標本空間のソースを表示

{{出典の明記|date=2010-10}}
{{Probability fundamentals}}
'''標本空間'''（ひょうほんくうかん、{{lang-en-short|sample space}}{{efn|次のようにも呼ばれる：''sample description space''<ref>{{Cite book |last1=Stark |first1=Henry |last2=Woods |first2=John W. |year=2002 |title=Probability and Random Processes with Applications to Signal Processing |edition=3rd |publisher=Pearson |page=7 |isbn=9788177583564}}</ref> or ''event space''<ref>{{Cite web |url=http://stats.oecd.org/glossary/detail.asp?ID=3855|title= OECD Glossary of Statistical Terms - Sample space Definition |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |date=2002-05-26 |publisher= |accessdate=2015-02-27}}</ref> or ''possibility space''<ref>{{Cite book |last1=Forbes |first1=Catherine |last2=Evans |first2=Merran |last3=Hastings |first3=Nicholas |last4= Peacock |first4=Brian |year=2011 |title= Statistical Distributions |edition=4th |publisher=Wiley |page=3 |isbn=9780470390634}}</ref>}}）は、[[確率論]]にて、[[試行 (確率論)|試行]][[結果 (確率論)|結果]]全体の集合のことである<ref name="albert">{{Cite web |url=http://www-math.bgsu.edu/~albert/m115/probability/sample_space.html |title=Listing All Possible Outcomes (The Sample Space) |last=Albert |first=Jim |date=1998-01-21 |publisher=Bowling Green State University |accessdate=2013-06-25}}</ref>。[[確率空間]]を定義する上で最初に必要な定義である。

標本空間はふつう {{mvar|Ω}} で表す。全事象という意味では {{mvar|U}}（'''U'''niverse の頭文字）で表すことも多い。

標本空間の元を{{Visible anchor|'''標本点'''}}ともいう。標本空間の大きさ（元の個数）が有限で特に[[等確率空間]]の場合、確率は標本空間の全ての部分集合に対して[[ピエール＝シモン・ラプラス|ラプラス]]の[[確率の古典的な定義|古典的確率（数学的確率）]]で定義される。{{see also|結果 (確率論)}}

標本空間の大きさが無限だと非等確率空間になり、[[可算集合|可算]]個であるか否かにより可算型と連続型に分けられる。

[[アンドレイ・コルモゴロフ]]は『確率論の基礎概念』（[[1933年]]）<ref>{{Cite book|和書 |author=アンドレイ・コルモゴロフ|authorlink=アンドレイ・コルモゴロフ |translator=[[坂本實 (情報学者)|坂本實]] |date=2010-07-07 |title=確率論の基礎概念 |series=ちくま学芸文庫 ［Math ＆ science］|publisher=筑摩書房 |isbn=978-4-480-09303-5 |url=http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480093035/ |ref=harv}}</ref>で'''[[確率の公理|公理的確率論]]'''を提唱した。これにより確率を非等確率空間に対しても定義できるようになり、'''[[確率測度]]'''の概念が導入されるようになった。

[[コルモゴロフの拡張定理]]より、可算回の反復試行へも確率が拡張できるための必要十分条件は、確率測度が'''[[完全加法的集合関数|完全加法性]]'''を満たすことである。

[[測度論]]により、標本空間の部分集合で確率をもつものには[[可測集合|可測]]であることが必要になる。標本空間の部分集合のうち確率をもつものを'''[[事象 (確率論)|事象]]'''、事象空間をふつう <math>\mathcal{F} \subset 2^{\Omega}</math> で表す。<math>\mathcal{F}</math> は {{mvar|Ω}} の[[完全加法族]]である。

これ以上分解できない事象を'''根元事象'''または'''単純事象''' (elementary event / simple event) という。注意したいのは、根元事象は標本空間の[[単元集合|1点を表す集合]]であり、元ではない。1点を表す集合か元であるかはそれぞれ「根元事象」「標本点」で区別される（例えば、[[サイコロ]]を振ったとき、根元事象は {{math2|{1{{)}}, …, {6{{)}}}}）

標本空間が[[非可算集合]]の場合、[[ほとんど (数学)#ほとんど全ての|ほとんど全ての]]'''[[確率変数]]'''値の確率は {{math|0}} になり、'''[[確率質量関数]]'''で'''[[確率分布]]'''を表せない。'''[[累積分布関数]]'''が[[絶対連続]]の場合、確率は'''[[確率密度関数]]'''により表される：
:<math>\Pr [a \le X \le b] = \int_a^b f_X (x) \, dx</math>

[[標本調査]]において、[[母集団]]から任意抽出された元の集合を「[[標本 (統計学)|標本]]」と言うが、それと「標本空間」は意味が異なる。[[母集団]]から抽出した[[標本 (統計学)|標本]]という意味では {{mvar|S}}（'''S'''ample の頭文字）で表すことも多い。

== 確率の定義 ==
'''[[確率]]'''は、標本空間の大きさがどれだけかにより定義の仕方が異なる。

=== 標本空間が有限集合 ===<!--
[[画像:Coin tossing.JPG|thumb|コインを投げた時に、表が出る確率と裏が出る確率は同様に確からしいといえる]]
[[画像:Brass thumbtack.jpg|thumb|120px|画鋲を投げたときに、針が上向きになるか下向きになるかの確率は同様に確からしいとはいえない]]-->
根元事象の確率がどれも等しい'''[[等確率空間]]'''か否かに分けられる。前者の場合、根元事象は「'''同様に確からしい'''」(equally likely) と言い、[[ピエール＝シモン・ラプラス|ラプラス]]の'''[[確率の古典的な定義|古典的確率]]'''（'''数学的確率'''、'''理論的確率'''）で定義される<ref name="yates">{{Cite book |last=Yates |first=Daniel S. |last2=Moore |first2=David S |last3=Starnes |first3=Daren S. |year=2003 |title=The Practice of Statistics |edition=2nd |publisher=[[W. H. Freeman and Company|Freeman]] |location=New York |url=http://bcs.whfreeman.com/yates2e/ |isbn=978-0-7167-4773-4}}</ref>{{rp|346–347}}：
: {{math|''P''(事象) {{coloneqq}} {{sfrac|事象の大きさ|標本空間の大きさ}}}}

標本空間が有限集合の場合、試行の根元事象が「同様に確からしいか否か」は常に気にしなければいけない<ref>{{Cite book |last=Foerster |first=Paul A. |year=2006 |title=Algebra and Trigonometry: Functions and Applications, Teacher's Edition |edition=Classics |page=633 |publisher=[[Prentice Hall]] |isbn=0-13-165711-9}}</ref>。例えば、画鋲を振るという試行では、根元事象は、上を向いた、下を向いたであるが、この2つは明らかに非対称であり、[[頻度主義統計学|統計的確率]]を求めるのが最も易しいといえる（[[大数の法則]]を参照）。

逆に言えば、対称性が認められる事象たちは確率が等しい。例えば、コインの表裏、サイコロの出た目などである。コインやサイコロの歪みが無視できない場合はやはり統計的確率を求めたりすることになる。
{{See also|根元事象}}

=== 標本空間が可算集合 ===
所与の時間内での生起回数を集めたものは、標本空間が可算集合となる例である。
{{See also|ポアソン分布}}

=== 標本空間が非可算無限 ===
{{See|確率密度関数}}

== 多重標本空間 ==
多くの試行において、試行者がどのような結果に注目するかに応じて、複数の異なる標本空間が想定できる。例えば、標準的な[[トランプ]]（カードが52枚）から1枚カードを引くとき、標本空間として番号がいくつであるかを表す (1-13) を考えることもできるし、[[スート]]（クラブ・ダイヤ・ハート・スペード）が何かを表すを考えることもできる<ref name="albert" /><ref name="jones">{{cite web |url=https://people.richland.edu/james/lecture/m170/ch05-int.html |title=Stats: Introduction to Probability - Sample Spaces |last=Jones |first=James |date=1996 |publisher= Richland Community College |accessdate=November 30, 2013}}</ref>。しかし、結果をより細かく記述しようと思えば、ランクとスートの両方を特定して個々のカードが指定できるように、ランクの空間とスートの空間の[[直積集合]]として標本空間を構成すればよい（この直積空間は同様に確からしい52の結果を含む）。あるいはもっと別の標本空間を考えてもよいのであって、例えばシャッフルするときに反転するカードを考えたいならば標本空間は {{math|{{mset|正位置, 逆位置}}}} を取ればよい。

=== 単純無作為標本 ===
{{main|無作為抽出}}
[[統計学]]において、[[母集団]]の特徴を推計するために、個々の特徴に関する[[標本 (統計学)|標本]]を調べる。標本が母集団の真の特徴について偏りのない評価を表すようにするために、統計学者は[[無作為抽出|単純無作為標本]]&mdash;つまり、それに属する個々の対象が母集団に同様に確からしく含まれるような標本&mdash;を調べることをしばしば求める<ref name="yates" />{{rp|274–275}}。その結果、標本に対して選ばれた個々の対象の任意の組み合わせが、やはり同様に確からしくなる{{Efn|つまり、与えられた大きさの単純無作為標本全体のなす空間は、根元事象からなる。}}。

== 関連項目 ==
* {{ill2|母数空間|en|Parameter space}}
* [[確率空間]]

== 注釈 ==
{{notelist}}

== 参考文献 ==
{{Reflist}}

== 外部リンク ==
* {{MathWorld|urlname=SampleSpace|title=Sample Space}}
* {{SpringerEOM|urlname=Sample_space|title=Sample space|author=Prokhorov, A.V.}}
* {{ProofWiki|urlname=Definition:Sample_Space|title=Definition:Sample Space}}
* {{高校数学の美しい物語|urlname=probspace|title=確率空間の定義と具体例（サイコロ，コイン）}}

{{確率論}}
{{DEFAULTSORT:ひようほんくうかん}}
[[Category:試行 (確率論)]]
[[Category:数学に関する記事]]