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[[File:Draft_scale_at_the_ship_bow_(PIC00110).jpg|thumb|220px|船の[[船首]]]] '''排水量'''(はいすいりょう、{{Lang-en|displacement}})とは、[[船]]の[[重量]]を示す[[数値]]であり、主として[[軍艦|艦艇]]について用いられる。[[トン数]]の一種であり{{Sfn|岡田|1997|pp=18-20}}、'''排水トン数'''(displacement tonnage)とも称される{{Sfn|森|1989|pp=14-15}}。 [[載貨重量トン数]](deadweight tonnage)とは別物なので、混同してはならない。 == 計算法 == [[File:Principio_di_Archimede_galleggiamento.png|thumb|220px|水に浮かぶ物体は、物体の重さと[[浮力]]が釣り合うときに、物体は静止する。また、浮力の大きさは、水面から下で物体が排除した重さによる力の大きさに等しい。]] 排水量とは、船を[[水面|水上]]に浮かべた際に押しのけられる[[水]]の重量を[[トン]]単位で示した数値である{{Sfn|岡田|1997|pp=18-20}}。[[アルキメデスの原理]]より、船の重量に等しい数字となる{{Sfn|岡田|1997|pp=18-20}}。ただし、完成した船を実際に計量するのではなく、海水の比重を考慮したうえで[[設計図]]を基に[[喫水|喫水線]]下の[[体積]]から算出されるのが一般的である{{Sfn|岡田|1997|pp=18-20}}。計算にあたっては、まず正面線図を用いて各断面での計画吃水線下の面積を[[プラニメータ]]で求めたのち、これらの面積を[[:en:Simpson's Rules (Ship Stability)#Simpson's 1st rule|シンプソンの第1法則]]を用いて計算することで、裸殻排水量({{Lang|en|naked displacement}})が求められる{{Sfn|岡田|1997|pp=18-20}}。これに副部排水量として外板排水量({{Lang|en|skin displacement}})と付加物排水量({{Lang|en|appendages displacement}})を加えると全排水量となる{{Sfn|岡田|1997|pp=18-20}}。 なお[[#常備排水量|常備排水量]]については、下記のような概算法が知られている。これによって、実際の値の95 - 98パーセント程度の近似値を得ることができる{{Sfn|岡田|1997|pp=26-30}}。 :<math>\Delta_N = 1.025L_{wl}B_{wl}dC_b</math> ::<math>\Delta_N</math>:常備排水量 ::<math>L_{wl}</math>:水線長 ::<math>B_{wl}</math>:水線幅 ::<math>d</math>:吃水 ::<math>C_b</math>:方形係数([[駆逐艦]]では一般的に0.47 - 0.52程度) == 種類 == 艦船の状態によって排水量は異なるため、以下の通り複数のものがある。なお、以下で「水」とあるのは[[飲料水]]その他の生活用水ではなく、予備罐水、つまり[[蒸気機関]]で使用する補充用の水のことである。 === 満載排水量 === '''満載排水量'''({{Lang-en-short|full load displacement}})は、乗組員・弾薬・燃料・水など、計画上搭載できるもの全てを搭載した状態での排水量{{Sfn|岡田|1997|pp=18-20}}。ただしバラスト水は半量とする{{Sfn|小林|1994}}{{efn2|商船については船体の復原性にかかる固定バラスト以外は、許されるならば全部抜いて良く、『バラスト水は半分残す』といった規定は存在しない。}}。 アメリカ海軍ではこの値を設計排水量として用いている{{Sfn|佐久間|2024}}。 === 常備排水量 === '''常備排水量'''({{Lang-en-short|normal load displacement}})は、乗員と弾薬は[[定員|定数]]を、また燃料・真水・糧食などの消耗品は{{分数|2|3}}を搭載した状態の排水量。戦場(目的地)に到着したときの状態を想定したものである{{Sfn|小林|1994}}。 [[大日本帝国海軍]]では'''公試排水量'''と称していた{{Sfn|小林|1994}}。日本の伝統的な設計思想として、戦場に到着した際に最大の性能を発揮することとしており、この公試排水量・常備排水量が設計排水量として用いられる{{Sfn|佐久間|2024}}。なお大日本帝国海軍の場合、[[大正時代]]末期までは、公試排水量とは別に、弾薬{{分数|3|4}}、燃料{{分数|1|4}}、水{{分数|1|2}}の搭載状態を常備排水量として定義していた{{Sfn|小林|1994}}。 === 基準排水量 === '''基準排水量'''({{Lang-en-short|standard displacement}})は、満載状態から燃料と予備水を差し引いた状態の排水量{{Sfn|岡田|1997|pp=18-20}}{{Sfn|小林|1994}}。軍縮条約で用いるために定められた計算上の値であり、実運用においてこれに相当する状態があるわけではない{{Sfn|佐久間|2024}}。 基準排水量は、[[戦艦]]や[[航空母艦]]といった[[軍艦|水上艦]]の兵力について国際的な制限を課す[[ワシントン海軍軍縮条約]]([[1923年]]発効)において、各国の艦を同一の基準で比較するために用いられており、上記の定義もこの会議の際のイギリスの提案を採用したものであった{{Sfn|小林|1994}}。また[[潜水艦]]についても、[[ロンドン海軍軍縮会議#ロンドン海軍軍縮条約|ロンドン海軍軍縮条約]]([[1930年]]発効)において採用された{{Sfn|北島|2002}}。このためもあり、[[新聞]]や[[年鑑]]、[[雑誌]]などでしばしば用いられる{{Sfn|岡田|1997|pp=18-20}}。 ただしワシントン海軍軍縮条約は事実上失効しており、特に[[第2次世界大戦]]後の艦艇に適用する義務はない{{Sfn|佐久間|2024}}。[[ジェーン海軍年鑑]]に基準排水量を記載している国もいくつかあるが、算定基準はばらばらであり、海軍力の尺度としてもふさわしいものではない{{Sfn|佐久間|2024}}。 ==== 海上自衛隊における基準排水量 ==== [[海上自衛隊]]も、艦艇の公式諸元として「'''基準排水量'''」を公表しているが、その定義は、 :「満載状態から、燃料/真水・消費補給物品(糧食・弾薬など)・バラストなどを除いた状態における排水量」{{Sfn|中名生|2019}} ::※根拠規定:船舶設計基準細則([[1978年]]〈[[昭和]]53年〉制定){{Sfn|北島|2002}} であり、'''建造排水量'''(純粋な艦としての重さ)と等しい{{Sfn|江畑|2006}}。 === 軽荷排水量 === '''軽荷排水量'''({{Lang-en-short|light displacement}})は、[[弾薬]]・[[燃料]]など全ての[[消耗品]]{{efn2|商船においては船舶のトン数の測度に関する{{Egov law|id=356M50000800047|name=法律施行規則}} 第49条に除外すべき項目が列挙されており、ペイロードである貨物・旅客の他、燃料・潤滑油・バラスト水・タンク内の清水及びボイラ水・消耗貯蔵品・旅客及び乗組員の手回品が対象である。}}を搭載しない状態の排水量{{Sfn|岡田|1997|pp=18-20}}。なお、実際にこの状態で航行すると[[復原性]]が低下することから、バラストタンクに[[バラスト水]]を注水して[[重心]]を下げることになるが、これを''補填軽荷排水量''({{Lang|en|ballasted light displacement}})と称する{{Sfn|小林|1994}}。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} === 注釈 === {{Notelist2}} === 出典 === {{Reflist|2}} == 参考文献 == * {{Citation|和書|authorlink=江畑謙介|last=江畑|first=謙介|date=2006-08|title=DEFENSEワードローブ 基準排水量と満載排水量|journal=[[セキュリタリアン]]|publisher=[[防衛弘済会]]|issue=573|page=45|naid=40007429089}} ** {{Citation|和書|title=排水量とトン数の話|url=http://kuro-neko-kuro.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-fd30.html|website=果てしなき業務日記|accessdate=2019-09-18|author=高橋剛|year=2013|month=7|archiveurl=https://web.archive.org/web/20190918071210/http://kuro-neko-kuro.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-fd30.html|archivedate=2019-09-18}} - [[海事代理士]]による解説。 * {{Citation|和書|last=岡田|first=幸和|date=1997-11|title=艦艇工学入門―理論と実際-|publisher=[[海人社]]|series=[[世界の艦船]]別冊|isbn=4905551625}} * {{Citation|和書|last=北島|first=郁夫|date=2002-11|chapter=艦艇設計を顧みて |chapterurl=https://dl.ndl.go.jp/pid/1283286/1/5 |title=防衛庁技術研究本部五十年史 |pages=114-115 |ncid=BA62317928}} * {{Citation|和書|last=小林|first=義秀|date=1994-6|title=トンの話|journal=世界の艦船|issue=482|pages=104-108|publisher=海人社|doi=10.11501/3292266}} * {{Citation|和書|last=佐久間|first=俊|date=2024-10|title=艦艇の主要寸法・重量・容積に関する調査(第1回)主要寸法・排水量|journal=世界の艦船|issue=1027|pages=148-151|publisher=海人社|id={{CRID|1520864557045736448}}}} * {{Citation|和書|series=世界の艦船 増刊|title=自衛艦 100のトリビア|year=2019|origyear=2011|publisher=海人社 |page=17 |last=中名生|first=正己(日本海事史学会会員) |chapter=第1章 自衛艦の基礎知識:02 自衛艦排水量の定義 |edition=Amazon Kindle版|id={{CRID|1520573330720685568}}。{{ASIN|B07TXPZLWW}}}} * {{Citation|和書|last=森|first=恒英|date=1989-08|title=艦船メカニズム図鑑|publisher=[[グランプリ出版]] |isbn=4-906189-87-3}} == 関連項目 == * [[トン数]] {{Normdaten}} {{デフォルトソート:はいすいりよう}} [[Category:排水]] [[Category:船]]
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