正弦定理のソースを表示

{{出典の明記|date=2018年2月}}
{{Expand English|Law of sines|date=2024年5月}}
{{Trigonometry}}
'''正弦定理'''（せいげんていり、[[英語|英]]:''law of sines''）とは三角形の内角の[[正弦]]（サイン）とその対辺の長さの関係を示したものである。'''正弦法則'''ともいう。多くの場合、平面[[三角法]]における定理を指すが、球面三角法などでも類似の定理が知られており、同じように正弦定理と呼ばれている。

== 概要 ==
△ABC において、BC = ''{{math|a}}'', CA = ''{{math|b}}'', AB = ''{{math|c}}'', 外接円の[[半径]]を ''{{math|R}}'' とすると、
:<math>\frac{a}{\sin A} =\frac{b}{\sin B} =\frac{c}{\sin C} =2R</math>
が成り立つという定理である。正弦定理は、二つの角と一辺が既知である場合に、三角形の残りの辺を求めるために利用される。この手法は、[[三角測量]]として知られている。また二つの辺と、これらに挟まれない一角が既知である場合にも適用可能である。ただし、この条件では三角形が一意に定まらない場合があり、この場合、挟まれた角に対して二つの異なる値が得られることがある。

また、正弦定理は、一定の曲率をもつ曲面上において高次元へと一般化することが可能である<ref>{{Cite web|url=http://mathworld.wolfram.com/GeneralizedLawofSines.html|website=mathworld|title=Generalized law of sines|accessdate=2025-03-16}}</ref>。

== 証明 ==
以下の証明では[[角度]]は[[ラジアン|弧度法]]で表している。なお {{π}} = 180°である。
=== 0 < ''A'' < {{sfrac|{{π}}|2}} のとき ===

<div style="float:right;margin:0 0 1em 1em">[[画像:Law of sines 1.png|class=skin-invert-image]]</div>
直径 BD を取る。

[[円周角]]の定理より ''A'' = ''D'' である。

△BDC において、BD は直径だから、
:<math>\text{BD} =2R, \angle \text{BCD} = \frac{\pi}{2}</math>
である。よって、正弦の定義より、
:<math>\sin D= \frac{a}{2R}</math>
である。ゆえに
:<math>\sin A=\sin D=\frac{a}{2R}</math>
変形すると
:<math>\frac{a}{\sin A} =2R</math>
が得られる。''B'', ''C'' についても同様に示される。

=== ''A'' = {{sfrac|{{π}}|2}} のとき ===
<div style="float:right;margin:0 0 1em 1em">[[画像:Law of sines 2.png|class=skin-invert-image]]</div>
BC = ''a'' = 2''R'' であり、
:<math>\sin A=\sin \frac{\pi}{2} =1</math>
であるから、
:<math>\frac{a}{\sin A} =2R</math>
は成り立つ。

=== {{sfrac|{{π}}|2}} < ''A'' < {{π}} のとき ===
<div style="float:right;margin:0 0 1em 1em">[[画像:Law of sines 3.png|class=skin-invert-image]]</div>
直径 BD を取る。

円に内接する四角形の性質から、
:<math> D = \pi - A </math>
である。つまり、
:<math>\sin A=\sin D</math>
となる。
BD は直径だから、
:<math>\text{BD} =2R, \angle \text{BCD} =\frac{\pi}{2}</math>
である。よって、正弦の定義より、
:<math>\sin A=\sin D= \frac{a}{2R}</math>
である。変形すると
:<math>\frac{a}{\sin A} = 2R</math>
が得られる。''B'', ''C'' についても同様に示される。

以上より正弦定理が成り立つ。

また、逆に正弦定理を仮定すると、「円周角の定理」、「内接四角形の定理」（円に内接する四角形の対角の和は 180°であるという定理）を導くことができる。

== 球面三角法における正弦定理 ==
球面上の三角形 ABC において、弧 BC, CA, AB の長さを球の半径で割ったものをそれぞれ ''a'', ''b'', ''c'' とすると、
:<math>\frac{\sin a}{\sin A} =\frac{\sin b}{\sin B} =\frac{\sin c}{\sin C}</math>
が成り立つ。これを[[球面三角法]]における'''正弦定理'''と呼ぶ。

== 歴史 ==
正弦定理と同等の法則として、「三角形の辺の長さは、その対角の二倍の[[弦 (数学)|弦]]に比例する」という関係が知られており、この法則は2世紀のヘレニズム時代の天文学者[[クラウディオス・プトレマイオス|プトレマイオス]]によって認識され、[[アルマゲスト]]の中で時折使用されている<ref>{{cite book |editor-last=Toomer |editor-first=Gerald J. |title=Ptolemy's Almagest |publisher=Princeton University Press |year=1998 |pages=[https://archive.org/details/ptolemys-almagest-toomer/page/7/mode/1up 7, fn. 10]; [https://archive.org/details/ptolemys-almagest-toomer/page/462/mode/1up 462, fn. 96] }}</ref>。

7世紀のインドの数学者[[ブラフマグプタ]]の天文学および三角法に関する著作にも、正弦定理に関連する記述が見られる。彼の著書[[ブラーマ・スプタ・シッダーンタ]]において、三角形の外接円の半径を、[[底辺]]でない2辺の積を[[頂垂線 (三角形)|高さ]]の2倍で割ったものとして表現している。正弦定理は、この高さをそれぞれの底角の正弦と、対辺でも底辺でもない辺の積として表現し、両者を等式として扱うことで導出できる<ref>{{cite book|last=Winter |first=Henry James Jacques |title=Eastern Science |publisher=[[マレー (出版社)|John Murray]] |year=1952 |page=46 |url=https://archive.org/details/easternscienceou0000wint/page/46/}} {{pb}} {{cite book|last=Colebrooke |first=Henry Thomas |title=Algebra, with Arithmetic and Mensuration from the Sanscrit of Brahmegupta and Bhascara |location=London |publisher=[[マレー (出版社)|John Murray]] |year=1817 |pages=299–300 |url=https://archive.org/details/algebrawitharith00brahuoft/page/298/mode/2up}}</ref>。また、より現代の正弦定理に近い形の式は、ブラフマグプタの[[カンダカディヤカ]]にも見られ、そこでは[[従円と周転円|周転円]]に基づいて地球と惑星との距離を求める方法として用いられている。しかし、ブラフマグプタ自身は正弦定理を独立した定理として扱ったり、体系的に三角形の解法に用いたりはしなかった<ref>{{cite book |last=Van Brummelen |first=Glen |year=2009 |title=The Mathematics of the Heavens and the Earth |publisher=Princeton University Press |pages=109–111 |isbn=978-0-691-12973-0 }} {{pb}} {{cite book |last=Brahmagupta |title=The Khandakhadyaka: An Astronomical Treatise of Brahmagupta |translator=Sengupta |translator-first=Prabodh Chandra |year=1934 |publisher=University of Calcutta }}</ref>。

== 関連項目 ==
{{ウィキポータルリンク|数学}}
*[[三角関数]]
*[[余弦定理]]
*[[正接定理]]
*[[余接定理]]

== 外部リンク ==
*{{Kotobank|正弦定理|2=世界大百科事典 第2版}}
*{{高校数学の美しい物語|648|正弦定理の意味と6通りの証明・頻出の応用例}}
*{{MathWorld|title=Law of Sines|id=LawofSines}}
*{{MathWorld|title=Generalized Law of Sines|id=GeneralizedLawofSines|author=[[:en:Robert A. Russell|Russell, Robert A.]]}}

{{Geometry-stub}}

{{DEFAULTSORT:せいけんていり}}
[[Category:三角法]]
[[Category:三角形に関する定理]]
[[Category:数学に関する記事]]
[[Category:証明を含む記事]]