正多角形のソースを表示

<div>[[画像:正多角形.svg|395px|thumb|正多角形の一覧。（左上から）[[正三角形]]、正四角形（[[正方形]]）、[[正五角形]]、[[正六角形]]、[[正七角形]]、…]]</div>
'''正多角形'''（せいたかっけい、せいたかくけい、{{lang-en-short|regular [[倍数接頭辞|poly]]<nowiki/>gon}}）とは、全ての[[辺]]の長さが等しく、全ての[[角度#図形との関係による分類|内角]]の大きさが等しい[[多角形]]である。なお、この記事では断りのない限り {{mvar|n}} は3以上の[[自然数]]とする。

正多角形は[[線対称]]であり、正{{mvar|n}}角形の対称軸は {{mvar|n}}本である。また、正偶数角形は[[点対称]]でもある。

頂点の数が同じ正多角形同士は全て互いに[[図形の相似|相似]]である。

== ユークリッド幾何学 ==
{{main|ユークリッド幾何学}}
[[画像:Apothem of hexagon.svg|class=skin-invert-image|thumb|緑色の線分は、正{{mvar|n}}角形を合同な二等辺三角形に{{mvar|n}}等分したときの高さ]]
正多角形の全ての[[頂点]]は同一円周上にある。つまり正多角形は円に[[内接と外接|内接]]する。角の数が最小であるのは[[正三角形]]である。[[三角形]]では、辺の長さが全て等しいか、または角の大きさが全て等しい三角形は正三角形になる。しかし他の多角形では辺の長さが全て等しく、かつ角の大きさも全て等しくなければ正多角形とはならない。例えば[[四角形]]では辺の長さがすべて等しいものは[[菱形]]、角の大きさがすべて等しいものは[[長方形]]であり、正四角形（[[正方形]]）とは限らない。菱形かつ長方形である四角形が正方形となる。

正{{mvar|n}}角形の一つの内角の大きさを[[度数法]]で表すと
:<math>\frac{180^{\circ}(n-2)}{n}</math>
である。どの内角も180°より小さいので、全ての正多角形は[[凸多角形]]である。

正{{mvar|n}}角形の[[面積]]は一辺を {{mvar|a}} とすると
:<math>{na^2\over4}\cot{\pi\over{n}}</math>
と表される。この式は、正{{mvar|n}}角形の外心と各頂点を線分で結ぶと、合同な {{mvar|n}}個の二等辺三角形に分割できることで導出される。（二等辺三角形の高さが <math>{a\over2}\cot{\pi\over{n}}</math> となる。）

多角形 {{mvar|F}} に対して、頂点が {{mvar|F}} の辺上にあり、なおかつ {{mvar|F}} の内部にあるとき、多角形は多角形 {{mvar|F}} に内接するという。また、{{mvar|F}} の頂点が辺上にあり、Fの外部にある多角形は多角形 {{mvar|F}} に外接するという。
:（例）：正六角形ABCDEFにおいて、辺AB,CD,EFの中点を頂点とする△PQRは正六角形ABCDEFに内接する図形である。
以上のことを踏まえた上で、一辺の長さが {{mvar|a}} である正{{mvar|n}}角形 {{mvar|F}} において、'''{{mvar|F}} に内接する正{{mvar|n}}角形で、面積が最小であるものの面積 {{mvar|s}}、{{mvar|F}} に外接する正{{mvar|n}}角形で、面積が最大であるものの面積 {{mvar|S}}''' はそれぞれ、
:<math>s={na^2\over4}\cot{\pi\over{n}}\cos^2{\pi\over{n}}</math>
:<math>S={na^2\over2\sin{2\pi\over{n}}}</math>
と表される{{疑問点|date=2011年3月}}。

正多角形の[[重心]]は、[[外接円|外心]]および[[内接円|内心]]に一致する。正偶数角形に限れば、最長の[[対角線]]同士の[[交点]]と一致する。

半径が一定の円に内接する正{{mvar|n}}角形は、{{math2|''n'' → ∞}} とするとその[[円 (数学)|円]]に近づくので、十分大きい {{mvar|n}} について「[[周長]]÷[[外接円]]の[[直径]]」を計算すると[[円周率]]の[[近似値]]が得られる。これは、初期の円周率の求め方で、[[円周率の歴史]]上の始まりに位置する。これはいわば「''正∞角形は円である''」ということである。

正多角形は[[線対称]]である。その軸の本数は頂点の個数に等しい。
*正{{math|2''n''}}角形（{{mvar|n}} は2以上の自然数）の {{mvar|n}}組の対辺はそれぞれ平行である。さらに[[点対称]]でもある。
*正奇数角形においては、どの2辺も平行でない。

=== 内角の求め方 ===
正{{mvar|n}}角形の[[角度#図形との関係による分類|内角]]は、次のようにして求めることができる。

{{mvar|n}}角形の内角の[[和]]は
:{{math2|180°(''n'' &minus; 2)}}
であり、正多角形の内角は等しいから、1つの内角は
:<math>\frac{180^{\circ}(n-2)}{n}</math>
となる。

多角形の外角の和は360°であることを用いると、正{{mvar|n}}角形の外角は
:<math>\frac{360^{\circ}}{n}</math>
であるから、それに対する内角は
:<math>180^{\circ} - \frac{360^{\circ}}{n} \Bigl( {=} \; \frac{180^{\circ}(n-2)}{n} \Bigr)</math>
となる。

=== 対角線の長さ ===
正{{mvar|n}}角形の[[対角線]]の長さの種類は
:<math>\left\lfloor \frac{n}{2} \right\rfloor -1 = \frac{2n-5+(-1)^n}{4}</math>
だけある（{{math2|&lfloor;''x''&rfloor;}} は[[床関数と天井関数|ガウス記号]]）。一辺の長さを {{mvar|a}} とすると、{{mvar|m}}番目に短い対角線の長さは
: <math>{a \sin{(m+1)\pi\over{n}}\over{\sin{\pi\over{n}}}}</math>
である。{{math2|1=''m'' = 0}} のとき辺の長さ、{{math2|1=''m'' = 1}} のとき最短の対角線の長さを表す。

=== コンパスと定規を用いて描けるもの ===
{{main|定規とコンパスによる作図}}
{{mvar|p}} を[[素数]]とする。正{{mvar|p}}角形のうち、作図可能なものは、頂点の個数 {{mvar|p}} が[[フェルマー数#フェルマー素数|フェルマー素数]] (3, 5, 17, 257, 65537) である場合のみであり、それぞれ[[正三角形]]、正[[五角形]]、正[[十七角形]]、正[[二百五十七角形]]、正[[六万五千五百三十七角形]]である。頂点の個数が素数でないものについては、その数を[[素因数分解]]した時に[[奇数]]の[[約数|因数]]がフェルマー素数のみでかつ、同じものが存在しない場合、または奇数の因数が存在しない（[[2の冪]]）場合のみ作図することが可能である。
:例：[[正方形]]は、奇数の因数がないので (4=2×2) 作図することができる。正[[六角形]]や正[[十五角形]]は、奇数の因数がフェルマー素数のみなので (6=2×3, 15=3×5) 作図することができる。正[[九角形]]は、奇数の因数はフェルマー素数のみだが同じ数の重複があるので (9=3×3) 作図できない。

正十七角形の作図可能性は、[[1796年]]3月30日に[[カール・フリードリヒ・ガウス]]が発見した。さらにガウスは1801年に出版した''[[Disquisitiones Arithmeticae]]''（『ガウス整数論』）の第365条、第366条において、作図できる正多角形の必要十分条件も示している。

=== 作図可能性の比較 ===
正多角形（正四十角形まで）が作図可能かどうかを以下に示す。なお、○は作図可能、×は作図不可能を示す。
{|class="wikitable mw-collapsible" style="text-align:center"
!正多角形!![[定規とコンパスによる作図]]!![[折紙の数学|折紙]]による作図!![[ネウシス作図]]<br />(Neusis)!!備考
|-
|[[正三角形]]||○||○||○||
|-
|[[正方形]]||○||○||○||
|-
|[[正五角形]]||○||○||○||
|-
|[[正六角形]]||○||○||○||
|-
|[[正七角形]]||×||○||○||style="text-align:left"|[[ピアポント素数]]も参照のこと。
|-
|[[正八角形]]||○||○||○||
|-
|[[正九角形]]||×||○||○||
|-
|[[正十角形]]||○||○||○||
|-
|[[正十一角形]]||×||×||×→○<ref name="#1">[https://www.cambridge.org/core/journals/mathematical-proceedings-of-the-cambridge-philosophical-society/article/on-the-construction-of-the-regular-hendecagon-by-marked-ruler-and-compass/8B44482138A7709BD9F1093965D7E42B On the construction of the regular hendecagon by marked ruler and compass]</ref>||style="text-align:left" |折り紙は1回ずつ折る方法だが、3重折りを許せば折り紙で作図可能<ref>{{Cite journal|和書 |author=西村保三、山本一海 |title=折り紙による5次方程式の解法 : 3重折りによる5乗根,角の5等分,正11角形の作図 |journal=福井大学教育地域科学部紀要 |issn=2185-369X |publisher=福井大学教育地域科学部 |year=2012 |issue=3 |pages=59-66 |naid=110009552129 |url=https://hdl.handle.net/10098/7298}}</ref>。2重折りで作図可能<ref>{{Cite journal |last=Lucero |first=J. C.|year=2018 |title=Construction of a regular hendecagon by two-fold origami|url=https://cms.math.ca/crux/v44/n5/ |journal=Crux Mathematicorum|volume=44 |pages=207-213}}</ref>。
|-
|[[正十二角形]]||○||○||○||
|-
|[[正十三角形]]||×||○||○||
|-
|[[正十四角形]]||×||○||○||
|-
|[[正十五角形]]||○||○||○||
|-
|[[正十六角形]]||○||○||○||
|-
|[[正十七角形]]||○||○||○||style="text-align:left"|[[フェルマー素数]]も参照のこと。
|-
|[[正十八角形]]||×||○||○||
|-
|[[正十九角形]]||×||○||○||
|-
|[[正二十角形]]||○||○||○||
|-
|[[正二十一角形]]||×||○||○||
|-
|[[正二十二角形]]||×||×||×→○<ref name="#1"/>||
|-
|[[正二十三角形]]||×||×||×||
|-
|{{nowrap|[[正二十四角形]]}}||○||○||○||
|-
|[[正二十五角形]]||×||×||未解決問題||
|-
|[[正二十六角形]]||×||○||○||
|-
|[[正二十七角形]]||×||○||○||
|-
|[[正二十八角形]]||×||○||○||
|-
|[[正二十九角形]]||×||×||×||
|-
|[[正三十角形]]||○||○||○||
|-
|[[正三十一角形]]||×||×||未解決問題||
|-
|[[正三十二角形]]||○||○||○||
|-
|[[正三十三角形]]||×||×||×→○||
|-
|[[正三十四角形]]||○||○||○||
|-
|[[正三十五角形]]||×||○||○||
|-
|[[正三十六角形]]||×||○||○||
|-
|[[正三十七角形]]||×||○||○||
|-
|[[正三十八角形]]||×||○||○||
|-
|[[正三十九角形]]||×||○||○||
|-
|[[正四十角形]]||○||○||○||
|}
正''p''角形（''p'' は3以上の素数）、正(2''n'' + 1)角形の作図に必要な値 cos({{sfrac|2{{π}}|2n+1}}) は、''n''次方程式の解として求められる<ref>{{Youtube|0El57qRGlOs|折り紙で正十三角形が作図できて正十一角形が作図できない理由【数学 解説 / #豊穣ミノリ / VTuber】}}</ref>。
{|class="wikitable" style="text-align:center"
!n!!2n+1!!方程式の次数!!方程式の次数（素因数分解）!!style="width:10em"|定規とコンパス<br />作図!!style="width:10em"|折り紙<br />作図
|-
|1||正3角形||1次方程式||1次方程式||○||○
|-
|2||正5角形||2次方程式||2次方程式||○||○
|-
|3||正7角形||3次方程式||3次方程式||×||○
|-
|5||正11角形||5次方程式||5次方程式||×||×
|-
|6||正13角形||6次方程式||(2×3)次方程式||×||○
|-
|8||正17角形||8次方程式||(2×2×2)次方程式||○||○
|}

== 楕円幾何学 ==
{{正確性|section=1|date=2012-06}}
{{main|楕円幾何学}}
最も角が少ないのは[[正二角形]]である。[[二角形]]は必ず正二角形になる。

この幾何学上の正三角形は、内角の和は180°より大きく、ユークリッド幾何学上の[[ルーローの三角形]]と同じ図形である。

== 双曲幾何学 ==
{{正確性|section=1|date=2012-06}}
{{main|双曲幾何学}}
最も角が少ないのは正三角形であり、内角の和は180°より小さい。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
{{ウィキプロジェクトリンク|数学|[[画像:Nuvola apps edu mathematics blue-p.svg|34px|Project:数学]]}}
{{ウィキポータルリンク|数学|[[画像:Nuvola apps edu mathematics-p.svg|34px|Portal:数学]]}}
* [[星型正多角形]]
* [[正多面体]]
* [[正多胞体]]
* [[多角数]]
* [[円分多項式]]
* [[1の冪根]]
* [[オイラーのφ関数]]
* [[ピアポント素数]]
* {{仮リンク|ガウス周期|en|Gaussian period}}

{{Polytopes}}

{{DEFAULTSORT:せいたかつけい}}
[[Category:多角形]]
[[Category:初等数学]]
[[Category:幾何学]]
[[Category:回転対称性]]
[[Category:数学に関する記事]]