排水 (道路)のソースを表示
←
排水 (道路)
ナビゲーションに移動
検索に移動
あなたには「このページの編集」を行う権限がありません。理由は以下の通りです:
この操作は、次のグループに属する利用者のみが実行できます:
登録利用者
。
このページのソースの閲覧やコピーができます。
[[ファイル:Storm Drain.JPG|サムネイル|雨水が側溝に流れ込むが、これが道路上の排水システムの一部である。]] [[ファイル:Street Puddle.jpg|サムネイル|路面の[[水たまり]]]] 本項目では道路での'''[[排水]]'''(道路排水)について日本国内での事例を中心に述べる。道路において排水は建設・維持管理の上で極めて重要な要素であり、[[雨|降雨]]や[[地下水]]による道路の弱化・崩壊の防止や降雨後の滞水([[水たまり]]など)による走行性低下の防止のためには排水が欠かせない{{Sfn|日本道路協会|2009|p=100}}。降雨や地下水のいずれにおいても、現地の自然や地形に応じて適切な調査・設計を行い排水しなければならない{{Sfn|日本道路協会|2009|p=100}}。 == 種類 == 道路における排水は以下の種類がある。排水の種類に応じて、側溝など排水施設の配置計画を行う{{Sfn|日本道路協会|2009|pp=101-102}}。いずれも水の自然流下を利用して道路から排水を促すものである{{Sfn|巻上安爾|福本武明|荻野正嗣|塚口博司|2002|p=132}}。 * 表面排水 - [[雨|降雨]]や[[降雪]]で生じた路面や道路隣接地からの表面水を排除する{{Sfn|日本道路協会|2009|p=101}}。以下の路面排水・法面排水・道路横断排水をまとめて表面排水として扱われる{{Sfn|日本道路協会|2009|p=103}}。 ** 路面排水 - 降雨や降雪で生じる路面の滞水を防止する{{Sfn|日本道路協会|2009|p=101}}。主に[[側溝]]や[[排水桝]]、[[マンホール]]などを用いて排水する{{Sfn|日本道路協会|2009|p=103}}。 ** [[法面]]排水 - [[盛土]]や[[切土]]、自然斜面などを流下する水や、法面から湧出する水を排除する{{Sfn|日本道路協会|2009|p=101}}。水により法面の浸食や安定性を低下するため、これを防ぐ{{Sfn|日本道路協会|2009|p=101}}。法肩排水施設・縦排水施設・小段排水施設・法尻排水施設などが排水施設にあたる{{Sfn|日本道路協会|2009|p=103}}。 ** 道路横断排水 - 道路と[[水路]]や[[渓流]]などと交差する場合や降雨や降雪で生じた道路隣接地からの水がある場合に、その水を道路を横断する構造物([[カルバート (土木構造物)|カルバート]]など)によって排除する{{Sfn|日本道路協会|2009|p=101}} * 地下排水 - [[地下水位]]を低下させ、路面や法面などから浸透する水や路床から上昇する水を遮断・除去する{{Sfn|日本道路協会|2009|p=101}}。 * 構造物の排水 - 構造物で発生した水を除去する。構造物(カルバートや[[橋台]]など)の裏込め部の湛水や構造物内部での漏水、降雨や降雪により生じた表面水などが除去の対象となる{{Sfn|日本道路協会|2009|p=101}}。 == 目的 == 排水の目的は以下の3種類に大別される{{Sfn|日本道路協会|2009|p=107}}。 # 降雨・融雪・地表水・地下水によって道路に流入する地表水・地下水を排除し、道路[[土工 (工種)|土工]]や[[舗装]]の弱化・崩壊を防止する。 # 路面の滞水が原因の交通の停滞や車両のスリップを防ぐ。 # 施工時の[[トラフィカビリティ]]の確保や盛土材の施工[[含水比]]の低下を促す。工事施工前の準備排水や施工中の仮設・応急的な排水工となることが多いため軽視される傾向が従来あったが、施工時の環境保全や災害防止の観点から重要なものであるという認識に変わっている{{Sfn|日本道路協会|2009|p=110}}。 == 計画 == いかなる道路でも完全に排水できるようにするのは経済的に合理性があるとは言えないため、道路の種類・規格・交通量・沿道状況などを鑑みて適用する排水能力を決定する{{Sfn|日本道路協会|2009|p=110-111}}。確率雨量年や[[安全率]]の取り方によって設計の規模が大きく変わってくるため、費用や安全の面からバランスを取って計画・設計を行う{{Sfn|鈴木保志|2021|p=107}}。特に地下水は施工時に初めて状況が分かることがあるので、適宜排水施設の追加や配置変更などを行う{{Sfn|日本道路協会|2009|p=112}}。路面冠水しやすい場所は容量に余裕を持たせるのが望ましい{{Sfn|日本道路協会|2009|p=111}}。また、冠水が予想される場所では冠水を報知する目的で[[立体交差|アンダーパス]]には警報装置の設置を検討する{{Sfn|日本道路協会|2009|p=111}}。 道路の排水を計画するにあたっては、集水域を含む原地形での地表水や地下水の流動を把握した上で、構造物や将来の開発による流況を考慮する{{Sfn|日本道路協会|2009|p=112}}。その際、盛土・切土・[[トンネル]]・[[橋|橋梁]]などをそれぞれ単体で考えるのではなく、路線を一体で考えて排水計画を行う{{Sfn|日本道路協会|2009|p=112}}。また、[[林道]]では雨水のほか、土石・落葉・枝条・[[流木]]などの堆積物が流下することも踏まえて計画を行う{{Sfn|鈴木保志|2021|p=106}}。 1か所に多量の雨水を集中させてはならず、また排水の流末となる[[川|河川]]・[[排水路]]・[[下水道]]などへの流入方法も受容容量を踏まえて考えなければならない{{Sfn|日本道路協会|2009|pp=112-113}}。受容容量が不足する場合や[[特定都市河川浸水被害対策法]]の定める条件によっては[[雨水貯留浸透施設]]を設置する必要がある{{Sfn|日本道路協会|2009|p=114}}。適切に流末処理を行わないがために市街地での浸水や山間部で[[斜面崩壊]]・[[土石流]]が引き起こされている事例が見られる{{Sfn|日本道路協会|2009|p=114}}。 === 排水需要の推定 === 排水施設の計画をするにあたり、その能力を決定するには雨水流出量を把握しなければならない{{Sfn|巻上安爾|福本武明|荻野正嗣|塚口博司|2002|p=134}}。雨水流出量は合理式(ラショナル式)を用いて推定するのが望ましい{{Sfn|日本道路協会|2009|p=135}}。 <math>Q=\frac{1}{3.6 \times 10^6} \times C \cdot I \cdot a</math> <Q:雨水の流出量([[立方メートル|m<sup>3</sup>]]/[[秒|s]])、C:流出係数、I:流達時間内の降雨強度([[ミリメートル|mm]]/[[時間 (単位)|h]])、a:集水面積([[平方メートル|m<sup>2</sup>]])> ここで、C:流出係数は降雨や地域の特性により値が異なるため一義的に定めにくく、各種機関で様々な値が決められている{{Sfn|日本道路協会|2009|p=133}}。一般的には路面や法面に対して0.7 - 1.0程度の値が用いられている{{Sfn|日本道路協会|2009|p=133}}。 また、I:流達時間内の降雨強度を推定するにあたって一般に使用されているのは以下のタルボット式である{{Sfn|日本道路協会|2009|pp=128-129}}。 <math>I=\frac{a}{t+b}</math> <I:流達時間内の降雨強度([[ミリメートル|mm]]/[[時間 (単位)|h]])、a・b:対象とする地域によって異なる定数、t:降雨継続時間([[分|min]])> aやbは既に自治体等の下水道部局で降雨強度式が作成されていることが多いのでその資料を活用してもよい{{Sfn|巻上安爾|福本武明|荻野正嗣|塚口博司|2002|p=135}}。 路面排水など流達時間が極めて短い場合で、排水桝などの排水施設を数多く設計する場合は標準降雨強度が用いることができる{{Sfn|日本道路協会|2009|p=129}}。日本国内では60 - 130 mm/hの範囲で標準降雨強度が設定されている<ref>{{Cite web |url=https://www.road.or.jp/img/books/pdf/image_r5_01.pdf |title=路面排水工等に用いる標準降雨強度(3年確率10 分間降雨強度) |access-date=2024-10-05 |publisher=日本道路協会}}</ref>。 計画中の排水施設が排水可能な量は平均[[流速]]と通水断面積の積から求められる{{Sfn|鈴木保志|2021|p=107}}。 <math>Q_{max}=aV</math> <Q<sub>max</sub>:施設内最大流量(m<sup>3</sup>)、a:通水断面積(m<sup>2</sup>、V:排水施設を流れる水の平均流速(m/s)> 以下の[[マニング公式]]で平均流速を求められる{{Sfn|鈴木保志|2021|p=107}}。 <math>V=\frac{1}{n} R^{2/3} I^{1/2}</math> <V:平均流速、n:[[粗度係数]]、R:[[水力直径|径深]](m)、I:水面勾配> この時、安全率f<sub>s</sub>がQ<sub>max</sub>/Q>1以上となるように排水施設を設計する{{Sfn|鈴木保志|2021|p=107}}。 <!-- 流達時間tは「集水区域の最遠点から排水施設に達するまでの時間」(t<sub>1</sub>)と「管渠などを流れて計画地点に達するまでの時間」(t<sub>2</sub>)に分けられるが、路面排水の場合は前者のみ(t<sub>1</sub>)、排水管やカルバートの設計にあたっては前者と後者の和(t<sub>1</sub>+t<sub>2</sub>)を用いる{{Sfn|日本道路協会|2009|p=135}}。--> == 排水施設 == [[ファイル:Multiple rectangle grating 2023-05-1.jpg|サムネイル|集水のために設けられた[[排水桝]]]] === 路面排水 === 路面排水を行うための施設(路面排水工)は、一般的には路面上の降雨や降雪で発生した水を路面上の[[線形 (路線)#勾配|勾配]](横断勾配・縦断勾配)により路側の[[側溝]]に集水させ、その水が自然流下によって[[排水桝]]・[[取付管]]・[[排水管]]・[[マンホール]]を経由して[[下水道]]に流れるよう構成されている{{Sfn|日本道路協会|2009|p=137}}。[[排水性舗装]]により水が舗装の排水機能層に浸透し、不透水層上を流下してから側溝や導水管を経由して集水桝に集められることもある{{Sfn|日本道路協会|2009|p=138}}。排水性舗装を用いることで[[高速道路]]上では[[ハイドロプレーニング現象]]が起こりづらくなっている{{Sfn|中日本高速道路|2019|p=42}}。 路面上の水を側溝に導くための横断勾配は、日本国内では[[道路構造令]]に基づきコンクリート舗装・アスファルト舗装で1.5 - 2.0 %、その他の路面で3 - 5 %が標準とされている{{Sfn|日本道路協会|2009|p=138}}。なお、[[歩道]]で[[植樹帯]]が連続する場合はその植樹帯に水を流入させるなどして歩道に滞水させないようにする{{Sfn|日本道路協会|2009|p=139}}。縦断勾配は急なほど水の下流への流達時間が短くなるが、急すぎると排水桝で処理できなくなるおそれがある{{Sfn|日本道路協会|2009|p=139}}。 素掘りの側溝は側面や底面が浸食され排水施設や道路本体の損壊に繋がるおそれがあり{{Sfn|鈴木保志|2021|p=108}}、工事を行う時だけ仮に用いることが多い{{Sfn|巻上安爾|福本武明|荻野正嗣|塚口博司|2002|p=138}}。恒常的な排水施設として側溝を用いる場合はコンクリート製の側溝が望ましく{{Sfn|鈴木保志|2021|p=108}}、実際に日本国内ではコンクリート製側溝が最も広く使われている{{Sfn|巻上安爾|福本武明|荻野正嗣|塚口博司|2002|p=138}}。 === 法面排水 === {{See also|法面#排水工}} 法面排水を行うための施設(法面排水工)は、法面を流下する表面水や法面から浸出する浸透水を排除するために設置される{{Sfn|日本道路協会|2009|p=161}}。表面水に対しては法肩排水溝・縦排水溝・小段排水溝などの法面排水工を設置し{{Sfn|日本道路協会|2009|p=162}}、浸透水に対しては[[蛇篭]]・地下排水溝・水平排水層・水平排水孔などを設置する{{Sfn|日本道路協会|2009|p=163}}。 <gallery> ファイル:Biwako Cultural Park - vertical leachate collection pipe 2023-10.jpg|切土法面に設けられた縦排水溝 </gallery> === 道路横断排水 === [[渓流]]や沢地などを横断する盛土で、山腹側で土砂が不安定に堆積する場合は盛土の内部に横断排水路を設けることで水を下流に導き土砂が道路に流れ込まないようにする{{Sfn|土木工法事典編集委員会|2015|p=149}}。横断排水路の断面形状にはパイプ、アーチ、ボックスがあり、材質として[[合成樹脂]]、[[鋼|鋼材]]、[[コンクリート]]が用いられる(古いものでは[[木材]]や[[石材]]を用いたものもある)<ref name=":0" />。合成樹脂製は[[氷]]が付着しにくいためメンテナンスしやすい利点を持つ<ref name=":0" />。横断排水路として用いる施設がボックスカルバートの場合は下流側が流水で[[洗堀]]されやすく、適切な処置を施す必要がある{{Sfn|土木工法事典編集委員会|2015|p=149}}。 === 地下排水 === [[地下水位]]が高い部分を通る道路では地盤からの浸透水や凍上により路床・路盤の軟弱化や舗装の損傷が起こるため、地下水を遮断・排除するための施設(地下排水工)が設置される{{Sfn|日本道路協会|2009|p=164}}。地下排水のための排水施設は路側の地下排水溝や遮断排水層などがある{{Sfn|巻上安爾|福本武明|荻野正嗣|塚口博司|2002|p=139}}。地下排水溝は地下水の多い地域での路床や路盤を対象に行うもので、路面から1.0 - 2.0 m程度の深さに設置されることが多い{{Sfn|巻上安爾|福本武明|荻野正嗣|塚口博司|2002|pp=138-139}}。地下水が特に多い地域では地下排水溝のみでは不十分なため、路床と路盤の内部や境界に水平な遮断排水層を設け、浸透流を地下排水溝に流す{{Sfn|巻上安爾|福本武明|荻野正嗣|塚口博司|2002|p=139}}。 === 構造物の排水 === 構造物の背面での雨水・地下水などの滞水や構造物の内部での漏水が起こると、構造物の安全性が低下し、破損に繋がる{{Sfn|日本道路協会|2009|p=167}}。また、路面に滞水すると美観や車両の走行に悪影響を及ぼす{{Sfn|日本道路協会|2009|p=167}}。 ==== 橋梁 ==== 橋面の滞水を防いで車両の走行安全性を確保し、橋梁自体の[[腐食]]を防ぐために排水は欠かせない{{Sfn|日本道路協会|2017|p=188}}。 床版上面に浸入した雨水などが滞留することで[[防水層]]とアスファルト舗装下層とではく離を起こし、その他舗装や床版にも悪影響を及ぼす{{Sfn|日本道路協会|2017|p=188}}。そのため、滞水しやすい場所には排水桝を設け、必要に応じて輪荷重の影響が小さい場所に水抜き孔を設けるなどして速やかに排水できるようにする{{Sfn|日本道路協会|2017|p=188}}。橋面の横断勾配は標準で1.5 - 2.0%であるが、その縦断勾配によって橋面に凹部ができる場合は必ず[[排水桝]]を設けなければならない{{Sfn|日本道路協会|2017|p=188}}。また、耐久性の高い防水層を新設することは橋梁の老朽化を抑える有効な手段である{{Sfn|中日本高速道路|2019|p=53}}。[[鋼構造物|鋼構造]]の箱桁・ラーメン橋脚・[[トラス]]などの閉断面では[[添接]]箇所で雨水が浸入して内部に滞水することで腐食を引き起こすため、水抜き孔を設けて完全に排水できる構造にする{{Sfn|日本道路協会|2017|p=188}}。 排水桝から排水箇所までは排水管により導水されている{{Sfn|窪田陽一|二木隆|松坂敏博|鈴木輝一|2013|p=136}}。この排水管は[[鋼]]製や[[ポリ塩化ビニル|塩化ビニル]]製が一般的である{{Sfn|窪田陽一|二木隆|松坂敏博|鈴木輝一|2013|p=136}}。ごみの詰まりを防ぐため円形(内径150 mm以上)とし、急激な屈曲を避けるのが望ましい{{Sfn|日本道路協会|2017|p=188}}。 ==== トンネル ==== トンネルでは地山からの[[湧水]]、湧水からトンネル内部に漏出する漏水、外部からの持込水、洗浄水、消火水を排水しなければならない{{Sfn|日本道路協会|2003|p=132}}。トンネルでの排水を行う施設(トンネル排水工)には裏面排水工・横断排水工・中央排水工・路側排水工がある{{Sfn|日本道路協会|2003|p=134}}。 トンネルの吹き付けコンクリート面から湧水が多い場合は裏面排水工を設ける{{Sfn|日本道路協会|2003|p=135}}。有孔の高密度ポリエチレン管のパイプや合成樹脂製のフィルターマットにより集水し、中央排水工に導水する{{Sfn|日本道路協会|2003|pp=135-136}}。 横断排水工は一般的に30 - 50 m間隔で設置するが、湧水量が多いと予想される場合は設置間隔を縮める{{Sfn|日本道路協会|2003|p=136}}。材料は有孔のポリエチレン管や[[ヒューム管]]を用いるが、歩道部で上載荷重が小さい場合は塩化ビニル管を用いるなどして使い分けている事例がある{{Sfn|日本道路協会|2003|p=136}}。 中央排水工は裏面排水工を通る湧水をトンネル外部に導くもので、トンネル完成後に予想される湧水量から断面の大きさを決定する{{Sfn|日本道路協会|2003|p=136}}。一般に供用開始後の清掃や点検が困難なため、断面の大きさは十分に余裕を持たせるべきである{{Sfn|日本道路協会|2003|p=136}}。材料は有孔の高密度ポリエチレン管やヒューム管を用いる{{Sfn|日本道路協会|2003|p=136}}。トンネル下部に[[インバート]]を設ける場合、地山の膨圧による破損を防ぐためインバートより上部に設けるのが望ましい{{Sfn|日本道路協会|2003|p=136}}。 路側排水工は一般的に[[U字溝|U字側溝]]や円形側溝により行われるが、トンネル延長が短く漏水量が少ない場合はL型側溝のみで排水を行うこともある{{Sfn|日本道路協会|2003|p=136}}。また、トンネル内にも排水桝を設け、清掃方法に応じて桝の間隔を調整する{{Sfn|日本道路協会|2003|p=136}}。 都市部の道路トンネルは周囲の地形より低い位置に路面が設けられることが多く、その大部分で強制排水を行う必要がある{{Sfn|日本道路協会|2009|p=167}}。明かり部で用いられる路面排水工に加え、排水のためのポンプも設置する{{Sfn|日本道路協会|2009|p=167}}。トンネル出入口付近では雨水の吸込や車両の持込水などが集中するため排水桝の間隔は狭くなる{{Sfn|日本道路協会|2009|p=169}}。ポンプは車道部の外に設置することが望ましいが、やむを得ず車道部に設置する場合もできる限り交通の支障にならない場所を選定する{{Sfn|日本道路協会|2009|p=168}}。換気[[ダクト]]が設けられる場合はこれを利用して排水を行うが、ない場合は排水専用のダクトを設置する{{Sfn|日本道路協会|2009|p=168}}。 == 維持管理 == [[ファイル:Sokko Fuhoutoki 06z2830q.jpg|サムネイル|吸い殻の不法投棄で清掃が必要な排水桝]] 路面や法面の破損は排水不良によるものが多いため、排水施設の維持管理は道路を正常に保つために欠かせない{{Sfn|窪田陽一|二木隆|松坂敏博|鈴木輝一|2013|p=110}}。定期的に点検を行い、破損やその誘因となる事象を早期に発見し、適切な補修・補強対策を行う必要がある{{Sfn|窪田陽一|二木隆|松坂敏博|鈴木輝一|2013|p=110}}。 側溝が土砂や落葉などで閉塞すると、排水不良によって[[越流]]が起こり、その水が浸透することで法面や斜面の安定性が失われる{{Sfn|窪田陽一|二木隆|松坂敏博|鈴木輝一|2013|p=110}}。そのため、計画的に側溝の点検や清掃を行い安全を確保する必要がある{{Sfn|窪田陽一|二木隆|松坂敏博|鈴木輝一|2013|p=110}}。また、側溝で側壁の倒れや継目の隙間がある場合は早急に補修して水の漏出を防ぐ{{Sfn|窪田陽一|二木隆|松坂敏博|鈴木輝一|2013|p=110}}。 法面の湿り、[[湧水]]、はらみ出しなどが確認された場合はその挙動を観測し、必要に応じて水抜き孔や[[蛇篭]]を設置するなどの対策を行う{{Sfn|窪田陽一|二木隆|松坂敏博|鈴木輝一|2013|p=110}}。 === 橋梁 === 橋梁に設けられた排水管は橋本体と比べて材料的・構造的にも耐久性が劣ることが多く、定期的に点検する必要がある{{Sfn|日本道路協会|2017|p=189}}。損傷した排水管が放置されると、車両の通行には直接悪影響を及ぼさないものの、橋桁や下部構造の劣化を進めさせる{{Sfn|窪田陽一|二木隆|松坂敏博|鈴木輝一|2013|p=136}}。特に[[融雪剤|凍結防止剤]]を散布する寒冷地では速やかな補修が必要である{{Sfn|窪田陽一|二木隆|松坂敏博|鈴木輝一|2013|pp=136-137}}。 == 海外における道路の排水事例 == === 東ティモール === [[東ティモール]]でも側溝や横断排水路を設けた道路排水を行うが、想定雨量の計算を行わず小さな側溝や横断排水路を設置することで吞口・吐口が損傷している事例が他の[[開発途上国]]と同様に見られる<ref name=":1">{{Cite web |url=https://www.jica.go.jp/oda/project/1300671/news/20170301.html |title=設計能力(道路排水対策)向上に係る講習会を開催しました {{!}} ODA見える化サイト |access-date=2024-12-19 |publisher=JICA}}</ref>。また、損傷後の復旧も損傷要因の分析を行わず対処療法的な対策を行ったために繰り返し損傷することが多い<ref name=":1" />。そのため、[[国際協力機構|JICA]]は技術者を現地に派遣し道路排水に関する講習会を実施し、適切な道路排水を行えるよう支援している<ref name=":1" />。 === アメリカ === 地方部の道路での路面排水は側溝を用いず、道路用地と民地の境界付近の[[土壌]]に浸透させる事例や、沿線の[[農場]]や[[森林]]にそのまま排水する構造が見られる{{Sfn|高速道路調査会|2017|p=93}}。 都市部の街路はバイオスウェールや透水性舗装などを設置し、河川や下水道の汚染や処理量を軽減させることを[[全米都市交通担当者協会]](NACTO)が推奨している{{Sfn|全米都市交通担当者協会|2021|pp=65-70}}。バイオスウェールとは[[植樹帯]]を掘り下げて水が流入しやすいようにし、植樹帯に入った水を浄化させたのち土壌に浸透させる施設である{{Sfn|全米都市交通担当者協会|2021|p=67}}。バイオスウェールが設置できない場所では安価・小規模な貫通型[[プランター]]や透水性ストリップを設けて水の浄化や土壌への浸透を促す{{Sfn|全米都市交通担当者協会|2021|pp=68-69}}。こうした施設はアメリカ国内の都市([[ポートランド (オレゴン州)|ポートランド]]・[[ニューヨーク]]など)で[[グリーンインフラ]]として整備されている<ref>{{Cite web |url=https://www.mlit.go.jp/common/001267827.pdf |title=海外事例と我が国での グリーンインフラの取組 |access-date=2024-12-21 |publisher=国土交通省 |format=PDF |pages=13-14}}</ref>。 [[フロリダ州]]では橋梁が鋼桁の場合、排水管の材質を[[ポリエチレン]]やファイバーグラスにするのが基本としている{{Sfn|高速道路調査会|2017|p=72}}。また、コンクリート橋では、橋梁下に影響を及ぼさない場合に限り排水管を設けず床版に穴を空けて排水を直接行う{{Sfn|高速道路調査会|2017|p=72}}。 === 北欧 === [[北欧]]では道路の排水機能が軽視され、排水機能の維持管理より[[アスファルト]]舗装の修繕に予算が使われてきたことが問題視されている<ref>{{Cite web |url=https://www.roadex.org/e-learning/lessons/drainage-of-low-volume-roads/introduction-why-drainage-is-important/ |title=1. Introduction, why drainage is important - ROADEX Network |access-date=2024-12-21 |publisher=ROADEX Network}}</ref>。 側溝に関しては、道路が高い盛土の上にある場合は必ずしも設ける必要はない<ref name=":0" />。側溝を設ける場合、側溝の縦断勾配の最小値がスウェーデンが5 [[パーミル|‰]]で、フィンランドでの旧基準の最小値は4 [[パーミル|‰]]だった<ref name=":0" />。スウェーデンでは側溝は道路切土溝(skärningsdike)と雨水溝(dagsvattendike)の2つに分類され、道路地盤高からの深さが前者は30 cm、後者は50 cmと規定されている<ref name=":0" />。道路地盤高からの深さについては、北欧の他の国ではフィンランドで25 cm、ノルウェーで35 cmとなっている<ref name=":0" />。 側溝を出た水は排水溝を経て[[川|河川]]や[[湖沼]]への排出を行ったり、浸透溝を用いて土壌に[[浸透]]させることもある<ref name=":0">{{Cite web |url=https://www.roadex.org/e-learning/lessons/drainage-of-low-volume-roads/components-of-road-drainage-system/ |title=4. Components of road drainage system - ROADEX Network |access-date=2024-12-14 |publisher=ROADEX Network}}</ref>。河川や湖沼に至る排水溝の勾配は少なくとも4 ‰にする必要がある<ref name=":0" />。排水溝は道路敷地外部に設置されることが多く、その場合は排水溝がある土地の[[地主|地権者]]が排水溝の修繕を許可しない懸念がある<ref name=":0" />。 道路下に横断排水路を設ける場合、フィンランドでは有効開口部の径が2 m未満では「暗渠」、2 mを越える場合では「橋梁」として扱われる<ref name=":0" />。橋梁の内、有効開口部の径が2 - 4 mのものは「パイプ橋」の分類となる<ref name=":0" />。 地下排水を行う場合の遮断排水層の厚さは北欧諸国で0.4 - 0.6 mと差がある<ref name=":0" />。 === 韓国 === [[大韓民国|韓国]]では[[2006年]]頃から排水性舗装の導入に向けて本格的に検討が始まった{{Sfn|加藤人士|2006|p=52}}。 == 脚注 == {{Reflist}} == 参考文献 == * {{Cite book|和書 |title=道路トンネル技術基準(構造編)・同解説 |year=2003 |publisher=丸善出版 |ref=harv |author=日本道路協会 |isbn=978-4-88950-508-5 |month=12}} * {{Cite book|和書 |ref=harv |author=巻上安爾 |title=道路工学 |edition=5版 |date=2002-02-15 |year= |publisher=理工図書 |isbn=4-8446-0428-7 |author2=福本武明 |author3=荻野正嗣 |author4=塚口博司}} * {{Cite journal|和書|author=加藤人士|month=07|year=2006|title=韓国における排水性舗装調査|url=https://www.jcca.or.jp/kaishi/232/232_project4.pdf|journal=Civil Engineering Consultant|issue=222|pages=52-55|publisher=建設コンサルタンツ協会|format=PDF|ref=harv}} * {{Cite book|和書 |title=道路土工要綱 |date=2009-06-30 |publisher=丸善出版 |isbn=978-4-88950-414-9 |author=日本道路協会 |ref=harv}} * {{Cite book|和書 |title=道路保全が一番わかる |publisher=技術評論社 |year=2013 |date=2013-12-25 |isbn=978-4-7741-6117-4 |ref=harv |author=窪田陽一 |author2=二木隆 |author3=松坂敏博 |author4=鈴木輝一 |author5=北本幸義 |author6=本間淳史 |author7=横澤圭一郎 |series=しくみ図解シリーズ}} * {{Cite book|和書 |title=土木工法事典 |date=2015-05-01 |year=2015 |publisher=ガイアブックス |isbn=978-4-88282-947-8 |ref=harv |author=土木工法事典編集委員会 |edition=第6版}} * {{Cite book|和書 |title=平成27年度 海外における点検技術動向調査業務 |year=2017 |publisher=高速道路調査会 |month=02 |ref={{sfnref|高速道路調査会|2017}} |url=https://www.e-nexco-engi.co.jp/pdf/Business_H27.pdf |format=PDF}} * {{Cite book|和書 |title=道路橋示方書(I共通編)・同解説 |date=2017-11-22 |year=2017 |publisher=丸善出版 |ref=harv |author=日本道路協会 |isbn=978-4-88950-279-4}} * {{Cite book|和書 |title=図鑑 わたしたちの高速道路 |date=2019-11-25 |year=2019 |publisher=中日本高速道路 |author=中日本高速道路 |edition=初版 |ref=harv}} * {{Cite book|和書 |title=森林土木学 |date=2021-04-05 |year=2021 |publisher=朝倉書店 |isbn=978-4-254-47058-1 |ref=harv |author=鈴木保志 |edition=第2版}} * {{Cite book|和書 |title=アーバンストリート・デザインガイド 歩行者中心の街路設計マニュアル |date=2021-09-10 |year=2021 |publisher=学芸出版社 |ref=harv |author=全米都市交通担当者協会 |isbn=978-4-7615-3274-1 |translator=松浦健治郎+千葉大学都市計画松浦研究室}} == 関連項目 == * [[排水]] - [[排水 (農業)]] {{Good article}} {{デフォルトソート:はいすい}} [[Category:道路]] [[Category:排水|*はいすい]]
このページで使用されているテンプレート:
テンプレート:Cite book
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:Cite journal
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:Cite web
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:Good article
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:Reflist
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:See also
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:Sfn
(
ソースを閲覧
)
排水 (道路)
に戻る。
ナビゲーション メニュー
個人用ツール
ログイン
名前空間
ページ
議論
日本語
表示
閲覧
ソースを閲覧
履歴表示
その他
検索
案内
メインページ
最近の更新
おまかせ表示
MediaWiki についてのヘルプ
特別ページ
ツール
リンク元
関連ページの更新状況
ページ情報