極限順序数のソースを表示

{{出典の明記|date=2017年9月}}
[[File:omega-exp-omega-labeled.svg|thumb|250px|{{mvar|ω{{exp|ω}}}} までの順序数全体の表現: 螺旋の各周回の区切りは {{mvar|ω}} の冪を表している。極限順序数は、{{math|0}} でなく、直前の順序数を持たない順序数だから、例えば、 {{mvar|ω}} や {{math|''ω''{{exp|2}}}} などがそうである。]]
[[集合論]]および{{ill2|順序論|en|order theory}}における'''極限順序数'''（きょくげんじゅんじょすう、{{lang-en-short|''limit ordinal''}}）は {{math|0}} でも[[後続順序数]]でもない[[順序数]]を言う。あるいは、順序数 {{mvar|λ}} が極限順序数であるための必要十分条件は「{{mvar|λ}} より小さい順序数が存在して、順序数 {{mvar|β}} が {{mvar|λ}} より小さい限り別の順序数 {{mvar|γ}} が存在して {{math|β < γ < λ}} とできることである」と言ってもよい。任意の順序数は、{{math|0}} または後続順序数、さもなくば極限順序数である。

例えば、任意の[[自然数]]よりも大きい[[アレフ数#アレフ・ノート|最小の超限順序数]] {{mvar|ω}} は、それよりも小さい任意の順序数（つまり自然数）{{mvar|n}} が常にそれよりも大きい別の自然数（なかんずく {{math|''n'' + 1}}）を持つから、極限順序数である。

{{ill2|順序数に関するフォンノイマンの定義|en|Ordinal_number#Von_Neumann_definition_of_ordinals}}を用いれば、任意の順序数はそれより小さい順序数全体の成す[[整列集合]]として与えられる。このとき、空でない順序数の集合が最大元を持たないならば、その和集合は常に極限順序数になる<ref>順序数全体は[[真クラス]]であるため、順序数の集合は必ず上界を持つ。</ref>。{{ill2|フォンノイマン基数割り当て|en|Von Neumann cardinal assignment}}を用いれば、任意の無限[[基数]]もまた極限順序数となる。

== 特徴付け ==
極限順序数は他にもいろいろなやり方で定義できる:
* 与えられた非零順序数でそれより小さい任意の順序数の[[上限 (数学)|上限]]に等しいもの。(後続順序数の場合と比較すれば、後続順序数より小さい順序数全体の成す集合には最大限が存在する（それは直前の順序数である）から、それが上限を与える。)
* 最大元を持たない非零順序数。
* 適当な {{math|''α'' > 0}} によって {{mvar|ωα}} の形に書ける順序数。つまり、カントール標準形において末項としての有限な数を持たない非零順序数。
* 順序数全体の成す類において{{ill2|順序位相|en|order topology}}に関する[[極限点]] (ほかの順序数は[[孤立点]]となる)。

{{math|0}} を、直前の順序数を持たない順序数として、極限順序数に分類すべきか否かに関しては流儀が分かれる。いくつかの教科書<ref>例えば Thomas Jech, ''Set Theory''. Third Millennium edition. Springer.</ref>は {{math|0}} を極限順序数のクラスに含めるが、含めないもの<ref>例えば Kenneth Kunen, ''Set Theory. An introduction to independence proofs''. North-Holland.</ref>もある。

== 例 ==

順序数全体の成す[[類 (集合論)|類]]は[[整列順序]]付けられているから、有限でない最小の極限順序数 {{mvar|ω}} が存在する。この順序数 {{mvar|ω}} は、[[自然数]]の[[最小上界]]に一致するものとして、最小の超限順序数でもある。ゆえに、{{mvar|ω}} は自然数全体の成す集合の[[順序型]]を表している。それより大きい次の極限順序数として、まずは {{math|1=''ω'' + ''ω'' = ''ω''&sdot;2}}、これは任意の自然数 {{mvar|n}} に対する {{mvar|ω&sdot;n}} に一般化できる。{{mvar|ω&sdot;n}} 全体の成す集合における[[合併 (集合論)|合併]]（順序数からなる任意の集合上で[[上限 (数学)|上限]]をとる操作と見なせる）を取って、{{math|''ω·ω'' {{eqqcolon}} ''ω''{{exp|2}}}} が得られ、これは任意の自然数 {{mvar|n}} に対する {{mvar|ω{{exp|n}}}} に一般化される。この過程はさらに繰り返すことができて、<math display="block">\omega^3, \omega^4,\ldots,\omega^\omega, \omega^{\omega^\omega}, \varepsilon_0 = \omega^{\omega^{\omega^{~\cdot^{~\cdot^{~\cdot}}}}},\ldots</math> なる系列が生み出される

一般に、このような再帰的定義は乗法、冪演算、反復冪などを通じてもできるが、何れも極限順序数を導き出す。ここまでで出てきた順序数はそれでもまだ[[可算]]順序数であるが、同様に可算順序数である[[チャーチ・クリーネ順序数|チャーチ&ndash;クレイニ順序数]]より小さいすべての順序数に系統的に名前を付けることのできる{{ill2|再帰的枚挙可能|en|recursively enumerable}}な命名規則は存在しない。

可算順序数を超えて、[[最小の非可算順序数]] {{math|''ω''{{sub|1}}}} は、これもまた極限順序数となる。同様に推し進めれば、以下のような系列（以下の列では項を追うごとに濃度も増大する）: <math display="block">\omega_2, \omega_3, \ldots, \omega_\omega, \omega_{\omega + 1}, \ldots, \omega_{\omega_\omega},\ldots</math> が得られる。

一般に、順序数からなる空でない集合が最大元を持たなければ、合併を取れば常に極限順序数が得られる。

{{math|''α'' > 0}} に対する {{math|''ω''{{exp|2}}''α''}} 全体の成す集合は極限順序数からなる極限順序数、など。

== 性質 ==
後続順序数の類、（さまざまな[[共終数]]を持つ）極限順序数の類と {{math|0}} を併せたもので順序数の類は尽くされるから、これらの場合はしばしば[[超限帰納法]]や{{ill2|超限再帰|en|transfinite recursion}}的定義に用いられる。極限順序数はこの種の手続きにおいてある種の「転換点」を表している（そこでは、それより前の順序数すべての合併をとるなどの極限操作が用いられなければならない）。原理的には、極限順序数において何かする際に、合併をとることは順序位相における[[連続写像]]であり、これはふつうは好ましい性質である。

{{ill2|フォンノイマン基数割り当て|en|Von Neumann cardinal assignment}}を用いるならば、任意の無限[[基数]]は極限順序数でもある（またこれは「蝶番」や「転換点」を意味する{{lang-la|''cardo''}} に由来する{{lang-en|''cardinal''}} の語感とも合う）。この事実の証明は、単に任意の超限後続順序数が[[無限ホテルのパラドクス]]にあるような割り当てを通じて適当な極限順序数と[[等濃]]（対等、同数）であることを見ればよい。

基数それ自体も固有の{{ill2|後続基数|en|Successor cardinal|label=後続関係}}や{{ill2|極限基数|en|Limit cardinal|label=極限}}の概念を持っているので、それらと混同すべきではない。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
* {{ill2|順序数の算術|en|Ordinal arithmetic}}
* {{ill2|極限基数|en|Limit cardinal}}
* {{ill2|基本列 (順序数)|en|Fundamental sequence (ordinals)}}
* [[最小の超限順序数]]（最小の'''極限順序数'''、最小の[[無限順序数]]、最小の[[超限順序数]]、最小の[[許容順序数]]） {{mvar|ω}} （[[アレフ数#アレフ・ノート|アレフ・ノート]] {{math|ℵ{{sub|0}}}}）
* [[エプシロン・ノート]] <math>\varepsilon_0</math>
* {{仮リンク|竹内・フェファーマン・ブーフホルツ順序数|en|Takeuti–Feferman–Buchholz ordinal}}（Takeuti–Feferman–Buchholz ordinal）<math>\psi(\varepsilon_{\Omega_\omega + 1})</math>
* [[チャーチ・クリーネ順序数]]（最小の{{仮リンク|非再帰的順序数|en|Recursive ordinal}}、2番目の[[許容順序数]]） {{math|''ω''<sub>1</sub><sup>CK</sup>}}
* [[最小の非可算順序数]] {{math|Ω}} または {{math|ω<sub>1</sub>}} （[[アレフ数#アレフ・ワン|アレフ・ワン]] {{math|ℵ{{sub|1}}}}）
* [[オメガ不動点]]（[[アレフ不動点]]）（[[アレフ数#アレフ関数の不動点|オメガの固定点]]）<math>\Phi_I(0)</math>
* [[巨大基数]]（[[巨大基数的性質の一覧|一覧]]）→（崩壊）→非可算基数→（崩壊）→可算順序数
** 最小の弱[[到達不能基数]]
** 最小の弱[[マーロ基数]]
** 最小の{{仮リンク|階層内階層基数|en|Rank-into-rank}}

== 関連文献 ==
* [[Georg Cantor|Cantor, G.]], (1897), ''Beitrage zur Begrundung der transfiniten Mengenlehre.  II'' (tr.: Contributions to the Founding of the Theory of Transfinite Numbers II), Mathematische Annalen 49, 207-246 [https://archive.org/details/117770262 English translation].
* [[John Horton Conway|Conway, J. H.]] and [[Richard K. Guy|Guy, R. K.]] "Cantor's Ordinal Numbers." In ''The Book of Numbers''. New York: Springer-Verlag, pp.&nbsp;266–267 and 274, 1996.
* Sierpiński, W. (1965). ''Cardinal and Ordinal Numbers'' (2nd ed.). Warszawa: Państwowe Wydawnictwo Naukowe. Also defines ordinal operations in terms of the Cantor Normal Form.

== 外部リンク ==
* {{MathWorld|urlname=LimitOrdinal|title=Limit Ordinal}}
* {{SpringerEOM|urlname=Limit_ordinal|title=Limit ordinal}}
* {{nlab|urlname=limit+ordinal|title=limit ordinal}}
* {{ProofWiki|urlname=Definition:Limit_Ordinal|title=Definition:Limit Ordinal}}
* [https://googology.fandom.com/ja/wiki/%E6%A5%B5%E9%99%90%E9%A0%86%E5%BA%8F%E6%95%B0%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7 極限順序数の一覧 | 巨大数研究 Wiki | Fandom]
* [https://googology.fandom.com/ja/wiki/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AD%E3%82%B0:Kyodaisuu/%E9%A0%86%E5%BA%8F%E6%95%B0%E8%AC%9B%E5%BA%A7_(12)_%E5%B7%A8%E5%A4%A7%E5%9F%BA%E6%95%B0%E3%81%AE%E5%B4%A9%E5%A3%8A ユーザーブログ:Kyodaisuu/順序数講座 (12) 巨大基数の崩壊 | 巨大数研究 Wiki | Fandom]

{{DEFAULTSORT:きよくけんしゆんしよすう}}
[[Category:順序数]]
[[Category:数学に関する記事]]