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[[File:Squarecubetesseract.png|right|thumb|左から、[[正方形]]、[[立方体]]、[[正八胞体]]。正方形の境界は一次元の線分、立方体の境界は二次元の面分、正八胞体の境界は三次元の体分である。]] [[Image:Dimension levels.svg|right|thumb|一次元から四次元までの空間次元の模式図]] [[数学]]における対象(図形)の'''次元'''(じげん、{{lang-en-short|''dimension''}})は、(やや不正確だが)その対象に属する[[点 (幾何学)|点]]を特定するのに必要な座標の数の最小値として定まる。次元はその対象の内在的性質であって、その対象が「どのような空間に埋め込まれるか」ということとは無関係であることに注意すべきである。例えば、平面における[[単位円]]上の点は、平面上の点として二つの成分を持つ[[直交座標系]]によって特定することもできるけれども、[[極座標]]の偏角としての一つの座標のみによっても特定することができるので、単位円は(二次元の平面上に存在するものであるけれども)一次元の対象である。このような'''内在的'''な次取り扱いは、日常的な意味で用いられる「次元」とは異なる、数学的な意味での次元の概念を峻別するための根本的な観点である。 [[ユークリッド空間|{{math|''n''}}-次元ユークリッド空間]] {{math|'''E'''<sup>''n''</sup>}} の次元は {{math|''n''}} である。このことを別な種類の空間に対して一般化しようとするとき、「{{math|'''E'''<sup>''n''</sup>}} を {{math|''n''}}-次元たらしめるところのものはいったい何であるか」という問題に直面する。その一つの答えとして、{{math|'''E'''<sup>''n''</sup> }} における球体を固定し、それを小さい半径 {{math|ε}} の球によって被覆するとき、被覆に必要な小さい球の数のオーダーが {{math|''ε''<sup>−''n''</sup>}} であることが挙げられる。この観点からは[[ミンコフスキー次元]]あるいはより精緻な[[ハウスドルフ次元]]の概念が導かれる。しかし、先ほどの問いの別な答えとして、例えば {{math|'''E'''<sup>''n''</sup>}} における球体の境界が局所的に {{math|'''E'''<sup>''n''−1</sup>}} と見なせることを挙げれば、[[帰納次元]]の概念が導かれる。これらの次元の概念は {{math|'''E'''<sup>''n''</sup>}} 上では一致するけれども、もっと一般の空間で考えたときには異なるということが起こりうる。 [[正八胞体]](テッセラクト)は四次元図形の例である。数学と関係ない文脈では「正八胞体は四つの次元を持つ」というような「次元」の語の用例が見られるものの、数学用語としての用法では「正八胞体は次元 4 を持つ」とか「正八胞体の次元は 4 である」といったような表現になる。 [[高次元]]の概念自体は[[ルネ・デカルト]]まで遡れるかもしれないけれども、実質的な高次元幾何学が形成され始めるのは19世紀に入ってから、[[アーサー・ケイリー|ケイリー]]、[[ウィリアム・ローワン・ハミルトン|ハミルトン]]、[[ルートヴィヒ・シュレーフリ|シュレーフリ]]、[[ベルンハルト・リーマン|リーマン]]らの研究を通じてである。1854年にリーマンの ''[[Habilitationsschrift]]''、1852年にシュレーフリの ''Theorie der vielfachen Kontinuität''、1843年にハミルトンの[[四元数]]の発見、[[八元数|ケイリー数]]の構成などによって、高次元幾何学の幕は開かれた。 以下、いくつか数学的に重要な次元の定義を説明する。 == ベクトル空間の次元 == {{Main|[[次元 (ベクトル空間)]]}} [[ベクトル空間]]の次元はその空間の[[基底ベクトル]]の数(つまり、その空間の任意のベクトルを指定するのに必要な座標の数)である。この基底の[[濃度 (数学)|濃度]]としての次元の概念は、他の次元の概念と峻別する目的で、'''線型次元'''などとも呼ばれる。 == 多様体の次元 == [[連結空間|連結]]な[[位相多様体]]とは、[[局所同型|局所]]的に {{math|''n''}}-次元ユークリッド空間と[[同相]]であるような位相空間のことで、{{math|''n''}} はその多様体の次元と呼ばれる。これが任意の連結位相多様体に対する次元の一意な定義を導くことが示せる。 [[幾何学的位相幾何学]]の分野では、一次元や二次元といった比較的初等的な部分における方法論にその特徴があり、次元が {{nowrap|{{math|''n'' > 4}}}} となる'''高次元'''の場合は、考える対象に余計な自由度があることによって、むしろ単純化されてしまう。そして、{{math|''n'' = 3}} および {{math|4}} の場合がある意味で最も難しい。このような状況を示した実例として、一般化された[[ポワンカレ予想]]の各次元での解決がある(一般的な解決のために、四種の異なる証明法が用いられた)。 == 代数多様体の次元 == {{main|{{仮リンク|代数多様体の次元|en|Dimension of an algebraic variety}} }} 代数多様体の次元は様々な同値な方法で定義される。最も直感的な方法はおそらく任意の[[代数多様体の正則点|正則点]]における[[接空間]]の次元であろう。別の直感的な方法は、多様体との交叉が有限個の点(次元0)になってしまうために必要な[[超平面]]の個数として、次元を定義することである。この定義は、多様体の超平面との交叉は、超平面が多様体を含まない限り、多様体の次元から 1 下がるという事実に基づいている。 [[代数的集合]]は代数多様体の有限個の和集合であるから、その次元はその成分の次元の最大値である。それは与えられた代数的集合の部分多様体の鎖 <math>V_0\subsetneq V_1\subsetneq \ldots \subsetneq V_d</math> の最大の長さに等しい(そのような鎖の長さは "<math>\subsetneq</math>" の個数である)。 各多様体は{{仮リンク|スタック (数学)|label=代数的スタック|en|stack (mathematics)}}と考えることができ、その多様体としての次元はスタックとしての次元と一致する。しかしながら多様体と対応しないスタックもたくさん存在し、これらの中には負の次元を持つものもある。具体的には、''V'' が ''m'' 次元多様体で ''G'' が[[群作用| ''V'' に作用する]] ''n'' 次元の[[代数群]] であれば、{{仮リンク|商スタック|en|quotient stack}} [''V''/''G''] の次元は ''m'' − ''n'' である<ref>{{citation|last=Fantechi|first=Barbara|chapter=Stacks for everybody|title=European Congress of Mathematics Volume I|volume=201 |pages=349–359|series=Progr. Math.|publisher=Birkhäuser|year=2001|chapter-url=http://www.mathematik.uni-bielefeld.de/~rehmann/ECM/cdrom/3ecm/pdfs/pant3/fantechi.pdf}} </ref>。 == クルル次元 == {{main|クルル次元}} [[可換環]]のクルル次元はその[[素イデアル]]の鎖の最大の長さである。長さ ''n'' の鎖とは、包含によって並べられた素イデアルの列 <math>\mathcal{P}_0\subsetneq \mathcal{P}_1\subsetneq \ldots \subsetneq\mathcal{P}_n </math> である。クルル次元は代数多様体の次元と強く関わっている。部分多様体と多様体上の多項式の環の素イデアルの間には自然な対応があるからである。 [[体上の多元環]]に対して、[[ベクトル空間]]としての次元が有限であることとクルル次元が 0 であることは同値である。 == 被覆次元 == {{Main|ルベーグ被覆次元}} 任意の[[正規空間]] {{math|''X''}} に対し、{{math|''X''}} のルベーグ被覆次元が ''n'' であるとは、''n'' が次の条件を満足する最小の[[整数]]であることをいう。 : 任意の[[開被覆]]が、各開集合が {{math|''n'' + 1}} よりも多くの元を含まないような開細分(すなわち、各開集合がもとの被覆の開集合の部分集合として得られるような別の開被覆)を持つ。 このとき、{{math|dim ''X'' {{=}} ''n''}} と表す。{{math|''X''}} が多様体ならば、ここで定義した意味の次元と、既に述べた意味での次元は一致する。また、条件を満たすような整数 {{math|''n''}} が存在しないならば、{{math|''X''}} の次元は無限であるといい、{{math|dim ''X'' {{=}} ∞}} と書く。さらに、{{math|''X''}} が −1-次元となることもある({{math|dim ''X'' {{=}} −1}} というのは {{math|''X''}} が空集合であるという意味である)。この被覆次元の定義は、定義における「開集合」のところを「機能的開集合」{{lang|en|("'''functionally open'''")}} に単に取り替えることにより、正規空間から任意のチコノフ空間へ対象のクラスを拡張することができる。 == 帰納次元 == {{Main|帰納次元}} 次元についての帰納的定義は以下のように与えられる。まず[[孤立点|点の離散集合]](有限個の点の集まり)の次元は 0 であるものと考える。0-次元の対象をある一定の方向に引きずって、1-次元の対象を得、さらに別な方向へ 1-次元の対象を引き摺って 2-次元の対象を得る。一般に、{{math|''n''}}-次元の対象を「新たな」方向へ引き摺って ({{math|''n'' + 1}})-次元の対象を得る。 位相空間の帰納次元は、'''小さい帰納次元'''と'''大きい帰納次元'''があるが、{{nowrap|({{math|''n'' + 1}})}}-次元球体が {{math|''n''}}-次元の[[境界 (位相空間論)|境界]]を持つことのアナロジーに基づいて、開集合の境界の次元に関する帰納的定義が与えられる。. == ハウスドルフ次元 == {{Main|ハウスドルフ次元}} 複雑な構造を持つ集合、特に[[フラクタル]]に対して、[[ハウスドルフ次元]]の概念は有効である。ハウスドルフ次元は、ハメル次元が定義できないようなものも含めた任意の[[距離空間]]に対して定義することができて、その値は必ずしも整数でない実数となる<ref name="Hausdorff dimension">[http://math.bu.edu/DYSYS/chaos-game/node6.html Fractal Dimension], Boston University Department of Mathematics and Statistics</ref>。同様の考え方に、[[ボックス次元]]や[[ミンコフスキー次元]]などがある。一般に、より特異な集合に対しても整数とは限らない正の実数値を割り当てることができる[[フラクタル次元]]の概念が他にも存在する。フラクタルは多くの自然にある物体や自然現象を記述するのに有効なものとして発見された<ref>{{cite book|last=[[Shlomo Havlin|S. Havlin]]|first=A. Bunde|title=Fractals and Disordered Systems|year=1991|publisher=Springer|url=http://havlin.biu.ac.il/Shlomo%20Havlin%20books_fds.php}}</ref><ref>{{cite book|last=[[Shlomo Havlin|S. Havlin]]|first=A. Bunde|title= Fractals in Science|year=1994|publisher=Springer|url=http://havlin.biu.ac.il/Shlomo%20Havlin%20books_fds.php}}</ref>。 == ヒルベルト空間の次元 == 任意の[[ヒルベルト空間]]には[[正規直交基底]]が存在するが、特に一つの空間上の正規直交基底はどの二つも同じ[[濃度 (数学)|濃度]]を持ち、この濃度をヒルベルト空間の次元と呼ぶ。この意味でのヒルベルト空間の次元が有限であることは、この空間における線型次元が有限であることと同値であり、この場合は両次元の概念は一致する。 == 関連項目 == * [[自由度]] * [[フラクタル次元]] == 参考文献 == {{Reflist}} {{DEFAULTSORT:しけん}} [[Category:次元|*]] [[Category:次元論|*]] [[Category:数学に関する記事]]
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