歯車のソースを表示

{{Redirect|ギア}}
{{Otheruses|機械要素の歯車|[[芥川龍之介]]の小説作品|歯車 (小説)}}
{{出典の明記|date=2011-07}}
[[File:Gears large.jpg|thumb|歯車]]
[[File:Involute wheel.gif|thumb|インボリュート歯車による力の伝達]]
'''歯車'''（はぐるま、{{Lang-en-short|gear}}）とは、伝動車の周囲に歯形を付けて確実な[[動力]]伝達を可能にした[[機械要素]]である<ref name="大西1997pp11-2">[[#大西1997|大西1997 pp11-2]]</ref>。[[英語]]では「gear」で、[[日本語]]では'''ギア'''、'''ギアー'''と表記されることもあるが、[[日本産業規格|JIS]]での表記は'''ギヤ'''である。減速や増速、[[回転軸]]の向きや[[回転]]方向を変えたり、動力の分割などに用いる。

== 概要 ==
[[File:Epicyclic gear small.png|thumb|200px|遊星歯車]]
歯車は平[[ベルト (機械)|ベルト]]等と異なり[[摩擦|滑り]]が無いので、[[タイミング]]機構には不可欠である。軸と一体のものや[[軸受け]]を仕込んだもの、キー溝や[[スプライン]]を設けたものがある。

歯数の組み合わせは自由であるが、大きな力を伝達するときや、滑らかさを必要とするときは、いつも同じ歯同士が当たると、微小な傷が大きくなったり、特定の箇所で音が発生するため、[[無駄歯]]を設けて歯数が[[互いに素 (整数論)|互いに素]]になるように設計される場合がある。互いに素である組み合わせでは全体が均一に磨耗し、歯当たりが滑らかになる。これを英語では'''harmonic wear'''という。ほとんどの工業製品はこの組み合わせで作られるが、減速比の都合などによってそうできない場合もある。歯車の材質が同種の組み合わせは[[摩擦力#クーロンの摩擦モデル|摩擦係数]]、耐摩耗性、焼付き耐性が劣るため異なる材質か表面処理を行った歯車の組み合わせが好ましい<ref group="注釈">摩擦面に同じ金属を使う事を「ともがね」と言い、歯車に限らず摩擦面に用いるのは基本的に避けるのがセオリーである。これは摩擦・摩耗の分野では常識であり、[[トライボロジー]]が発展する前からの経験則から知られていた事象である。</ref>。また、小歯車は硬い材料にしておかないと先に磨耗する。

代表的な歯車装置には以下のようなものがある。
* '''[[遊星歯車機構]]'''
* '''[[差動装置]]''' - ディファレンシャル、略してデフとも呼ばれる。
* '''[[減速機]]'''、'''[[トランスミッション|変速機]]'''
* '''[[ラック・アンド・ピニオン]]'''

平行して有る2本の軸上に2種類ずつ（計4枚）のギヤを接続しループを作った場合、2本の軸上にあるギヤの比率が一定である場合を除いて、軸は回転をしない。

=== 減速・増速 ===
{{節スタブ}}
歯数のちがう歯車を組み合わせて減速や増速に用いる。[[ウォームギヤ]]以外の歯車2つがかみ合っている場合、回転[[角度]]および[[角速度]]の[[比]]は歯数の比の[[逆数]]になる。[[トルク]]の比は、[[摩擦力]]を除けば、[[てこの原理]]により、ピッチ円半径の比になる。歯数の比とピッチ円径の比は等しくなるため、'''駆動歯車をD'''、'''従動歯車をP'''として式で表すと次のようになる。
* j=1/u=Pの歯数/Dの歯数=Pのピッチ円径/Dのピッチ円径=Dの回転角度/Pの回転角度=Dの角速度/Pの角速度=Pのトルク/Dのトルク
3つ以上の歯車が順にかみ合っているとき、最初と最後の歯車のそれらの比は、最初と最後の歯車が直接かみ合っている場合と同じで、間の歯車の歯数に関係ない。（3つの平歯車で入力と出力の回転方向を同じにする場合等。）
* 駆動歯車の歯数&lt;従動歯車の歯数
の場合、減速となってトルクが増し、逆の場合増速となってトルクが減る。
* Pのトルク×Pの回転角度＝Dのトルク×Dの回転角度
* Pのトルク×Pの角速度＝Dのトルク×Dの角速度
となり、[[摩擦損失]]を除けば、[[エネルギー]]および[[仕事率]]は変わらない。

例えば、歯数90の大きい歯車と、歯数20の小さい歯車がかみ合っている場合、小さい歯車の角速度は大きい歯車の4.5倍、大きい歯車のトルクは小さい歯車の4.5倍となり、小さい歯車が3回転すると大きい歯車は240度回転する。

=== 動力の分割等 ===
{{節スタブ}}
動力の分割、分配、取り出しや、入力、統合に用いられている。例えば自動車<ref group="注釈">[[三輪自動車]]で駆動輪が一つのものを除く。</ref>は[[差動装置|デファレンシャルギヤ]]によって、1つの[[原動機]]で左右両輪を回転させる。さらに、一部の[[四輪駆動]]車ではセンターデフで動力を前後輪に分割するものもある。また、[[オイルポンプ]]などの補機を回転させるために出力を取り出したり、逆に[[セルモーター|スターターモーター]]の回転力を入力している。

== 歴史 ==
[[ファイル:South-pointing_chariot_(Science_Museum_model).jpg|thumb|180px|[[指南車]]]]
最初の歯車がいつ開発されたのか、はっきりしたことは言えない<ref name=FGM>{{Cite web|url=https://fg-machine.com/blog/a-short-history-of-gears-and-where-gear-manufacturing-is-today/|title=A Short History of Gears and Where Gear Manufacturing Is Today|publisher=FEDERAL GEAR AND MACHINE|accessdate=2025-02-21}}</ref>。

ただし歯車の歴史はかなり古い、ということは言える。古代中国の[[指南車]]は歯車を使っており、年代が[[紀元前2700年]]にまで遡る可能性がある<ref name=FGM />。

[[古代ギリシア]]に書かれた『[[機械学 (アリストテレス)|機械学]]』（古代ギリシア語 : {{Ruby|Μηχανικά|メカニカ}}）は書名が『機械学の諸問題』とも訳され、長らく[[アリストテレス]]の著作とされていたがその後は[[逍遙学派]]すなわちアリストテレスが創設した学園の弟子たちによるものと考えられるようになっている書物で、この書物は、[[くさび]]、ころ（[[ローラー]]、ベアリング）、[[車輪]]、[[滑車]]などのほか、回転運動を伝達する[[青銅]]製や[[鉄]]製の歯車に言及している<ref name=AMTEC>{{Cite web|url=https://www.amtecinc.co.jp/new-catalogue/G-Furoku.html|title=歯車の歴史と和算|publisher=AMTEC|accessdate=2025-02-21}}</ref>。（アリストテレスの著作とされる書物は、[[紀元前350年]]頃に書かれたとされたり、[[紀元前330年]]から320年頃に書かれた、などとされるが）この記述が、古代ギリシアの書物に現れた歯車に関する記述としては、今まで知られている中ではどうやら最も古いようである<ref name=Kosatu>{{Cite web|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/pscjspe/2008A/0/2008A_0_379/_pdf/-char/ja|title=歯車の歴史とその発展経緯に関する考察|author=松川洋二, 石丸良平, 梅崎洋二, 黒河周平, 土肥俊郎, 河西敏雄, 越山勇|accessdate=2025-02-21}}</ref>。ただし当然だが、この書物の著者の先人、すなわちアリストテレスより前の時代の人もこの地域で歯車類を使っていたと考えるべきだろう<ref name=Kosatu />。

古代ギリシアの[[アルキメデス]]は、[[ウォームギヤ]]と円筒歯車を用いた5段の歯車列で約200倍の出力を得るメカニズムの[[ウインチ|巻上機]]を考案し、[[紀元前250年]]頃に 少人数で4,200 [[トン]]の艦を進水させることに成功した、と記録が残っている<ref name=Kosatu />。

[[ファイル:NAMA_Machine_d'Anticythère_1.jpg|thumb|180px|[[アンティキティラ島の機械]]]]
[[地中海]]に沈んでいた古代ギリシア時代の"アンティキティラの沈没船"から回収された{{Efn|海中から回収されたのは[[1901年]]のこと。}}[[アンティキティラ島の機械]]は[[紀元前150年]] - 100年に製作されたと考えられており、これは歯車を利用した天体運行計算機だった<ref name="Planetary Gears">{{cite journal
| title = Planetary Gears
| journal = Nature
| volume = 444
| pages = 7119 }}</ref>。

「この機械と同様の複雑さを持った技術工芸品はその1000年後まで現れることはなかった<ref name="Planetary Gears" />」と考えられている。

[[File:MHS 48213 Astrolabe with Geared Calendar.jpg|thumb|140px|歯車によるカレンダー機能付きの[[アストロラーベ]]]]
古代ギリシアの歯車の技術は[[イスラーム世界]]に継承され、[[1221年]]に[[イスファハン]]（現在のイラン）でムハンマド・イブン・アビ・バクル（Muhammad Ibn Abi Bakr）が作った歯車つき[[アストロラーベ]]は現代まで残されている<ref name=Geared-Astrolabe>{{Cite web|url=https://www.hsm.ox.ac.uk/geared-astrolabe|title=Astrolabe with geared calendar|publisher=[[オックスフォード大学]]、科学史博物館（University of Oxford, HISTORY OF SCIENCE MUSEUM）|accessdate=2025-02-21}}</ref>。歯車による[[カレンダー]]機能が搭載されたアストロラーベである<ref name=Geared-Astrolabe />。

[[ウィトルウィウス]]は『[[デ・アーキテクチュラ|建築について]]』の中で縦に回転する[[水車]]について論じたが、縦に回転する動力を横方向の回転に変換するランタン歯車と呼ばれる木製のピンを組み合わせる歯車が[[1世紀]]頃の[[ローマ帝国]]で普及し、18世紀末まで日常的な歯車として利用され続けた<ref name="Haudricourt">A-G・オードリクール『作ること使うこと：生活技術の歴史・民俗学的研究』 [[山田慶兒]]訳 藤原書店 2019年、ISBN 978-4-86578-212-7 pp.251-256.</ref>。全金属製の歯車は11 - 12世紀頃に登場したが、産業用ではなく専ら[[時計]]などの精密装置に用いられた<ref name="Haudricourt"/>。

<gallery>
Bad Windsheim - Fränkisches Freilandmuseum, Mühle 1575, Räderwerk.JPG|ランタン歯車伝導装置
Zytglogge-Bern-Movement_from_1530_by_Kasper_Bruner.jpg|[[ツィットグロッゲ]]。ベルンで1218年から現在まで使われ続けている大型機械式時計
</gallery>

{{節スタブ}}

== 種類 ==
歯すじの形状等で分類される。2つの歯車を組み合わせた際に、それぞれの軸の位置関係は[[平行]]となるもののほか、交差するものや食い違いとなるものがある。

=== 平歯車 === 
; ひら歯車、ひらはぐるま、{{lang-en|spur gear}}

[[File:Gears animation.gif|thumb|平歯車の動き]]
[[File:Rack and pinion animation.gif|thumb|ラック（下）とピニオン]]

歯を回転軸と平行に切った歯車<ref name="大西1997pp11-2"/>。製作が容易であるため動力伝達用（[[駆動列]]）に最も多く使われている。歯車同士が外接する外歯車と、小歯車が円筒の内面に歯筋を設けた大歯車に内接する内歯車がある<ref name="大西1997pp11-2"/>。

大小2つの平歯車を組み合わせる時に、大きい方を'''ギヤ'''といい、小さい方を'''ピニオン'''という。ピニオンに組み合わされる大歯車は外歯車に限定されず、内歯車や、直径を無限大にしたラック（{{lang-en|rack}}）とも組み合わされる<ref name="大西1997pp11-2"/>。

回転運動を直線運動に変えるには、ラックと小歯車を組み合わせた[[ラック・アンド・ピニオン]]が用いられる<ref name="大西1997pp11-2"/>。ラック・アンド・ピニオンは[[工作機械]]の位置送りや自動車の[[ステアリング]]装置に用いられている。

=== 内歯車・内歯歯車 === 
; うちはぐるま、うちばはぐるま

[[File:Inside_gear.png|thumb|内歯車]]

平歯車の一種で、読んで字のごとく内側に歯がついている歯車。

内側に噛ませるため小径の歯車としか組み合わせられない。[[遊星歯車機構]]のようにこの歯車が無ければ成立しない構造のものも存在する。

=== はすば歯車 === 
; 斜歯歯車、{{lang-en|helical gear}}

[[File:Helical Gears.jpg|thumb|はすば歯車（上）とねじ歯車（下）]]

平歯車の歯を軸線に対して斜め（はす）に切って、[[螺旋]]状とした歯車<ref name="大西1997pp11-3">[[#大西1997|大西1997 pp11-3]]</ref>。

同時にかみ合う歯数を増やし、歯当たりが分散されるので音が静かで、[[トルク]]の変動が少ない。トルクがかかると[[推力]]（スラスト）が発生するので、何らかの形の[[スラスト軸受]]が必要になる<ref name="大西1997pp11-3"/>。

減速機構では[[原動機]]側のトルクは小さいので傾きを大きく、最終段ではトルクが大きいので傾きを小さくする。

=== ねじ歯車 ===
はすば歯車と同じ形の歯車を組み合わせて、2軸の間に平行以外の角度で動力の伝達を行う歯車である<ref name="大西1997pp11-3"/>。

=== やまば歯車 === 
; 山歯歯車、{{lang-en|Herringbone gear}}、'''double helical gear'''

[[File:Engrenages - 85.488 -.jpg|thumb|160 px|やまば歯車]]

同じ傾斜でねじれ方向が逆向きのはすば歯車を2つ組み合わせた形をしていて、はすば歯車の軸方向に発生する推力を互いに打ち消しあう構造とした歯車である<ref name="大西1997pp11-3"/>。

フランスの自動車メーカー、[[シトロエン]]のダブル[[シェブロン (紋章学)|シェブロン]]とも呼ばれる[[エンブレム]]は、この歯車をモチーフにしている。

=== かさ歯車 === 
; 傘歯車、{{Anchors|ベベルギヤ}}ベベルギヤ、ベベルギア、{{lang-en|Bevel gear}}

[[File:Bevel gear.jpg|thumb|かさ歯車]]

[[円錐]]面上に歯を刻んだ歯車で、広げた[[傘]]のような形状をしていることからこのように呼ばれる<ref name="大西1997pp11-3"/>。
平行ではなく角度がついた軸の間で動力を伝達する際に用いられる。

一般的には入出力の2軸を同一平面上とし、平歯車を円錐状に窄めた形の'''すぐばかさ歯車'''、はすば歯車を円錐状に窄めた形の'''はすばかさ歯車'''、歯形が曲線（円弧）状の'''[[まがりばかさ歯車]]'''がある<ref name="大西1997pp11-3"/>。

さらに、入出力の2軸を同一平面上ではなく[[ねじれの位置]]とした'''[[ハイポイド]]ギヤ'''（'''{{lang-en|hypoid gears}}'''）があり<ref name="大西1997pp11-3"/>、
自動車の[[駆動列|駆動系]]、特に[[縦置きエンジン]]車の[[差動装置]]はかさ歯車の応用の1例である。

=== 冠歯車 === 
; かんむりはぐるま、クラウンギヤ、クラウンギア、{{lang-en|Crown gear}}

[[File:Crown gear.png|thumb|冠歯車]]

冠歯車はかさ歯車の一種で、歯が回転軸に対し垂直につけられたもの。歯車の形状は[[西洋の冠|王冠]]に似る。

かさ歯車と組み合わせのほか、小径の平歯車（ピニオン）とも組み合わされる。

=== ウォームギヤ  ===
{{main|ウォームギヤ}}
; {{lang-en|worm gears}}

[[File:Worm Gear and Pinion.jpg|thumb|ウォームギヤ]]

ウォームとウォームホイールを、互いの軸が直角で交わらない位置で組み合わせたもの<ref name="大西1997pp11-3"/>をウォームギヤと呼ぶ。1段で大きな減速比が得られ、他の歯車機構に比べて[[騒音]]が少ない<ref name="大西1997pp11-3"/>。

[[オルゴール]]の[[調速機]]（ガバナー）、自動車の[[ステアリング]]ギア（ウォームアンドローラー）、[[天体望遠鏡]]の[[赤道儀]]、[[鉄道模型#電気モーターを利用した方式|鉄道模型]]の駆動などに採用されている。

=== 球状歯車 ===
; きゅうじょう歯車、{{lang-en|Cross spherical gear}}

[[球体]]の表面に、2軸が直交した歯を持つもの。

回転3[[自由度#機構学|自由度]]の運動を可能とする歯車機構の中でも小型、軽量、伝達効率の高さを特徴とする<ref>{{Cite web|和書|author=多田隈理一郎|date=2020-10-06|url=https://shingi.jst.go.jp/pdf/2020/2020_yamagata-u_3.pdf|title=無制限の可動範囲を有する回転3自由度の球状歯車機構の開発|publisher=[[国立研究開発法人科学技術振興機構]] |accessdate=2024-01-10}}</ref><ref>{{Cite web|和書|author=久保田龍之介 |date=2021-07-29 |url=https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01735/00001/ |title=【有料記事】SNS沸騰の「球状歯車」　全方向無制限駆動で人型ロボットに衝撃 |publisher=[[日本経済新聞社|日経クロステック]] |accessdate=2021-08-17}}</ref>。

円盤・円柱の直径方向に軸を持つモノポールギヤとの組み合わせで、[[ロボットアーム]]の[[関節]]や[[無人航空機|ドローン]]用カメラの[[ジンバル]]制御などへの利用が期待されている。

=== スプロケット ===
{{main|スプロケット}}

[[File:Chain.gif|thumbnail|スプロケットと<br>[[ローラーチェーン]]]]

1枚の歯車と[[ローラーチェーン]]をかみ合わせて回転の伝達を行う機構、あるいはその歯車をスプロケットと呼ぶ。

2つ歯車による機構ではないので歯車機構という意味では歯車とは呼ばれない。

== 歯形 ==
歯車の歯の形状は数学的な計算から求められる曲線となっていて、歯車を製造、利用する視点からは歯形曲線とよばれる。伝動用の歯車としては[[インボリュート曲線]]と[[サイクロイド]]曲線の2種類が基本とされるが、一般にはインボリュート曲線が用いられる<ref name="大西1997pp11-1">[[#大西1997|大西1997 pp11-1]]</ref>。
; [[インボリュート歯車|インボリュート歯形]]
: インボリュート曲線で形作られた歯形で、歯車の中心距離が若干変化してもかみ合いが正しく保たれる<ref name="大西1997pp11-1"/>。[[ホブ盤]]で容易に製作でき、また滑りも少ないため一般に多く用いられている。
; サイクロイド歯形
: [[サイクロイド]]曲線で形作られた歯形で、インボリュート歯形と比較すると歯の干渉も滑りも少なく、また滑りがより均一だが、製作が難しい<ref name="大西1997pp11-1"/>。[[時計]]の機構に用いられる。
; トロコイド歯形
: [[トロコイド]]曲線で形作られた歯形で、[[歯車ポンプ|内接歯車ポンプ]]に使われる。

== 歯車用語 ==
[[File:Gear words.png|700px|歯車の各部]]
; 歯（tooth）
: 歯車の突起部分。
; 歯数 <math>z</math>
: 歯の枚数。
; ピッチ円（pitch circle）
: 歯車のかみ合う位置から、中心までの距離の2倍がピッチ円径である。ピッチ円直径を <math>d</math> で表す。
; 歯面（tooth surface）
: 歯の輪郭。歯面のうちピッチ円より外側を歯末の面（tooth face）、内側を歯元の面（tooth flank）という。
; 歯先円（addendum circle）
: 歯の先端を通り、ピッチ円と同心の円。歯先円直径を <math>d_k</math> で表す。
; 歯底円（dedendum circle,root circle）
: 歯の根元を通り、ピッチ円と同心の円。歯底円直径を <math>d_f</math> で表す。
; 歯末のたけ（addendum） <math>h_k</math>
: 歯先円半径とピッチ円半径との差。
; 歯元のたけ（dedendum） <math>h_f</math>
: ピッチ円半径と歯底円半径との差。
; 全歯たけ（whole depth） <math>h</math>
: 歯末のたけと歯元のたけの和。すなわち、<math>h = h_k + h_f </math> である。
; 頂げき（top clearance）
: 歯元のたけ <math>h_f</math> と相手歯車の歯末のたけ <math>h_k'</math> との差。すなわち、<math>h_f-h_k'</math> である。
; ピッチ（pitch）・円ピッチ（circular pitch） <math>t</math>
: ピッチ円上の1歯の上の点と隣りの歯の上の点との距離をピッチ円に沿って測ったもの。<math>t=s+w</math> である。
; 法線ピッチ（normal pitch）
: インボリュート歯形において、インボリュートの法線が隣のインボリュートによって切り取られる長さ。
; 歯幅（face width）
: 歯車の軸方向に測った歯の長さ。
; 歯厚（tooth thickness） <math>s</math>
: ピッチ円上で測った歯の厚さ。
; 歯溝の幅（space thickness） <math>w</math>
: ピッチ円上で測った歯と隣りの歯との隙間の長さ。
; [[バックラッシュ (機械)|バックラッシュ]]（backlash）
: 2つのかみ合う歯車にて、互いのピッチ円間にある隙間のこと。歯の両面（腹と背）の接触を防ぎ、性能が低下することを防ぐために設けられる「必要悪」。
; モジュール（module）
: 歯の大きさを表す規格値。一般に用いられている標準寸法の歯を並歯（full depth tooth）というが、並歯では歯末のたけとモジュールを等しくする。
; クラウニング（crowning）
: 歯車同士がかみ合っているとき、全体的になめらかさを出すことで相手の歯をしっかりかみ合わせることができる。このなめらかさを出すことをいう。
; 速比 <math>u</math>
: 速比は、次式で表される。
:* <math>u = </math> 駆動歯車の歯数 / 従動歯車の歯数 <math>=</math> 従動歯車の[[角速度]] / 駆動歯車の角速度
; 伝達比 <math>j</math>
: 伝達比は、速比の[[逆数]]で表される。
:* <math> j=\frac{1}{u} </math>

== 規格 ==
歯車には以下の[[規格]]が用いられる。

* 国際規格
** [[国際標準化機構|ISO]]規格（国際標準化機構）
* 日本規格
*# JGMA規格（一般社団法人日本歯車工業会）
*# [[日本産業規格|JIS]]規格（一般財団法人[[日本規格協会]]）

上記、規格は各団体で購入可能（3.は日本規格協会でも購入可能）

== シンボルとしての「歯車」 ==
さまざまな[[国家]]や[[企業]]（特に製造業）、[[団体]]の[[旗]]・[[記章]]等において、「[[工業]]」あるいは「[[労働者]]」を象徴する[[意匠]]として歯車が用いられており、[[ミャンマー]]、[[アンゴラ]]の[[国旗]]および[[国章]]、[[イタリア]]、[[中華人民共和国]]（中国）、[[ベトナム]]、[[ラオス]]の[[国章]]、[[日本共産党]]の党章、[[日本国]]の[[五円硬貨]]、[[工場]]を表す日本の[[地図記号]]等が例として挙げられる。

[[フィクション]]では、古くは[[チャールズ・チャップリン]]監督作品『[[モダン・タイムス]]』が人間が機械の一部分のように扱われる象徴として歯車を用いており、日本の[[漫画]]・[[アニメーション]]作品でも『[[銀河鉄道999]]』の[[機械帝国]]が使用している。
<gallery>
File:Flag of Myanmar (1974-2010).svg|[[1974年]]から[[2010年]]までの[[ミャンマーの国旗]]。
File:Flag of Angola.svg|[[1975年]]に制定された[[アンゴラの国旗]]。
File:Italy-Emblem.svg|[[1948年]]に制定された[[イタリアの国章|イタリア共和国の国章]]。
File:National Emblem of the People's Republic of China (2).svg|[[1950年]]に制定された[[中華人民共和国の国章]]。
File:Emblem of Vietnam (fixed for revision).svg|[[1976年]]に制定された[[ベトナムの国章|ベトナム社会主義共和国の国章]]。
File:Emblem of Laos.svg|[[1992年]]に制定された[[ラオスの国章|ラオス人民民主共和国の国章]]。
File:Flag_of_JCP.svg|[[日本共産党]]の党旗。
File:5JPY.JPG|[[1949年]]より発行されている[[日本国]]の[[五円硬貨]]の表には、歯車がデザインされている。
File:Japanese Map symbol (Factory).svg|[[工場]]を表す日本の[[地図記号]]。
</gallery>

== 生体歯車 ==
[[ウンカ]]の幼虫には後ろ足に正確な跳躍のため歯車を備えている種がある。この種の成虫は摩擦を用い跳躍する。<ref>[https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8359/?ST=m_news “歯車”を使ってジャンプする昆虫][[ナショナルジオグラフィック (雑誌)|ナショナルジオグラフィック]]2013年9月13日、2016年5月9日閲覧</ref>

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist}}
=== 出典 ===
{{reflist}}

== 参考文献 ==
=== 書籍 ===
* {{cite book|和書|author=大西清|authorlink = |coauthors =|year=1997 |title=JISにもとづく機械設計製図便覧 |publisher=[[理工学社]]|ref=大西1997|id= |isbn =978-4-8445-2024-5}}
* {{Cite book|和書|author = ジャパンマシニスト社編集部|authorlink = |coauthors =|year = 1969|title = 歯車|publisher = [[ジャパンマシニスト社]]|ref = JM1969|id =|isbn =4-88049-001-6}}

== 関連項目 ==
{{Commonscat|Gears}}
{{wiktionary}}
* [[スラスト軸受|スラスト]]
* [[ギアトレーン|ギヤトレーン]]
* [[トライボロジー]]
* [[歯切り盤]]
* [[ホブ盤]]
* [[ホブ]]
* [[ジェネバ機構]]
* [[無駄歯]]
* [[滑車]]
* [[トランスミッション]]
* [[摩擦車]]

== 外部リンク ==
* [http://www.khkgears.co.jp/gear_technology/index.html KHK歯車大学] - 歯車についての技術解説ページ
* {{kotobank|歯車-113922|[[日本大百科全書]](ニッポニカ)|歯車}}

{{Gears}}
{{Normdaten}}

{{DEFAULTSORT:はくるま}}
[[Category:歯車|*]]
[[Category:機構 (工学)]]
[[Category:機械要素]]
[[Category:シンボル]]
[[Category:トライボロジー]]