水酸化カルシウムのソースを表示

{{Chembox
|  Name = 水酸化カルシウム
|  ImageFile = Calcium hydroxide.jpg
|  ImageFile1 =
|  IUPACName = 水酸化カルシウム<br>Calcium hydroxide
|  OtherNames = 消石灰
| Section1 = {{Chembox Identifiers
|  CASNo = 1305-62-0
|  CASNo_Ref =
|  RTECS =
|  EINECS =
|  UNNumber =
 }}
| Section2 = {{Chembox Properties
|  Formula = Ca(OH)<sub>2</sub>
|  MolarMass = 74.0927 g mol<sup>&minus;1</sup>
|  Appearance = 無色結晶または白色粉末
|  Density = 2.211 g cm<sup>&minus;3</sup>, 固体
|  Solubility = 0.17 g / 100cm<sup>3</sup>（25℃）
|  MeltingPtC = 580
|  Melting_notes = 分解
|  BoilingPt =
|  Viscosity =
|  pKa =
 }}
| Section4 = {{Chembox Thermochemistry
| DeltaHf = -986.09 kJ mol<sup>&minus;1</sup>
| DeltaHc =
| Entropy = 83.39 J mol<sup>&minus;1</sup>K<sup>&minus;1</sup>
| HeatCapacity = 87.49 J mol<sup>&minus;1</sup>K<sup>&minus;1</sup>
 }}
| Section7 = {{Chembox Hazards
|  ExternalMSDS = {{ICSC-small|0408}}
|  EUIndex =
|  FlashPt = 不燃性
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|  RPhrases =
|  SPhrases =
 }}
| Section8 = {{Chembox Related
|  Function =
|  OtherFunctn =
|  OtherCpds = [[水酸化マグネシウム]]<br>[[水酸化ストロンチウム]]<br>[[水酸化バリウム]]
 }}
}}
'''水酸化カルシウム'''（すいさんかカルシウム、{{lang-en-short|Calcium hydroxide}}）は、[[化学式]] Ca(OH)<sub>2</sub> で表される[[カルシウム]]の[[水酸化物]]。'''消石灰'''（しょうせっかい）とも呼ばれる。[[固体]]は[[カルシウム|カルシウムイオン]]と[[水酸化物イオン]]からなる[[イオン結晶]]である。[[水溶液]]は石灰水、[[懸濁液]]は石灰乳と呼ばれ、共に強い[[塩基|アルカリ性]]を示す。石灰水は[[二酸化炭素]]を簡易的に検出する[[試薬]]として多用されている。小・中学校の理科の授業でも使用されている。

天然には、{{仮リンク|ポートランダイト|en|Portlandite}}（ポートランド石ともいうが、同名の岩石とは異なる）として産出する。

== 生産 ==
[[酸化カルシウム]]に加水すると生成する。その[[水和]]熱は大きく、[[乾燥剤]]としてよく用いられる酸化カルシウム（[[生石灰]]）に水を加えることは危険である。
: <chem>CaO\ + H2O -> Ca(OH)2</chem>

消石灰の2016年度日本国内生産量は 1,342,058 [[トン|t]]、消費量は 517,767 t である<ref>[https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/ichiran/08_seidou.html#menu5 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編]</ref>。

[[ホタテガイ|ほたて]]の貝殻を[[焼成]]・粉砕した焼成カルシウム、またはそれに加水したものを「ほたてカルシウム（貝殻焼成カルシウム）」の名称で販売している商品もある。

== 用途 ==
水酸化カルシウムは、[[強塩基]]であるが[[劇物]]指定を受けていないため、酸性化した[[河川]]や[[土壌]]の中和剤、凝集剤として幅広く使われる。ほかに、試薬・農業・食品や化粧品の[[pH調整剤]]、カルシウム補充剤、化学合成原料、体質[[顔料]]、[[殺菌剤]]、歯科治療における[[感染根管処置]]時の貼薬剤などとしても用いられる。[[コンニャク]]の凝固剤としても使用されている。また、火力発電所の排ガス中の[[硫黄酸化物]]の除去にも用いられる。[[漆喰]]は水酸化カルシウムを主成分とする建築材料である<ref name="culture" />。

強塩基であることから、微生物の繁殖を抑制したり不活性化したりする性質がある<ref name="culture">{{Cite journal|和書|author1=沢辺大輔|author2=鳥越宣宏|url= https://doi.org/10.20665/kakyoshi.64.3_130 |title=漆喰の文化と化学(<シリーズ>教科書から一歩進んだ身近な製品の化学-匠の化学-)|volume=64|issue=3|pages=130-131|publisher=日本化学会|journal=化学と教育|accessdate=2019-09-26}}</ref>。中世ヨーロッパでは、[[ペスト]]の流行時に消石灰を家に撒く対策が行われた<ref name="culture" />。現代でも、[[高病原性鳥インフルエンザ]]や[[豚熱]]などの防疫のため、消石灰が利用されている<ref name="culture" />。

小中学校などでは校庭に白線を引く[[ラインパウダー]]として用いられていた。他方、強塩基であるため、目に入ると[[失明]]する危険性があることから、2007年11月に[[文部科学省]]スポーツ・青少年局学校健康教育課長名で通達{{r|通達}}が出されたこともあり、白線用としては、より安全な[[炭酸カルシウム]]に変更されている<ref>{{PDFlink|[http://www.gankaikai.or.jp/info/79fb8dbd6d62dbfe6f6ae7c877fb5d56.pdf 平成 24 年度学校での消石灰使用等に関するアンケート調査結果報告]}} - [[日本眼科医会|公益社団法人日本眼科医会]]</ref>。

== 反応 ==
=== 水溶液の性質 ===
水酸化カルシウムは水に少量溶解して塩基性を示し、飽和溶液の[[電離度]]が0.8程度と高いために[[強塩基]]として分類されるが、溶解度は[[アルカリ金属]]などの水酸化物よりはるかに低く、塩基としての作用はこれらより弱い。その[[溶解度積]]は以下の通りで、[[飽和水溶液]]は[[水素イオン指数|pH]]=12.4である。
:<chem>Ca(OH)2(s) <=> Ca^{2+}(aq) + 2OH^{-}(aq)</chem>,  <math>K_\mbox{sp} = 5.5 \times 10^{-6}</math>

また、水に対する溶解熱が発熱的であるため、[[溶解度]]は温度の上昇と伴に減少する。
:<chem>Ca(OH)2(s) <=> Ca^{2+}(aq) + 2 OH^{-}(aq)</chem>,  <math> \mathit{\Delta} H^\circ = -16.73 \mbox{kJ mol}^{-1}</math>

水酸化カルシウムを[[酸]]で[[中和 (化学)|中和]]したものであるカルシウム塩水溶液はごくわずかに[[加水分解]]するが、ほとんど無視し得る。その[[酸解離定数]]は以下の通りである。
:<chem>Ca^{2+}(aq) + H2O(l) <=> H^+(aq) + CaOH^+(aq)</chem>,  <math>\mbox{p}K_{a} = 12.7 \,</math>

したがって、水酸化カルシウムの第二段階[[塩基解離定数]]は以下のようになる。
:<chem>CaOH^+(aq) <=> Ca^{2+}(aq) + OH^{-}(aq)</chem>,  <math>\mbox{p}K_{b2} = 1.3 \,</math>

=== 二酸化炭素との反応・変化 ===
水酸化カルシウムが[[飽和]]した水溶液は'''石灰水''' (Lime water) と呼ばれ、[[二酸化炭素]]を吹き込むと炭酸カルシウムが析出し、白く濁る。これは生成する炭酸カルシウムが水に難溶性であるためである。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> CaCO3 + H2O</chem>
: <chem> ({Ca^{2+}(aq)} + {2OH^-(aq)} + CO2(g) -> {CaCO3(s)} + {H2O(l)} )</chem>

さらに、過剰に二酸化炭素を吹き込むと、炭酸カルシウムと二酸化炭素と水の結合により、[[炭酸水素カルシウム]]（Ca(HCO<sub>3</sub>)<sub>2</sub>）が生成される。炭酸水素カルシウムは水に溶解するので濁りも消えるが、以下の[[平衡定数]]の関係上、2倍程度に薄めた石灰水でないと濁りは完全に消えない。
: <chem>CaCO3 + CO2 + H2O <=> Ca(HCO_3)2</chem>
:<chem> ( {CaCO3(s)} + {CO2(g)} + H2O(l) <=> {Ca^{2+}(aq)} + {2HCO3 ^-(aq)} )</chem>
: <math>K = 1.6 \times 10^{-6}</math>

=== アンモニア発生実験 ===
実験室で[[アンモニア]]を発生させるとき、強塩基かつ[[相転移#物理学的性質|不揮発性]]の水酸化カルシウムと[[塩化アンモニウム]]を混合して加熱する。
: <chem>Ca(OH)2 + 2NH4Cl -> CaCl2 + 2NH3 + 2H2O</chem>

=== 中和反応 ===
水酸化カルシウムは[[塩基]]であるため、酸と[[中和_(化学)|中和反応]]を起こす。たとえば、[[塩酸]]と反応して水と[[塩化カルシウム]]を生成する。
: <chem>Ca(OH)2 + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O</chem>

== 人体への影響 ==
水溶液はアルカリ性を示すため、[[粘膜]]・[[皮膚]]を侵す。特に[[目]]に入った場合は[[角膜]]・結膜に障害を起こすことがあるので、速やかに流水で十分に洗眼し、緊急に眼科医の診察を受けるべきである。

胃に入った場合は[[胃液]]で中和されるために人体への影響は少ないが、多量に摂取すると下記のような健康への影響がありうる。

* [[呼吸困難]]
* [[内出血]]
* [[血圧]]上昇
* [[腎機能障害]]
* [[肝機能障害]]

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|refs=
<ref name="通達">{{Cite web|和書
 | url = http://www.hokenkai.or.jp/monbu/pdf/05.pdf
 | archiveurl = https://web.archive.org/web/20131102044929/hokenkai.or.jp/monbu/pdf/05.pdf
 | format = PDF
 | title = 運動場のラインなどに使用する石灰の取り扱いについて
 | publisher = 日本学校保健会
 | date = 2007-11-02
 | accessdate = 2017-10-02
 | archivedate = 2013-11-02
 | url-status=dead|url-status-date=2022-01-17 }}</ref>
}}

== 関連項目 ==
* [[酸化カルシウム]]（生石灰）
* [[炭酸カルシウム]]
* [[石灰]]
* [[石灰岩]]

== 外部リンク ==
* {{Wayback|url=http://rika-net.com/contents/cp0100a/contents/4610/4610.html |title=水酸化カルシウム 理科ねっとわーく（一般公開版） |date=20171002165812}} - 文部科学省 国立教育政策研究所
* {{Wayback|url=http://rika-net.com/contents/cp0100a/contents/3300/3300.html |title=石灰水 理科ねっとわーく（一般公開版） |date=20171002165635}} - 文部科学省 国立教育政策研究所

{{カルシウムの化合物}}
{{Normdaten}}
{{chem-stub}}

{{DEFAULTSORT:すいさんかかるしうむ}}
[[Category:カルシウムの化合物]]
[[Category:水酸化物]]