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[[物理学]]、[[工学]]および[[社会科学]]において、'''時定数'''(じていすう、ときていすう、ときじょうすう、{{lang-en-short|time constant}}<ref name="rika"> {{cite|1=和書|editor=長倉三郎 他|url=http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/08/6/0800900.html|title=岩波理化学辞典|publisher=岩波書店|year=1998|ISBN=4-00-080090-6|archiveurl=https://web.archive.org/web/20130927144110/http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/08/6/0800900.html|archivedate=2013年9月27日|deadlinkdate=2017年10月}}項目「時定数」より。</ref>)は、線型[[時不変系]]([[LTIシステム理論|LTIシステム]])における1次の[[周波数]]応答を示す値である。[[ギリシャ文字]]の τ で表される。[[過渡現象]]の応答速度の指標としても理解される<ref name="rika" />。{{en|Time constant}}の邦訳語としては「ときていすう」であるとする説もある。[[学術用語]]としては「じていすう」としている([[日本産業規格|JIS]]も同様<ref>{{Cite book|和書 |title=エネルギー管理用語(その2)(JIS Z 9212:1983) |year=1983 |publisher=日本産業標準調査会 |page=6 |series=日本産業規格}}</ref>)。 例として[[電子回路]]の[[RC回路]]([[抵抗器]]-[[コンデンサ]])、RL回路([[抵抗器]]-[[コイル]])がある<ref name="rika" />。その値は[[磁気テープ]]、[[送信機]]、[[受信機]]、[[レコード]]および再生装置、[[デジタルフィルタ]]などの信号処理系における周波数応答の特徴を表すために用い、1次の線型系としてモデル化および近似する。同じような式の形であっても、電磁気学、機械工学、社会科学の順に、時定数が大きくなり、システムの監視、状態の管理方法が異なる。電気的手法よりも[[空圧]]を制御の積分や微分に使うような[[制御システム]]も時定数を用いる例として挙げられる。<!--Other examples include time constant used in [[control system]]s for integral and derivative action controllers, which are often [[pneumatic]], rather than electrical. 既訳--> 物理的あるいは化学的<ref name="rika" />には、時定数はシステムが目標値の (1 -''e''<sup>-1</sup>) <ref name="rika" />に達するまでの時間を示す。あるいは外力が取り除かれたときに初期値の約37%に達するのに必要な時間でもある<ref name="rika" />。工学、社会科学でも、約63.2%に達するまでの時間を取ると、電磁気学ではマイクロ秒、ミリ秒の事象が多く、機械工学ではミリ秒、秒の単位が多い。社会科学では、時間、日、週、月、年などの単位になることもある。時定数の大きさが、システムの分類に役立つ。 == 微分方程式 == {{main|LTIシステム理論}} {{For2|数学的に同値なこの微分方程式の数理全般|指数関数的減衰}} 1次の線型系を次の微分方程式で表す。 {{Indent|<math> {dV(t) \over dt} = - \alpha V(t) </math>}} ここで αは指数減少係数を表し、''V'' (''t'' ) は時間''t'' の関数である。時定数τは指数減少係数αに関係している。 {{Indent|<math> \tau = { 1 \over \alpha } </math>}} === 一般解 === 微分方程式の一般解は次のようになる。 {{Indent|<math> V(t) \ = \ V_0 e^{-\alpha t} \ = \ V_0 e^{-t / \tau}</math>}} ここで {{Indent|<math> V_0 \ = \ V(0) </math>}} は''V'' の初期値である。 この式は、次のことを示している。 * ''t'' = 0 で初期値 ''V''<sub>0</sub> が、時間とともに徐々に減少する。 * ''t'' = τ の時間が経過すると <math> V(t) = V_0 e^{-1} \approx 0.368 V_o</math><!--一見するとV(t) = V_0 (e^{-1}) \approx 0.368 V_0ではカッコが函数記号に見えなくないため削除した--> となり、出力は初期値 ''V''<sub>0</sub> の約36.8%となる。 * さらに時間が経過すると、 <math> \lim_{t \to \infty}V(t) = 0 </math> に近づく。 == 時定数の例 == === 電子回路における時定数 === [[File:Series RC capacitor voltage.svg|thumb|right|230px|[[コンデンサ]]の電圧ステップ応答]] [[File:Series RC resistor voltage.svg|thumb|right|230px|[[インダクタ]]の電圧ステップ応答]] RL回路における時定数 τ (単位は[[秒]])は次のようになる<ref name="rika" />。 {{Indent|<math> \tau \ = \ { L \over R } </math>}} ここで、''R'' は抵抗(単位は[[オーム]])、''L'' は[[インダクタンス]](単位は[[ヘンリー (単位)|ヘンリー]])である。同様に、[[RC回路]]における時定数τ は次のようになる<ref name="rika" />。 {{Indent|<math> \tau \ = \ R C </math>}} ここで、''C'' は[[静電容量]](単位は[[ファラド]])である。 === 神経生物学における時定数 === [[ニューロン]]における[[活動電位]]において、時定数 τ は次のようになる。 {{Indent|<math> \tau \ = \ r_{m} c_{m}</math>}} ここで、''r''<sub>m</sub> は膜を横断する抵抗、''c''<sub>m</sub> は膜の容量である。膜を横断する抵抗は、開放された[[イオンチャネル]]の関数、容量は脂質膜の特性の関数である。 時定数は活動電位の上昇および下降を記述するためにも用いる。上昇は {{Indent|<math> V(t) \ = \ V_{max} (1 - e^{-t /\tau})</math>}} 下降は {{Indent|<math> V(t) \ = \ V_{max} e^{-t /\tau}</math>}} で表される。ここで[[電圧]]の単位はミリボルト、時間の単位は秒、''τ'' の単位はミリメートルである<!--really?-->。''V''<sub>max</sub> は活動電位における最大の電圧として定義される。 {{Indent|<math>V_{max} \ = \ r_{m}I</math>}} ここで''r''<sub>m</sub> は膜を横断する抵抗、 ''I'' は電流である。 * 上昇において ''t'' = τ の時間が経過すると ''V'' (''t'' ) は0.63''V''<sub>max</sub> に等しくなり、時定数は ''V''<sub>max</sub> の63%までに経過する時間であることを意味する。 * 下降において ''t'' = τ の時間が経過すると ''V'' (''t'' ) は0.37''V''<sub>max</sub> に等しくなり、時定数は ''V''<sub>max</sub> の37%までに経過する時間であることを意味する。 時定数が大きくなるにつれ、ニューロンの電位の上昇および下降は遅くなる。長い時定数は時間的加算性、あるいはポテンシャルの反復の代数和に起因する。 === 放射性元素の半減期 === [[放射性同位元素]]の[[半減期]] ''T''<sub>''HL''</sub> は時定数の指数関数に関係している。 {{Indent|<math>T_{HL} = \tau \cdot \ln 2</math>}} 余談だが、時定数そのものは放射性物質の[[平均寿命#素粒子・放射性同位体の平均寿命|平均寿命]]そのものであり、[[崩壊定数]]の逆数でもある。 === 経済学における時定数 === 投資などの効果が、時間とともに逓減していく様を微分方程式で記述する。 === 社会学における時定数 === 人の間での情報の伝達、文化の浸透が時間とともに逓減していく様を微分方程式で記述する。 === 経営学における時定数 === 例えば、組織の方針を決めて、実際に有効に機能しはじめるまでの時間。 ==参考文献== <references /> == 関連項目 == * [[指数関数的減衰]] - 時定数を含む現象の一般的な数理 * [[過渡現象]] - 反応の応答速度の目安となりうる量 * [[平均寿命]] - 放射性元素・素粒子などにおける、時定数に相当する量 * [[崩壊定数]] - 数学的には、時定数(物理学では平均寿命)の逆数 * [[緩和時間]] {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:していすう}} [[Category:時間]] [[Category:細胞生物学]] [[Category:動力学]]
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