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'''水質'''(すいしつ、{{Lang-en|water quality|links=no}})は物理的、化学的、生物的な[[水]]の性質を示す指標である{{Sfn|日本陸水学会|2006|pp=234-235}}<ref name="water quality">Diersing, Nancy (2009). [http://floridakeys.noaa.gov/scisummaries/wqfaq.pdf "Water Quality: Frequently Asked Questions."] Florida Brooks National Marine Sanctuary, Key West, FL.</ref>。水質は地球上の[[水循環]]や、当地での地形・地質条件、および人間活動の影響を受けている{{Sfn|田瀬|2009|p=197}}が、水質の分析は、[[水文学]]における野外調査のうち化学的な手法として挙げられ、水文環境の状況把握の上で必要となる{{Sfn|山中|2011|p=28}}。 == 具体例 == 水質の具体例として、水に[[溶解]]している物質([[溶質]])の濃度のほか、水温、[[水素イオン指数|pH]]、[[電気伝導度]]などが挙げられる{{Sfn|山中|2011|p=32}}。'''水温'''({{lang-en|water temperature|links=no}})は、水に含まれる気体や固体の溶解度のほか、植物や微生物の活動に影響を及ぼすこと、水源や水の流路の把握の手がかりになることから、重要な水質要素となる{{Sfn|山中|2011|p=32}}。'''pH'''は、水が酸性かアルカリ性か把握の判別に利用される{{Sfn|新井|1994|p=69}}とともに、水中の物質の溶存の状態に大きな影響を及ぼす{{Sfn|山中|2011|p=32}}。'''電気伝導度'''({{lang-en|electric conductivity|links=no}})は水中に溶存しているイオン物質{{Refnest|group="注釈"|イオン物質でない溶存物質([[有機物質]]や[[ケイ酸]])は電気伝導度と無関係である{{Sfn|武田|2010|pp=56-57}}{{Sfn|新井|1994|p=73}}。}}の総量の把握に有用である{{Sfn|武田|2010|p=56}}。これは、電気伝導性を持たない純水に対し、水中に溶解している物質が増加すると電気伝導性が高くなることに起因する{{Sfn|新井|1994|p=73}}。この他、[[湖沼]]や汚濁河川の水質測定では[[溶存酸素]]の測定も求められる{{Sfn|新井|1994|p=73}}ほか、[[透明度]]、[[透視度]]、水の色なども測定対象となりえる{{Sfn|新井|1994|pp=79-82}}。 == 水質の表現 == === 濃度 === 水質を表現する方法は複数ある。'''体積濃度'''は水1Lあたりの[[溶質]]の重量であり、通常使用される単位はmg/Lである{{Sfn|田瀬|2009|p=198}}。この他、'''重量濃度'''(溶液1kgあたりの溶質の重量、単位g/kg)や'''当量濃度'''(単位me/L)を用いることもある。なお、体積濃度C<sub>v</sub>[mg/L]と当量濃度C<sub>eq</sub>[me/L]には <math>C_{eq}=\frac{C_v}{b}</math> という関係がある。ただしbは1[[当量]]([[分子量]]を[[価数]]で割った値)である{{Sfn|田瀬|2009|p=199}}。 === ダイアグラム === 水質の概要の把握、他の水サンプルとの類似点・相違点の比較検討などで[[ダイアグラム]]が用いられる{{Sfn|田瀬|2009|p=200}}。 [[File:Stiff diagram.jpg|thumb|ヘキサダイアグラムの一例]] [[File:Mtshabezi chemistry.png|thumb|トリリニアダイアグラムの一例]] [[File:Water testing in the Gulf in response to the BP oil spill (4615419009).jpg|thumb|[[2010年メキシコ湾原油流出事故]]の影響を把握するための塩分濃度・水温・pHの測定]] '''ヘキサダイアグラム'''({{en|hexa diagram|links=no}})あるいは'''{{仮リンク|シュティフダイアグラム|en|Stiff diagram}}'''({{en|stiff diagram|links=no}})では、縦軸の左側に[[陽イオン]]、右側に[[陰イオン]]の当量濃度を示す{{Sfn|田瀬|2009|p=200}}。左側では上から順にNa<sup>+</sup> + K<sup>+</sup>、Ca<sup>2+</sup>、Mg<sup>2+</sup>の濃度、右側では上からCl<sup>-</sup>、HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>、SO<sub>4</sub><sup>2-</sup> + NO<sub>3</sub><sup>-</sup>の濃度が示される{{Sfn|日本地下水学会|p=1}}。このときのグラフの形状・大きさで水質を表現し{{Sfn|田瀬|2009|p=200}}、水質を容易に認識できるようになる{{Sfn|日本地下水学会|p=1}}。 '''トリリニアダイアグラム'''({{en|trilinear diagram|links=no}})あるいは'''{{仮リンク|パイパーダイアグラム|en|Piper diagram}}'''({{en|piper diagram|links=no}})では、菱形をなすキーダイアグラム({{en|key diagram|links=no}})と三角形の2つの三角ダイアグラム({{en|ternary diagram|links=no}})のダイアグラムがある{{Sfn|田瀬|2009|p=200}}。キーダイアグラムでは、陽イオンはNa<sup>+</sup> + K<sup>+</sup>とCa<sup>2+</sup> + Mg<sup>2+</sup>、陰イオンはHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>とCl<sup>-</sup> + SO<sub>4</sub><sup>2-</sup> + NO<sub>3</sub><sup>-</sup>の濃度比を示している{{Sfn|田瀬|2009|p=200}}。三角ダイアグラムではそれぞれ陽イオンと陰イオンの濃度比が示されている{{Sfn|田瀬|2009|p=200}}。このダイアグラムは水の起源を考えるうえで有用である{{Sfn|日本地下水学会|p=2}}。 == 水質測定 == 水質項目のうち、野外調査時に測定するものとして水温、pH、電気伝導度の3つが挙げられる{{Sfn|山中|2011|p=35}}。水温の測定のためにはガラス棒状温度計やサーミスター温度計などが使用される{{Sfn|新井|1994|pp=23-26}}。pHの測定では比色法{{efn|比色法には、試料水に試薬を入れる方法と、試験紙に試料水をつける方法がある{{Sfn|新井|1994|p=69}}。}}と[[pHメーター]]を利用する方法などが挙げられる{{Sfn|新井|1994|pp=69-72}}。電気伝導度については導電率計が用いられる{{Sfn|新井|1994|p=73}}。測定時に複数の測器を使用する場合は[[器差]]に要注意であり、必要に応じて補正も求められる{{Sfn|山中|2011|p=35}}。また、pHと電気伝導度の測定の際は事前に[[共洗い]]が求められる{{Sfn|山中|2011|p=35}}。導電率計の使用時は測器により表示単位に相違があるため注意を要する{{Sfn|山中|2011|p=35}}。 後日実験室で分析する詳細な水質項目などでは、現地で試料水の採取(採水)を行う{{Sfn|山中|2011|p=35}}。表面水の採水では、直接採水ビン(ポリビン)に採水することもあるが、橋の上からバケツを吊して採水することもある{{Sfn|新井|1994|p=86}}。湖沼での採水では、市販の採水器も用いられる{{Sfn|新井|1994|p=87}}。地下水は[[井戸]](解放井戸)を利用して採水ができることもあるが、蛇口を通して採水することもある{{Sfn|新井|1994|p=93}}。 === 水道水の水質検査 === [[水道法]]により水質検査の項目が定められている。<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kentoukai/dl/kensa_annai02.pdf |title=水道法に基づく水質検査 |accessdate=2022-03-22 |publisher=ʽ厚労省ʼ}}</ref> ==== 毎日測定するもの ==== * 色 * 濁度 * 残留塩素 ==== 月に1回測定するもの ==== * 一般細菌 * 大腸菌 * TOC * Cl- * pH * 味 * 臭気 ==== 3か月に1回測定するもの ==== * シアン化物 * ホウ素 * 総トリハロメタン * ホルムアルデヒド 等多数 pH、色、濁度、電気伝導度は容易に計測が可能だが、多種多様な重金属、化学物質を測定するのには高価な検査装置、莫大なコストがかかり検査回数はどうしても制限されてしまう。 そこで、魚・生物に水を与え無害かどうか確認する方法がとられることがある。いわゆる[[カナリア#毒ガス検知|炭鉱のカナリア]]と同じ手法である。<ref>{{Cite web|和書|title=米陸軍、安全な水道水の確保に淡水魚ブルーギルを活用 |url=https://wired.jp/2004/03/30/米陸軍、安全な水道水の確保に淡水魚ブルーギル/ |website=WIRED.jp |date=2004-03-29 |accessdate=2022-03-22 |language=ja-JP |first=Condé |last=Nast}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=トピック第16回 魚による水質監視!? {{!}} 水源・水質 {{!}} 東京都水道局 |url=https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/topic/16.html |website=www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp |accessdate=2022-03-22}}</ref> 具体的に何の物質が入っているかはわからないが、有害な物質が混入されていないか絶えず検査し続けることが出来る。 測定は浄水場だけでなく水道管を経由する内に問題が生じていないか確認するため給水栓でも行われる。<ref>{{Cite web|和書|title=トピック第28回 給水栓自動水質計器 {{!}} 水源・水質 {{!}} 東京都水道局 |url=https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/topic/28.html |website=www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp |accessdate=2022-03-22}}</ref>{{-}} == 脚注 == === 注釈 === {{Reflist|group="注釈"}} === 出典 === {{Reflist|2}} == 参考文献 == *{{Citation|和書|editor=[[新井正]]|year=1994|title=水環境調査の基礎|publisher=古今書院|isbn=4-7722-1740-1|ref={{Sfnref|新井|1994}}}} *{{Citation|和書|editor=[[日本陸水学会]]|year=2006|title=陸水の事典|publisher=講談社|isbn=4-06-155221-X|ref={{Sfnref|日本陸水学会|2006}}}} *{{Citation|和書|editor=杉田倫明・田中正|author=田瀬則雄|year=2009|title=水文科学|chapter=水・物質循環|pages=197-222|publisher=共立出版|isbn=978-4-320-04704-4|ref={{Sfnref|田瀬|2009}}}} *{{Citation|和書|author=武田育郎|year=2010|title=よくわかる水環境と水質|publisher=オーム社|isbn=978-4-274-20906-2|ref={{Sfnref|武田|2010}}}} *{{Citation|和書|editor=上野健一・久田健一郎|author=山中勤|year=2011|title=地球学調査・解析の基礎|chapter=水文|pages=23-38|series=地球学シリーズ|publisher=古今書院|isbn=978-4-7722-5254-6|ref={{Sfnref|山中|2011}}}} *{{Cite web|和書|url=http://www.jagh.jp/content/shimin/images/wakimizu/20111002/suishitu.pdf|title=水質に関する説明|author=[[日本地下水学会]]|format=PDF|accessdate=2019-01-18|ref={{SfnRef|日本地下水学会}}}} == 関連項目 == *[[硬度 (水)]] *[[生物化学的酸素要求量]] (BOD) *[[化学的酸素要求量]] (COD) {{地球科学}} {{地理学}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:すいしつ}} [[Category:水文学]]
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