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放射年代測定
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'''放射年代測定'''(ほうしゃねんだいそくてい、{{Lang-en-short|radiometric dating}})とは、[[原子核崩壊]]による[[核種]]変化、または[[放射線]]による損傷を利用して、[[岩石]]や[[化石]]の年代(形成以降の経過年数)を測定することである。 昔は測定された年代を[[絶対年代]]と言っていたこともあったが、現在は'''放射年代'''と言う。これは、[[年代測定]]の方法や試料の性質によって測定された年代の意味が異なるためである。その解釈は慎重に行う必要がある。 == 概要 == 放射年代測定は2種類の方法に大分される。特定の放射性核種の崩壊を利用する方法と、自然放射線による固体物質内の損傷を利用する方法である。 === 特定の放射性核種の崩壊を利用する方法 === * [[カリウム-アルゴン法|カリウム - アルゴン法]]<ref>{{Cite web|和書 |author = 松本哲一 |date = 2004-03-16 |url = https://www.gsj.jp/hazards/volcano/nendai.html |title = 高精度岩石放射年代測定 |work = 災害と緊急調査 |publisher = [[産業技術総合研究所]][[地質調査総合センター]] |accessdate = 2012-04-13 }}</ref> * [[アルゴン - アルゴン法]]<ref>{{Cite web|和書 |author = (株)蒜山地質年代学研究所 |date = |url = http://www.geohiruzen.co.jp/gyomu-arar.html |title = 業務-年代測定 Ar-Ar |work = 業務案内 |accessdate = 2012-04-13 }}{{リンク切れ|url=http://www.geohiruzen.co.jp/gyomu-arar.html|date=December 2017}}</ref> * [[ウラン・鉛年代測定法|ウラン - 鉛法]] (U-Pb) * [[ルビジウム - ストロンチウム法]] (Rb-Sr) * [[ヘリウム-ヘリウム法]] (He-He) * [[ヨウ素-キセノン法]] (I-Xe) * [[ランタン-バリウム法]] (La-Ba) * [[鉛-鉛法]] (Pb-Pb) * [[ルテチウム-ハフニウム法]] (Lu-Hf) * [[ネオン-ネオン法]] (Ne-Ne) * [[レニウム-オスミニウム法]] (Re-Os) * [[サマリウム-ネオジム法]] (Sm-Nd) * [[ウラン-鉛-ヘリウム法]] (U-Pb-He) * [[ウラン-トリウム法]] (U-Th) * [[ウラン-ウラン法]] (U-U) * [[ヨウ素129法]] - [[ウラン]]の[[放射壊変]]や[[宇宙線]]等、自然から供給される[[半減期]]1,570万年である[[ヨウ素129]]とヨウ素127の存在度比を利用する。 * [[炭素14法]](放射性炭素年代測定) - 半減期約5,730年の[[炭素14]]を使用する。[[地層]]の中から産出した[[貝殻]]、[[埋れ木]]、[[木炭]]、[[泥炭]]などの[[有機物]]を対象として測定され、年代の特定には他の手法を併用した総合的な分析が行われる。±50年くらいの精度である。 上記の方法では、対象とする核種が移動しなくなった時点が年代の出発点となる。たとえば、炭素14法では、[[生物]]が死んで外界と物質交換を行わなくなった時点である。それ以外の多くの方法では、[[鉱物]]が[[結晶化]]した時点である。ただし、[[火成岩]]・[[変成岩]]がゆっくり冷えた場合などは、結晶化後も拡散等による元素移動があるので、ある程度冷却が進んだ時点に相当する。ある温度で元素移動がなくなったとみなすことができる場合、その温度を閉鎖温度という。 一般に、N<sub>0</sub> : 出発時点での[[放射性元素]]の個数、N : 出発時点から時間 t 後の核の残数、T : 半減期 としたとき、 : <math>N=N_0 \left(\frac{1}{2} \right)^{t/T}</math> === 自然放射線による固体物質内の損傷を利用する方法 === * [[フィッショントラック法]](FT法) * 熱[[ルミネッセンス]]法(TL法) * [[電子スピン共鳴]]法(ESR法) 放射線による損傷は、[[熱]]によって回復することが知られている。したがって、これらの方法における年代の出発点は、特定の[[温度]](リセット温度という)よりも冷えた時点、または固体化・結晶化した時点となる。 == 比較 == {| class="wikitable" style="background:#fff;" |+ style="font-size:smaller;" | 年代測定法 |- style="position:sticky;top:0" ! scope="col" | 年代測定法 ! scope="col" | 測定する核種 ! scope="col" | 半減期 ! scope="col" | 適用可能な年代 ! scope="col" | 測定試料 ! scope="col" | 備考 |- ! [[熱ルミネセンス]]法| |-||||数十万年以下||[[土器]]、焼石などの考古学試料、[[火山灰]]などの火山噴出物、深海性[[堆積物]]など||格子欠陥をもつ結晶の加熱発光を利用する年代測定法<ref name="nendai" /> |- ! [[電子スピン共鳴]]吸収(ESR)法 | -||||10{{sup|7}}〜10{{sup|6}}年||骨などの[[リン酸塩]]試料、[[鍾乳石]]、[[貝殻]]などの[[炭酸塩]]試料、火山岩、[[火山灰]]などの火山噴出物、[[断層]]の[[粘土]]鉱物など||[[格子欠陥]]をもつ[[結晶]]のESR([[電子スピン共鳴]])信号を利用<ref name="nendai" /> |- ![[フィッショントラック法]] |{{sup|238}}U||0.82〜1.01×10{{sup|16}}年||10{{sup|8}}〜10{{sup|4}}年||[[火山ガラス]]、[[黒曜石]]などのガラス質物質、[[ジルコン]]、[[雲母]]、[[燐灰石]]、[[スフェーン]]などの鉱物||{{sup|238}}Uの自発破砕反応の際に生じる飛跡を利用 |- ![[ルビジウム - ストロンチウム法]] |{{sup|87}}Rb-{{sup|87}}Sr||4.88×10{{sup|10}}年||10{{sup|12}}〜10{{sup|8}}年||[[火成岩]]、[[変成岩]]、[[隕石]]、[[月の石|月の岩石]]など<ref name="nendai" />|| |- ![[カリウム - アルゴン法]] |{{sup|40}}K-{{sup|40}}Ar||1.25×10{{sup|9}}年||10{{sup|9}}〜10{{sup|5}}年||[[火山岩]]、[[黒曜石]]、[[テクタイト]]、[[隕石]]など<ref name="nendai" />|| |- ![[アルゴン - アルゴン法]] |{{sup|40}}Ar-{{sup|39}}Ar||||||||K-Ar法の補完的役割。試料に中性子照射して生成する{{sup|39}}Arを{{sup|40}}Kの代わりに測定<ref name="nendai" /> |- ![[ランタン-セリウム法]] |{{sup|138}}La-{{sup|138}}Ce||3.1×10{{sup|11}}年||10{{sup|9}}〜10{{sup|8}}年||火成岩、変成岩<ref name="nendai" />|| |- ![[ランタン-バリウム法]] |{{sup|138}}La-{{sup|138}}Ba||1.6×10{{sup|11}}年||10{{sup|9}}〜10{{sup|8}}年||[[褐簾石]]、[[モナザイト]]、[[緑簾石]]など<ref name="nendai" />|| |- ![[ルテチウム-ハフニウム法]] |{{sup|176}}Lu-{{sup|176}}Hf||3.57×10{{sup|10}}年||10{{sup|9}}年||火成岩、変成岩、隕石、月の岩石など<ref name="nendai" />|| |- ![[ウラン-トリウム-鉛法]] |{{sup|238}}U-{{sup|206}}Pb<br>{{sup|235}}U-{{sup|207}}Pb<br>{{sup|232}}Th-{{sup|208}}Pb||4.47×10{{sup|9}}年<br>7.04×10{{sup|8}}年<br>1.40×10{{sup|10}}年||10{{sup|11}}〜10{{sup|7}}年<br>10{{sup|11}}〜10{{sup|7}}年<br>10{{sup|11}}〜10{{sup|7}}年||火成岩、[[石灰岩]]などの[[堆積岩]]、[[方鉛鉱]]、[[瀝青ウラン鉱]]、隕石、月の岩石など<ref name="nendai" />|| |- ![[鉛-鉛法]] |{{sup|207}}Pb-{{sup|206}}Pb||10{{sup|9}}〜5×10{{sup|8}}年||||{{sup|207}}Pbと{{sup|206}}Pbの存在比で決定<ref name="nendai" /> |- ![[サマリウム-ネオジム法]] |{{sup|147}}Sm-{{sup|143}}Nd||1.06×10{{sup|11}}年||10{{sup|9}}〜10{{sup|8}}年||火成岩(超塩基性岩、塩基性岩)、変成岩、鉱床生成物、隕石、月の岩石など<ref name="nendai" />|| |- ![[ヨウ素-キセノン法]] |{{sup|129}}Ⅰ-{{sup|129}}Xe||1.6×10{{sup|7}}年||10{{sup|10}}〜10{{sup|9}}年||隕石||隕石の生成年代の決定に利用<ref name="nendai" /> |- ![[炭素14法]] |{{sup|14}}C||5.73×10{{sup|3}}年||数万年以下||生物の遺骸、文化財、地下水・海水などに溶存する有機物など|| |- !ベリリウム10法 |{{sup|10}}Be||1.6×10{{sup|6}}年||10{{sup|6}}〜10{{sup|3}}年||堆積物の堆積年代、アルミニウムやベリリウムの含有量の少ない岩石や鉱物など|| |- !トリチウム法 |{{sup|3}}H||12.33年||数十年以下||地下水など|| |- !プロトアクチニウム-トリウム法 |{{sup|231}}Paと{{sup|230}}Th||3.25×10{{sup|4}}年 ||10{{sup|6}}〜10{{sup|4}}年||海底堆積物<ref name="nendai" />|| |- ![[ウラン-ウラン法]] |{{sup|234}}U||2.47×10{{sup|5}}年 ||10{{sup|6}}〜10{{sup|4}}年||海底堆積物、サンゴ、雪、地下水など<ref name="nendai">[http://kodaisi.gozaru.jp/kitanokodaisiB/kazan/nendaisokutei/sokutei.html 年代測定法のいろいろ]</ref>|| |- !鉛210法 |{{sup|210}}Pb||22.3年||数百年以下||雪氷|| |- ![[ヨウ素129法]] |{{sup|129}}Iと{{sup|127}}I||1.57×10{{sup|7}}年||||||[[ヨウ素129]]とヨウ素127の存在度比を利用 |} == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist}} == 参考文献 == * {{Cite book|和書 |author = [[兼岡一郎]] |title = 年代測定概論 |url = https://web.archive.org/web/20020129161857/http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/ES_N_N1.html |year = 1998 |publisher = [[東京大学出版会]] |isbn = 4-13-060722-7 |page = |chapter = }}{{リンク切れ|url=https://web.archive.org/web/20020129161857/http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/ES_N_N1.html|date=December 2017}} == 関連項目 == <!-- {{Commonscat|Radiometric dating}} --> * [[ウラジーミル・ヴェルナツキー]] - 放射年代測定の創始者。 * [[理化学的年代]] * [[質量分析]] * [[質量分析器]] * [[二次イオン質量分析法]] * [[SHRIMP]] * [[半減期#いろいろな物質の半減期の一覧]] * [[古生物学]] <!-- == 外部リンク == --> {{Chronology}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:ほうしやねんたいそくてい}} [[Category:年代測定]] [[Category:地質調査]] [[Category:放射線]] [[Category:ウラジーミル・ヴェルナツキー]]
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