方べきの定理のソースを表示

{{告知|確認|類型の日本語名称の正確性についての調査・確認|date=2019年10月}}
{{出典の明記|date=2016年5月}}
'''方べきの定理'''（'''方冪の定理'''、'''方羃の定理'''、'''方巾の定理'''<ref>
「冪/羃」はひらがなで書かれることが多い。また、「巾」は数学者の間では「冪」の略字として用いられている。(詳しくは[[冪乗]]を参照されたい)
</ref>、ほうべきのていり、{{Lang-en-short|power of a point theorem}}<ref>{{Cite web
|url=https://math-eng.blogspot.com/2015/11/power-of-point-theorem.html
|title=Power of a Point Theorem
|publisher=数学も英語も強くなる！ 意外な数学英語 Unexpected Math English
|accessdate=2021-01-26
}}</ref>）は、平面[[初等幾何学]]の[[定理]]の1つである。

== 定理の主張 ==
{|
|[[image:houbeki 001.svg|thumb|200px|図1 Pが円の内側にある（[[:en:Intersecting chords theorem|交わる弦の定理]]）]]
|[[image:houbeki 003.svg|thumb|200px|図2 Pが円の外側にある（[[:en:Intersecting secants theorem|交わる割線の定理]]）]]
|[[image:houbeki 005.svg|thumb|200px|図3 Pが円の外側にあり、直線の一方が円の接線である（[[:en:Tangent–secant theorem|接線と割線の定理]]）]]
|}
（図1、図2）[[円 (数学)|円]] O とその[[円周]]上にない[[点 (数学)|点]] P について、点 P を通る2本の[[直線]] <math>\ell</math>, m がともに円の[[割線]]（円との[[共有点]]が2個である直線）になっているとしよう。円と <math>\ell</math> の交点を A, B とし、円と m の交点を C, D とすると、
:<math>\text{PA} \cdot \text{PB} =\text{PC} \cdot \text{PD}</math>
が成り立つ。

（図3）また、P が円 O の外側にあり、P を通る直線の一方が円 O の[[接線]]となる場合にも、円と割線の交点を A, B とし、円と接線の接点を T とすると、
:<math>\text{PA} \cdot \text{PB} =\text{PT}^2</math>
が成り立つ。

=== 証明 ===
{|class="wikitable"
|P が円 O の内側にある場合
|[[image:houbeki 002.svg|200px]]
|左の図において、同一の弧に対する[[円周角]]は互いに等しいから
:∠PAC = ∠PDB
:∠PCA = ∠PBD
二角相等により
:△PAC ∽ △PDB
よって
:PA: PC = PD: PB
すなわち
:PA ・ PB = PC ・ PD
|-
|P が円 O の外側にある場合
|[[image:houbeki 004.svg|200px]]
|左の図において、円に内接する四角形の外角の大きさは、その内対角の大きさに等しいから、
:∠PAC = ∠PDB
:∠PCA = ∠PBD
二角相等により
:△PAC ∽ △PDB
よって
:PA: PC = PD: PB
すなわち
:PA ・ PB = PC ・ PD
|-
|直線の一方が接線になる場合
|[[image:houbeki 006.svg|200px]]
|左の図において、接弦定理により、
:∠PTA = ∠PBT
また、共通の角として
:∠TPA = ∠BPT
二角相等により
:△PAT ∽ △PTB
よって
:PA: PT = PT: PB
すなわち
:PA ・ PB = PT{{sup|2}}
|}

== 方べきの定理の逆 ==
方べきの定理は、適当な意味においてその逆が成立することが知られている。

平面上に相異なる4点 A, B, C, D があり、直線 AB と 直線 CD がただ一つの交点 P をもつとする。ここで次の条件を考える。

*(1) <math>\text{PA} \cdot \text{PB} =\text{PC} \cdot \text{PD}</math>
*(2-1) P は[[線分]] AB の内部の点であり、線分 CD の内部の点でもある。
*(2-2) P は線分 AB の外部の点であり、線分 CD の外部の点でもある。

(1)かつ(2-1)を満たすならば、4点 A, B, C, D を通る円（[[共円]]）が存在し、P はこの円の内側にある。

(1)かつ(2-2)を満たすならば、4点 A, B, C, D を通る円が存在し、P はこの円の外側にある。

また、平面上に相異なる3点 A, B, T があり、直線 AB 上に点 P があるとする。ここで次の条件を考える。
*(3) <math>\text{PA} \cdot \text{PB} =\text{PT}^2</math>
*(4) P は線分 AB の外部の点である。
*(5) A, B, T は同一直線上にない。

(3)かつ(4)かつ(5)を満たすならば、3点 A, B, T を通る円（△ABTの[[外接円]]）の T における接線は P を通る。

いずれの場合も、もとの定理の証明を逆向きにたどるようにして、三角形の相似を利用して証明することができる。条件(2-1), (2-2), (4), (5)を外すことができないことには注意すべきである。

== 方べきの値 ==
[[File:Potenz-sek-sehne-e.svg|thumb|方べきの値は負の値をとりうる。(注意:この図では、線分の記号に絶対値記号をつけたものは単にその長さを表している。)]]

''この節では、円をその中心点の名前を借りて円 O のように呼ぶことはせず、独立した記号を与えることとする。''

平面上に点 O, P と、O を中心とする円 ω がある。P を通る直線 <math>\ell</math> が ω と1つまたは2つの共有点をもつとし、それを A, B とする（共有点が1つのときは A=B として扱う）。

さて、P と ω が動かずに、<math>\ell</math> がさまざまに動くとき、A, B はつられてさまざまに動くが、<math>\text{PA} \cdot \text{PB}</math> の値は'''変化しない'''ことが方べきの定理からわかる。P≠O のとき、直線 OP を考えることにより、
: <math>\text{PA} \cdot \text{PB} =|\text{PO}-r| \cdot (\text{PO} + r)=|\text{PO}^2 - r^2|</math>
と表すことができる。P=O のときにも、ω の任意の直径を考えることにより、やはり
: <math>\text{PA} \cdot \text{PB} = r^2 = |0-r^2| =|\text{PO}^2 - r^2|</math>
が成り立つ。

そこで、P と ω のみによって決まる量
: <math>\Pi_\omega(P) = \text{PO}^2 - r^2</math>
を定義すると便利である。この値を、P の ω に関する'''方べきの値'''（ほうべきのあたい）または単に'''方べき'''（ほうべき、{{lang-en-short|power}}）という。記号には <math>\Pi(P), \text{Pow}_\omega(P)</math> などが用いられることもある。

方べきの値は、P が ω の外側にあれば正、ω の内側にあれば負、ちょうど ω の上にあればゼロとなる。

学校数学で方べきの値が教えられることは少ない。

平面上の異なる中心をもつ2つの円の[[根軸]]は、方べきの値を用いて特徴付けられる<ref>{{Harvnb|チェン|2023|pp=42-44}}</ref>。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
*{{Cite book|和書
|author=H.S.M.コクセター
|authorlink=ハロルド・スコット・マクドナルド・コクセター
|translator=[[銀林浩]]
|date=2009-09-10
|title=幾何学入門
|volume=（上）
|series=ちくま学芸文庫
|publisher=筑摩書房
|pages=161-165
|isbn=978-4-480-09241-0
|ref={{Harvid|コクセター|2009}}
}}
*{{Cite book|和書
|author=エヴァン・チェン
|authorlink=エヴァン・チェン
|others=[[森田康夫 (数学者)|森田康夫]]（監訳）
|date=2023-02-15
|title=数学オリンピック幾何への挑戦 ユークリッド幾何をめぐる船旅
|publisher=日本評論社
|pages=39-47
|isbn=978-4-535-78978-4
|ref={{Harvid|チェン|2023}}
}}

== 外部リンク ==
*{{Kotobank|方べきの定理}}
*{{高校数学の美しい物語|845|方べきの定理の意味と2通りの証明}}
*[https://rikeilabo.com/arithmetic-theorem 方べきの定理まとめ（証明・逆の証明）] - 理系ラボ
*[https://www.hmathmaster.com/matha/%E6%96%B9%E3%81%B9%E3%81%8D%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%90%86%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E9%80%86%E3%81%AE%E8%A8%BC%E6%98%8E/ 方べきの定理とその逆の証明] - 高校数学マスター
*{{MathWorld|title=Circle Power|urlname=CirclePower}}
=== 動画 ===
*{{YouTube|VgVTQawMvdI|【高校数学】　数A-51　方べきの定理①}}
*{{YouTube|_nG3gg6S7pc|【高校数学】　数A-52　方べきの定理②}}
*{{YouTube|MdIjJ0NaIDg|【高校数学】　数A-53　方べきの定理③}}

{{Elementary-geometry-stub}}

{{DEFAULTSORT:ほうへきのていり}}
[[Category:初等幾何学]]
[[Category:円に関する定理]]
[[Category:ヤコブ・シュタイナー]]
[[Category:数学に関する記事]]
[[Category:証明を含む記事]]