比重量のソースを表示

'''比重量'''（ひじゅうりょう、{{lang-en|specific weight}}）は、物質の単位[[体積]]当たりにかかる[[重力]]の大きさである。

これに類似して[[密度]]や[[比重]]があるが、密度は「単位体積当たりの[[質量]]」であり、比重は「対象物質の密度を基準となる物質の密度で割った[[無次元量]]」である。

これらに対し、比重量は、重量の比ではなく、「単位体積あたりにかかる重力」を指す。そのため[[地球]]表面上における[[水]]の水温4℃での比重量は、[[地球]]表面上における重力加速度 ''<math>g</math>'' を乗じて、約9.8 kN/m<sup>3</sup> になる。

==名称について==
英語名称は、[[:en:specific weight|specific weight]] または unit weight である。一般には、specific weight を'''比重量'''と和訳する<ref>『ハンディコンパクト　科学技術英和大辞典　第2版』（オーム社）</ref><ref>『マグロウヒル　英和物理・数学用語辞典』（森北出版）</ref>。[[日本産業規格]]（JIS）では比重量を用いている<ref>{{cite jis|Z|9211}}</ref>。

[[土木工学]]では、unit weight を和訳した'''単位体積重量'''<ref>土木学会監修　『土木用語辞典』（森北出版）など</ref>・'''単位容積重量'''・'''単位重量'''などが用いられる。

[[建築学]]では、密度（density）と同義とし、[[比重]]×1000（kg/m）として扱われることもある<ref>[[日本建築学会]]編　『建築学用語辞典 第2版』（岩波書店）の「比重量」の項を参照。</ref>。

==定義・単位==
比重量は、物質にかかる単位体積当たりの重量で定義される。[[量記号]]には[[ギリシャ文字]]の小文字のガンマ（<math>\gamma</math>）などが用いられる。

ここで、ある質量 <math>m</math> [kg]、体積 <math>V</math> [m<sup>3</sup>] の物体にかかる重量（重力の大きさ）を <math> W = m g</math> [N] （<math>g</math> は[[重力加速度]]）、その物質の密度を <math> \rho = \frac{m}{V}</math>  [kg/m<sup>3</sup>] とすれば、その物質にかかる単位体積当たりの重量（比重量）<math>\gamma</math> は次のように導かれる。
:<math> \gamma = \frac{W}{V} = \frac{m g}{V} = \frac{m}{V} \times g = \rho \times g</math>

すなわち、比重量は、物質の密度 ''<math>\rho</math>'' と 重力加速度 ''<math>g</math>'' の積で表される。
:<math>\gamma = \rho \, g</math>

[[単位]]は、[[国際単位系]]（SI）では、[[ニュートン (単位)|ニュートン]]毎立方[[メートル]]（N/m<sup>3</sup>）である。[[工学単位系]]（[[重力単位系]]）では、[[重量キログラム]]毎立方メートル（kgf/m<sup>3</sup>）であった。英米の[[ヤード・ポンド法]]（重力単位系）では、[[重量ポンド]]毎立方[[フィート]]（lbf/ft<sup>3</sup>）となる。

この定義から分かるように、比重量は重力加速度に比例するので、地表（地球表面）からの高さによって値が異なるという短所があるが、高さの差が十分に小さい範囲内でなら問題はない。このような理由のため、SI化にともなって、多くの分野で比重量は密度に置き換えられている。

== 比重量と水頭 ==
[[流体力学]]や[[水理学]]において、[[水]]などの[[流体]]の持つ単位体積当たりの[[エネルギー]]を比重量で割った値を'''[[水頭]]'''（[[:en:Hydraulic head|Hydraulic head]]） または'''ヘッド'''という。
一様な重力のもとでの非[[粘度|粘性]]・[[非圧縮性流れ|非圧縮流体]]の定常な流れにおいて、[[流線]]上での単位体積当たりの流体のエネルギーは、
:<math> \frac{1}{2}\rho v^2 + p + \rho g z </math> ＝一定　（[[ベルヌーイの定理]]）
で表されるから、これを比重量 <math>\rho g</math> で割ると、
:<math> \frac{v^2}{2 g} + \frac{p}{\rho g} + z</math> ＝一定　（ベルヌーイの定理の水頭による表現）
が得られる。
:第1項を速度水頭：<math> h = \frac{v^2}{2 g}</math>　（<math>v</math> は流体の平均速さ）
:第2項を圧力水頭：<math> h = \frac{p}{\gamma} = \frac{p}{\rho g}</math>　（<math>p</math> は流体の[[圧力]]）
:第3項を位置水頭：<math> h = z</math>　（<math>z</math> は流体の高さ）
という。

== 関連項目 ==
*重量＝[[重さ]]（[[:en:Weight|Weight]]）：<math> W = m g</math>
*[[重力加速度]]：<math>g</math>
*[[密度]]（[[:en:Density|Density]]）：<math> \rho = \frac{m}{V}</math>
*[[相対密度]]（[[:en:Relative density|Relative density]]）：<math>\frac{\rho_\mathrm{sample}}{\rho_\mathrm{reference}}\,
</math>　（ある物質の密度と、基準となる標準物質の密度との比）
*[[比重]]（[[:en:Specific gravity|Specific gravity]]）：<math> \frac {\rho_\text{sample}}{\rho_{\rm H_2O}}</math>　（ある物質の密度と、基準となる[[水]]の密度との比）

== 出典 ==
{{Reflist}}

{{Normdaten}}
{{デフォルトソート:ひしゆうりよう}}
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[[Category:密度]]
[[Category:重力]]
[[Category:流体力学]]
[[Category:水理学]]
[[Category:土質力学]]
[[Category:物理化学]]