq||style="background-color:#c0ffa0"|155<br/>Upp||style="background-color:#c0ffa0"|156<br/>Uph||style="background-color:#c0ffa0"|157<br/>Ups||style="background-color:#c0ffa0"|158<br/>Upo||style="background-color:#c0ffa0"|159<br/>Upe||style="background-color:#c0ffa0"|160<br/>Uhn||style="background-color:#c0ffa0"|161<br/>Uhu||style="background-color:#c0ffa0"|162<br/>Uhb||style="background-color:#c0ffa0"|163<br/>Uht||style="background-color:#c0ffa0"|164<br/>Uhq
|-
!{{Color|#ff0000|9}}
|style="background-color:#ff60a0"|165<br/>Uhp||style="background-color:#ff60a0"|166<br/>Uhh||colspan="44"|&nbsp;||style="background-color:#a0c0ff"|167<br/>Uhs||style="background-color:#a0c0ff"|168<br/>Uho
|style="background-color:#a0c0ff"|169<br/>Uhe||style="background-color:#a0c0ff"|170<br/>Usn||style="background-color:#a0c0ff"|171<br/>Usu||style="background-color:#a0c0ff"|172<br/>Usb||style="background-color:#a0c0ff"|
|}

{| style="margin:0 auto"
|style="background-color:#ff60a0"|[[Sブロック元素]]||style="background-color:#a0c0ff"|[[Pブロック元素]]||style="background-color:#c0ffa0"|[[Dブロック元素]]||style="background-color:#60ffc0"|[[Fブロック元素]]||style="background-color:#ffc060"|Gブロック元素
|}

===ピューッコの拡張周期表===
[[2010年]]に[[ペッカ・ピューッコ]]が提唱した周期表である<ref name="pyykko">A suggested periodic table up to Z ≤ 172, based on Dirac–Fock calculations on atoms and ions, Pekka Pyykkö, Phys. Chem. Chem. Phys., 2010, Advance Article [http://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2010/CP/c0cp01575j]</ref>。[[相対論効果]]を考慮した理論計算によって電子軌道の準位を8s&lt;5g≤8p<sub>1/2</sub>&lt;6f&lt;7d&lt;9s&lt;9p<sub>1/2</sub><8p<sub>3/2</sub>であるとし、これに基づいて172番元素(ウンセプトビウム)までの元素を配置している。一部で原子番号と配置が前後する。また、2011年に発表された論文で、コンピューターモデルを使用してZ = 172までの元素の配置と、予想される化学的性質を計算した<ref name=PT172/>。彼はFrickeらの軌道構成を再現し、イオン構成に基づいて121番元素から164番元素までを正式に周期表へ割り当てることで、彼らの周期表への改良を提案した。139と140番元素は、8p1/2電子殻が埋まることを反映して13族と14族に配置され、5g、8p1/2、および6f系列を区別している<ref name=PT172/>。FrickeらとNefedovらは、これらの系列を分割していない<ref name=actrev/><ref name=nefedov/>。

{| border="0" cellpadding="0" cellspacing="1" style="font-size:75%; text-align:center"
!{{Color|#ff0000|1}}<br/>1s
|style="background-color:#ff60a0"|1<br/>[[水素|H]]||colspan="48"|&nbsp;||style="background-color:#ff60a0"|2<br/>[[ヘリウム|He]]
|-
!{{Color|#ff0000|2}}<br/>2s 2p
|style="background-color:#ff60a0"|3<br/>[[リチウム|Li]]||style="background-color:#ff60a0"|4<br/>[[ベリリウム|Be]]||colspan="42"|&nbsp;||style="background-color:#a0c0ff"|5<br/>[[ホウ素|B]]||style="background-color:#a0c0ff"|6<br/>[[炭素|C]]||style="background-color:#a0c0ff"|7<br/>[[窒素|N]]||style="background-color:#a0c0ff"|8<br/>[[酸素|O]]||style="background-color:#a0c0ff"|9<br/>[[フッ素|F]]||style="background-color:#a0c0ff"|10<br/>[[ネオン|Ne]]
|-
!{{Color|#ff0000|3}}<br/>3s 3p
|style="background-color:#ff60a0"|11<br/>[[ナトリウム|Na]]||style="background-color:#ff60a0"|12<br/>[[マグネシウム|Mg]]||colspan="42"|&nbsp;||style="background-color:#a0c0ff"|13<br/>[[アルミニウム|Al]]||style="background-color:#a0c0ff"|14<br/>[[ケイ素|Si]]||style="background-color:#a0c0ff"|15<br/>[[リン|P]]||style="background-color:#a0c0ff"|16<br/>[[硫黄|S]]||style="background-color:#a0c0ff"|17<br/>[[塩素|Cl]]||style="background-color:#a0c0ff"|18<br/>[[アルゴン|Ar]]
|-
!{{Color|#ff0000|4}}<br/>4s 3d 4p
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|-
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|-
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|-
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|-
!{{Color|#ff0000|8}}<br/>8s 5g 6f 7d 8p
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{| style="margin:0 auto"
|style="background-color:#d0e0ff"|8p<sub>1/2</sub>（8p*）軌道に電子が満たされるブロック||style="background-color:#6090ff"|8p<sub>3/2</sub>軌道に電子が満たされるブロック
|}

より簡易な表示によるピューッコの拡張周期表<ref name="pyykko" />。
[[File:Pyykko periodic table 172.svg|800px|center|This figure reprinted by permission from P. Pyykkö,PCCP 2011, 13, 161. @RSC.]]

===Nefedovの拡張周期表===
Nefedov<small>([[:ru:Нефёдов,_Вадим_Иванович|ロシア語版]])</small>、Trzhaskovskaya、Yarzhemskiiは164番元素までの計算を行い、結果を2006年に発表した。ピューッコやFrickeらとは対照的に、彼らは第5周期遷移金属との電子配置の類似性に注目し、158番元素から164番元素は6族から12族ではなく、4族から10族の同族体であると考えた。RgとCnには、AuとHgとは異なる電子配置を反映するためにアスタリスクが付けられている(論文では、これらは3次元に配置されているように描かれている)。一方で、PtとDsの電子配置の違いは顕著ではないとしている<ref name=nefedov/>。
{| class="wikitable" style="text-align: center;"
|+Nefedovらの提案した周期表(一部)
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| La–Lu
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| Rg*
| Cn*
| Nh
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| Mc
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| 119
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| {{nowrap|121–157}}

| 158
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|}

===Kulshaの拡張周期表===
計算化学者Andrey Kulshaは、ピューッコの計算を参考にして、Nefedovらによる164番元素までの拡張周期表をもとに、172番元素までの改良された2つの形式を提案した<ref name=primefan/>。考えられる化学的性質に基づき、元素157から172は、どちらの形式においても、第8周期のイットリウムからキセノンまでの第5周期の同族元素として位置付けられている<ref name=primefan/>。これは、Nefedovらによる157から164のイットリウムからパラジウムまでの配置を拡張するものであり<ref name=nefedov>{{cite journal |last1=Nefedov |first1=V.I. |last2=Trzhaskovskaya |first2=M.B. |last3=Yarzhemskii |first3=V.G. |title=Electronic Configurations and the Periodic Table for Superheavy Elements |journal=Doklady Physical Chemistry |date=2006 |volume=408 |issue=2 |pages=149–151 |doi=10.1134/S0012501606060029 |s2cid=95738861 |issn=0012-5016 |url=http://www.primefan.ru/stuff/chem/nefedov.pdf}}</ref>、Frickeらによる化学的類似性と一致している<ref name=actrev/>。

Kulshaは、従来の元素へ正確に対応するものが存在しない、121番元素から156番元素までを扱う2つの方法を提案した。彼の最初の形式(2011年、ピューッコの論文が発表された後)<ref name=primefan/>では、元素121から138までと、139から156までを2つの別々の列(まとめて「Ultransition elements」と呼ばれる)として配置され、5g<sup>18</sup>電子殻をコアに追加することによって2つの列を関連付けた。ピューッコによる酸化状態の計算では<ref name=PT172/>、それぞれランタノイドとアクチノイドに似ると予想される<ref name=primefan/><ref name=sicius>{{cite book |last=Sicius |first=Hermann |author-link= |date=2021 |title=Handbuch der chemischen Elemente |language=de |url= |location= |publisher=Springer |page=1085 |isbn= |quote=Kulsha nennt die 36 Elemente zwischen 121 und 156 „Ultransition Elements“ und schlägt vor, sie in zwei Serien aufzuteilen, in eine von 121 bis 138 und eine zweite von 139 bis 156. Die erste ähnelte eher den Lanthanoiden (Seltenerden), die zweite mehr den Actinoiden.}}</ref>。彼の2番目の提案(2016年)では、121番元素から142番元素まではgブロックを形成し(5g活性があるため)、元素143から156はアクチニウムからノーベリウムの下に配置されたfブロックを形成する<ref name=dications>{{Cite web|url=http://www.primefan.ru/stuff/chem/ptable/dications.html|title = Feasible electron configurations of dications up to Z = 172|access-date=2023-06-04}}</ref>。したがって、第8周期には54の元素が現れ、118番元素の次の貴ガス(液体または固体と予想<ref name="Fricke"/>)は172番元素と考えられる<ref name=wothers>{{cite book |last=Wothers |first=Peter |author-link= |date=2019 |title=Antimony, Gold, and Jupiter's Wolf |url= |location= |publisher=Oxford University Press |page=vii |isbn=978-0-19-965272-3 |quote=It’s possible that other elements might be synthesized—research is certainly ongoing—but it’s unlikely that the table will ever appear as neat again, since to fill the next row, another fifty-four elements would need to be made.}}</ref>。


[[File:Pt172.svg|center|512px|thumb|Kulshaが最初に提案した拡張周期表]]
[[File:Pt172expanded.svg|center|1024px|thumb|Kulshaが2番目に提案した拡張周期表]]

===Smitsらの拡張周期表===
2023年、Smits、Düllmann、Indelicato、Nazarewicz、Schwerdtfegerは、電子配置に基づいて周期表の119番から170番までの元素を配置する試みを行った。いくつかの元素(121番から124番までと、168番)は、明確に配置できなかった。145番元素は2回出現し、いくつかの場所は二重に占有され、他の場所は空である<ref>{{cite journal |last1=Smits |first1=Odile R. |last2=Düllmann |first2=Christoph E. |last3=Indelicato |first3=Paul |last4=Nazarewicz |first4=Witold |last5=Schwerdtfeger |first5=Peter |date=2023 |title=The quest for superheavy elements and the limit of the periodic table |url= |journal=Nature Reviews Physics |volume= 6|issue= 2|pages= 86–98|doi=10.1038/s42254-023-00668-y |access-date=}}</ref>。

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|}


==未発見の元素の探索==

===合成の試み===
ウンビセプチウムまでの第8周期元素は、ウンビトリウムを除いて合成が試みられているが、成功していない。
<!-- 2022年現在、最初の第8周期元素であるウンウンエンニウムの合成が試みられている。 -->
====ウンウンエンニウム====
[[ウンウンエンニウム]]の合成が初めて試みられたのは、1985年にカリフォルニア州バークレーにあるsuperHILAC加速器で、[[アインスタイニウム]]254の標的に[[カルシウム]]48イオンを衝突させて行われた。

:{{nuclide|einsteinium|254}} + {{nuclide|calcium|48}} → {{chem|302|119|Uue}}* → no atoms

原子は確認されず，[[反応断面積|断面積]](核反応を起こす割合を表す尺度)の限界は300[[バーン (単位)|nb]]とされた<ref>{{cite journal|title=Search for superheavy elements using <sup>48</sup>Ca + <sup>254</sup>Es<sup>g</sup> reaction|journal=Physical Review C|date=1985|pages=1760–1763|doi=10.1103/PhysRevC.32.1760|pmid=9953034|volume=32|issue=5|bibcode = 1985PhRvC..32.1760L|last1=Lougheed|first1=R.|last2=Landrum|first2=J.|last3=Hulet|first3=E.|last4=Wild|first4=J.|last5=Dougan|first5=R.|last6=Dougan|first6=A.|last7=Gäggeler|first7=H.|last8=Schädel|first8=M.|last9=Moody|first9=K.|display-authors=1}}</ref>。後の計算では、<sup>299</sup>Uueと3個の中性子を生成物とする3n反応の断面積は、実際にはこの上限の60万分の1の0.5pbになるとされている<ref>{{cite journal|arxiv=0803.1117|doi=10.1016/j.nuclphysa.2008.11.003|title=Production of heavy and superheavy nuclei in massive fusion reactions|date=2009|author=Feng, Z|journal=Nuclear Physics A|volume=816|issue=1|page=33|last2=Jin|first2=G.|last3=Li|first3=J.|last4=Scheid|first4=W.|bibcode=2009NuPhA.816...33F|s2cid=18647291}}</ref>。

ウンウンエンニウムは未発見の最軽量元素であり、ドイツとロシアによって合成実験の対象となった。 ロシアの実験は2011年に行われたが、結果は公表されず、ウンウンエンニウム原子が確認されなかったのではないかと考えられている。2012年4月から9月にかけて、ドイツの[[ダルムシュタット]]にある[[重イオン研究所]](GSI)で、[[バークリウム]]249を標的に[[チタン]]50を衝突させて<sup>295</sup>Uueと<sup>296</sup>Uueの同位体を合成する試みが行われた<ref name="economist">[http://www.economist.com/node/21554502 Modern alchemy: Turning a line], [[The Economist]], May 12, 2012.</ref><ref name=Khuyagbaatar>[http://asrc.jaea.go.jp/soshiki/gr/chiba_gr/workshop2/&Khuyagbaatar.pdf Superheavy Element Search Campaign at TASCA]. J. Khuyagbaatar</ref>。 理論的に予測される断面積から、実験開始から5ヶ月以内にウンウンエンニウム原子が合成されると予想されていた<ref name=Zagrebaev>{{cite journal|title=Future of superheavy element research: Which nuclei could be synthesized within the next few years?|url=http://nrv.jinr.ru/pdf_file/J_phys_2013.pdf|first1=Valeriy|last1=Zagrebaev|first2=Alexander|last2=Karpov|first3=Walter|last3=Greiner|date=2013|journal=Journal of Physics|volume=420|issue=1|pages=012001|doi=10.1088/1742-6596/420/1/012001|arxiv=1207.5700|bibcode=2013JPhCS.420a2001Z|s2cid=55434734}}</ref>。さらに、バークリウム 249は327日という短い半減期でカリフォルニウム249(次の元素)に崩壊するため、これにより119番元素と120番元素を同時に探索することが可能であった<ref name="search">{{cite journal |last1=Khuyagbaatar |first1=J. |last2=Yakushev |first2=A. |last3=Düllmann |first3=Ch. E. |display-authors=3 |date=2020 |title=Search for elements 119 and 120 |url=https://jyx.jyu.fi/bitstream/handle/123456789/73027/2/khuyagbaatarym0812.pdf |journal=Physical Review C |volume=102 |issue=6 |at=064602 |doi=10.1103/PhysRevC.102.064602 |bibcode=2020PhRvC.102f4602K |hdl=1885/289860 |s2cid=229401931 |access-date=25 January 2021}}</ref>。

:{{nuclide|berkelium|249}} + {{nuclide|titanium|50}} → {{chem|299|119|Uue}}* → {{chem|296|119|Uue}} + 3 {{su|b=0|p=1}}n
:{{nuclide|berkelium|249}} + {{nuclide|titanium|50}} → {{chem|299|119|Uue}}* → {{chem|295|119|Uue}} + 4 {{su|b=0|p=1}}n

当初、実験は2012年11月まで行われる予定であったが<ref>{{Cite web |url=https://www-win.gsi.de/tasca12/program/contributions/TASCA12_Duellmann.pdf |title=Search for element 119: Christoph E. Düllmann for the ''TASCA E119'' collaboration |access-date=2017-04-05 |archive-url=https://web.archive.org/web/20160304094201/https://www-win.gsi.de/tasca12/program/contributions/TASCA12_Duellmann.pdf |archive-date=2016-03-04 |url-status=dead }}</ref>、[[テネシン]]の合成を確認するために<sup>249</sup>Bkのターゲットを利用するため(衝突させるイオンをチタン50からカルシウム48に変更)、早期に中止された<ref name=Yakushev/>。 この<sup>249</sup>Bkと<sup>50</sup>Tiの反応は、やや非対称であり<ref name=Zagrebaev/>、やや冷たい合成反応である<ref name=Yakushev/>が、ウンウンエンニウムの生成に最も好ましい実用的な反応であると予測されていた<ref name=Khuyagbaatar/>(<sup>254</sup>Esと<sup>48</sup>Caの反応の方が優れているが、標的用にミリグラム量の<sup>254</sup>Esを準備するのは難しい<ref name=Zagrebaev/>)。とはいえ、「銀の弾丸」である<sup>48</sup>Caから<sup>50</sup>Tiへと変更する必要があり、ウンウンエンニウムの収量は核融合反応の非対称性に強く依存しているため、期待される収量は約20分の1になってしまう<ref name=Zagrebaev/>。

半減期が短いと予測されたため、GSIのチームはマイクロ秒以内に崩壊イベントを記録できる新しい「高速」機器を使用した<ref name=Khuyagbaatar/>。ウンウンエンニウム原子は特定されず、限界断面積は70fbと考えられる<ref name=Yakushev/>。予測される実際の断面積は約40fbであり、これは現在の技術の限界である<ref name=Zagrebaev/>。

[[理化学研究所]](理研、[[埼玉県]][[和光市]])のチームは、2018年1月に[[キュリウム]]248の標的を[[バナジウム]]51のビームで照射し、119番元素の探索を開始した<ref name=sakai22>{{cite journal |last1=Sakai |first1=Hideyuki |last2=Haba |first2=Hiromitsu |first3=Kouji |last3=Morimoto |first4=Naruhiko |last4=Sakamoto |date=9 December 2022 |title=Facility upgrade for superheavy-element research at RIKEN |journal=The European Physical Journal A |volume=58 |issue=238 |page=238 |doi=10.1140/epja/s10050-022-00888-3 |pmid=36533209 |pmc=9734366 |bibcode=2022EPJA...58..238S }}</ref>。より重い[[バークリウム]]や[[カリホルニウム]]ではなくキュリウムが選ばれたのは、これらのより重い元素は用意が難しいためである<ref name="sakai">{{cite web |url=http://www0.mi.infn.it/~colo/slides_27_2_19/2019-2_Milano-WS_sakai.pdf |title=Search for a New Element at RIKEN Nishina Center |last=Sakai |first=Hideyuki |date=27 February 2019 |website=infn.it |access-date=17 December 2019}}</ref>。<sup>248</sup>Cmは[[オークリッジ国立研究所]]から提供された。理研は高強度バナジウムビームを開発した<ref name=usprogram>{{cite journal |url=https://www.osti.gov/servlets/purl/1896856 |title=The Status and Ambitions of the US Heavy Element Program |first1=J. |last1=Gates |first2=J. |last2=Pore |first3=H. |last3=Crawford |first4=D. |last4=Shaughnessy |first5=M. A. |last5=Stoyer |date=25 October 2022 |website=osti.gov |publisher= |access-date=13 November 2022 |doi=10.2172/1896856 |osti=1896856 |s2cid=253391052 |quote=}}</ref>。実験はサイクロトロンで始まり、その間に理研は線形加速器をアップグレードし、アップグレードは2020年に完了した<ref>{{Cite web|url=https://www.nishina.riken.jp/about/greeting.html|title = ごあいさつ &#124; 仁科加速器科学研究センター|quote=線形加速器と分離装置は2020年初頭に高度化が完了し、新たな装置を利用して、119番元素以降の新元素生成を目指しています。|date=1 April 2020|first=博儀|last=櫻井 |access-date=2024-08-01}}</ref>。最初の元素合成が観測されるまで、両方の機器で照射を続けることができる。実験は現在、少なくとも年間100日間断続的に実行されている<ref name="ball19">{{cite journal |last=Ball |first=P. |title=Extreme chemistry: experiments at the edge of the periodic table |date=2019 |journal=Nature |volume=565 |issue=7741 |pages=552–555 |issn=1476-4687 |doi=10.1038/d41586-019-00285-9|pmid=30700884 |bibcode=2019Natur.565..552B |s2cid=59524524 |doi-access=free |url=https://www.nature.com/magazine-assets/d41586-019-00285-9/d41586-019-00285-9.pdf |quote="We started the search for element 119 last June," says RIKEN researcher Hideto En'yo. "It will certainly take a long time — years and years — so we will continue the same experiment intermittently for 100 or more days per year, until we or somebody else discovers it."}}</ref><ref name="sakai" />。 

JINRのチームは将来、おそらく<sup>243</sup>Am + <sup>54</sup>Crの反応を使用して119番元素の合成を試みることを計画しているが、正確な時期は公表されていない<ref>{{cite web |url=http://www.jinr.ru/posts/jinr-presented-largest-periodic-table-to-dubna/ |title=JINR presented largest Periodic Table to Dubna |author=Joint Institute for Nuclear Research |date=24 July 2021 |website=jinr.ru |publisher=Joint Institute for Nuclear Research |access-date=27 January 2022}}</ref><ref>{{cite web |url=http://www.jinr.ru/posts/superheavy-element-factory-overview-of-obtained-results/ |title=Superheavy Element Factory: overview of obtained results |author=<!--Not stated--> |date=24 August 2023 |website= |publisher=Joint Institute for Nuclear Research |access-date=7 December 2023 |quote=}}</ref>。

====ウンビニリウム====
2006年に、<sup>249</sup>Cfと[[カルシウム48|<sup>48</sup>Ca]]の反応で[[オガネソン]]を得ることに成功した[[ドゥブナ合同原子核研究所]](JINR)のチームは、<sup>58</sup>Feと<sup>244</sup>Puの原子核から[[ウンビニリウム]](120番元素)を作ることを目指して、2007年3月から4月にかけて同様の実験を開始した<ref>{{cite news|url=https://www.llnl.gov/str/April07/pdfs/04_07.4.pdf|title=A New Block on the Periodic Table|date=April 2007|publisher=Lawrence Livermore National Laboratory|access-date=2008-01-18|archive-url=https://web.archive.org/web/20080528130457/https://www.llnl.gov/str/April07/pdfs/04_07.4.pdf|archive-date=2008-05-28|url-status=dead}}</ref><ref>{{cite web |url=http://wwwinfo.jinr.ru/plan/ptp-2007/e751004.htm |title=Synthesis of New Nuclei and Study of Nuclear Properties and Heavy-Ion Reaction Mechanisms |last1=Itkis |first1=M. G. |last2=Oganessian |first2=Yu. Ts. |date=2007 |website=jinr.ru |publisher=Joint Institute for Nuclear Research |access-date=23 September 2016}}</ref>。ウンビニリウムの同位体は、アルファ崩壊の半減期が[[マイクロ秒]]のオーダーであると予想されている<ref name=prc08ADNDT08>{{cite journal|journal=Physical Review C|volume=77|page=044603|year=2008|title=Search for long lived heaviest nuclei beyond the valley of stability|first1=P. Roy |last1=Chowdhury |first2=C. |last2=Samanta |first3= D. N. |last3=Basu|doi=10.1103/PhysRevC.77.044603|bibcode = 2008PhRvC..77d4603C|issue=4|arxiv = 0802.3837 |s2cid=119207807}}</ref><ref name="sciencedirect1">{{cite journal|journal=[[:en:Atomic Data and Nuclear Data Tables]] |volume=94|pages=781–806|year=2008|title=Nuclear half-lives for α -radioactivity of elements with 100 ≤ Z ≤ 130|author=Chowdhury, R. P.|author2=Samanta, C.|author3=Basu, D.N.|doi=10.1016/j.adt.2008.01.003|bibcode = 2008ADNDT..94..781C|issue=6|arxiv = 0802.4161 }}</ref>。初期の分析ではウンビニリウムの原子は生成されず、エネルギーの限界[[反応断面積|断面積]]は400[[バーン (単位)|fb]]という結果であった<ref name=Oganessian120>{{cite journal|journal=Phys. Rev. C|volume=79|page=024603|date=2009|title=Attempt to produce element 120 in the <sup>244</sup>Pu+<sup>58</sup>Fe reaction|doi=10.1103/PhysRevC.79.024603|last1=Oganessian|first1=Yu. Ts.|last2=Utyonkov|first2=V.|last3=Lobanov|first3=Yu.|last4=Abdullin|first4=F.|last5=Polyakov|first5=A.|last6=Sagaidak|first6=R.|last7=Shirokovsky|first7=I.|last8=Tsyganov|first8=Yu.|last9=Voinov|first9=A.|issue=2 |bibcode = 2009PhRvC..79b4603O|display-authors=8 }}</ref>。


:{{nuclide|plutonium|244}} + {{nuclide|iron|58}} → {{chem|302|120|Ubn}}* → no atoms

ロシアのチームは、この反応に再挑戦する前に設備を更新することを計画していた<ref name=Oganessian120 />。

2007年4月、ドイツの[[ダルムシュタット]]にある[[重イオン研究所]](GSI)のチームは、[[ウラン]]238と[[ニッケル]]64を用いてウンビニリウムの生成を試みた<ref name=GSI08>{{cite report|last=Hoffman|first=S.|display-authors=etal|title=Probing shell effects at Z=120 and N=184|date=2008|publisher=GSI Scientific Report|page=131}}</ref>。

:{{nuclide|uranium|238}} + {{nuclide|nickel|64}} → {{chem|302|120|Ubn}}* → no atoms

原子は検出されず、このエネルギーでの断面積は1.6pbであった。GSIは、2007年4月から5月、2008年1月から3月、2008年9月から10月の3回にわたり、より高い感度で実験を繰り返したが、いずれも否定的な結果となり、断面積の限界値は90fbであった<ref name=GSI08 />。

GSIでは、より多くの放射性ターゲットを使用できるように装置を更新した後、2010年6月から7月、および2011年に、より非対称な核融合反応を試みた<ref name=Hofmann2016 />。

:{{nuclide|curium|248}} + {{nuclide|chromium|54}} → {{chem|302|120|Ubn}}* → no atoms

このような反応の収率は、その非対称性に強く依存しているため、反応の変化によってウンビニリウムの合成確率が5倍になることが期待されていた<ref>{{cite web |url=https://www.gsi.de/de/work/forschung/nustarenna/nustarenna_divisions/she_physik/research/super_heavy_elements/future_projects.htm |title=Searching for the island of stability |author=GSI |date= 2012-04-05|website=www.gsi.de |publisher=GSI |access-date=23 September 2016}}</ref>。 その結果、<sup>299</sup>Ubnとその娘核<sup>295</sup>Ogの予測されるアルファ崩壊のエネルギーと、そのまた娘核である<sup>291</sup>[[リバモリウム|Lv]]の実験的に知られている崩壊エネルギーに一致する3つの相関信号が観測されたが、これらの可能性のある崩壊の寿命が予想よりもずっと長く、結果を確認することはできなかった<ref name=Hoffman>{{cite web |url=https://jphysplus.iop.org/2015/10/02/weighty-matters-sigurd-hofmann-on-the-heaviest-of-nuclei/ |title=Weighty matters: Sigurd Hofmann on the heaviest of nuclei |last1=Adcock |first1=Colin |date=2 October 2015 |website=JPhys+ |access-date=23 September 2016}}</ref><ref>{{Cite book |last=Hofmann |first=Sigurd |chapter=Search for Isotopes of Element 120 ON the Island of SHN |date=August 2015 |journal=Exotic Nuclei |pages=213–224 |doi=10.1142/9789814699464_0023|isbn=978-981-4699-45-7 |bibcode=2015exon.conf..213H }}</ref><ref name=Hofmann2016>{{cite journal |last1=Hofmann |first1=S. |last2=Heinz |first2=S. |first3=R. |last3=Mann |first4=J. |last4=Maurer |first5=G. |last5=Münzenberg |first6=S. |last6=Antalic |first7=W. |last7=Barth |first8=H. G. |last8=Burkhard |first9=L. |last9=Dahl |first10=K. |last10=Eberhardt |first11=R. |last11=Grzywacz |first12=J. H. |last12=Hamilton |first13=R. A. |last13=Henderson |first14=J. M. |last14=Kenneally |first15=B. |last15=Kindler |first16=I. |last16=Kojouharov |first17=R. |last17=Lang |first18=B. |last18=Lommel |first19=K. |last19=Miernik |first20=D. |last20=Miller |first21=K. J. |last21=Moody |first22=K. |last22=Morita |first23=K. |last23=Nishio |first24=A. G. |last24=Popeko |first25=J. B. |last25=Roberto |first26=J. |last26=Runke |first27=K. P. |last27=Rykaczewski |first28=S. |last28=Saro |first29=C. |last29=Scheidenberger |first30=H. J. |last30=Schött |first31=D. A. |last31=Shaughnessy |first32=M. A. |last32=Stoyer |first33=P. |last33=Thörle-Popiesch |first34=K. |last34=Tinschert |first35=N. |last35=Trautmann |first36=J. |last36=Uusitalo |first37=A. V. |last37=Yeremin |date=2016 |title=Review of even element super-heavy nuclei and search for element 120 |journal=The European Physical Journal A |volume=2016 |issue=52 |pages=180 |doi=10.1140/epja/i2016-16180-4|bibcode=2016EPJA...52..180H |s2cid=124362890 |url=https://zenodo.org/record/897926 }}</ref>。

2011年8月から10月にかけて、GSIの別チームがTASCA施設を使って、さらに非対称な新しい反応を試みた<ref name=Duellmann>{{cite web |url=http://www.yumpu.com/en/document/view/7293741/superheavy-element-research-superheavy-element-research |title=Superheavy Element Research: News from GSI and Mainz |last1=Düllmann |first1=C. E. |date=20 October 2011 |access-date=23 September 2016}}</ref><ref name=Yakushev />。

:{{nuclide|californium|249}} + {{nuclide|titanium|50}} → {{chem|299|120|Ubn}}* → no atoms

<sup>249</sup>Cfと<sup>50</sup>Tiの反応は、その非対称性から<ref>{{cite journal |last1=Siwek-Wilczyńska |first1=K. |last2=Cap |first2=T. |last3=Wilczyński |first3=J. |date=April 2010 |title=How can one synthesize the element ''Z'' = 120? |journal=International Journal of Modern Physics E |volume=19 |issue=4 |pages=500 |doi=10.1142/S021830131001490X|bibcode=2010IJMPE..19..500S }}</ref>、ウンビニリウムの合成に最も適した実用的な反応であると予測されていたが、やや冷たい合成反応でもある。ウンビニリウムの原子は確認されず、限界断面積は200fbであることが示唆された<ref name=Yakushev>{{cite web |url=http://asrc.jaea.go.jp/soshiki/gr/chiba_gr/workshop3/&Yakushev.pdf |title=Superheavy Element Research at TASCA |last1=Yakushev |first1=A. |date=2012 |website=asrc.jaea.go.jp |access-date=23 September 2016}}</ref>。Jens Volker Kratzは、これらのどの反応によってもウンビニリウムを生成できる実際の最大断面積は0.1fb程度であると予測した<ref name=Kratz/>。これに対して、成功した反応の最小断面積の世界記録は、<sup>209</sup>Bi(<sup>70</sup>Zn,n)<sup>278</sup>[[ニホニウム|Nh]]という反応の30fbであり<ref name=Zagrebaev/>、Kratzは隣のウンウンエンニウムを生成するための最大断面積を20fbと予測した<ref name=Kratz/>。 これらの予測が正確であれば、ウンウンエンニウムの合成は現在の技術の限界であり、ウンビニリウムの合成には新しい手法が必要になるだろう<ref name=Kratz/>。

2021年5月、JINRは新しい施設で<sup>249</sup>Cf+<sup>50</sup>Tiの反応を調査する計画を発表した<ref>{{cite web |url=http://www.jinr.ru/posts/how-are-new-chemical-elements-born/ |title=How are new chemical elements born? |last1=Sokolova |first1=Svetlana |last2=Popeko |first2=Andrei |date=24 May 2021 |website=jinr.ru |publisher=JINR |access-date=4 November 2021 |quote=Previously, we worked mainly with calcium. This is element 20 in the Periodic Table. It was used to bombard the target. And the heaviest element that can be used to make a target is californium, 98. Accordingly, 98 + 20 is 118. That is, to get element 120, we need to proceed to the next particle. This is most likely titanium: 22 + 98 = 120.<br/><br/>There is still much work to adjust the system. I don’t want to get ahead of myself, but if we can successfully conduct all the model experiments, then the first experiments on the synthesis of element 120 will probably start this year.}}</ref>。しかし、<sup>249</sup>Cfの標的は米国のオークリッジ国立研究所によって作成される必要があり、2022年2月に[[2022年ロシアのウクライナ侵攻|ロシアのウクライナ侵攻]]が始まった後は、制裁のためJINRと他の研究所との協力は完全に停止した<ref name=ft>{{cite news |last=Ahuja |first=Anjana |date=18 October 2023 |title=Even the periodic table must bow to the reality of war |url=https://www.ft.com/content/6b6b0afc-39b2-4955-af5a-d0ea6b4d8306 |work=Financial Times |location= |access-date=20 October 2023}}</ref>。その結果、JINRは現在、代わりに<sup>248</sup>Cm<sup>+54</sup>Crの反応を試みることを計画している。 <sup>54</sup>Cr発射体を使用するための準備実験が2023年末に実施され、<sup>238</sup>U+<sup>54</sup>Cr反応で<sup>288</sup>Lvの合成に成功した<ref name=Lv288>{{cite news |url=http://www.jinr.ru/posts/v-lyar-oiyai-vpervye-v-mire-sintezirovan-livermorij-288/ |title=В ЛЯР ОИЯИ впервые в мире синтезирован ливерморий-288 |trans-title=Livermorium-288 was synthesized for the first time in the world at FLNR JINR |language=ru |date=23 October 2023 |publisher=Joint Institute for Nuclear Research |access-date=18 November 2023}}</ref>。120番元素を合成する実験が2025年に開始されることが期待されている<ref>{{cite news |last=Mayer |first=Anastasiya |date=31 May 2023 |language=ru |title="Большинство наших партнеров гораздо мудрее политиков" |trans-title=Most of our partners are much wiser than politicians |url=https://www.vedomosti.ru/technology/characters/2023/05/31/977789-bolshinstvo-nashih-partnerov-mudree-politikov |work=[[:en:Vedomosti]] |location= |access-date=15 August 2023 |quote=В этом году мы фактически завершаем подготовительную серию экспериментов по отладке всех режимов ускорителя и масс-спектрометров для синтеза 120-го элемента. Научились получать высокие интенсивности ускоренного хрома и титана. Научились детектировать сверхтяжелые одиночные атомы в реакциях с минимальным сечением. Теперь ждем, когда закончится наработка материала для мишени на реакторах и сепараторах у наших партнеров в «Росатоме» и в США: кюрий, берклий, калифорний. Надеюсь, что в 2025 г. мы полноценно приступим к синтезу 120-го элемента.}}</ref>。

2022年から<ref name=usprogram/>、米国[[カリフォルニア州]][[バークレー (カリフォルニア州)|バークレー]]にある[[ローレンス・バークレー国立研究所]](LBNL)で、88インチのサイクロトロンを使用し、<sup>50</sup>Ti発射体を使用して新しい元素を合成する試みも行われている。計画では、2023年末にまず[[プルトニウム]]を用いて[[リバモリウム]](116番元素)を生成する実験を行うことになっている。それが成功すれば、<sup>249</sup>Cf+<sup>50</sup>Ti反応で120番元素を生成する試みが、早ければ2024年に開始されることになる<ref>{{cite news |last=Chapman |first=Kit |date=10 October 2023 |title=Berkeley Lab to lead US hunt for element 120 after breakdown of collaboration with Russia |url=https://www.chemistryworld.com/news/berkeley-lab-to-lead-us-hunt-for-element-120-after-breakdown-of-collaboration-with-russia/4018207.article |work=Chemistry World |location= |access-date=20 October 2023}}</ref><ref>{{cite web |url=https://physicalsciences.lbl.gov/2023/10/16/berkeley-lab-to-test-new-approach-to-making-superheavy-elements/ |title=Berkeley Lab to Test New Approach to Making Superheavy Elements |last=Biron |first=Lauren |date=16 October 2023 |website=lbl.gov |publisher=[[:en:Lawrence Berkeley National Laboratory]] |access-date=20 October 2023 |quote=}}</ref>。

====ウンビウニウム====
[[ウンビウニウム]]の合成は、1977年にドイツの[[ダルムシュタット]]にある[[重イオン研究所]](GSI)で、[[ウラン]]238を標的にして[[銅]]65イオンを照射することで初めて試みられた。

:{{nuclide|uranium|238}} + {{nuclide|copper|65}} → {{chem|303|121|Ubu}}* → no atoms

原子は確認されなかった<ref name=beyonduranium />。

====ウンビビウム====
[[ウンビビウム]]の合成は、1972年に[[ドゥブナ合同原子核研究所]](JINR)の[[ゲオルギー・フリョロフ]]らによって、重イオンによる熱核融合反応を利用して初めて試みられた<ref name="emsley"/>。

:{{nuclide|uranium|238}} + {{nuclide|zinc|66,68}} → {{chem|304, 306|122|Ubb}}* → no atoms

この実験は、''N'' = 184、''Z'' > 120に安定の島が存在するという初期の予測に基づいて行われた。原子は検出されず、収率限界は5[[バーン (単位)|nb]](5,000pb)と測定された。現在の結果([[フレロビウム]]参照)では、これらの実験の感度は少なくとも3桁は低かったことが示されている<ref name=superlourds />。

2000年には、ドイツの[[重イオン研究所]](GSI)のチームが、より高い感度で類似した実験を行った<ref name="emsley" />。

:{{nuclide|uranium|238}} + {{nuclide|zinc|70}} → {{chem|308|122|Ubb}}* → no atoms

これらの結果は、このような重い元素の合成は依然として大きな課題であり、ビーム強度と実験効率のさらなる向上が必要であることを示している。より質の高い結果を得るためには、将来的には感度を1[[バーン (単位)|fb]]まで上げる必要がある。

ウンビビウムの合成は、1978年にもGSIで行われ、天然の[[エルビウム]]を標的に[[キセノン]]136イオンを照射したが原子は確認されなかった<ref name="emsley"/>。

:{{nuclide|erbium|''nat''}} + {{nuclide|xenon|136}} → {{chem|298, 300, 302, 303, 304, 306|122|Ubb}}* → no atoms

特に、<sup>170</sup>Erと<sup>136</sup>Xeの反応では、半減期がマイクロ秒のアルファ線が発生し、半減期が数時間にも及ぶ[[フレロビウム]]の同位体に崩壊すると予想されていた。フレロビウムは[[安定の島]]の中心近くにあると予測されていたためである。しかし12時間照射しても、この反応は起こらなかった。同じように<sup>238</sup>Uと<sup>65</sup>Cuからウンビビウムを合成しようとしたが成功しなかった。超重核の半減期は1マイクロ秒以下であるか、あるいは断面積が非常に小さいと結論づけられた<ref name=EndPT>{{cite book|last=Hofmann|first=Sigurd|title=On Beyond Uranium: Journey to the End of the Periodic Table|year=2014|publisher=CRC Press|isbn=978-0415284950|page=[https://archive.org/details/onbeyonduraniumj0000hofm/page/105 105]|url=https://archive.org/details/onbeyonduraniumj0000hofm/page/105}}</ref>。 超重元素の合成に関する最近の研究では、この2つの結論が正しいことが示唆されている<ref name=Zagrebaev /><ref name=Karpov>{{cite web |url=http://cyclotron.tamu.edu/she2015/assets/pdfs/presentations/Karpov_SHE_2015_TAMU.pdf |title=Superheavy Nuclei: which regions of nuclear map are accessible in the nearest studies |last1=Karpov |first1=A |last2=Zagrebaev |first2=V |last3=Greiner |first3=W |date=2015 |website=cyclotron.tamu.edu |publisher=Texas A & M University |access-date=30 October 2018}}</ref>。ウンビビウムを合成する1970年代の2つの試みは両方とも、超重元素が潜在的に自然に存在する可能性があるかどうかを調査する研究によって推進された<ref name="emsley"/>。

<sup>306</sup>Ubbのような様々な超重核化合物核の核分裂特性を調べるいくつかの実験が、2000年から2004年にかけて、ロシアの[[ドゥブナ合同原子核研究所]](JINR)で行われた。2つの核反応、すなわち<sup>248</sup>Cm + <sup>58</sup>Feと<sup>242</sup>Pu + <sup>64</sup>Niについて実施された<ref name="emsley"/>。その結果、超重核は主に<sup>132</sup>Sn(''Z'' = 50、''N'' = 82)のような閉殻核を排出して核分裂することが明らかになった。また、<sup>48</sup>Caと<sup>58</sup>Feの発射体では、核融合-核分裂経路の収率が同程度であることが判明し、将来的に<sup>58</sup>Feの発射体を超重元素生成に利用できる可能性が示唆された<ref name="www1.jinr.ru">see Flerov lab annual reports 2000–2004 inclusive http://www1.jinr.ru/Reports/Reports_eng_arh.html</ref>。

====ウンビクアジウム====
フランスの[[カーン]]にあるGANIL(Grand Accélérateur National d'Ions Lourds、国立重イオン大型加速器)の科学者たちは、この領域での[[殻模型]]効果を探り、次の球状陽子殻を突き止めるために、''Z'' = 114、120、124の元素の複合核の直接核分裂と遅延核分裂を測定しようとした。これは、原子核の殻が完全であれば(あるいは[[陽子]]や[[中性子]]が[[魔法数]]であれば）、超重元素の原子核の安定性が高まり、[[安定の島]]に近づくことになるからである。2006年には、天然の[[ゲルマニウム]]にウランイオンを衝突させた反応の結果が発表され、2008年には完全な結果が発表された。

:{{nuclide|uranium|238}} + {{nuclide|germanium|''nat''}} → {{chem|308, 310, 311, 312, 314|124|Ubq}}* → ''fission''

研究チームは、半減期が10<sup>-18</sup>秒以上の複合核の核分裂を確認できたことを報告した。この結果は、''Z'' = 124で強い安定化効果があることを示唆しており、次の陽子殻が、従来考えられていた''Z'' = 114ではなく、''Z'' > 120であることを示している。複合核とは、まだ核の殻に収まっていない[[核子]]のゆるやかな組み合わせである。内部構造を持たず、標的核と発射核の衝突力のみで結合している。核子が核の殻に収まるまでには約10<sup>-14</sup>秒かかると言われており、その時点で複合核は核子となる。[[国際純正・応用化学連合|IUPAC]]ではこの数字を、発見された同位体と認められるために必要な最小[[半減期]]としている。そのため、GANILの実験は[[ウンビクアジウム|124番元素]]の発見にはならない<ref name="emsley"/>。

複合核<sup>312</sup>124の核分裂は，2006年にイタリアの[[レニャーロ]]国立研究所(Laboratori Nazionali di Legnaro)にあるタンデムALPI重イオン加速器でも研究されている<ref name="thomas">{{cite journal|last1=Thomas|first1=R.G.|last2=Saxena|first2=A.|last3=Sahu|first3=P.K. |last4=Choudhury|first4=R.K.|last5=Govil|first5=I.M.|last6=Kailas|first6=S. |last7=Kapoor|first7=S.S.|last8=Barubi|first8=M.|last9=Cinausero|first9=M. |last10=Prete|first10=G.|last11=Rizzi|first11=V.|last12=Fabris|first12=D. |last13=Lunardon|first13=M.|last14=Moretto|first14=S.|last15=Viesti|first15=G. |last16=Nebbia|first16=G.|last17=Pesente|first17=S.|last18=Dalena|first18=B. |last19=D'Erasmo|first19=G.|last20=Fiore|first20=E.M.|last21=Palomba|first21=M. |last22=Pantaleo|first22=A.|last23=Paticchio|first23=V.|last24=Simonetti|first24=G. |last25=Gelli|first25=N.|last26=Lucarelli|first26=F.|date=2007|title=Fission and binary fragmentation reactions in <sup>80</sup>Se+<sup>208</sup>Pb and <sup>80</sup>Se+<sup>232</sup>Th systems|journal=Physical Review C|volume=75|issue=2|pages=024604–1–024604–9|doi=10.1103/PhysRevC.75.024604|hdl=2158/776924|hdl-access=free}}</ref>。

:{{nuclide|thorium|232}} + {{nuclide|selenium|80}} → {{chem|312|124|Ubq}}* → ''fission''

[[ドゥブナ合同原子核研究所]](JINR)で行われた過去の実験と同様に、核分裂片は<sup>132</sup>Sn(''Z'' = 50、''N'' = 82)のような[[魔法数#二重魔法数|二重魔法数]]の周りに集まっており、超重核が核分裂でこのような二重魔法数の核子を排出する傾向があることが明らかになった<ref name="www1.jinr.ru"/>。また、<sup>312</sup>124複合核からの核分裂1回あたりの平均中性子数も(軽い系に比べて)増加しており、重い核が核分裂でより多くの中性子を放出する傾向が超重質量領域まで続いていることが確認された<ref name=thomas />。

====ウンビペンチウム====
1970年から1971年にかけて、[[ドゥブナ合同原子核研究所]]で[[亜鉛]]イオンと[[アメリシウム]]243の標的を用いて、最初で唯一のウンビペンチウムの合成が行われた<ref name=superlourds />。

:{{nuclide|americium|243}} + {{nuclide|zinc|66, 68}} → {{chem|309, 311|125|Ubp}}* → no atoms

原子は検出されず，断面積の限界は5nbと決定された。この実験は、''Z'' ~ 126や''N'' ~ 184付近の原子核がより安定である可能性に基づいて行われたが<ref name=superlourds />、最近の研究では，安定の島はむしろより低い原子番号([[コペルニシウム]]、''Z'' = 112など）にあるのではないかと考えられており、ウンビペンチウムのような重い元素の合成には、より感度の高い実験が必要であるとされている<ref name=Zagrebaev />。

====ウンビヘキシウム====
1971年にCERN([[欧州合同素粒子原子核研究機構]])でRené BimbotとJohn M. Alexander<!--don't link; the article titled "John M. Alexander" goes to a different John M. Alexander-->が熱核融合反応を用いて[[ウンビヘキシウム]]の合成を試みたが、成功しなかった<ref name="emsley"/>。

:{{nuclide|thorium|232}} + {{nuclide|krypton|84}} → {{chem|316|126|Ubh}}* → no atoms

[[崩壊エネルギー|高エネルギー]](13から15[[電子ボルト|MeV]])の[[アルファ粒子]]が観測され、ウンビヘキシウムの合成の証拠となる可能性があるとされた。その後、より高い感度での実験に失敗したことから、この実験の10mbの感度は低すぎたと考えられ、この反応でウンビヘキシウムの原子核が生成される可能性は極めて低いと考えられている<ref name=Transuraniumppl />。

====ウンビセプチウム====
1978年、[[重イオン研究所]](GSI)のUNILAC加速器で、天然[[タンタル]]を標的に[[キセノン]]136イオンを照射し、ウンビセプチウムを合成する最初で唯一の試みが行われたが、成功しなかった<ref name="emsley"/>。

:{{nuclide|tantalum|''nat''}} + {{nuclide|xenon|136}} → {{chem|316, 317|127|Ubs}}* → no atoms

===自然界での探索===
1976年、アメリカの複数の大学の研究者グループが、鉱物による原因不明の放射線障害(特に放射性ハロー([[:en:Pleochroic halo]]))の原因として、原生的な超重元素、主に[[リバモリウム]]、ウンビクアジウム、ウンビヘキシウム、ウンビセプチウムがあると提唱した<ref name=Transuraniumppl />。 これを受けて、1976年から1983年にかけて、多くの研究者が自然界での探索を行った。1976年、[[カリフォルニア大学デービス校]]のTom Cahill教授のグループは、観察された障害を引き起こすのに該当するエネルギーの[[アルファ粒子]]と[[X線]]を検出したと主張し、これらの元素の存在を裏付けた。特に、長寿命(10<sup>9</sup>年オーダー)のウンビクアジウムとウンビヘキシウムの原子核および、その崩壊生成物の存在が推測され、その存在量は同族体の[[ウラン]]や[[プルトニウム]]と比較して10<sup>−11</sup>であるとされた<ref name=symposium>{{cite book |editor1-last=Lodhi |editor1-first=M.A.K. |title=Superheavy Elements: Proceedings of the International Symposium on Superheavy Elements |location= Lubbock, Texas |publisher=Pergamon Press |date=March 1978 |isbn=978-0-08-022946-1}}</ref>。 他の人々は、何も検出されなかったと主張し、原初の超重原子核の提案された特徴に疑問を呈した<ref name=Transuraniumppl />。特に彼らは、そのような超重核は''N'' = 184または''N'' = 228で閉じた中性子殻を持っていなければならず、安定性を高めるために必要なこの条件は、リバモリウムの中性子不足の同位体または、(ほとんどの天然に存在する同位体とは異なり)[[ベータ安定線|ベータ安定性]]<ref name=Transuraniumppl />を持たない他の元素の中性子過剰同位体にしか存在しないことを挙げていた<ref name=nubase>{{cite journal|last1=Audi|first1=G.|last2=Kondev|first2=F.G.|last3=Wang|first3=M.|last4=Huang|first4=W.J.| last5=Naimi|first5=S.|title=The NUBASE2016 evaluation of nuclear properties|url=http://amdc.in2p3.fr/nubase/2017Audi03.pdf|journal=Chinese Physics C|volume=41|issue=3|date=2017|pages=030001|doi=10.1088/1674-1137/41/3/030001|bibcode=2017ChPhC..41c0001A}}</ref>。 また超重元素は、天然の[[セリウム]]の核変換によって引き起こされたとも提案されており、超重元素の観測と主張していたものの、さらに曖昧さを増していた<ref name=Transuraniumppl />。

2008年4月24日、[[ヘブライ大学]]の[[:en:Amnon Marinov|Amnon Marinov]]を中心とするグループが、自然界に存在する[[トリウム]]の鉱床から、トリウムに対して10<sup>−11</sup>から10<sup>−12</sup>の割合で[[ウンビビウム]]292の単原子を発見したと主張した<ref name=arxiv/>。Marinovらの主張は、一部の科学者から批判された。Marinovは、''[[ネイチャー]]''誌と''[[ネイチャー フィジクス]]''誌に論文を投稿したが、査読に回さずに両誌から断られたと主張していた<ref>[[Royal Society of Chemistry]], "[http://rsc.org/chemistryworld/News/2008/May/02050802.asp Heaviest element claim criticised] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20160304042449/http://rsc.org/chemistryworld/News/2008/May/02050802.asp |date=2016-03-04 }}", Chemical World.</ref>。ウンビビウム292原子は超変形または過変形された[[核異性体]]であり、半減期は少なくとも1億年であると主張していた<ref name="emsley"/>。

2008年の[[フィジカル・レビュー|''フィジカル・レビューC'']]誌に、[[質量分析法]]でより軽い[[トリウム]]の同位体を識別すると称して使われていた<ref name="thorium">{{cite journal |journal=Phys. Rev. C |title=Existence of long-lived isomeric states in naturally-occurring neutron-deficient Th isotopes |year=2007 |volume=76 |page=021303(R) |doi=10.1103/PhysRevC.76.021303 |first1=A. |last1=Marinov |first2=I. |last2=Rodushkin |first3=Y. |last3=Kashiv |first4=L. |last4=Halicz |first5=I. |last5=Segal |first6=A. |last6=Pape |first7=R. V. |last7=Gentry |first8=H. W. |last8=Miller |first9= D. |last9=Kolb |first10=R. |last10=Brandt |arxiv = nucl-ex/0605008 |bibcode = 2007PhRvC..76b1303M |issue=2 |s2cid=119443571 }}</ref>、この技術に対する批判が掲載された<ref>{{cite journal |journal=Phys. Rev. C |title=Comment on 'Existence of long-lived isomeric states in naturally-occurring neutron-deficient Th isotopes' |year=2009 |volume=79 |pages=049801 |doi=10.1103/PhysRevC.79.049801 |author1=R. C. Barber |author2=J. R. De Laeter |bibcode = 2009PhRvC..79d9801B |issue=4 }}</ref>。掲載されたコメントの後に、Marinovらによる反論が''フィジカル・レビューC''誌に掲載された<ref>{{cite journal |journal=Phys. Rev. C |title=Reply to "Comment on 'Existence of long-lived isomeric states in naturally-occurring neutron-deficient Th isotopes'" |year=2009 |volume=79 |pages=049802 |doi=10.1103/PhysRevC.79.049802 |author1=A. Marinov |author2=I. Rodushkin |author3=Y. Kashiv |author4=L. Halicz |author5=I. Segal |author6=A. Pape |author7=R. V. Gentry |author8=H. W. Miller |author9=D. Kolb |author10=R. Brandt |bibcode = 2009PhRvC..79d9802M |issue=4 }}</ref>。

加速器質量分析(AMS)の優れた方法を使用したトリウムの繰り返し実験では、感度が100倍優れているにもかかわらず、結果を確認できなかった<ref>{{cite journal |journal=Phys. Rev. C |title=Search for long-lived isomeric states in neutron-deficient thorium isotopes |year=2008 |volume=78 |page= 064313 |doi=10.1103/PhysRevC.78.064313 |author1=J. Lachner |author2=I. Dillmann |author3=T. Faestermann |author4=G. Korschinek |author5=M. Poutivtsev |author6=G. Rugel |bibcode = 2008PhRvC..78f4313L |issue=6 |arxiv = 0907.0126 |s2cid=118655846 }}</ref>。この結果は、Marinovらが主張する[[トリウム]]<ref name="thorium"/>、[[レントゲニウム]]<ref name="roentgenium">{{cite journal |last1=Marinov |first1=A. |last2=Rodushkin |first2=I. |last3=Pape |first3=A. |last4=Kashiv |first4=Y. |last5=Kolb |first5=D. |last6=Brandt |first6=R. |last7=Gentry |first7=R. V. |last8=Miller |first8=H. W. |last9=Halicz |first9=L. |first10=I. |last10=Segal |year=2009 |title=Existence of Long-Lived Isotopes of a Superheavy Element in Natural Au |journal=International Journal of Modern Physics E |volume=18 |number=3 |pages=621–629 |doi=10.1142/S021830130901280X |url=http://www.phys.huji.ac.il/~marinov/publications/Au_paper_IJMPE_73.pdf |access-date=February 12, 2012 |arxiv=nucl-ex/0702051 |bibcode=2009IJMPE..18..621M |s2cid=119103410 |url-status=dead |archiveurl=https://web.archive.org/web/20140714210340/http://www.phys.huji.ac.il/~marinov/publications/Au_paper_IJMPE_73.pdf |archive-date=July 14, 2014 }}</ref>、ウンビビウム<ref name=arxiv>{{cite journal |last=Marinov |first=A. |author2=Rodushkin, I. |author3=Kolb, D. |author4=Pape, A. |author5=Kashiv, Y. |author6=Brandt, R. |author7=Gentry, R. V. |author8= Miller, H. W. |title=Evidence for a long-lived superheavy nucleus with atomic mass number A=292 and atomic number Z=~122 in natural Th |journal= International Journal of Modern Physics E|year=2010 |arxiv=0804.3869 |bibcode = 2010IJMPE..19..131M |doi = 10.1142/S0218301310014662 |volume=19 |issue=1 |pages=131–140 |s2cid=117956340 }}</ref>の長寿命同位体に関する結果に大きな疑問を投げかけるものであった。ウンビビウムの痕跡が一部のトリウム試料にのみ存在する可能性はあるが、見込みは薄い<ref name="emsley"/>。

現在の地球上に原生超重元素がどの程度存在しうるかは不確かである。それらがずっと前に放射線損傷を引き起こしたことが確認されたとしても、それらは今では単なる痕跡に崩壊したか、あるいは完全になくなったかもしれない<ref name="emsley2">{{cite book|last=Emsley|first=John|title=Nature's Building Blocks: An A–Z Guide to the Elements |edition=New |year=2011 |publisher=Oxford University Press|location=New York |isbn=978-0-19-960563-7|page=592}}</ref>。そのような超重元素の原子核が自然に生成されるかどうかも不確かである。というのも、[[自発核分裂]]によって、質量数270から290の間で重元素生成の原因となる[[r過程]]を終了させると予想されており、[[ウンビニリウム]]よりも重い元素が生成されるずっと前に終了するからである<ref>{{cite journal|last1=Petermann |first1=I|last2=Langanke|first2=K.|last3=Martínez-Pinedo|first3=G.|last4=Panov|first4=I.V |last5=Reinhard|first5=P.G.|last6=Thielemann|first6=F.K.|date=2012|title=Have superheavy elements been produced in nature?|journal=European Physical Journal A|volume=48|issue=122|page=122|url=https://www.researchgate.net/publication/229156774|doi=10.1140/epja/i2012-12122-6|arxiv=1207.3432|bibcode=2012EPJA...48..122P|s2cid=119264543}}</ref>。

最近の仮説では、[[HD 101065|プシビルスキ星]]のスペクトルを用いて、[[フレロビウム]]、[[ウンビニリウム]]、[[ウンビヘキシウム]]の天然での存在を説明しようとしている<ref name=Isotope1>{{cite web|url=https://sites.psu.edu/astrowright/2017/03/16/przybylskis-star-iii-neutron-stars-unbinilium-and-aliens/|title=Przybylski's Star III: Neutron Stars, Unbinilium, and aliens|author=Jason Wright|date=16 March 2017|access-date=31 July 2018}}</ref><ref name=Isotope2>{{Cite journal|title=Isotope shift and search for metastable superheavy elements in astrophysical data|journal = Physical Review A|volume = 95|issue = 6|pages = 062515|author1=V. A. Dzuba|author2=V. V. Flambaum|author3=J. K. Webb|arxiv=1703.04250|doi = 10.1103/PhysRevA.95.062515|year = 2017|bibcode=2017PhRvA..95f2515D|s2cid = 118956691}}</ref><ref name=SciShowSpace>Archived at [https://ghostarchive.org/varchive/youtube/20211211/XKD0pFYewu4 Ghostarchive]{{cbignore}} and the [https://web.archive.org/web/20190605060157/https://www.youtube.com/watch?v=XKD0pFYewu4 Wayback Machine]{{cbignore}}: {{cite web|url=https://www.youtube.com/watch?v=XKD0pFYewu4|title=This Star Might Be Hiding Undiscovered Elements. Przybylski's Star|author=SciShow Space|website=youtube.com|date=31 July 2018|access-date=31 July 2018}}{{cbignore}}</ref>。

==第8周期元素の予想される性質==
118番元素の[[オガネソン]]は、これまでに合成された元素の中で最も重い元素である。次の2つの元素、[[ウンウンエンニウム|119番元素]]と[[ウンビニリウム|120番元素]]はそれぞれ[[アルカリ金属]]と[[アルカリ土類金属]]の8s元素になると思われる。120番元素を超えると超アクチノイド系列が始まると予想されており、8s電子と8p<sub>1/2</sub>、7d<sub>3/2</sub>、6f、5gの各電子殻の充填によって、これらの元素の化学的性質が決定される。122番より大きい元素については状態が非常に複雑であるため、完全で正確な[[結合クラスター法#CC法の種類|CCSD]]計算はできない。5g、6fおよび7d軌道はほぼ同じエネルギー準位を持ち、160番元素の領域では、9s、8p<sub>3/2</sub>、9p<sub>1/2</sub>の各軌道もほぼ同じエネルギーになると考えられる。これにより電子殻が混ざり合い、[[元素のブロック|ブロック]]の概念がうまく適用されなくなる。また、一部の元素を周期表に配置するのが非常に困難になる新しい化学的性質が生じると予想される<ref name=Haire/>。

[[File:Energy eigenvalues superheavy.svg|thumb|center|640px|Dirac–Fock法を使用して予測された、Z = 100以上172以下の元素の最外殻電子のエネルギー固有値(eV)。−および+記号は、それぞれスピン軌道相互作用によって軌道角運動量が減少または増加した軌道を示す。p−はp<sub>1/2</sub>、p+はp<sub>3/2</sub>、d−はd<sub>3/2</sub>、d+はd<sub>5/2</sub>、f−はf<sub>5/2</sub>、f+はf<sub>7/2</sub>、g−はg<sub>7/2</sub>、g+はg<sub>9/2</sub>である<ref name="BFricke">{{Cite book |last1=Fricke |first1=Burkhard |year=1975 |title=Superheavy elements: a prediction of their chemical and physical properties |journal=Recent Impact of Physics on Inorganic Chemistry |volume=21 |pages=[https://archive.org/details/recentimpactofph0000unse/page/89 89–144] |doi=10.1007/BFb0116498 |url=https://archive.org/details/recentimpactofph0000unse/page/89 |access-date=4 October 2013 |series=Structure and Bonding |isbn=978-3-540-07109-9 }}</ref>。]]

===化学的および物理的性質===

====119番元素および120番元素====
{{main|ウンウンエンニウム|ウンビニリウム}}
<div style="float: right; margin: 1px; font-size:85%;">
:{| class="wikitable"
|+ 119番元素と120番元素の予想される性質<ref name="Fricke"/><ref name=Haire/>
! 
! 119
! 120
|-
! [[原子量]]
| [322]
| [325]
|-
! [[元素の族|族]]
| [[アルカリ金属|1]]
| [[アルカリ土類金属|2]]
|-
! 価[[電子配置]]
| 8s<sup>1</sup>
| 8s<sup>2</sup>
|-
! 安定な[[酸化数]]
| '''1''', 3
| '''2''', 4
|-
! 第一[[イオン化エネルギー]]
| 463.1 [[ジュール毎モル|kJ/mol]]
| 563.3 kJ/mol
|-
! [[原子半径|金属結合半径]]
| 260 pm
| 200 pm
|-
! [[密度]]
| 3 g/cm<sup>3</sup>
| 7 g/cm<sup>3</sup>
|-
! [[融点]]
| {{convert|0–30|C|K|sigfig=2}}
| {{convert|680|C|K|sigfig=2}}
|-sigfig=
! [[沸点]]
| {{convert|630|C|K|sigfig=2}}
| {{convert|1700|C|K|sigfig=2}}
|}
</div>
第8周期における最初の2つの元素は、119番元素のウンウンエンニウムと120番元素のウンビニリウムである。これらの元素の[[電子配置]]は、8s軌道が満たされると思われる。この軌道は相対論的に安定し収縮しているので、119番元素と120番元素は、周期表直上の[[フランシウム]]や[[ラジウム]]よりも、[[ルビジウム]]や[[ストロンチウム]]に似ていると考えられる。8s軌道の相対論的収縮によるもう一つの効果は、これら2つの元素の[[原子半径]]が、フランシウムやラジウムの原子半径とほぼ同じになることである。これらの元素は、通常の[[アルカリ金属]]や[[アルカリ土類金属]]のように振る舞い(周期表直上の元素よりも反応性は低い)、通常はそれぞれ+1と+2の[[酸化数]]を取るが、7p<sub>3/2</sub>電子殻の相対論的な不安定さと7p<sub>3/2</sub>電子の比較的低い[[イオン化エネルギー]]により、それぞれ+3や+4のような高い酸化数も可能になると考えられる<ref name="Fricke" /><ref name=Haire>{{cite book| title=The Chemistry of the Actinide and Transactinide Elements| editor1-last=Morss|editor2-first=Norman M.| editor2-last=Edelstein| editor3-last=Fuger|editor3-first=Jean| last1=Hoffman|first1=Darleane C. |last2=Lee |first2=Diana M. |last3=Pershina |first3=Valeria |chapter=Transactinides and the future elements| publisher= [[Springer Science+Business Media]]| year=2006| isbn=978-1-4020-3555-5| location=Dordrecht, The Netherlands| edition=3rd| ref=CITEREFHaire2006}}</ref>。

====超アクチノイド元素====
ロシアの化学者Nefedov<small>([[:ru:Нефёдов,_Вадим_Иванович|ロシア語版]])</small>らによると、[[超アクチノイド元素]]は121番元素から157番元素までと考えられており、第8周期の5g、6f元素と一部の7d元素に分類される<ref name=nefedov />。超アクチノイド系列では、7d<sub>3/2</sub>、8p<sub>1/2</sub>、6f<sub>5/2</sub>、5g<sub>7/2</sub>の各電子殻が同時に満たされると予想される<ref name="BFricke"/>。これは非常に複雑な状態となるため、完全で正確なCCSD計算は121番元素と122番元素に対してのみ適用される<ref name=Haire/>。最初の超アクチノイド元素である[[ウンビウニウム]](121番元素)は、[[ランタン]]や[[アクチニウム]]と似ていると考えられる<ref>{{Cite journal | last1 = Waber | first1 = J. T. | title = SCF Dirac–Slater Calculations of the Translawrencium Elements | doi = 10.1063/1.1672054 | journal = The Journal of Chemical Physics | volume = 51 | issue = 2 | page = 664| year = 1969 |bibcode = 1969JChPh..51..664W }}</ref>。主な酸化状態は+3であるが、価電子殻のエネルギー準位が近いため、119番元素や120番元素のように、より高い酸化数を取る可能性がある<ref name=Haire/>。8p電子殻が相対論的に安定しているので、121番元素の基底状態における価電子配置は8s<sup>2</sup>8p<sup>1</sup>となり、ランタンやアクチニウムのds<sup>2</sup>配置とは対照的である<ref name=Haire/>。しかし、この異常な配置は計算上の化学的性質に影響を与えないようで、性質はアクチニウムと似ていると考えられる<ref name=Amador>{{cite journal |last1=Amador |first1=Davi H. T. |last2=de Oliveira |first2=Heibbe C. B. |first3=Julio R. |last3=Sambrano |first4=Ricardo |last4=Gargano |first5=Luiz Guilherme M. |last5=de Macedo |date=12 September 2016 |title=4-Component correlated all-electron study on Eka-actinium Fluoride (E121F) including Gaunt interaction: Accurate analytical form, bonding and influence on rovibrational spectra |journal=Chemical Physics Letters |volume=662 |pages=169–175 |doi=10.1016/j.cplett.2016.09.025|bibcode=2016CPL...662..169A |hdl=11449/168956 |hdl-access=free }}</ref>。第一[[イオン化エネルギー]]は429.4&nbsp;kJ/molと予想され、[[アルカリ金属]]の[[カリウム]]、[[ルビジウム]]、[[セシウム]]、[[フランシウム]]を除くすべての既知の元素よりも低く、この値は第8周期のアルカリ金属であるウンウンエンニウム(463.1&nbsp;kJ/mol)よりもさらに低い。同様に、次の超アクチノイド元素である[[ウンビビウム]](122番元素)は、[[セリウム]]や[[トリウム]]と似ており、主な酸化数は+4と予想される。基底状態では7d<sup>1</sup>8s<sup>2</sup>8p<sup>1</sup>か8s<sup>2</sup>8p<sup>2</sup>の価電子配置を持ち<ref name=Umemoto>{{cite journal |last1=Umemoto |first1=Koichiro |last2=Saito |first2=Susumu |date=1996 |title=Electronic Configurations of Superheavy Elements |url=https://journals.jps.jp/doi/pdf/10.1143/JPSJ.65.3175 |journal=Journal of the Physical Society of Japan |volume=65 |issue=10 |pages=3175–9 |doi=10.1143/JPSJ.65.3175 |bibcode=1996JPSJ...65.3175U |access-date=31 January 2021}}</ref>、トリウムの6d<sup>2</sup>7s<sup>2</sup>配置とは異なると考えられる。したがって、第一イオン化エネルギーはトリウムよりも小さくなる(Th: 6.3&nbsp;[[電子ボルト|eV]]; Ubb: 5.6&nbsp;eV)。これは、ウンビビウムの8p<sub>1/2</sub>電子がトリウムの6d電子よりもイオン化しやすいことによる<ref name=Haire/>。5g軌道の軌道崩壊(原子番号が大きくなる際、他の電子軌道よりもエネルギー準位が小さくなること)は125番元素あたりまで遅れる。電子数が119のときの等電子的な電子配置は、119番元素から122番元素では[Og]8s<sup>1</sup>、123番元素と124番元素では[Og]6f<sup>1</sup>、125番元素以降では[Og]5g<sup>1</sup>になると予想されている<ref name=5gchem/>。

原子番号の小さい超アクチノイド元素では電子の結合エネルギーが十分に小さく、すべての価電子を電離することができると予測されている。例えば、[[ウンビヘキシウム]](126番元素)は、容易に+8の[[酸化数]]を取ることができ、次のいくつかの元素ではさらに高い酸化数が可能であると考えられる。ウンビヘキシウムは、他のさまざまな酸化数を示すことも予測されている。最近の計算では、ウンビヘキシウムの5g[[電子軌道|軌道]]と[[フッ素]]の2p軌道の間の結合相互作用によって、安定な一[[フッ化物]]UbhFができる可能性が示唆されている<ref name=Jacoby>{{Cite journal|last=Jacoby|first=Mitch|title=As-yet-unsynthesized superheavy atom should form a stable diatomic molecule with fluorine|journal=Chemical & Engineering News|year=2006|volume=84|issue=10|pages=19|doi=10.1021/cen-v084n010.p019a}}</ref>。 その他の予測される酸化数には+2、+4、+6などがあり、+4はウンビヘキシウムにおける最も普通の酸化数であると予想されている<ref name="BFricke"/>。ウンビセプチウム(125番元素)からウンビエンニウム(129番元素)までの超アクチノイド元素は+6の酸化数を示し[[六フッ化物]]を形成すると予測されているが、UbpF<sub>6</sub>とUbhF<sub>6</sub>は比較的弱い結合になると予測されている<ref name="5gchem">{{cite journal|last1=Dongon|first1=J.P.|last2=Pyykkö|first2=P.|date=2017|title=Chemistry of the 5g elements. Relativistic calculations on hexafluorides|journal= Angewandte Chemie International Edition|volume=56|issue=34|pages=10132–10134|doi=10.1002/anie.201701609|pmid=28444891|s2cid=205400592|url=https://hal-cea.archives-ouvertes.fr/cea-01515489/document}}</ref>。 [[結合解離エネルギー]]は127番元素で大きく増加し、129番元素ではさらに増加すると予測されている。このことは、125番元素フッ化物の強いイオン性から、129番元素フッ化物における8p軌道を含んだ共有結合性への移行を示唆している。これら超アクチノイド元素六フッ化物における結合のほとんどは、[[六フッ化ウラン]]のようにウランが5fと6dの軌道を使って結合するのではなく、超アクチノイド元素で最もエネルギー準位の高い8p電子殻とフッ素の2p電子殻の間で行われる<ref name=5gchem />。

初期の超アクチノイド元素は高い酸化数に達することができるにもかかわらず、5g電子は最もイオン化しにくいと計算されている、Ubp<sup>6+</sup>とUbh<sup>7+</sup>イオンは5g<sup>1</sup>配置になると予想されており、これはNp<sup>6+</sup>イオンの5f<sup>1</sup>配置に似ている<ref name="PT172" /><ref name=5gchem />。 似たような挙動は化学的活性の低い[[ランタノイド]]の4f電子でも見られるが、これは5g軌道が小さく、電子雲に深く埋もれていることに起因する<ref name="PT172"/>。 現在知られている元素の基底状態の電子配置には存在しないg軌道の電子が存在することで、未知の[[混成軌道]]が形成され、超アクチノイド元素の化学的性質に新たな影響を与えると考えられる。だが既知の元素にg軌道電子が存在しないため、超アクチノイド元素の化学的性質を予測することは困難である<ref name="Fricke"/>。
<div style="margin:0 auto; font-size:85%;">
:{| class="wikitable"
|+ 超アクチノイド元素の予想される化合物(Xは[[ハロゲン]])<ref name="PT172"/><ref name=5gchem /><ref>{{cite journal |last=Makhyoun |first=M. A. |date=October 1988 |title=On the electronic structure of 5g<sup>1</sup> complexes of element 125: a quasi-relativistic MS-Xα study |journal=Journal de Chimie Physique et de Physico-Chimie Biologique |volume=85 |issue=10 |pages=917–24 |doi=10.1051/jcp/1988850917 |bibcode=1988JCP....85..917M }}</ref>
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|-
! 化合物
| UbuX<sub>3</sub>
| UbbX<sub>4</sub>
| UbtX<sub>5</sub>
| UbqX<sub>6</sub>
| UbpF<br />UbpF<sub>6</sub><br />{{chem|Ubp|O|2|2+}}
| UbhF<br />UbhF<sub>6</sub><br />UbhO<sub>4</sub>
| UbsF<sub>6</sub>
| UboF<sub>6</sub>
| UbeF<br />UbeF<sub>6</sub>
|
| UqbX<sub>4</sub><br />UqbX<sub>6</sub>
| UqtF<sub>6</sub>
| UqqX<sub>6</sub><br />{{chem|UqqO|2|2+}}<br />UqqF<sub>8</sub><br />UqqO<sub>4</sub>
| UqpF<sub>6</sub>
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| UqoO<sub>6</sub>
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|-
! 類似化合物
| [[ランタン|La]]X<sub>3</sub><br />[[アクチニウム|Ac]]X<sub>3</sub>
| [[セリウム|Ce]]X<sub>4</sub><br />[[トリウム|Th]]X<sub>4</sub>
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| {{chem|[[ネプツニウム|Np]]O|2|2+}}
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| ThF<sub>4</sub>
|
| [[六フッ化ウラン|UF<sub>6</sub>]]<br />[[ウラニルイオン|{{chem|UO|2|2+}}]]<br />[[プルトニウム|Pu]]F<sub>8</sub><br />PuO<sub>4</sub>
|
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| UO<sub>6</sub>
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|
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|-
! 酸化数
| 3
| 4
| 5
| 6
| 1, 6, 7
| 1, 2, 4, 6, 8
| 6
| 6
| 1, 6
| 6
| 4, 6
| 6, 8
| 3, 4, 5, 6, 8
| 6
| 8
| 12
| 3
| 0, 2
| 3, 5
| 2
| 3
|}
</div>{{clear}}

超アクチノイド元素の後半では、酸化数が低くなると予想される。132番元素では、最も安定した酸化数は+6のみが主となり、144番元素ではさらに+3と+4へ減少し、超アクチノイド系列の最後では+2(場合によっては0)となると考えられる。これは、その時点で充填される6f電子殻が電子雲の奥深くにあり、8sおよび8p<sub>1/2</sub>電子が強く結合しているため、化学的に活性とならないためである。5g電子殻が満たされるのは144番元素、6f電子殻が満たされるのは154番元素あたりと予想されるが、この領域の超アクチノイド元素では、8p<sub>1/2</sub>電子が強く結合して化学的に活性ではなくなり、化学反応に関与できるのは数個の電子だけになる。Frickeらの計算によると、154番元素で6f電子軌道が満たされ、化学的に不活性な8s殻と8p<sub>1/2</sub>殻の外側には、d軌道または他の電子の[[波動関数]]がないと予測されている。これにより、154番元素は[[貴ガス]]のような性質を持ち、むしろ不活性である可能性がある<ref name="Fricke"/><ref name=Haire/>。それにもかかわらず、[[ペッカ・ピューッコ|ピューッコ]]の計算では、155番元素は6f電子がイオン化可能であると予想している。Upp<sup>3+</sup>は6f電子殻が満たされ、第4イオン化ポテンシャルは、+4価の[[テルビウム]]と[[ジスプロシウム]]の間になると考えられる<ref name=PT172/>。

[[ランタノイド収縮|ランタノイドやアクチノイドの収縮]]と同様に、超アクチノイド元素の[[イオン半径]]が予想よりも小さい超アクチノイド系列では、超アクチノイドの収縮が起こると思われる。<!--[[ランタノイド]]では1元素あたり約4.4pm、[[アクチノイド]]では1元素あたり約3pmの収縮が見られる。(確認できず)-->ランタノイドおよびアクチノイドの波動関数は5f軌道に比べ4f軌道でより局在化しているため、アクチノイドよりもランタノイドの方が収縮率が大きい。ランタノイド、アクチノイド、超アクチノイドで外殻電子の波動関数を比較すると、超アクチノイドでは1元素あたり約2pmの収縮が予想される。これはランタノイドとアクチノイドの収縮よりも小さいが、ランタノイドとアクチノイドではそれぞれ4f軌道と5f軌道に14個の電子が満たされるのに対し、超アクチノイドでは深く埋もれている5g軌道と6f軌道に32個の電子が満たされるため、全体の効果は大きくなる<ref name="Fricke"/>。

[[ペッカ・ピューッコ]]は、超アクチノイドを3つに分類した。5g系列(121番元素から138番元素まで)、8p<sub>1/2</sub>系列(139番元素から140番元素まで)、6f系列(141番元素から155番元素まで)。これらはエネルギー準位間の重複が多く、初期の超アクチノイド原子やイオンでは6f、7d、8p<sub>1/2</sub>軌道も占有されている可能性がある。また彼は、これらが「超ランタノイド」に近い挙動を示すと予想している。5g電子はほとんど化学的に不活性であることと、各ランタノイドの1つか2つの4f電子だけが化合物でイオン化されるのに似ているという意味である。彼はまた、超アクチノイド元素の取りうる酸化数は6f系列で非常に高くなり、148番元素では+12のような値になるかもしれないと予想した<ref name="PT172"/>。

Andrey Kulshaは、121番から156番までの36個の元素を「Ultransition elements」と呼び、121番から138番までと139番から156番まで、18個ずつ2系列の元素に分けて考えることを提案した。1つ目はランタノイドに類似した元素群で、酸化数は主に+4から+6の範囲、5g電子殻の充填が支配的であり、[[ウラン]]、[[ネプツニウム]]、[[プルトニウム]]のように隣り合う元素は互いに非常によく似ていると考えた。最初(140番台の元素あたり)は、6f電子殻が7d電子殻より優先されるため非常に高い酸化数が予想されるが、その後典型的な酸化数は下がり、150番台以降の元素では8p<sub>1/2</sub>電子によって化学的に活性ではなくなる。この18元素2系列は5g<sup>18</sup>電子殻によって分離されているため、互いに類似体であると考えることができる<ref name=primefan>{{cite web |url=http://www.primefan.ru/stuff/chem/ptable/ptable.pdf |title=Есть ли граница у таблицы Менделеева? |trans-title=Is there a boundary to the Mendeleev table? |last=Kulsha |first=A. V. |website=www.primefan.ru |access-date=8 September 2018 |language=ru}}</ref><ref name=sicius>{{cite book |last=Sicius |first=Hermann |author-link= |date=2021 |title=Handbuch der chemischen Elemente |language=de |url= |location= |publisher=Springer |page=1085 |isbn= |quote=Kulsha nennt die 36 Elemente zwischen 121 und 156 „Ultransition Elements“ und schlägt vor, sie in zwei Serien aufzuteilen, in eine von 121 bis 138 und eine zweite von 139 bis 156. Die erste ähnelte eher den Lanthanoiden (Seltenerden), die zweite mehr den Actinoiden.}}</ref>。

後半の超アクチノイド元素の例として、156番元素は主に+2の酸化数を示すと予想されるが、これは安定した[Og]5g<sup>18</sup>6f<sup>14</sup>8s<sup>2</sup>8p{{su|p=2|b=1/2}}電子配置の上に電離しやすい7d<sup>2</sup>電子があるためである。これは[[ノーベリウム]]のより重い同族体と考えることができ、安定した[Rn]5f<sup>14</sup>電子配置の上に電離しやすい7s<sup>2</sup>電子のペアを持つため、通常は+2価であるのと同様である(+3価のノーベリウムを得るためには強力な酸化剤が必要である)<ref name=primefan/>。 その第一イオン化エネルギーは約400kJ/mol、金属半径は約170ピコメートルと予想される。原子量は445u前後<ref name=Fricke/>で、密度は約26g/cm<sup>3</sup>と非常に重い金属であると推定される。

====157 - 166番元素====
第8周期の7d遷移金属は157番元素から166番元素までと予想されている。これらの元素では8sと8p<sub>1/2</sub>電子が非常に強く結合しているため、いかなる化学反応にも関与しないと考えられるが、9sと9p<sub>1/2</sub>軌道は容易に混成すると予想される<ref name="Fricke"/><ref name=Haire/>。 これらの7d元素は、4d元素の[[イットリウム]]から[[カドミウム]]に似ていると思われる<ref name=primefan/>。 特に、7d<sup>10</sup>9s<sup>0</sup>電子配置を持つ164番元素は、4d<sup>10</sup>5s<sup>0</sup>電子配置を持つパラジウムと明確な類似性がある<ref name=BFricke/>。

第8周期遷移元素の貴金属は、より軽い同族元素ほどの貴金属性を示さないと考えられている。遮蔽のための外側のs殻がないことと、相対論的効果により7d電子殻が2つの副殻に強く分かれるためである。このため、7d遷移金属の第一イオン化エネルギーは、より軽い同族元素の第一イオン化エネルギーよりも小さくなっている<ref name="Fricke"/><ref name=Haire/><ref name="BFricke"/>。

ウンヘキサクアジウムの化学への関心は、理論的な予測に大きく向けられている。特に、<sup>472</sup>Uhqと<sup>482</sup>Uhqの同位体([[陽子]]が164個、[[中性子]]が308個または318個)が、仮想的な第2の[[安定の島]]の中心になるという予測がされている点である(第1の島は[[コペルニシウム]]、特に半減期が数百年または数千年と予想される同位体<sup>291</sup>Cn、<sup>293</sup>Cn、<sup>296</sup>Cnが中心である)<ref name=magickoura>{{cite journal|last1=Koura|first1=H.|last2=Chiba|first2=S.|date=2013|title=Single-Particle Levels of Spherical Nuclei in the Superheavy and Extremely Superheavy Mass Region|journal=Journal of the Physical Society of Japan|volume=82|issue=1|pages=014201|url=https://www.researchgate.net/publication/258799250 |doi=10.7566/JPSJ.82.014201|bibcode=2013JPSJ...82a4201K}}</ref><ref name="Kratz">
{{cite conference
 |last1=Kratz |first1=J. V.
 |date=5 September 2011
 |title=The Impact of Superheavy Elements on the Chemical and Physical Sciences
 |url=http://tan11.jinr.ru/pdf/06_Sep/S_1/02_Kratz.pdf
 |conference=4th International Conference on the Chemistry and Physics of the Transactinide Elements
 |access-date=27 August 2013
}}</ref><ref name="eurekalert.org">{{cite web|url=http://www.eurekalert.org/pub_releases/2008-04/acs-nse031108.php|title=Nuclear scientists eye future landfall on a second 'island of stability'|date=6 April 2008|website=EurekAlert!|access-date=2015-12-17}}</ref><ref name="link.springer.com">{{cite journal | doi = 10.1007/BF01406719 | volume = 228 | issue = 5 | title = Investigation of the stability of superheavy nuclei aroundZ=114 andZ=164 | journal = Zeitschrift für Physik | pages = 371–386 | bibcode = 1969ZPhy..228..371G | year = 1969 | last1 = Grumann | first1 = Jens | last2 = Mosel | first2 = Ulrich | last3 = Fink | first3 = Bernd | last4 = Greiner | first4 = Walter | s2cid = 120251297 }}</ref>。

計算上、164番元素(ウンヘキサクアジウム)の7d電子は化学反応に対して非常に関与しやすいと予測されるため、ウンヘキサクアジウムは通常の+2価に加えて、強い[[配位子]]を持つ[[水溶液]]中で安定した+6および+4の酸化数を示すと予想される。このため、ウンヘキサクアジウムは、Uhq([[カルボニル基|CO]])<sub>4</sub>、Uhq([[三フッ化リン|PF3]])<sub>4</sub>(いずれも対応するパラジウム化合物と同様に[[四面体形分子構造|四面体]])、{{chem|Uhq([[シアン化物|CN]])|2|2-}}([[直線形分子構造]])のような化合物を形成することができると考えられ、これは[[鉛]]の挙動とは非常に異なる。もし相対論的な影響がなければ、ウンヘキサクアジウムはより重い鉛の同族体となっていたであろう。とはいえ、水溶液中では2価の状態が主であり(ただし、より強い配位子を用いれば、+4や+6の状態も可能である)、ウンヘキサクアジウム(II)はウンヘキサクアジウム(IV)やウンヘキサクアジウム(VI)よりも鉛に近い挙動を示すと考えられる<ref name=Haire/><ref name="BFricke"/>。

ウンヘキサクアジウムはやわらかい[[ルイス酸]]であり、Ahrlands硬度は4[[電子ボルト|eV]]に近いと予測される。ウンヘキサクアジウムは中程度の反応性であり、第一イオン化エネルギーは[[モリブデン]]に近く、約685kJ/molと予想される<ref name="Fricke"/><ref name="BFricke"/>。ランタノイド、アクチノイド、超アクチノイドの[[ランタノイド収縮|収縮]]により、ウンヘキサクアジウムの金属半径はわずか158[[ピコメートル|pm]]であり、はるかに軽い元素の[[マグネシウム]]と非常に近い(ウンヘキサクアジウムの予想原子量は約474[[統一原子質量単位|u]]であり、マグネシウム原子量の約19.5倍であるにもかかわらず、である)<ref name="Fricke"/>。 この半径の小ささと重量の大きさから、密度は約46g·cm<sup>−3</sup>と非常に高く、現在知られている元素の中で最も密度の高い[[オスミウム]]の22.61g·cm<sup>−3</sup>の2倍以上になると予想されている。ウンヘキサクアジウムは、周期表の172元素の中で2番目に密度の高い元素であると考えられ、これより密度が高いのは隣のウンヘキサトリウム(163番元素)の47g·cm<sup>−3</sup>のみと予想されている<ref name="Fricke"/>。 金属状態のウンヘキサクアジウムは、[[共有結合]]による凝集エネルギー(結晶化[[エンタルピー]])が非常に大きく、その結果、融点が高くなると考えられる。金属状態のウンヘキサクアジウムは、パラジウムや[[白金]]に似た貴金属であると予想されている。Frickeらは、閉殻構造を持ちイオン化エネルギーが似ている[[オガネソン]]との類似性を示唆しているが、オガネソンが反応しやすい貴ガスであるのに対し、ウンヘキサクアジウムは反応しにくい貴金属であると述べている<ref name="BFricke"/>。

最後の2つの7d金属である元素165(ウンヘキサペンチウム)と166(ウンヘキサヘキシウム)は、それぞれ+1と+2の酸化数を取り、[[アルカリ金属]]と[[アルカリ土類金属]]と同様の挙動を示すと予想される。相対論的な効果により、9s電子は非相対論的な計算で予測されるよりもはるかに強く結合するため、9s電子のイオン化エネルギーは[[ナトリウム]]や[[マグネシウム]]の3s電子のイオン化エネルギーに匹敵すると考えられる。165番元素と166番元素は通常それぞれ+1と+2の酸化数を示すと思われるが、7d電子のイオン化エネルギーが十分に低いため、元素165は+3価のような高い酸化数も可能である。166番元素の酸化数+4は起こりにくく、11族と12族のより軽い元素(特に[[金]]と[[水銀]])と似た状態を作ると思われる<ref name="Fricke"/><ref name=Haire/>。166番元素はコペルニシウムではなく水銀のようにUhh<sup>2+</sup>にイオン化し、d電子ではなくs電子を失って7d<sup>10</sup>配置になり、12族元素の亜鉛、カドミウム、水銀のような遷移金属の性質を持たない「相対性の低い」状態になると予想される<ref name=PT172/>
。

<div style="float: center; margin: 1px; font-size:85%;">
:{| class="wikitable"
|+ 156 - 166番元素の予測される性質<br />金属の半径と密度は概算である<ref name="Fricke"/><ref name="PT172"/><ref name=Haire/>。<br />最も類似した元素族を最初に表記し、次いで他の類似した元素族を示した<ref name="BFricke"/>。
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! [[原子量]]
| [445]
| [448]
| [452]
| [456]
| [459]
| [463]
| [466]
| [470]
| [474]
| [477]
| [481]
|-
! [[元素の族|族]]
| [[イッテルビウム|Yb]]<br />(4)
| [[第3族元素|3]]<br />(5)
| [[第4族元素|4]]<br />(6)
| [[第5族元素|5]]<br />(7)
| [[第6族元素|6]]<br />(8)
| [[第7族元素|7]]<br />(9)
| [[第8族元素|8]]<br />(10)
| [[第9族元素|9]]<br />(11)
| [[第10族元素|10]]<br />(12, 14, 18)
| [[第11族元素|11]]<br />(1, 13)
| [[第12族元素|12]]<br />(2, 14)
|-
! 価[[電子配置]]
| 7d<sup>2</sup>
| 7d<sup>3</sup>
| 7d<sup>4</sup>
| 7d<sup>5</sup>
| 7d<sup>6</sup>
| 7d<sup>7</sup>
| 7d<sup>8</sup>
| 7d<sup>9</sup>
| 7d<sup>10</sup>
| 7d<sup>10</sup> 9s<sup>1</sup>
| 7d<sup>10</sup> 9s<sup>2</sup>
|-
! 安定した[[酸化数]]
| '''2'''
| '''3'''
| '''4'''
| '''1''', '''5'''
| '''2''', '''6'''
| '''3''', '''7'''
| '''4''', '''8'''
| '''5'''
| '''0''', '''2''', '''4''', '''6'''
| '''1''', '''3'''
| '''2'''
|-
! 第一[[イオン化エネルギー]]
| 400 kJ/mol
| 450 kJ/mol
| 520 kJ/mol
| 340 kJ/mol
| 420 kJ/mol
| 470 kJ/mol
| 560 kJ/mol
| 620 kJ/mol
| 690 kJ/mol
| 520 kJ/mol
| 630 kJ/mol
|-
! [[原子半径|金属結合半径]]
| 170 pm
| 163 pm
| 157 pm
| 152 pm
| 148 pm
| 148 pm
| 149 pm
| 152 pm
| 158 pm
| 250 pm
| 200 pm
|-
! [[密度]]
| 26 g/cm<sup>3</sup>
| 28 g/cm<sup>3</sup>
| 30 g/cm<sup>3</sup>
| 33 g/cm<sup>3</sup>
| 36 g/cm<sup>3</sup>
| 40 g/cm<sup>3</sup>
| 45 g/cm<sup>3</sup>
| 47 g/cm<sup>3</sup>
| 46 g/cm<sup>3</sup>
| 7 g/cm<sup>3</sup>
| 11 g/cm<sup>3</sup>
|}
</div>

==== 167 - 172番元素 ====
周期表の次の6つの元素は、第8周期での最後の元素群になると予想され<ref name="PT172"/>、5p元素の[[インジウム]]から[[キセノン]]に似ていると考えられる<ref name=primefan/>。 167番元素から172番元素では、9p<sub>1/2</sub>電子殻と8p<sub>3/2</sub>電子殻が満たされると予想される。これらのエネルギー[[固有値]]は非常に近いため、非相対論的な2pと3pの電子軌道と同様に、1つの結合したp軌道として振る舞う。したがって[[不活性電子対効果]]は起こらず、167番元素から170番元素までの最も一般的な酸化数はそれぞれ+3、+4、+5、+6になると予想される。171番元素(ウンセプトウニウム)は、酸化数を-1から+7まで取り[[ハロゲン]]に似た性質を示すが、物性は金属に近いと予想される。[[電子親和力]]は3.0eVで、ハロゲン化水素に似たHUsuを形成できると考えられる。Usu<sup>−</sup>イオンは[[ヨウ化物]](I<sup>−</sup>)のような[[HSAB則|やわらかい塩基]]になると予想されている。172番元素(ウンセプトビウム)は、イオン化エネルギーが非常に似ていることから(Xe, 1170.4 kJ/mol; Usb, 1090 kJ/mol)、キセノンと同じような化学的挙動を示す貴ガスになると予想されている。両者の唯一の主な違いは、172番元素はキセノンと異なり原子量がはるかに大きいため、[[標準状態]]では[[液体]]または[[固体]]になると予想されることである<ref name="Fricke"/>。ウンセプトビウムは、より軽い同族体であるキセノンと同様に、フッ化物や酸化物を形成する強い[[ルイスの理論|ルイス酸]]であると予想される<ref name="BFricke"/>。165-172番元素が第2周期や第3周期に類似していることから、Frickeらはこれらの元素が周期表の第9周期を形成すると考え、一方で第8周期は貴金属の164番元素で終わると考えた。この第9周期は、第2、第3周期と同様に、遷移金属を持たないと予想されている<ref name="BFricke"/>。しかし、165番と166番元素については類推が不完全である。新しいs電子殻(9s)は始まるが、これはd電子殻の上にあり、化学的には11族および12族により類似している<ref name=actrev>{{cite journal |last1=Fricke |first1=Burkhard |last2=Waber |first2=J. T. |date=1971 |title=Theoretical Predictions of the Chemistry of Superheavy Elements: Continuation of the Periodic Table up to Z{{=}}184 |url=https://kobra.uni-kassel.de/bitstream/handle/123456789/2008100124269/Fricke_theoretical_1971.pdf |journal=Actinides Reviews |volume=1 |issue= |pages=433–485 |doi= |access-date=5 January 2024}}</ref>。

<div style="float: center; margin: 1px; font-size:85%;">
:{| class="wikitable"
|+ 167 - 172番元素の予想される性質<br />金属半径または共有結合半径と密度は概算である<ref name="Fricke"/><ref name=Haire/><ref name="BFricke"/>。
!
! 167
! 168
! 169
! 170
! 171
! 172
|-
! [[原子量]]
| [485]
| [489]
| [493]
| [496]
| [500]
| [504]
|-
! [[元素の族|族]]
| [[第13族元素|13]]
| [[第14族元素|14]]
| [[第15族元素|15]]
| [[第16族元素|16]]
| [[第17族元素|17]]
| [[第18族元素|18]]
|-
! 価[[電子配置]]
| 9s<sup>2</sup> 9p<sup>1</sup>
| 9s<sup>2</sup> 9p<sup>2</sup>
| 9s<sup>2</sup> 9p<sup>2</sup> 8p<sup>1</sup>
| 9s<sup>2</sup> 9p<sup>2</sup> 8p<sup>2</sup>
| 9s<sup>2</sup> 9p<sup>2</sup> 8p<sup>3</sup>
| 9s<sup>2</sup> 9p<sup>2</sup> 8p<sup>4</sup>
|-
! 安定した[[酸化数]]
| '''3'''
| '''4'''
| '''5'''
| '''6'''
| '''−1''', '''3''', '''7'''
| '''0''', '''4''', '''6''', '''8'''
|-
! 第一[[イオン化エネルギー]]
| 620 kJ/mol
| 720 kJ/mol
| 800 kJ/mol
| 890 kJ/mol
| 984 kJ/mol
| 1090 kJ/mol
|-
! [[共有結合半径|金属半径または共有結合半径]]
| 190 pm
| 180 pm
| 175 pm
| 170 pm
| 165 pm
| 220 pm
|-
! [[密度]]
| 17 g/cm<sup>3</sup>
| 19 g/cm<sup>3</sup>
| 18 g/cm<sup>3</sup>
| 17 g/cm<sup>3</sup>
| 16 g/cm<sup>3</sup>
| 9 g/cm<sup>3</sup>
|}
</div>

==== 172番より大きい元素 ====
{{Main|ウントリセプチウム|}}
原子番号が172を超えると、少なくとも6g、7f、8d、10s、10p<sub>1/2</sub>、そしておそらく6h<sub>11/2</sub>の電子殻が満たされる可能性がある。これらの電子は非常に緩く結合しており、非常に高い酸化数に到達できる可能性があるが、イオン価が増えると電子はより強固に結合することになる。したがって、非常に長い超アクチノイドのような遷移系列がおそらく存在するだろう<ref name="BFricke"/>。

173番元素(ウンセプトトリウム)では、一番外側の電子が6g<sub>7/2</sub>、9p<sub>3/2</sub>、または 10s電子殻に入る。スピン軌道相互作用によって、これらの電子殻と8p<sub>3/2</sub>の間に非常に大きなエネルギーギャップが生じるため、この最外殻の電子は非常に緩く結合し、非常に簡単に電離してUst<sup>+</sup>カチオンを形成すると予想される。その結果、173番元素は化学的にはアルカリ金属のように振る舞い、[[セシウム]]よりもはるかに反応性が高いと予想されている(フランシウムと119番元素は相対論的効果のためにセシウムよりも反応性が低い)<ref name="BFricke1977">{{cite journal |last1=Fricke |first1=Burkhard |year=1977 |title= Dirac-Fock-Slater calculations for the elements Z = 100, fermium, to Z = 173 |journal=Recent Impact of Physics on Inorganic Chemistry |volume=19 |pages=83–192 |doi=10.1016/0092-640X(77)90010-9 |url=http://kobra.bibliothek.uni-kassel.de/bitstream/urn:nbn:de:hebis:34-2008071622807/1/Fricke_Dirac_1977.pdf |access-date=25 February 2016|bibcode = 1977ADNDT..19...83F }}</ref><ref name=primefan />。セシウムの実験的に知られているイオン化エネルギー3.894eVに対し、173番元素の計算された値は3.070 eVである<ref name=eliav2023/>。174番元素 (ウンセプトクアジウム)では8d電子が追加され、閉殻のUsq<sup>2+</sup>カチオンを形成する可能性があり、イオン化エネルギーの計算値は3.614 eVである<ref name=eliav2023/>。

元素184(ウンオクタクアジウム)は、当初陽子数184がマジックナンバーになると推測されていたため、初期の予測ではかなり関心を集めていた。電子配置は[Usb] 6g<sup>5</sup> 7f<sup>4</sup> 8d<sup>3</sup>で、少なくとも7fと8dの電子が化学的に活性であると予測されている。この物質の化学的挙動は、[[ウラン]]や[[ネプツニウム]]と同様に、+6価より大きく(6g電子の電離に相当)イオン化することはむずかしいと予想される。水溶液中では+4価が最も一般的で、固体化合物では+5価と+6価に到達すると考えられる<ref name="Fricke"/><ref name="BFricke"/><ref name=Penneman>{{cite journal |last1=Penneman |first1=R. A. |last2=Mann |first2=J. B. |last3=Jørgensen |first3=C. K. |date=February 1971 |title=Speculations on the chemistry of superheavy elements such as Z = 164 |journal=Chemical Physics Letters |volume=8 |issue=4 |pages=321–326 |doi=10.1016/0009-2614(71)80054-4 |bibcode=1971CPL.....8..321P }}</ref>。

===周期表の終わり===
物理的に可能な元素の数は明らかになっていない。低く見積もった場合、周期表は[[安定の島]]の後すぐに終わる可能性があり<ref name=EB />、それは''Z''&nbsp;=&nbsp;126を中心としたものになると予想される。周期表と原子[[核種]]の拡張は、陽子および中性子のドリップラインと、アルファ崩壊や自発核分裂に対する安定性によって制限される<ref>{{cite journal | first1=S. |last1=Cwiok|first2= P.-H.|last2= Heenen |first3= W.|last3= Nazarewicz |year=2005|title=Shape coexistence and triaxiality in the superheavy nuclei|journal=Nature|volume=433|bibcode = 2005Natur.433..705C |doi = 10.1038/nature03336 | issue=7027 | pmid=15716943 | pages=705–9|s2cid=4368001}}</ref>。Y.Gambhirらの計算では、様々な崩壊経路における核結合エネルギーと安定性を分析し、結合した原子核の存在は''Z''&nbsp;=&nbsp;146が限界であることを示唆している<ref name=limit146>{{cite journal|last1=Gambhir|first1=Y. K.|last2=Bhagwat|first2=A.|last3=Gupta|first3=M.|title=The highest limiting Z in the extended periodic table|date=2015|journal=Journal of Physics G: Nuclear and Particle Physics|volume=42|issue=12|pages=125105|doi=10.1088/0954-3899/42/12/125105|url= https://www.researchgate.net/publication/284213926|bibcode=2015JPhG...42l5105G}}</ref>。 [[ワルター・グライナー]]のように、周期表に終わりがないかもしれないと予測した人もいる<ref name="rsc">{{cite web |url=http://www.rsc.org/chemistryworld/Issues/2010/November/ColumnThecrucible.asp |title=Would element 137 really spell the end of the periodic table? Philip Ball examines the evidence|author=Philip Ball |date=November 2010 |website=[[:en:Chemistry World]]|publisher=[[Royal Society of Chemistry]] |access-date=2012-09-30}}</ref>。 周期表に終わりがあると予測した人には、''Z''&nbsp;=&nbsp;128(John Emsley)や''Z''&nbsp;=&nbsp;155(Albert Khazan)がいる<ref name="emsley"/>。

==== 原子番号137以上の元素 ====
{{Main|ウンセプトトリウム|ウントリセプチウム}}
物理学者の間では、[[リチャード・P・ファインマン]]が、''Z''&nbsp;=&nbsp;137より大きい原子番号の中性原子は存在しないと示唆したという「民間伝説」がある。これは、[[相対性理論|相対論]]的な[[ディラック方程式]]によって、そのような原子の最内殻電子では基底状態のエネルギーが[[虚数]]になることが予測されるためである。この137という数字は、[[微細構造定数]]の逆数である。この論法では、中性原子はウントリセプチウムまでしか存在しないことになり、電子軌道に基づいた元素周期表はこの時点で破綻する。しかし、この議論は、原子核が点状であることを前提としている。より正確に計算するためには、原子核の大きさが小さいがゼロではないことを考慮しなければならず、その結果、限界はさらに''Z''&nbsp;≈&nbsp;173まで上がると予測されている<ref name="rsc" />。

=====ボーアの原子模型=====
[[ボーアの原子模型]]は、原子番号が137より大きい原子が成立することの難しさを示す。1s[[原子軌道|電子軌道]]上の電子の速度''v''は次式で与えられる。

:<math>v = Z \alpha c \approx \frac{Z c}{137.036}</math>

ここで、''Z''は[[原子番号]]、''α''は電磁的相互作用の強さを表す[[微細構造定数]]である<ref>{{cite book|first1=R. |last1=Eisberg|first2= R.|last2= Resnick|year=1985|title=Quantum Physics of Atoms, Molecules, Solids, Nuclei and Particles|url=https://archive.org/details/quantumphysicsof00eisb |url-access=registration |publisher=[[John Wiley & Sons|Wiley]]|isbn=9780471873730}}</ref>。この近似式では、原子番号が137より大きい元素は、1s電子が[[光速]]であるcより速く移動する必要がある。したがって、非相対論的なボーアの原子模型をこのような元素に適用することは不正確である。

=====相対論的ディラック方程式=====
[[File:1s negative continuum.svg|thumb|right|540px|ディラック方程式(原子核の大きさが有限であることを考慮)から得られた1s、2s、2p<sub>1/2</sub>、2p<sub>3/2</sub>殻のエネルギー固有値(''Z''&nbsp;=&nbsp;135-175 (–·–)、Thomas-Fermiポテンシャルの場合 (—)、''Z''&nbsp;=&nbsp;160-170の[[セルフコンシステント|自己無撞着]]ポテンシャルの場合 (---)<ref name=Fricke/>。]]

[[相対性理論|相対論]]的な[[ディラック方程式]]により、基底状態のエネルギーは次のように与えられる。

:<math>E=\frac{m c^2}{\sqrt{1+\dfrac{Z^2 \alpha^2}{\bigg({n-\left(j+\frac12\right)+\sqrt{\left(j+\frac12\right)^2-Z^ 2\alpha^2}\bigg)}^2}}},</math>

ここで、''m''は電子の静止質量である<ref>{{cite web |title=Solution of the Dirac Equation for Hydrogen |url=https://quantummechanics.ucsd.edu/ph130a/130_notes/node501.html |access-date=2024-07-28}}</ref>。''Z''&nbsp;>&nbsp;137の場合、ディラック基底状態の波動関数は束縛ではなく振動的であり、[[オスカル・クライン|クライン]]のパラドックスのように正負のエネルギースペクトルの間にギャップはない<ref>{{cite book|first1=J. D.|last1= Bjorken|first2=S. D.|last2= Drell|year=1964|title=Relativistic Quantum Mechanics|url=https://archive.org/details/relativisticquan0000bjor|url-access=registration|publisher=[[McGraw-Hill]]}}</ref>。 原子核の有限サイズの影響を考慮したより正確な計算では、結合エネルギーが''Z''&nbsp;>&nbsp;''Z''<sub>cr</sub>に対して初めて2''mc''<sup>2</sup>を超えるのは、168から172の間であることが示されている<ref name=gamowstates/>。''Z''&nbsp;>&nbsp;''Z''<sub>cr</sub>の場合、最も内側の軌道(1s)が満たされていないと、原子核の電場によって[[対生成|電子が真空から引き出され]]、[[陽電子]]が自然放出される<ref>{{cite journal|first1=W. |last1=Greiner|first2= S. |last2=Schramm |year=2008|title=Resource Letter QEDV-1: The QED vacuum |journal=[[:en:American Journal of Physics]] |volume=76 |issue=6|pages=509 |doi=10.1119/1.2820395|bibcode=2008AmJPh..76..509G}}, and references therein</ref><ref>{{cite journal|last1=Wang|first1=Yang|last2=Wong|first2=Dillon|last3=Shytov|first3=Andrey V.|last4=Brar|first4=Victor W.|last5=Choi|first5=Sangkook|last6=Wu|first6=Qiong|last7=Tsai|first7=Hsin-Zon|last8=Regan|first8=William|last9=Zettl|first9=Alex|last10=Kawakami|first10=Roland K.|last11=Louie|first11=Steven G.|last12=Levitov|first12=Leonid S.|last13=Crommie|first13=Michael F.|title=Observing Atomic Collapse Resonances in Artificial Nuclei on Graphene|journal=Science|date=May 10, 2013|volume=340|issue=6133|pages=734–737|doi=10.1126/science.1234320|arxiv = 1510.02890 |bibcode = 2013Sci...340..734W|pmid=23470728|s2cid=29384402}}</ref>。 この1s電子殻における負の連続体への飛び込みは、しばしば周期表の「終わり」を意味すると考えられてきたが<ref name=PT172/><ref name="rsc"/><ref>{{Cite journal|last1=Indelicato|first1=Paul|last2=Bieroń|first2=Jacek|last3=Jönsson|first3=Per|date=2011-06-01|title=Are MCDF calculations 101% correct in the super-heavy elements range?|url=https://hdl.handle.net/2043/12984|journal=Theoretical Chemistry Accounts|language=en|volume=129|issue=3–5|pages=495–505|doi=10.1007/s00214-010-0887-3|issn=1432-881X|hdl=2043/12984|s2cid=54680128|hdl-access=free}}</ref>、そのような共鳴はガモフ状態として解釈できる。しかしながら、計算と周期表を''Z''<sub>cr</sub>≈172を超えて拡張するために必要な、多電子系におけるこのような状態の正確な記述は、まだ未解決の問題である<ref name=gamowstates/>。

''Z''<sub>cr</sub>&nbsp;≈&nbsp;173以上の原子番号を持つ原子は、「超臨界原子」と呼ばれている。超臨界原子は、電子と陽電子のペアが負の連続体から生成されるため、完全にイオン化することはできない。電子が束縛され、陽電子が脱出する自発的なペア生成によって1s電子殻が満たされるためである。しかし、原子核の周りの強磁場は非常に狭い空間に限られているため、負の連続体に飛び込んだ電子殻が埋まると、それ以上の自発的な対生成は[[パウリの排他原理]]によって禁じられてしまう。173番元素から184番元素は、1s電子殻のみが負の連続体に飛び込んでいるため、「弱超臨界原子」と呼ばれている。185番元素では2p<sub>1/2</sub>電子殻が、245番元素では2s電子殻が結合すると予想されている。重い原子核を衝突させて超臨界電荷を作り出し、自発的なペアの生成を検出する実験は今のところ成功していない(例えば、鉛とウランを衝突させると瞬間的に実効''Z''が174になり、ウランとウランでは実効''Z''&nbsp;=&nbsp;184、ウランとカリホルニウムでは実効''Z''&nbsp;=&nbsp;190となる)。超臨界原子は電子構造に問題がないと予想されるので、周期表の最後は電子殻の不安定性ではなく核の不安定性で決まるのかもしれない<ref>{{cite book|last1=Reinhardt|first1=Joachim|title = Nuclear Physics: Present and Future|pages=195–210|last2=Greiner|first2=Walter|doi=10.1007/978-3-319-10199-6_19|date=2015|chapter=Probing Supercritical Fields with Real and with Artificial Nuclei|isbn=978-3-319-10198-9}}</ref>。

''Z''<sub>cr</sub>を過ぎても元素が存在できなくなるわけではないが、''Z''<sub>cr</sub>に近づくにつれて原子核近くの 1s密度の濃度が増加するため、これらの電子はK殻[[電子捕獲]]に対してより脆弱になる可能性がある。このような重い元素の場合、これらの1s電子は、かなりの時間を原子核の近くで過ごす可能性が高く、実際には原子核の内部に存在する。これは周期表に新たな限界をもたらす可能性がある<ref name=colloq>{{cite journal |title=Colloquium: Superheavy elements: Oganesson and beyond |first1=S. A. |last1=Giuliani |first2=Z. |last2=Matheson |first3=W. |last3=Nazarewicz |first4=E. |last4=Olsen |first5=P.-G. |last5=Reinhard |first6=J. |last6=Sadhukhan |first7=B. |last7=Schtruempf |first8=N. |last8=Schunck |first9=P. |last9=Schwerdtfeger |date=2019 |journal=Reviews of Modern Physics |volume=91 |issue=1 |pages=011001-1–011001-25 |doi=10.1103/RevModPhys.91.011001|bibcode=2019RvMP...91a1001G |s2cid=126906074 |doi-access=free }}</ref>。

[[ミュオニック原子]]は電子の約207倍の重さであるため、係数mによって、はるかに大きい原子番号約2200で超臨界状態となる<ref name=gamowstates/>。

=====クォーク物質=====
また、''A''&nbsp;>&nbsp;300を超える領域には、陽子や中性子に束縛されたクォークではなく、[[アップクォーク]]や[[ダウンクォーク]]が自由に流れる、安定したクォーク物質の仮想的な相からなる「安定の大陸」が存在するのではないかと考えられている。このような物質は、[[バリオン]]あたりの結合エネルギーが陽子や中性子よりも大きいバリオン物質の基底状態であり、この質量閾値を超えると陽子や中性子が崩壊してクォーク物質になると考えられている。もしこの状態の物質が存在するならば，通常の超重核に生成するのと同じ核融合反応で合成される可能性があり、クーロン斥力を克服するのに十分なほど強い結合の結果として、核分裂に対して安定となるだろう<ref name="udQM">{{cite journal |last1=Holdom |first1=B. |last2=Ren |first2=J. |last3=Zhang |first3=C. |title=Quark matter may not be strange |date=2018 |journal=Physical Review Letters |volume=120 |issue=1 |pages=222001-1–222001-6 <!-- Deny Citation Bot-->|doi=10.1103/PhysRevLett.120.222001|pmid=29906186 |arxiv=1707.06610 |bibcode=2018PhRvL.120v2001H |s2cid=49216916 }}</ref>。

2020年に発表された計算<ref name=udQMnew>{{cite journal |last1=Cheng-Jun |first1=Xia |last2=She-Sheng |first2=Xue |last3=Ren-Xin |first3=Xu |last4=Shan-Gui |first4=Zhou |title=Supercritically charged objects and electron-positron pair creation |doi=10.1103/PhysRevD.101.103031 |journal=Physical Review D |year=2020 |volume=101 |issue=10 |pages=103031|arxiv=2001.03531 |bibcode=2020PhRvD.101j3031X |s2cid=210157134 }}</ref>では、アップダウンクォークマター(udQM)ナゲットは''A''&nbsp;~&nbsp;266を超えても従来の原子核に対して安定であることが示唆されており、また、udQMナゲットは従来の原子核(''Z''<sub>cr</sub>&nbsp;~&nbsp;177、''A''&nbsp;~&nbsp;480)よりも早く(''Z''<sub>cr</sub>&nbsp;~&nbsp;163、''A''&nbsp;~&nbsp;609)超臨界になることが示されている。

===原子核の性質===

==== 魔法数と安定の島 ====
{{Main|安定の島}}{{multiple image
| direction =vertical
| width = 540
| image1 = Island of Stability derived from Zagrebaev.svg
| image2 = Superheavy decay modes predicted.png
| footer = 超重核の予測される半減期(上)と崩壊形式(下)。陽子が多い合成原子核は''Z'' = 120以降すぐに途切れると予想される。理由として''Z'' = [[ウンビウニウム|121]]からは半減期が1マイクロ秒よりも短くなり、''Z'' = [[ウンビビウム|122]]以降はアルファ崩壊ではなく自発核分裂の寄与が大きくなり、''Z'' = 125からはそれが支配的になり、そして''Z'' = 130付近に陽子ドリップラインがあるためである。白いリングは安定の島の予想される位置を示している。白抜きの2つの正方形は<sup>291</sup>[[コペルニシウム|Cn]]と<sup>293</sup>Cnを示しており、半減期が数百年から数千年に及ぶ島の中で最も長寿命の核種であると予測されている<ref name=Karpov />。 2枚目の写真の左下にある黒い正方形は[[ウラン238]]で、最も重い原生核種(地球ができてから現在まで生き残っているほど安定な核種)である。
}}

原子核の安定性は、96番元素の[[キュリウム]]以降原子番号が大きくなるにつれて急速に短くなるため、[[メンデレビウム|101]]番より大きい原子番号を持つ同位体は、[[半減期]]が1日以下で[[放射能#放射性崩壊|放射性崩壊]]をしてしまう。原子番号が82([[鉛]])より大きい元素には安定同位体が存在しない<ref>{{cite journal|last = Marcillac|first = Pierre de |author2= Noël Coron|author3= Gérard Dambier|author4= Jacques Leblanc|author5= Jean-Pierre Moalic|date=April 2003|title = Experimental detection of α-particles from the radioactive decay of natural bismuth|journal = Nature|volume = 422|pages = 876–878|pmid=12712201|doi = 10.1038/nature01541|issue = 6934|bibcode = 2003Natur.422..876D|s2cid = 4415582 }}</ref>。しかし、まだあまりよくわかっていない[[魔法数|理由]]で、原子番号[[ダームスタチウム|110]]から[[フレロビウム|114]]付近では核の安定性がわずかに増し、核物理学では「[[安定の島]]」と呼ばれるものが存在する。この概念は[[カリフォルニア大学バークレー校]]の[[グレン・シーボーグ]]教授が提唱したもので，[[超アクチノイド元素|超重元素]]が予測よりも長持ちする理由を説明している<ref>{{cite book|title=Van Nostrand's scientific encyclopedia|first1=Glenn D. |last1= Considine |first2=Peter H. |last2= Kulik|publisher=Wiley-Interscience |year=2002|edition=9|isbn=978-0-471-33230-5|oclc=223349096}}</ref>。

非相対論的なSkyrme相互作用を用いた[[ハートリー＝フォック方程式]]による計算では、''Z''&nbsp;=&nbsp;126が[[殻模型|陽子の閉殻]]として提案されている。周期表のこの領域では、中性子の閉殻として''N''&nbsp;=&nbsp;184、''N''&nbsp;=&nbsp;196、''N''&nbsp;=&nbsp;228が提案されている。したがって、最も関心のある同位体は<sup>310</sup>Ubh、<sup>322</sup>Ubh、<sup>354</sup>Ubhであり、これらは他の同位体よりもかなり長命である可能性がある。[[魔法数]]の[[陽子]]を持つ126番元素は、この領域の他の元素よりも安定していると予想され、[[半減期]]の非常に長い[[核異性体]]が存在する可能性がある<ref name="emsley2" />。 また代わりに、球状の[[安定の島]]が<sup>306</sup>Ubbを中心とする可能性もあり、これは[[魔法数#二重魔法数|二重魔法数]]かもしれないと考えられている<ref name="Kratz"/>。おそらく、安定の島はZ=114から126まで、およびN=184付近で発生し、その寿命は数時間から数日程度である。N=184で閉殻になると、自発核分裂の寿命は10<sup>-15</sup>秒未満と大幅に低下すると予測される。これは原子核が電子雲を獲得して元素として振る舞うには短すぎる。ただし、こうした寿命はモデルに大きく依存しており、予測の範囲は何桁にもわたる<ref name=gamowstates>{{cite journal |last1=Smits |first1=O. R. |last2=Indelicato |first2=P. |first3=W. |last3=Nazarewicz |first4=M. |last4=Piibeleht |first5=P. |last5=Schwerdtfeger |date=2023 |title=Pushing the limits of the periodic table—A review on atomic relativistic electronic structure theory and calculations for the superheavy elements |url= |journal=Physics Reports |volume=1035 |issue= |pages=1–57 |doi=10.1016/j.physrep.2023.09.004 |access-date=|arxiv=2301.02553 |bibcode=2023PhR..1035....1S }}</ref>。

<!--安定の島の間にあるギャップを見やすくするために、Ubh・Uhqをそれぞれ126・164に変更した。-->
核変形と相対論的効果を考慮した超重核での単粒子の解析では、''Z''&nbsp;=&nbsp;126、138、154、164と''N''&nbsp;=&nbsp;228、308、318の新しい魔法数が予想されている<ref name="fossilfission" /><ref name=magickoura /> 。したがって、<sup>291</sup>Cn、<sup>293</sup>Cn<ref name=Zagrebaev />、<sup>298</sup>Flを中心とした安定の島に加えて、さらに二重魔法数の<sup>354</sup>126や<sup>472</sup>164、<sup>482</sup>164の周りにも安定の島が存在する可能性がある<ref name="eurekalert.org"/><ref name="link.springer.com"/>。これらの原子核はベータ崩壊に対し安定で、比較的長い半減期でアルファ崩壊や自発核分裂によって崩壊すると予測されており、それぞれ''N''&nbsp;=&nbsp;228[[同中性子体]]近辺や152-168番元素にさらなる安定性を与えている<ref name=SHlimit>{{cite conference|last=Koura|first=H.|date=2011|title=Decay modes and a limit of existence of nuclei in the superheavy mass region|url=http://tan11.jinr.ru/pdf/10_Sep/S_2/05_Koura.pdf|conference=4th International Conference on the Chemistry and Physics of the Transactinide Elements|access-date=18 November 2018}}</ref>。一方で同分析によると、<sup>354</sup>Ubhのようなケースでは、陽子殻の閉じ方が比較的弱いかまたは存在しない可能性がある。こうした原子核は二重魔法数ではないかもしれず、安定性は主に強い中性子殻の閉じ方によって決定されることになる<ref name=magickoura />。さらに、第2の島(''Z''&nbsp;=&nbsp;164)では[[クーロンの法則|電磁的な反発の力]]が非常に大きく、強い力に打ち勝つと考えられるため<ref name=greinernuclei>{{cite journal|last=Greiner|first=W.|date=2013|title=Nuclei: superheavy-superneutronic-strange-and of antimatter|url=http://inspirehep.net/record/1221632/files/jpconf13_413_012002.pdf|journal=Journal of Physics: Conference Series|volume=413|issue=1|pages=012002|doi=10.1088/1742-6596/413/1/012002|bibcode=2013JPhCS.413a2002G|doi-access=free}}</ref>、この領域周辺の原子核は共鳴としてしか存在せず、原子核を有意な時間で保つことができない可能性がある。また、これらの系列の間にある超アクチノイド元素のいくつかは、両方の島から離れすぎているために実際には存在しない可能性もあり<ref name=greinernuclei />、その場合、周期表は''Z''&nbsp;=&nbsp;130あたりで終わるかもしれない<ref name="BFricke"/>。興味深いことに、周期性が停止している121番元素から156番元素までの領域は、2つの島の間のギャップと非常によく似ている<ref name=primefan/>。

164番元素を超えると、[[核分裂性物質]]に対する安定性の限界を示す領域が中性子ドリップラインに収束し、より重い元素の存在に限界が生じる可能性がある<ref name=SHlimit />。とはいえ、''Z''&nbsp;=&nbsp;210、274、354、''N''&nbsp;=&nbsp;308、406、524、644、772とさらなる魔法数が予測されており<ref name=Denisov>{{cite journal|last=Denisov|first=V.|date=2005|title=Magic numbers of ultraheavy nuclei|journal=Physics of Atomic Nuclei|url= https://www.researchgate.net/publication/225734594|volume=68|issue=7|pages=1133–1137|doi=10.1134/1.1992567|bibcode=2005PAN....68.1133D|s2cid=119430168}}</ref>、<sup>616</sup>210と<sup>798</sup>274の2つのベータ崩壊に安定な二重魔法核が発見されたが、同じ計算方法で<sup>298</sup>Flと<sup>472</sup>164も予測された（''Z''&nbsp;=&nbsp;354で予測された二重魔法核はベータ崩壊に対し不安定で、<sup>998</sup>354は中性子不足、<sup>1126</sup>354は中性子過剰であった）。<sup>616</sup>210と<sup>798</sup>274にはアルファ崩壊や核分裂に対するさらなる安定性が予測されており、<sup>616</sup>210の半減期は数百マイクロ秒にも及ぶ<ref name=Denisov />が、''Z''&nbsp;=&nbsp;114や164で予測されているような大きな安定性の島は存在しないと考えられている。超重元素の存在は閉殻による安定化効果に強く依存しているため、核の不安定性と自発核分裂が安定の島を超えて周期表の終わりを決定することになるだろうと考えられている<ref name="BFricke"/><ref name=limit146 /><ref name=SHlimit />。

国際純正応用化学連合(IUPAC)は、原子核が電子雲を形成するのにかかる時間である10<sup>−14</sup>秒より長い寿命を持つ元素を、存在の定義としている。ただし、[[核種|原子核]]は一般的に、[[核構造]]が形成されるのにかかる時間である約10<sup>
−22</sup>秒より長い寿命を持つ場合に存在するとみなされる。したがって、一部のZ値では原子核のみ実現可能であり、対応する元素が存在しない可能性がある<ref name=colloq />。

また、原子番号126を超える安定の島が、実際には存在しない可能性もある。原子核の殻構造がぼやけ、電子の閉殻構造はオガネソン付近で過ぎてしまうと予想され、また低エネルギー崩壊モードが容易に利用可能になるためである<ref name=relqed>{{cite journal |last1=Schwerdtfeger |first1=Peter |last2=Pašteka |first2=Lukáš F. |last3=Punnett |first3=Andrew |last4=Bowman |first4=Patrick O. |date=2015 |title=Relativistic and quantum electrodynamic effects in superheavy elements |journal=Nuclear Physics A |volume=944 |issue=December 2015 |pages=551–577 |doi=10.1016/j.nuclphysa.2015.02.005|bibcode=2015NuPhA.944..551S }}</ref>。

核種の表の一部の領域では、球形核とは異なる魔法数を持つ非球形核によって、別の安定領域が存在することが予想される。卵形の原子核を持つ<sup>270</sup>[[ハッシウム|Hs]](Z = 108、N = 162)は、変形した二重魔法核の1つである<ref>{{cite journal|last1=Dvorak|first1=J.|last2=Brüchle|first2=W.|last3=Chelnokov|first3=M.|last4=Dressler|first4=R.|last5=Düllmann|first5=Ch. E.|last6=Eberhardt|first6=K.|last7=Gorshkov|first7=V.|last8=Jäger|first8=E.|last9=Krücken|first9=R.|last10=Kuznetsov|first10=A.|last11=Nagame|first11=Y.|last12=Nebel|first12=F.|last13=Novackova|first13=Z.|last14=Qin|first14=Z.|last15=Schädel|first15=M.|last16=Schausten|first16=B.|last17=Schimpf|first17=E.|last18=Semchenkov|first18=A.|last19=Thörle|first19=P.|last20=Türler|first20=A.|last21=Wegrzecki|first21=M.|last22=Wierczinski|first22=B.|last23=Yakushev|first23=A.|last24=Yeremin|first24=A.|title=Doubly Magic Nucleus <sub>108</sub><sup>270</sup>Hs<sub>162</sub> |journal=Physical Review Letters|volume=97|issue=24|pages=242501|year=2006|doi=10.1103/PhysRevLett.97.242501|pmid=17280272|bibcode=2006PhRvL..97x2501D|url=https://www.dora.lib4ri.ch/psi/islandora/object/psi%3A16351}}</ref>。超重核領域では、ほとんどの小さな原子核の内部で陽子がほぼ均一に分布しているのとは異なり、オガネソン同位体を含む一部の核では陽子の強いクーロン反発により、基底状態で陽子の中心密度が低下した泡のような形状を取ることがある<ref>{{cite journal |last1=LaForge |first1=Evan |last2=Price |first2=Will |last3=Rafelski |first3=Johann |title=Superheavy elements and ultradense matter |journal=The European Physical Journal Plus |date=15 September 2023 |volume=138 |issue=9 |page=812 |doi=10.1140/epjp/s13360-023-04454-8|arxiv=2306.11989 |bibcode=2023EPJP..138..812L }}</ref><ref>{{cite news |title=Physicists are pushing the periodic table to its limits {{!}} Science News |url=https://www.sciencenews.org/article/physics-periodic-table-future-superheavy-elements |access-date=25 December 2023 |date=27 February 2019}}</ref>。ただし、このような形状では非常に自発核分裂が起こりやすい<ref>{{cite journal |last1=Dechargé |first1=J. |last2=Berger |first2=J.-F. |last3=Girod |first3=M. |last4=Dietrich |first4=K. |title=Bubbles and semi-bubbles as a new kind of superheavy nuclei |journal=Nuclear Physics A |date=March 2003 |volume=716 |pages=55–86 |doi=10.1016/S0375-9474(02)01398-2|bibcode=2003NuPhA.716...55D }}</ref>。<sup>342</sup>136や<sup>466</sup>156など、さらに重い一部の領域の原子核は、代わりに[[トーラス]](いわゆる「ドーナツ型」)または[[赤血球]]のような形状になり独自の魔法数と安定の島を持つが、簡単に自発核分裂を起こすこともある<ref>{{cite journal |last1=Agbemava |first1=S. E. |last2=Afanasjev |first2=A. V. |title=Hyperheavy spherical and toroidal nuclei: The role of shell structure |journal=Physical Review C |date=25 March 2021 |volume=103 |issue=3 |pages=034323 |doi=10.1103/PhysRevC.103.034323 |arxiv=2012.13799|bibcode=2021PhRvC.103c4323A }}</ref><ref>{{cite journal |last1=Afanasjev |first1=A.V. |last2=Agbemava |first2=S.E. |last3=Gyawali |first3=A. |title=Hyperheavy nuclei: Existence and stability |journal=Physics Letters B |date=July 2018 |volume=782 |pages=533–540 |doi=10.1016/j.physletb.2018.05.070|doi-access=free |arxiv=1804.06395 |bibcode=2018PhLB..782..533A }}</ref>。

====未発見元素の崩壊特性の予測====
安定性の主要な島は<sup>291</sup>Cnと<sup>293</sup>Cnの周辺にあると考えられているため、[[オガネソン]]を超える未発見の元素は非常に不安定で、マイクロ秒以下で[[アルファ崩壊]]や[[自発核分裂]]を起こす可能性がある。半減期が1マイクロ秒を超える正確な領域は不明だが、利用可能なターゲットや発射体との核融合反応で生成される、[[ウンビニリウム]]より重い元素の同位体は、半減期が1マイクロ秒以下となり検出されない可能性があることを様々なモデルが示唆している<ref name=Karpov />。 一貫して予測されているのは、''N'' = 184と''N'' = 228、そしておそらく''Z'' ~ 124と''N'' ~ 198にも安定領域が存在することである。これらの核は数秒の半減期を持ち、主にアルファ崩壊と自発核分裂を起こすが、わずかな[[陽電子放出|ベータプラス崩壊]](または[[電子捕獲]])の分岐も存在するかもしれないと考えられている<ref name=Palenzuela>{{cite journal|last1=Palenzuela|first1=Y. M.|last2=Ruiz|first2=L. F.|last3=Karpov|first3=A.|last4=Greiner|first4=W.|year=2012|title=Systematic Study of Decay Properties of Heaviest Elements|journal=Bulletin of the Russian Academy of Sciences: Physics|volume=76|issue=11|pages=1165–1171|issn=1062-8738|url=http://nrv.jinr.ru/karpov/publications/Palenzuela12_BRAS.pdf|doi=10.3103/S1062873812110172|bibcode=2012BRASP..76.1165P|s2cid=120690838}}</ref>。 これらの安定性が高まった領域の外側では、安定化効果が失われるために核分裂障壁が大幅に低下し核子の半減期は10<sup>−18</sup>秒未満になると予想される。特に、核子のペアによって障壁がさらに低くなる偶数-偶数の原子核では顕著である<ref name=SHlimit />。一般にアルファ崩壊の半減期は中性子数とともに増加し、最も中性子数の少ない同位体ではナノ秒、[[ベータ安定線]](ベータ崩壊を起こさない核種群)に近いところでは数秒になると予想されている<ref name="sciencedirect1" />。魔法数よりも中性子数が少ない原子核では結合エネルギーが大幅に低下するため、この傾向は崩れ、半減期は短くなる<ref name="sciencedirect1" />。さらに中性子が不足している同位体も結合エネルギーが低く、[[陽子放出]]の可能性がある。[[クラスタ崩壊]](重粒子放出)もいくつかの同位体の代替崩壊モードとして提案されているが<ref>{{cite journal |last1=Poenaru |first1=Dorin N. |last2=Gherghescu |first2=R. A. |last3=Greiner |first3=W. |date=2012 |title=Cluster decay of superheavy nuclei |url=https://www.researchgate.net/publication/235507943 |journal=Physical Review C |volume=85 |issue=3 |pages=034615 |doi=10.1103/PhysRevC.85.034615 |access-date=2 May 2017|bibcode=2012PhRvC..85c4615P }}</ref>、これらの元素の同定にはさらに別のハードルがある。

===電子配置===
以下は、119番元素から174番元素まで、および184番元素の予想される電子配置である。記号[Og]は、現在知られている最後の元素であるオガネソン(Z = 118)の推定電子配置を示す。119番元素より前では、オガネソンが閉殻(不活性ガス)配置を持つ最後の元素であると予想されるため、表の元素の配置は[Og]で始まるように書かれている。[Og]は1s<sup>2</sup> 2s<sup>2</sup> 2p<sup>6</sup> 3s<sup>2</sup> 3p<sup>6</sup> 3d<sup>10</sup> 4s<sup>2</sup> 4p<sup>6</sup> 4d<sup>10</sup> 4f<sup>14</sup> 5s<sup>2</sup> 5p<sup>6</sup> 5d<sup>10</sup> 5f<sup>14</sup> 6s<sup>2</sup> 6p<sup>6</sup> 6d<sup>10</sup> 7s<sup>2</sup> 7p<sup>6</sup>である。同様に、173、174および184番元素の構成の[172]は、172番元素の予想される閉殻構成を示す。

123番元素以降では完全なCCSD計算は利用できないため、この表のデータは暫定的なものとして考慮する必要がある<ref name="BFricke"/><ref name="BFricke1977" /><ref name="E123-vdSchoor2011">{{cite thesis|last=van der Schoor|first=K.|title=Electronic structure of element 123|url=http://fse.studenttheses.ub.rug.nl/14531/1/report.pdf|date=2016|publisher=Rijksuniversiteit Groningen}}</ref>。123番元素およびより重い元素の場合、いくつかの考えられる電子配置は非常に類似したエネルギーレベルを持つと予想されるため、[[基底状態]]を予測することは非常に困難である。下表には提案されているすべての構成が含まれる(マーデルング則がおそらくこれ以降機能しなくなると考えられているため)<ref name="E123-vdSchoor2011" /><ref name=Umemoto /><ref>{{Cite journal|url=https://link.springer.com/article/10.1007/s00214-010-0887-3|doi = 10.1007/s00214-010-0887-3|title = Are MCDF calculations 101% correct in the super-heavy elements range?|year = 2011|last1 = Indelicato|first1 = Paul|last2 = Bieroń|first2 = Jacek|last3 = Jönsson|first3 = Per|journal = Theoretical Chemistry Accounts|volume = 129|issue = 3–5|pages = 495–505|hdl = 2043/12984|s2cid = 54680128|hdl-access = free}}</ref>。

172番元素までの予測されたブロックはKulshaの提案であり、予想される利用可能な電子軌道に従う<ref name="dications" />。 ただし、138番元素以降のブロックについて、文献による合意はない。

:{| class="wikitable"
! colspan="3" | [[元素]] !! [[元素のブロック|ブロック]] !! 予想される[[電子配置]]<ref name=Haire/><ref name="BFricke"/><ref name="BFricke1977"/><ref name=nefedov/>
|-bgcolor="{{element color|s-block}}"
|| 119 || '''Uue''' || [[ウンウンエンニウム]] ||sブロック ||[Og] 8s<sup>1</sup>
|-bgcolor="{{element color|s-block}}"
|| 120 || '''Ubn''' || [[ウンビニリウム]] ||sブロック ||[Og] 8s<sup>2</sup>
|-bgcolor="{{element color|g-block}}"
|| 121 || '''Ubu''' || [[ウンビウニウム]] ||gブロック || [Og] 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}}<ref name=Umemoto/>
|-bgcolor="{{element color|g-block}}"
|| 122 || '''Ubb''' || [[ウンビビウム]] ||gブロック || [Og] 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}<ref name=Umemoto/><br />[Og] 7d<sup>1</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}}
|-bgcolor="{{element color|g-block}}"
|| 123 || '''Ubt''' || ウンビトリウム ||gブロック || [Og] 6f<sup>1</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}<ref name=econfig>{{cite web |url=http://www.primefan.ru/stuff/chem/ptable/ptable.html |title=Archived copy |website=www.primefan.ru |access-date=15 January 2022 |archive-url=https://web.archive.org/web/20160305034205/http://www.primefan.ru/stuff/chem/ptable/ptable.html |archive-date=5 March 2016 |url-status=dead}}</ref><br />[Og] 6f<sup>1</sup> 7d<sup>1</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}}<ref name="E123-vdSchoor2011"/><ref name=Umemoto/><br />[Og] 6f<sup>2</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}}<br />[Og] 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}} 8p{{su|p=1|b=3/2}}<ref name="E123-vdSchoor2011"/>
|-bgcolor="{{element color|g-block}}"
|| 124 || '''Ubq''' || [[ウンビクアジウム]] ||gブロック || [Og] 6f<sup>2</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}<ref name=Umemoto/><ref name=econfig/><br />[Og] 6f<sup>3</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}}
|-bgcolor="{{element color|g-block}}"
|| 125 || '''Ubp''' || ウンビペンチウム ||gブロック || [Og] 6f<sup>4</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}}<ref name=Umemoto/><br />[Og] 5g<sup>1</sup> 6f<sup>2</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}<ref name=econfig/><br />[Og] 5g<sup>1</sup> 6f<sup>3</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}}<br />[Og] 8s<sup>2</sup> 0.81(5g<sup>1</sup> 6f<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}) + 0.17(5g<sup>1</sup> 6f<sup>1</sup> 7d<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}}) + 0.02(6f<sup>3</sup> 7d<sup>1</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}})
|-bgcolor="{{element color|g-block}}"
|| 126 || '''Ubh''' || [[ウンビヘキシウム]] ||gブロック || [Og] 5g<sup>1</sup> 6f<sup>4</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}}<ref name=Umemoto/><br />[Og] 5g<sup>2</sup> 6f<sup>2</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}<ref name=econfig/><br />[Og] 5g<sup>2</sup> 6f<sup>3</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}}<br />[Og] 8s<sup>2</sup> 0.998(5g<sup>2</sup> 6f<sup>3</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}}) + 0.002(5g<sup>2</sup> 6f<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}})
|-bgcolor="{{element color|g-block}}"
|| 127 || '''Ubs''' || ウンビセプチウム ||gブロック || [Og] 5g<sup>2</sup> 6f<sup>3</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}<ref name=Umemoto/><br />[Og] 5g<sup>3</sup> 6f<sup>2</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}<ref name=econfig/><br />[Og] 8s<sup>2</sup> 0.88(5g<sup>3</sup> 6f<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}) + 0.12(5g<sup>3</sup> 6f<sup>1</sup> 7d<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}})
|-bgcolor="{{element color|g-block}}"
|| 128 || '''Ubo''' ||ウンビオクチウム||gブロック || [Og] 5g<sup>3</sup> 6f<sup>3</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}<ref name=Umemoto/><br />[Og] 5g<sup>4</sup> 6f<sup>2</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}<ref name=econfig/><br />[Og] 8s<sup>2</sup> 0.88(5g<sup>4</sup> 6f<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}) + 0.12(5g<sup>4</sup> 6f<sup>1</sup> 7d<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}})
|-bgcolor="{{element color|g-block}}"
|| 129 || '''Ube''' || ウンビエンニウム ||gブロック || [Og] 5g<sup>4</sup> 6f<sup>3</sup> 7d<sup>1</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}}<br />[Og] 5g<sup>4</sup> 6f<sup>3</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}<ref name=Umemoto/><ref name=econfig/><br />[Og] 5g<sup>5</sup> 6f<sup>2</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=2|b=1/2}}<br />[Og] 5g<sup>4</sup> 6f<sup>3</sup> 7d<sup>1</sup> 8s<sup>2</sup> 8p{{su|p=1|b=1/2}}
|-bgcolor="{{element color|g-block}}"
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|| 173 || '''Ust''' || ウンセプトトリウム || ? || [172] 6g<sup>1</sup><br />[172] 9p{{su|p=1|b=3/2}}<br />[172] 10s<sup>1</sup><ref name=eliav2023>{{cite web |url=https://indico.jinr.ru/event/3622/contributions/20027/attachments/15317/25832/Ephraim%20Eliav%20Yerevan-2023F.pptx |title=Benchmark atomic electronic structures calculations at the edge of Periodic Table |last=Eliav |first=Ephraim |date=26 April 2023 |website=jinr.ru |publisher=JINR |access-date=29 July 2023 |quote=}}</ref>
|-
|| 174 || '''Usq''' || ウンセプトクアジウム || ? || [172] 8d<sup>1</sup> 10s<sup>1</sup><ref name=eliav2023/>
|-
|| ... || ... || ... || ... || ...
|-
|| 184 || '''Uoq''' || ウンオクトクアジウム ||? || [172] 6g<sup>5</sup> 7f<sup>4</sup> 8d<sup>3</sup>
|}

== 出典 ==
{{脚注ヘルプ}}{{Clear}}
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== 関連項目 ==
*[[周期律]]
*[[周期表]]
*[[元素]]

{{周期表 (ナビゲーション)}}

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[[Category:周期表]]