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{{簡易区別|正規部分群は不変部分群と呼ばれることもありますが、{{仮リンク|完全不変部分群|en|fully invariant subgroup}}(完全特性部分群)}} {{No footnotes|date=2018-02-11}} {{Groups}} [[数学]]、とくに[[抽象代数学]]における'''正規部分群'''(せいきぶぶんぐん、{{lang-en-short|''normal subgroup''}})は、群の任意の元による[[内部自己同型]]のもとで不変な部分群である。正規部分群は、与えられた[[群 (数学)|群]]から[[剰余群]]を構成するのに用いることができる。 正規部分群の重要性を最初に明らかにしたのは[[エヴァリスト・ガロア]]である。 == 定義 == 群 {{math|''G''}} の[[部分群]] {{math|''N''}} が'''正規部分群'''であるとは、[[内部自己同型|共役変換]]によって不変、すなわち {{math|''N''}} の任意の元 {{math|''n''}} と {{math|''G''}} の任意の元 {{math|''g''}} に対して、元 {{math|''gng''<sup>−1</sup>}} が再び {{math|''N''}} に属するときにいう。これを :<math>N \trianglelefteq G \quad(\iff \forall n\in{N},\,\forall g\in{G},\, gng^{-1}\in{N})</math> で表す。任意の部分群について、以下の条件はどれも上記の正規性の条件と[[同値]]である。このため、これらの条件のどれかを正規部分群の定義にしてもよい。 * {{math|''G''}} の任意の元 {{math|''g''}} に対して {{math|''gNg''<sup>−1</sup> ⊆ ''N''}} が成り立つ。 * {{math|''G''}} の任意の元 {{math|''g''}} に対して {{math|''gNg''<sup>−1</sup> {{=}} ''N''}} が成り立つ。 * {{math|''G''}} における {{math|''N''}} を法とする左[[剰余類]]全体の成す集合と右剰余類全体の成す集合とが一致する。 * {{math|''G''}} の任意の元 {{math|''g''}} に対して {{math|''gN'' {{=}} ''Ng''}} が成立する。 * {{math|''N''}} は {{math|''G''}} の[[共役類]]の[[合併 (集合論)|和集合]]である。 * {{math|''G''}} 上定義された[[群準同型]]で {{math|''N''}} をその[[核 (代数学)|核]]に持つものが存在する。 最後の条件は正規部分群の重要性の一端を示すもので、ある群の上で定義される準同型[[写像]]全体を内部的に分類する方法を与えている。たとえば、[[単位群]]でない[[有限群]]が[[単純群|単純]](自分と単位群以外には正規部分群を持たない群)となるための必要十分条件はその群が自明(全ての元を単位元に写す準同型)でない任意の[[自己準同型]]の[[像 (数学)|像]]と同型となることであり、有限群が[[完全群]]となるための必要十分条件はそれが素数[[指数 (群論)|指数]]の正規部分群を持たないことであり、また群が不完全群となるための必要十分条件は、その[[導来部分群]]がいかなる真の正規部分群をも[[補群]]として持たないことである。 == 例 == * 単位元のみからなる群 {{math|{''e''}}} と、群 {{math|''G''}} それ自身は、常に {{math|''G''}} の正規部分群となる。{{math|{''e''}}} を特に「自明な部分群」と言う。群 {{math|''G''}} は、自明な部分群と自身以外に正規部分群を持たないとき、[[単純群]]であると言う。 * [[群の中心]]は正規部分群になる。 * [[交換子部分群]]は正規部分群になる。 * より一般的に、[[特性部分群]]は正規部分群である。共役写像は自己同型であるためである。 * [[アーベル群]] {{math|''G''}} の任意の部分群 {{math|''N''}} は正規部分群になる。式 {{math|''gN'' {{=}} ''Ng''}} が常に成立するためである。一方、非アーベル群だが、任意の部分群が正規部分群である群が存在し、{{仮リンク|ハミルトン群|en|Hamiltonian group}}という。 * 任意次元の[[平行移動|並進群]](平行移動の集合のなす群)は、[[ユークリッドの運動群|ユークリッド群]](平行移動、回転、鏡像などのなす群)の正規部分群である。たとえば、「三次元の回転、平行移動、逆方向への回転」の結果は、単なる平行移動と見なせる。「鏡映、平行移動、反対への鏡映」も、単なる平行移動になる。 * {{仮リンク|ルービックキューブ群|en|Rubik's Cube group}}においては、角のピースのみを変更する操作の群が正規部分群となる。 == 性質 == * 部分群の正規性は、[[全射]][[準同型]]で保たれる。また、[[逆像]]をとる操作によっても保たれる。 * 正規性は[[群の直積]]をとる操作によっても保存される。 * 正規部分群の正規部分群は、もとの群の正規部分群であるとは限らない。すなわち、正規性は[[推移関係|推移的]]ではない。しかしながら、正規部分群の[[特性部分群]]はもとの群の正規部分群である。また[[中心因子]]の正規部分群はもとの群においても正規であり、特に[[直積因子]]の正規部分群は下の群でも正規部分群となる。 * [[部分群の指数]] が{{math|2}} である任意の部分群は正規部分群である。一般に、有限指数 {{math|''n''}} をもつ {{math|''G''}} の部分群 {{math|''H''}} は、その[[正規核]]と呼ばれる、{{math|''G''}} における指数が {{math|''n''!}} を割り切るような {{math|''G''}} の正規部分群 {{math|''K''}} を含む。特に、{{math|''p''}} が {{math|''G''}} の位数を割り切る最小の素数である場合、指数 {{math|''p''}} の任意の部分群は正規部分群である。 === 正規部分群の束 === 群 {{math|''G''}} の正規部分群全体の成す集合は、集合の[[包含関係]]に関して {{math|{''e''}}} を最小元、{{math|''G''}} を最大元として持つ[[束 (束論)|束]]を成す。{{math|''G''}} の正規部分群 {{math|''N''}} と {{math|''M''}} が与えられたとき、{{math|''N''}} と {{math|''M''}} の「交わり」が :<math>N \wedge M := N \cap M</math> で定義され、「結び」が :<math>N \vee M := N M = \{nm \mid n \in N \,, m \in M\}</math> で定義される。この束は[[完備束|完備]]かつ[[束 (束論)#モジュラー性|モジュラー]]である。 == 正規部分群と準同型 == {{math|''N''}} が {{math|''G''}} の正規部分群ならば、剰余類の間の乗法を : {{math|(''a''<sub>1</sub>''N'')(''a''<sub>2</sub>''N'') :{{=}} (''a''<sub>1</sub>''a''<sub>2</sub>)''N''}} によって定義することができる。これにより、剰余類の全体を[[剰余群]] {{math|''G''/''N''}} とよばれる群とすることができる。群 {{math|''G''}} と剰余群 {{math|''G''/''N''}} との間には、{{math|π(''a'') :{{=}} ''aN''}} で定義される(射影、あるいは商写像と呼ばれる)自然な全射準同型 {{math|π: ''G'' → ''G''/''N''}} が存在する。自然な[[群準同型|準同型]] {{math|π}} による {{math|''N''}} の像 {{math|π(''N'')}} は、{{math|''G/N''}} の単位元である剰余類 {{math|''eN'' {{=}} ''N''}} のみを含む[[一元集合]] {''N''} である。 一般に、準同型 {{math|''f'': ''G'' → ''H''}} は {{math|''G''}} の部分群を {{math|''H''}} の部分群に写す。また、{{math|''H''}} の任意の部分群の[[原像]](逆像)は {{math|''G''}} の部分群となる。{{math|''H''}} の自明な部分群 {{math|{''e''}}} の準同型 {{math|''f''}} による逆像 {{math|''f''<sup>−1</sup>({''e''})}} を、準同型 {{math|''f''}} の[[核 (代数学)|核]]と言い、記号 {{math|ker(''f'')}} で表す。さらに、核はつねに正規部分群であり、{{math|''G''}} の[[像 (数学)|像]] {{math|''f''(''G'')}} と、商群 {{math|''G''/ker(''f'')}} はつねに[[同型]]である([[第一同型定理]]を参照)。実は、この同型対応は {{math|''G''}} の剰余群全体の成す集合と {{math|''G''}} の準同型像の同型類全体の成す集合との間の全単射を与えている。これと、商写像 {{math|''f'': ''G'' → ''G''/''N''}} の核が {{math|''N''}} それ自身であることはすぐにわかるから、まとめると {{math|''G''}} の正規部分群はすべて {{math|''G''}} を定義域とするなんらかの群準同型の核として得られることが示せる。 == 関連項目 == {{multicol}} === 部分群から正規部分群を作る操作 === * [[正規化群]] * {{仮リンク|共役閉包|en|Conjugate closure}} * [[正規核]] === 正規性の逆の性質をもつ部分群 === * {{仮リンク|不完全正規部分群|en|malnormal subgroup}} * {{仮リンク|反正規部分群|en|contranormal subgroup}} * {{仮リンク|不正規部分群|en|abnormal subgroup}} * [[中心化群と正規化群#性質|自己正規化部分群]] === 正規性よりも強い制約で決まる部分群 === * [[特性部分群]] * {{仮リンク|完全特性部分群|en|fully characteristic subgroup}} {{multicol-break}} === 正規性よりも弱い条件で決まる部分群 === * {{仮リンク|連正規部分群|en|subnormal subgroup}} * {{仮リンク|上昇部分群|en|ascendant subgroup}} * {{仮リンク|下降部分群|en|descendant subgroup}} * {{仮リンク|準正規部分群|en|quasinormal subgroup}} * {{仮リンク|半正規部分群|en|seminormal subgroup}} * {{仮リンク|共役可置換部分群|en|conjugate permutable subgroup}} * {{仮リンク|モジュラー部分群|en|modular subgroup}} * {{仮リンク|射正規部分群|en|pronormal subgroup}} * {{仮リンク|パラ正規部分群|en|paranormal subgroup}} * {{仮リンク|多重正規部分群|en|polynormal subgroup}} * {{仮リンク|c正規部分群|en|c normal subgroup}} === 環論における類似概念 === * [[イデアル (環論)|イデアル]] {{multicol-end}} == 参考文献 == * [[I. N. Herstein]], ''Topics in algebra.'' Second edition. Xerox College Publishing, Lexington, Mass.-Toronto, Ont., 1975. xi+388 pp. * David S. Dummit; Richard M. Foote, ''Abstract algebra.'' Prentice Hall, Inc., Englewood Cliffs, NJ, 1991. pp. xiv, 658 ISBN 0-13-004771-6 == 外部リンク == * {{MathWorld|urlname=NormalSubgroup|title= normal subgroup}} * [http://eom.springer.de/N/n067690.htm Normal subgroup in Springer's Encyclopedia of Mathematics] * [http://www.math.uiuc.edu/~r-ash/Algebra/Chapter1.pdf Robert Ash: Group Fundamentals in ''Abstract Algebra. The Basic Graduate Year''] * [https://math.ucr.edu/home/baez/normal.html John Baez, What's a Normal Subgroup?] {{デフォルトソート:せいきふふんくん}} [[Category:群論]] [[Category:部分群の性質]] [[Category:数学に関する記事]]
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