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{{要改訳}} [[微分幾何学]]において、'''擬リーマン多様体''' (ぎリーマンたようたい、pseudo-Riemannian manifold)<ref>{{harvtxt|Benn|Tucker|1987}}, p. 172.</ref><ref>{{harvtxt|Bishop|Goldberg|1968}}, p. 208</ref>(また、'''半リーマン多様体''' (semi-Riemannian manifold) ともいう)は、[[リーマン多様体]]の一般化であり、そこでは[[計量テンソル]]が必ずしも{{仮リンク|定値双線型形式|label=正定値双線型形式|en|Definite bilinear form}}でないこともある。代わって、[[非退化]]というより弱い条件が、計量テンソルへ導入される。 擬リーマン多様体の[[接空間]]は{{日本語版にない記事リンク | 擬ユークリッド空間 | en | pseudo-Euclidean vector space}}である。 [[一般相対論]]で極めて重要な多様体として、'''ローレンツ多様体''' (Lorentzian manifold) があり、そこでは、一つの次元が他の次元とは反対の符号を持っている。このことは、接ベクトルが[[ミンコフスキー空間#因果構造|時間的、光的、空間的]]<ref group="注釈">それぞれ、timelike, null (lightlike), spacelike の訳である。</ref> へと分類される。[[時空]]は 4次元ローレンツ多様体としてモデル化される。 == 始めに == === 多様体 === {{main|多様体|微分可能多様体}} [[微分幾何学]]において、[[微分可能多様体]]は、局所的には[[ユークリッド空間]]と同じ空間である。<var>n</var>-次元ユークリッド空間では、任意の点が <var>n</var> 個の実数により特定される。これらを点の[[座標]]と呼ぶ。 <var>n</var>-次元微分可能多様体は、<var>n</var>-次元ユークリッド空間の一般化である。多様体では、'''局所的に'''座標を定義することができる。このことは[[座標の貼り合わせ]](coordinate patch)が達成できて、多様体の部分集合は <var>n</var>-次元ユークリッド空間へ写像することができる。 詳細は、[[多様体]], [[微分可能多様体]], [[座標の貼り合わせ]](coordinate patch)を参照。 === 接空間と計量テンソル === {{main|接空間|計量テンソル}} [[接空間]]は、{{mvar|n}} 次元微分可能多様体 {{mvar|M}} の各々の点 {{mvar|p}} に付随し、{{mvar|T{{sub|p}}M}} と書かれる。接空間は、その元が点 {{mvar|p}} を通る曲線の[[同値類]]と考えることができる {{mvar|n}} 次元[[ベクトル空間]]である。 [[計量テンソル]]は[[非退化]]であり、滑らかで、対称性を持つ[[双線形写像]]で、多様体の各々の接空間での接ベクトルのペアに[[実数]]を割り当てる。計量テンソルを {{mvar|g}} と書くと、これは :<math>g \colon T_pM \times T_pM \to \mathbb{R}.</math> と表すことができる。 写像は対称的で双線形であるので、<math>\scriptstyle X,Y,Z \in T_pM</math> が点 {{mvar|p}} で多様体 {{mvar|M}} の接ベクトルであれば、任意の実数 <math>\scriptstyle a\in\mathbb{R}</math> に対し、 * <math>\,g(X,Y) = g(Y,X)</math> * <math>\,g(aX + Y, Z) = a g(X,Z) + g(Y,Z)</math> となる。 {{mvar|g}} が非退化であることは、すべての <math>Y \in T_pM</math> に対し <math>\,g(X,Y) = 0</math> となるような(0 ではない)<math>X \in T_pM</math> は存在しないことを意味する。 === 計量符号 === {{main|計量符号}} ''n''-次元実多様体上の計量テンソル ''g'' が与えられると、任意の{{仮リンク|直交基底|en|orthogonal basis}}のそれぞれのベクトルへ適用された計量テンソルに付随する[[二次形式]] {{nowrap|1=''q''(''x'') = ''g''(''x'',''x'')}} が ''n'' 個の実数値で表される。[[シルベスターの慣性法則|二次形式の慣性法則]]により、この方法で表された各々の正、負、零の値の数は、直交基底の選択とは独立な計量テンソルに対して不変である。計量テンソルの'''[[計量符号]]''' (signature) (''p'', ''q'', ''r'') はそれぞれの順番通りの数値を与える。非退化計量テンソルは {{nowrap|1=''r'' = 0}} であり、符号は {{nowrap|1=''p'' + ''q'' = ''n''}} のときは、(''p'', ''q'') と書かれる。 == 定義 == '''擬リーマン多様体''' (pseudo-Riemannian manifold) <math>(M,g)</math> は、非退化で滑らかな対称な[[計量テンソル]] {{mvar|g}} を持つ[[微分可能多様体]] {{mvar|M}} である。 そのような計量を、'''擬リーマン計量''' (pseudo-Riemannian metric) と呼び、その値は、正、負、零となることができる。 擬リーマン計量の符号は、{{nowrap|(''p'', ''q'')}} であり、''p'' と ''q'' は非負である。 ==ローレンツ多様体== '''ローレンツ多様体''' (Lorentzian manifold) は、擬リーマン多様体の特別に重要な例で、そこでは計量の符号が (1, −1, … , −1)) (ときには、 (−1, … , −1, 1) のこともある。「[[符号の規約]]」を参照) である。そのような計量を'''ローレンツ計量'''と呼ぶ。ローレンツ計量は、物理学者[[ヘンドリック・ローレンツ]] (Hendrik Lorentz) にちなんでいる。 === 物理学への応用 === リーマン多様体の後に続いて、ローレンツ多様体は擬リーマン多様体の最も重要な部分をなす。ローレンツ多様体は、[[一般相対論]]の応用において重要である。 一般相対論の原理的な基礎は、[[時空]]は符号 (3, 1) もしくは、同じことであるが、(1, 3) を持つ 4次元ローレンツ多様体としてモデル化することができる。正定値の計量をもつリーマン多様体とは異なり、(3, 1) もしくは (1, 3) の符号は、接ベクトルを'''時間的'''、'''光的'''、'''空間的'''へ分類することができる([[因果律]]を参照)。 ==擬リーマン多様体の性質== [[ユークリッド空間]] <math>\mathbb{R}^n</math> が[[リーマン多様体]]のモデルと考えることができるように、平坦な[[ミンコフスキー計量]]をもつ[[ミンコフスキー空間]] <math>\mathbb{R}^{n-1,1}</math> は、ローレンツ多様体のモデルである。同様にして、符号 (<var>p</var>, <var>q</var>) の擬リーマン多様体のモデル空間は、<math>\mathbb{R}^{p,q}</math> であり、その計量は、 :<math>g = dx_1^2 + \cdots + dx_p^2 - dx_{p+1}^2 - \cdots - dx_{p+q}^2</math> である。 リーマン幾何学の基本的な定理は、擬リーマン的である場合に一般化することができる。特に、[[リーマン幾何学の基本定理]]は、擬リーマン多様体に対しても同様に成立する。このことは、付随する[[リーマン曲率テンソル|曲率テンソル]]に沿った擬リーマン多様体上の[[レヴィ・チヴィタ接続]]について語ることを可能とする。他方、リーマン幾何学の定理で一般の場合には成り立たない定理も多く存在する。たとえば、すべての滑らかな多様体は与えられた符号をもつ擬リーマン計量とすることができるは成立しない。この場合には、ある[[位相幾何学|トポロジカル]]な障害が存在する。さらに、(擬リーマン多様体の)[[部分多様体]]が常に、擬リーマン多様体の構造を引き継ぐわけではない。たとえば、計量テンソルは、任意の[[ミンコフスキー空間#因果構造|光的]]な[[曲線]]上の計量テンソルは 0 となる。{{仮リンク|クリフトン・ポールのトーラス|en|Clifton–Pohl torus}}(Clifton–Pohl torus)は、コンパクトであるが完備ではない擬リーマン多様体の例をもたらした。完備でないということは、リーマン多様体の上では成立する{{仮リンク|ホップ・リノーの定理|en|Hopf–Rinow theorem}}は擬リーマン多様体の上では成立しない<ref>{{harvtxt|O'Neill|1983}}, p. 193.</ref>。 == 関連項目 == *{{仮リンク|因果条件|en|Causality conditions}} (Causality conditions) *[[時空]] *[[双曲型偏微分方程式]] *{{仮リンク|大域的双曲多様体|en|Globally hyperbolic manifold}} (Globally hyperbolic manifold) * [[向き付け可能性#多様体の向き付け可能性|多様体の向き付け可能性]] ==脚注== {{脚注ヘルプ}} === 注釈 === {{Notelist}} === 出典 === {{Reflist}} ==参考文献== * {{citation | last1=Benn|first1=I.M.|last2=Tucker|first2=R.W. | title = An introduction to Spinors and Geometry with Applications in Physics| publisher=Adam Hilger | year=1987|edition=First published 1987|isbn=0-85274-169-3}} * {{citation | last1=Bishop|first1=Richard L.|author1-link=リチャード・ローレンス・ビショップ|last2=Goldberg|first2=Samuel I. | title = Tensor Analysis on Manifolds|publisher=The Macmillan Company | year=1968|edition=First Dover 1980|isbn=0-486-64039-6}} * {{citation | last1=Chen|first1=Bang-Yen| title = Pseudo-Riemannian Geometry, [delta]-invariants and Applications| publisher=World Scientific Publisher | year=2011|isbn=978-981-4329-63-7}} * {{citation|title=Semi-Riemannian Geometry With Applications to Relativity|volume=103|series=Pure and Applied Mathematics|first=Barrett|last=O'Neill|publisher=Academic Press|year=1983|isbn=9780080570570|url=https://books.google.co.jp/books?id=CGk1eRSjFIIC&pg=PA193&redir_esc=y&hl=ja}} * {{citation|first1=G.|last1=Vrănceanu|first2=R.|last2=Roşca|year=1976|title=Introduction to Relativity and Pseudo-Riemannian Geometry|location=Bucarest|publisher=Editura Academiei Republicii Socialiste România}}. {{DEFAULTSORT:きりいまんたようたい}} [[Category:ローレンツ多様体]] [[Category:滑らかな多様体]] [[Category:微分幾何学]] [[Category:ベルンハルト・リーマン]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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