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'''束一的性質'''(そくいつてきせいしつ、{{lang-en-short|Colligative properties}})とは、希薄溶液における[[相平衡]]の性質で、存在する溶質分子の数だけに依存する性質である<ref>{{cite|和書|author=A. G. Whittaker|author2=A. R. Mount|author3=M. R. Heal|coauthor=中村亘男訳|title=キーノート化学シリーズ 物理化学キーノート|publisher=シュプリンガー・フェアラーク東京|year=2002|isbn=4-431-70956-8}}</ref>。 [[高分子化合物]]などの(平均)[[分子量]]を、'''束一的性質'''に基づいて、沸点上昇、凝固点降下、浸透圧の変化量をもとに決定することが可能である。 == 概要 == [[溶質]]を[[溶媒]]に溶かすと溶媒の[[化学ポテンシャル]]が減少することを原因として、[[蒸気圧降下]]、[[沸点上昇]]、[[凝固点降下]]、[[浸透圧]]といった現象が引き起こされる。溶質の濃度が十分に低ければ、溶媒の化学ポテンシャルの強度は溶質の種類に依存しなくなるため、'''束一的性質'''をもつ現象は溶質の種類によらず[[モル濃度]](より正確には[[質量モル濃度]]または[[モル分率]])の大小でその強度が決定付けられる。 溶液中の溶媒の化学ポテンシャル {{math|μ{{sub|A}}}} は、一般の溶液では溶媒の[[活量]] {{math|''a''{{sub|A}}}} を用いて {{Indent|<math>\mu_\text{A} =\mu_\text{A}^\circ + RT\ln a_\text{A}</math>}} で表される。ここで {{mvar|R}} は[[気体定数]]、{{mvar|T}} は[[絶対温度]]、{{math|μ°{{sub|A}}}} は純溶媒の化学ポテンシャルである。溶質の濃度が十分に低くて溶液を[[理想希薄溶液]]とみなせるならば、溶媒の活量 {{math|''a''{{sub|A}}}} を溶媒成分のモル分率 {{math|''X''{{sub|A}}}} で置き換えることができる。そのため理想希薄溶液で起こる蒸気圧降下などの変化は {{math|''X''{{sub|A}}}} だけによって決まり、溶質の化学的な構造には依存しない。存在する溶質分子の数だけに依存する。 == 束一的性質を持つ現象 == 以下、全ての溶質の質量モル濃度の総和を {{math|Σ''m''}} とする。 === 蒸気圧降下 === [[ラウールの法則]]とも呼ばれ、純溶媒の蒸気圧を {{mvar|P°}} とすると、希薄溶液中の溶媒成分の蒸気圧 {{math|''P''{{sub|A}}}} は溶媒成分のモル分率 {{math|''X''{{sub|A}}}} に比例し、次の関係が成立する。 {{Indent|<math>P_\text{A} = P^\circ X_\text{A}</math>}} 溶質がすべて不揮発性である場合は、溶液の蒸気圧 {{mvar|P}} は溶媒成分の蒸気圧 {{math|''P''{{sub|A}}}} に等しい。 === 沸点上昇 === 沸点の上昇度 {{math|Δ''T''}} は {{math|Σ''m''}} に比例する。ここで {{math|''K''<sub>b</sub>}} は沸点上昇定数である。 {{Indent|<math>\Delta T= K_\text{b}\sum m</math>}} この式が成り立つのは、溶質がすべて不揮発性である場合に限られる。 === 凝固点降下 === 凝固点の降下度 {{math|Δ''T''}} は {{math|Σ''m''}} に比例する。ここで {{math|''K''<sub>f</sub>}} は凝固点降下定数である。 {{Indent|<math>\Delta T= K_\text{f}\sum m</math>}} この式が成り立つのは、凝固点で析出してくる純溶媒の固体に、溶質が全く溶け込まない場合に限られる。 === 浸透 === 浸透圧 {{math|Π}} はモル濃度の総和 {{math|Σ''c{{sub|i}}''}} に比例する。ここで {{mvar|R}} は[[気体定数]]、{{mvar|T}} は[[絶対温度]]である。 {{Indent|<math>\Pi= RT\sum c_i</math>}} この式を'''[[ファントホッフの式]]'''という。 ファントホッフの式を利用すると[[高分子化合物]]の{{仮リンク|数平均分子量|en|Molar mass distribution#Number average molar mass}}を推定することができる。ただし高分子化合物の希薄溶液は理想希薄溶液とはみなせないことが多い。質量濃度の異なる希薄溶液の浸透圧をいくつか測定し、測定結果を質量濃度ゼロの極限に[[外挿]]することで数平均分子量を推定する<ref>{{cite|和書|author=田中文彦|title=ソフトマターのための熱力学|publisher=裳華房|year=2009|page=123|isbn=978-4-7853-2825-2}}</ref>。 == 束一的性質ではない希薄溶液の性質 == 揮発性の溶質を含む希薄溶液が気相と平衡にあるときには、気相内の溶質 {{math|B}} の[[分圧]] {{math|''P''{{sub|B}}}} は溶液中のモル濃度 {{math|''c''{{sub|B}}}} に比例する。これを[[ヘンリーの法則]]という。比例係数が溶質の種類に依存するので、ヘンリーの法則は束一的性質ではない。 難溶性物質の飽和溶液は希薄溶液である。難溶性物質の[[溶解度]]は溶質の種類に依存するので、束一的性質ではない。同様に、[[分配係数]]も束一的性質ではない。 == 参考文献 == {{reflist}} == 関連項目 == * [[溶液]] * [[物理化学]] * [[高分子]] {{DEFAULTSORT:そくいつてきせいしつ}} [[Category:物理化学]] [[Category:溶液化学]] [[Category:液体]] [[Category:物質の性質]]
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