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[[アーベル群]]の理論において、アーベル群の'''捩れ部分群'''(ねじれぶぶんぐん、{{lang-en-short|torsion subgroup}})とは有限の[[位数 (群論)|位数]]をもつすべての元からなる[[部分群]]である。アーベル群が'''[[捩れ群|捩れ]]''' (torsion) 群あるいは'''[[周期群|周期]]''' (periodic) 群であるとは、そのすべての元の位数が有限であることで、'''torsion-free''' であるとは、[[単位元]]を除くすべての元の位数が無限であることである{{sfn|Fuchs|1970|p={{google books quote|id=Vb38GspKia8C|page=4|4}}}}。 実際に有限位数の元が加法で閉じていることの証明は加法の可換性によっている(例の節を見よ)。 アーベル群 ''A'' の捩れ部分群 ''T''(''A'') は ''A'' の [[:en:characteristic subgroup<!-- [[:ja:特性部分群]] とリンク -->|fully characteristic subgroup]] であり、剰余群 ''F''(''A'') = ''A''/''T''(''A'') は torsion-free である。これらの対応は関手的である:アーベル群をその捩れ部分群に送り準同型をその捩れ部分群への制限に送る、[[アーベル群の圏]]から捩れ群の圏への[[共変関手]] ''T'' が存在する{{sfn|Fuchs|1970|p={{google books quote|id=Vb38GspKia8C|page=25|25}}}}。アーベル群をその捩れ部分群による商に送り準同型を標準的な誘導写像(well-defined であることは容易に確かめられる)に送る、アーベル群の圏から torsion-free 群の圏への共変関手 ''F'' も存在する{{sfn|Fuchs|1970|p={{google books quote|id=Vb38GspKia8C|page=26|26}}}}。 アーベル群 ''A'' が有限生成であれば、その捩れ部分群 ''T'' と torsion-free 部分[[群の直和]]として書くことができる(しかしこれはすべての非有限生成アーベル群に対して正しくない)。''A'' の捩れ部分群 ''S'' と torsion-free 部分群の直和としての任意の分解において、''S'' は ''T'' と等しくなければならない(しかし torsion-free 部分群は一意的には定まらない)。これは[[有限生成アーベル群]]の分類において重要なステップである。 ==''p''-冪捩れ部分群== 任意のアーベル群 <math>(A, +)\;</math> と任意の素数 ''p'' と任意の自然数 ''n'' に対して''p^n'' の位数をもつ ''A'' の元全体の集合 :<math>A[p^{n}]=\{\, g\in A \;|\; p^n g = 0\,\}.\;</math> (この記号はよく使われる)は部分群であり '''''p''-冪捩れ部分群''' (''p''-power torsion subgroup) と呼ばれる。 <math>A[p^{n}]</math>の全てのnに渡って和を取ったもの :<math>A[p^{\infty}]=\{\, g\in A \;|\; \exists n\in \mathbb{N},\; p^n g = 0\,\}.\;</math> (この記号もよく使われる)も部分群を成し、''A''の''p''-部分 (''p''-part) と呼ばれる。これはもちろん[[p-群]]である。 捩れ部分群 ''A<sub>tor</sub>'' はAの''p''-部分のすべての素数 ''p'' を渡る直和に同型である。 :<math>A_{tor} \cong \bigoplus_p A[p^{\infty}].\;</math> ''A'' が有限アーベル群のとき、<math>A[p^{\infty}]</math> は唯一の ''A'' の[[シロー部分群|シロー ''p''-部分群]]と一致する。これは<math>A/A[p^{\infty}]</math>で[[コーシーの定理 (群論)]]を考えればすぐにわかる。 ''A'' の各 ''p''-冪捩れ部分群は [[:en:characteristic subgroup<!-- [[:ja:特性部分群]] とリンク -->|fully characteristic subgroup]] である。より強く、アーベル群の間の任意の準同型は各 ''p''-冪捩れ部分群を対応する ''p''-ベキ捩れ部分群の中に送る。 各素数 ''p'' に対して、これはすべての群をその ''p'' 冪捩れ部分群に送りすべての準同型をその ''p''-捩れ部分群に制限するアーベル群の圏から ''p''-冪捩れ群の圏への[[関手]]を提供する。これらの関手の捩れ群への制限のすべての素数の集合にわたる積は、捩れ群の圏から ''p''-捩れ群の圏のすべての素数に渡る積への[[忠実関手]]である。ある意味、これは ''p''-捩れ群を孤立して研究することで一般の捩れ群についてすべてわかるということを意味する。 ==例とさらなる結果== [[Image:Lattice torsion points.svg|right|thumb|200px|格子の加法の下での複素数の商群の 4-捩れ部分群。 ]] * 非アーベル群の捩れ部分集合は一般には部分群ではない。例えば {{仮リンク|無限二面体群|en|infinite dihedral group}} は [[群の表示|表示]] : ⟨ ''x'', ''y'' | ''x''<sup>2</sup> = ''y''<sup>2</sup> = 1 ⟩ :をもち、元 ''xy'' は2つの捩れ元の積であるが、位数は無限である。 * [[冪零群]]の捩れ元は正規部分群をなす<ref>See Epstein & Cannon (1992) [https://books.google.co.jp/books?id=DQ84QlTr-EgC&pg=PA167&redir_esc=y&hl=ja p. 167]</ref>。 * 明らかに、すべての有限アーベル群は捩れ群である。しかしすべての捩れ群が有限であるわけではない。[[巡回群]] ''C''<sub>2</sub> の[[可算]]個のコピーの[[群の直和|直和]]を考えよ。すべての<!--単位元以外の-->元の位数は 2 なのでこれは捩れ群である。[[群の生成集合|有限生成]]でなければ[[商群]] '''Q'''/'''Z''' の例が示しているように捩れ群の元の位数に上界がある必要もない。 * すべての[[自由アーベル群]]は torsion-free だが逆は正しくない。反例は[[有理数]]全体 '''Q''' (加法群)。 * ''A'' が有限生成でないときでさえも捩れなし部分 (torsion-free part) の''サイズ''は、[[アーベル群のランク]]の記事においてより詳しく説明されているように、一意的に定まる。 * アーベル群 ''A'' が torsion-free であることと '''Z'''-加群として[[平坦加群|平坦]]であること、つまり ''C'' があるアーベル群 ''B'' の部分群であるときにはいつでも[[アーベル群のテンソル積|テンソル積]] ''C'' ⊗ ''A'' から ''B'' ⊗ ''A'' への自然な写像が[[単射]]であることは[[同値]]である。 * アーベル群 ''A'' を '''Q''' (あるいは任意の [[:en:divisible group<!-- [[:ja:可除群]] とリンク -->|divisible group]])でテンソルすると捩れが消える。つまり、''T'' が捩れ群であれば ''T'' ⊗ '''Q''' = 0 である。捩れ部分群 ''T'' をもった一般のアーベル群 ''A'' に対しては ''A'' ⊗ '''Q''' ≅ ''A''/''T'' ⊗ '''Q''' である。 ==関連項目== * [[捩れ (代数)]] * {{仮リンク|torsion-free アーベル群|en|Torsion-free abelian group}} ==脚注== {{Reflist|2}} ==参考文献== * Epstein, D. B. A., Cannon, James W. (1992). ''Word processing in groups''. A K Peters. ISBN 0-86720-244-0 * {{cite book |last = Fuchs |first = L. |title = Infinite Abelian Groups |year = 1970 |publisher = Academic Press |isbn = 978-0-08-087348-0 |url = {{google books|Vb38GspKia8C|plainurl=yes}} |ref = harv }} {{DEFAULTSORT:ねしれふふんくん}} [[Category:アーベル群論]] [[Category:数学に関する記事]] [[de:Torsion (Algebra)]]
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