水酸化ナトリウムのソースを表示

{{Chembox
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| IUPACName = 水酸化ナトリウム<br />Sodium hydroxide
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| OtherNames = 苛性ソーダ<br />Caustic soda<br />Lye
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|  InChIKey = HEMHJVSKTPXQMS-REWHXWOFAM
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| Section2 = {{Chembox Properties
|  Formula =  NaOH
|  MolarMass = 39.99714 g mol<sup>−1</sup>
|  Appearance = 白色固体
|  Density = 2.13 g/cm<sup>3</sup>, 固体
|  MeltingPtC = 318
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|  Solubility = 1110 g / L (20 {{℃}})
|  Solvent1 = メタノール
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| Section3 = {{Chembox Hazards
| ExternalMSDS = [http://www.certified-lye.com/MSDS-Lye.pdf External MSDS]
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<!--旧規格のため、隠しました。--><!--| EUIndex = 011-002-00-6
| EUClass = 腐食性 ('''C''')
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| Section4 = {{Chembox Related
| OtherAnions = [[硫化水素ナトリウム]]
| OtherCations = [[水酸化セシウム]]<br />[[水酸化リチウム]]<br />[[水酸化カリウム]]<br />[[水酸化ルビジウム]]
}}
}}
'''水酸化ナトリウム'''（すいさんかナトリウム、{{lang-en-short|sodium hydroxide}}）は[[化学式]] NaOH で表される[[無機化合物]]で、[[ナトリウム]]の[[水酸化物]]であり、常温常圧では[[ナトリウムイオン]]と[[水酸化物イオン]]からなる[[イオン結晶]]である。'''苛性ソーダ'''（かせいソーダ、{{lang-en-short|caustic soda}}）と呼ばれることも多い。

[[強塩基]]（[[アルカリ]]）として広汎かつ大規模に用いられ、[[工業]]的に非常に重要な基礎[[化学品]]の1つである。[[毒物及び劇物取締法]]により原体および5 %を超える製剤が[[劇物]]に指定されている。

== 性質 ==
[[常温]]では[[無色]]無臭の[[固体]]。[[試薬]]としては[[白|白色]]の球粒状やフレーク状であるものが多い。[[融点]] 591&nbsp;[[ケルビン|K]](317.85[[℃]])、[[沸点]] 1661&nbsp;K(1387.85[[℃]])、[[密度]] 2.13&nbsp;g&nbsp;cm<sup>−3</sup>。[[潮解]]性が強く、空気中に放置すると徐々に吸湿して溶液状となる。

[[水]]に易溶（20 {{℃}} での[[溶解度]]は 1110&nbsp;g&nbsp;L<sup>−1</sup>）。水中で完全に[[電離]]し[[水酸化物イオン]]を放出するため、強い[[アルカリ性]]を示す。また、水に溶かす際に激しく発熱し (溶解熱は 44.5&nbsp;kJ&nbsp;mol<sup>−1</sup>)、その[[水和]]および溶解[[エンタルピー]]変化は以下の通りである<ref name="Parker">D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).</ref>。水溶液を濃縮すると一[[水和物]] NaOH・H<sub>2</sub>O が析出する。

: <chem>NaOH (s) + H2O (l) <=> NaOH . H2O (s) ,</chem> <math>\Delta H^\circ = -23.10 \mbox{kJ mol}^{-1}</math>
: <chem>NaOH (s) <=> Na^+ (aq) + OH^- (aq) ,</chem> <math>\ \Delta H^\circ = -44.51 \mbox{kJ mol}^{-1}</math>

[[二酸化炭素]]を吸収する能力が強く、水溶液は実験室においてその吸収剤として用いられる。
: <chem>2 NaOH + CO2 -> Na2CO3 + H2O</chem>

市販の製品は多少の[[炭酸ナトリウム]]を含んでいる（空気中の[[二酸化炭素]]と反応して表面に生成されるものも含む）が、50 % (d = 1.52 g cm<sup>−3</sup>, 19 [[濃度#物質量/体積（モル濃度）|mol&nbsp;dm<sup>−3</sup>]]) 程度の濃厚水溶液では、炭酸ナトリウムはほぼ完全に沈殿しこれを含まない水溶液の調製が可能となるため、[[分析化学]]において[[中和滴定]]などに用いられる。

工業用にはフレーク状やビーズ状のものもあるが、通常まとまって使用する場面では 48&nbsp;% 水溶液（工場出荷時の質量%）が流通しており、[[凝固点]]約 10&nbsp;{{℃}}、[[沸点]]約 138&nbsp;{{℃}}。性状は無色透明からやや灰色。[[密度]]は約 1.5&nbsp;g&nbsp;cm<sup>−3</sup>。固体および水溶液ともに空気中の[[二酸化炭素]]を吸収し[[炭酸ナトリウム]]を生じるため、密栓して保存する必要がある。[[ガラス]]を徐々に侵し[[ケイ酸ナトリウム]]を生じて固着するため、ガラス瓶、特に[[すり合わせ]]の栓は使用しない。

また、[[両性元素]]である[[アルミニウム]]と反応して[[アルミン酸ナトリウム]]水溶液を生成し[[水素]]を発生する。その他、[[亜鉛]]および[[ガリウム]]などもアルミニウムより反応性は低いが濃水酸化ナトリウム水溶液と徐々に反応する。
: <chem>2 NaOH + 2Al + 6H2O -> 2Na[Al(OH)_4] + 3H2</chem>

なお、強いアルカリはタンパク質の[[アミド結合]]（[[ペプチド結合]]）や油脂の[[エステル結合]]を[[加水分解]]するので、生体組織を腐食する。これが苛性ソーダという名称の由来とされる。身体に付着すると[[化学熱傷]]を起こすので、付着した場合は即座に多量の水でよく洗い流すべきである。特に目に入った際は、流水で10分以上洗い流し、即座に医師の手当てを受けるべきである。<ref>{{Cite book|和書|title=化学の新研究 改訂版|date=2019年1月10日|publisher=三省堂|page=462}}</ref><ref>[https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-1886JGHEJP.pdf 富士フイルム 水酸化ナトリウムのSDS(安全データシート)]</ref>。

== 製法 ==
* [[水酸化カルシウム]]（消石灰）と[[炭酸ナトリウム]]の[[複分解]]反応（2つの水溶液を混ぜる)。実験室ではこの方法が使いやすい。
: <chem>Ca(OH)2 + Na2CO3 -> 2NaOH + CaCO3 (s)</chem>

* [[塩化ナトリウム]]水溶液の[[電気分解]]によって得られる。
: <chem>2NaCl + 2H2O -> Cl2 + H2 + 2NaOH</chem>

: 陰極 <chem>2H2O{} + 2\mathit{e}^- -> H2{} + 2OH^-</chem>
: 陽極 <chem>2Cl^- -> Cl2{} + 2\mathit{e}^-</chem>

水酸化ナトリウムを製造する大規模な工業は[[ソーダ工業]]と呼ばれる。尤も現在では水酸化ナトリウム（苛性ソーダ）より同時に製造される塩素の需要の方が大きい。{{See also|ソーダ工業}}工業的には[[塩化ナトリウム]]を原料として、[[イオン交換]]と[[電気分解]]とを併用する[[イオン交換膜法]]によって製造する。さらに、水素を副生せずイオン交換膜法より消費電力の少ないガス拡散電極法も、[[2013年]]より東亞合成徳島工場を皮きりに商業運転が始まっている<ref>{{Cite press release|title=ガス拡散電極法を使用した電解槽設備の導入について|publisher=[[東亞合成]]|date=2013-08-06|url=http://www.toagosei.co.jp/whatsnew/news/n130806.pdf|format=pdf|和書|accessdate=2013-08-06}}</ref>。いずれの場合でも、[[塩素]]と水酸化ナトリウムのどちらか一方だけを選択的に得ることはできない。なお、歴史的にはイオン交換膜法以外に、水銀法や隔膜法が利用されてきた。日本国内では[[水俣病]]発生以降、水銀法が規制されて隔膜法が主流になり、その後、全量がイオン交換膜法によって製造されるようになった。

== 用途 ==
基礎工業[[薬品]]のひとつとして多様な方面で用いられる。水酸化ナトリウムの2016年度日本国内生産量は 3,860,717 t、消費量は 931,459 t である<ref>[https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/ichiran/08_seidou.html#menu5 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編]</ref>。2001年時点の世界生産量は4218万tであり、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]が1/4強と首位を占めた。これに[[中華人民共和国|中国]]、日本を加えた3カ国で全生産量の過半数を占める。

代表的な用途としては、単純な[[アルカリ]]として[[上水道]]・[[下水道]]や工業廃水の[[中和剤]]とされるほか、[[ボーキサイト]]から[[アルミニウム]]の原料である[[アルミナ]]（[[酸化アルミニウム]]）を取り出すのにも使用される。[[パン]]、[[スナック菓子]]の[[プレッツェル]]の生地を水溶液に浸けて、表面のつや出しと食感改善にも利用されている。ただし、高温 (170&nbsp;{{℃}} 前後) で焼かれるため、[[炭酸ナトリウム]]に変化し製品には残らない。

[[鹸化]]作用を利用する最も基礎的な薬品である。ほとんどの場合、固形[[石鹸]]の製造には水酸化ナトリウムが用いられる。石鹸ベースの[[洗剤]]の製造にも使われることがあるが、こちらは[[水酸化カリウム]]を用いる液体石鹸がベースの製品が多い。家庭で[[天ぷら]]油の廃油などを利用した手作り石鹸を制作する際にも欠かせない薬品で、薬局等にて[[印鑑]]と[[身分証明書]]があれば購入可能であるが、水酸化ナトリウムは'''大変危険な薬品'''であることを決して忘れてはならない。強力な塩基性の薬品であるとともに、[[水和熱]]が大きいことから思わぬ爆発的反応を起こす事があり（例えばフレークの苛性ソーダに水をかけると急激に発熱し突沸する）、不慮の事故につながりかねない。

水酸化ナトリウムそのものの強力な脱脂作用や強塩基性の溶解能力を利用して直接洗浄剤として用いられることもあり、市販の排水管クリーナーは水酸化ナトリウムを主剤としたものが多い。またこれに加えて[[水酸化カリウム|苛性カリ(水酸化カリウム)]]や[[界面活性剤]]を加え洗浄力を強化した製品も販売されている。こちらは主に業務用で、空調業界や[[クリーニング]]業で使用される。また、油分と反応して[[鹸化]]する特性を利用して、[[めっき]]工場などでの[[脱脂]]処理として利用されることもある。

[[製紙]]工業においては、[[パルプ]]製造の際、原料の木材中の[[リグニン]]を溶解するための蒸解工程で[[硫化ナトリウム]]とともに多量に消費される。

学校教育の現場で、[[葉]]の[[葉脈]]を取り出す実験を行う際の水溶液として利用されることがある。葉を水酸化ナトリウムの水溶液に浸して加熱したあと、葉肉を歯ブラシなどで除去し、葉脈を取り出す。また、{{仮リンク|水の電気分解|en|Electrolysis of water}}の実験の際に水に電気を通しやすくするために水に水酸化ナトリウム水溶液を溶かすこともある。

過去に[[ラーメン]]のコシを出すために使われている[[かん水|かんすい]]の代用品として使われていた時期もあったが、現在は、[[食品衛生法]]により、[[食品添加物]]としての使用は条件が付けられている。製造用剤としては許されるが、最終食品の完成前に[[中和 (化学)|中和]]又は除去する必要がある<ref>[https://web.archive.org/web/20130627190105/http://www.ffcr.or.jp/zaidan/MHWinfo.nsf/0/980837ba5d9b0d28492575d6000785e6 財団法人日本食品化学研究振興財団]</ref>。

== 危険性 ==
=== 生体への危険性 ===
水酸化ナトリウムの人体に対する有害性は主に強アルカリ性に起因する腐食性によるものであり、腐食性を示す限界濃度は2%と考えられている<ref name=NIHS/>。[[OECDテストガイドライン]]435に従った[[in vitro]]膜バリア試験法では破綻時間13.16分という結果が得られており、[[化学品の分類および表示に関する世界調和システム|GHS分類]]における皮膚腐食性は区分1に分類される<ref>{{Cite web|title=REACH registered substances factsheets: Sodium hydroxide - Skin irritation / corrosion|url=https://echa.europa.eu/registration-dossier/-/registered-dossier/15566/7/4/2|publisher=[[欧州化学物質庁]]|accessdate=2023-12-10}}</ref>。溶液では短時間の接触でもII度またはIII度の[[熱傷]]を引き起こし、動物実験においてもウサギに対する5%溶液の皮膚への塗布で4時間後に重度の壊死の発生、ブタに対する8%溶液の塗布で15分以内に水泡が生じ24%溶液では皮下組織に達する壊死が生じるなどの試験結果が報告されている<ref name=hazmap>{{Cite web|title=Hazardous Agents: Sodium hydroxide|url=https://haz-map.com/Agents/628|website=Haz-Map|publisher=[[アメリカ国立医学図書館]]|accessdate=2023-12-10}}</ref><ref name=NIHS/>。また、OECDテストガイドライン405に従ったウサギに対する[[in vivo]]眼安全性試験において水酸化ナトリウムの2%溶液で中程度の[[角膜]]の損傷が観測されている<ref>{{Cite web|title=REACH registered substances factsheets: Sodium hydroxide - Eye irritation|url=https://echa.europa.eu/registration-dossier/-/registered-dossier/15566/7/4/3|publisher=[[欧州化学物質庁]]|accessdate=2023-12-10}}</ref>。ヒトに対しては高濃度の粉塵や溶液が眼に入ったことによる重篤な眼の損傷や失明の事例が多く報告されており、GHS分類における眼に対する重篤な損傷・眼刺激性は区分1に分類される<ref name=nite/>。水酸化ナトリウムは固形では口に入った時点で口内粘膜の損傷が起こるため飲み込んでしまう事は起りにくいが、水溶液は無味無臭のため高濃度溶液の誤飲によって口腔や食道、上部消化管の損傷や重度の腐食が引き起こされ、上部消化管の壊死による死亡例も見られる<ref name=nite/><ref name=NIHS>{{Cite report|和書|title=欧州連合 リスク評価書 (Volume 73, 2007) 水酸化ナトリウム|date=2009-03|url=https://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/eu/euj/V73-j.pdf|publisher=[[国立医薬品食品衛生研究所]] 安全情報部|accessdate=2023-12-10}}</ref>。また粉塵やミストの吸入によって呼吸器の粘膜の刺激や重篤になると[[肺水腫]]などの症状が引き起こされる<ref name=nite/>。アメリカ合衆国労働安全衛生研究所は脱出限界濃度を10mg/m<sup>3</sup>としており、2から8mg/m<sup>3</sup>の濃度環境下での職業的曝露によって呼吸器に炎症が生じる恐れがあるとしている<ref name=hazmap/>。

水酸化ナトリウムの[[無有害作用量]]は1mg/m<sup>3</sup>とされており<ref>{{Cite web|title=REACH registered substances factsheets: Sodium hydroxide - Toxicological Summary|url=https://echa.europa.eu/registration-dossier/-/registered-dossier/15566/7/1|publisher=[[欧州化学物質庁]]|accessdate=2023-12-10}}</ref>、[[日本産業衛生学会]]は最大許容濃度を2mg/m<sup>3</sup><ref>{{Cite journal|和書|title=許容濃度等の勧告（2022年度）|author=[[日本産業衛生学会]]|date=2022-05-25|journal=産業衛生学雑誌|volume=64|issue=5|page=256|publisher=日本産業衛生学会|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/64/5/64_S22001/_article/-char/ja|doi=10.1539/sangyoeisei.S22001}}</ref>、{{仮リンク|アメリカ産業衛生専門家会議|en|American Conference of Governmental Industrial Hygienists}}も曝露上限値を2mg/m<sup>3</sup>としている<ref>{{Cite web|title=SODIUM HYDROXIDE|url=https://www.acgih.org/sodium-hydroxide/|publisher={{仮リンク|アメリカ産業衛生専門家会議|en|American Conference of Governmental Industrial Hygienists}}|accessdate=2023-12-10}}</ref>。このような濃度範囲における水酸化ナトリウムの曝露で吸入されるナトリウム量はヒトが食品から摂取する量と比較して極めて微量であり、また経皮的な接触においても水酸化ナトリウムの体内への吸収は非常に少ないと考えられているため、通常の取り扱いにおいて水酸化ナトリウムへの曝露が血中のナトリウム濃度やpHに影響を与えることは無いと考えられている<ref name=NIHS/>。

水生生物への急性毒性としては{{仮リンク|ネコゼミジンコ属|en|Ceriodaphnia|label=ネコゼミジンコ}}に対する48時間LC<sub>50</sub>=40mg/Lという試験データがある<ref name=nite>{{Cite web|title=政府によるGHS分類結果 水酸化ナトリウム（平成21年度再分類）|url=https://www.nite.go.jp/chem/ghs/09-mhlw-2010.html|publisher=[[製品評価技術基盤機構]]|accessdate=2023-12-10}}</ref>。これは水酸化ナトリウムによって水がアルカリ性となることが毒性を示す原因と考えられており<ref name=nite/>、河川等に多量の水酸化ナトリウムが流出することによる魚類の[[斃死]]事故も起きている<ref>{{Cite web|title=事故時の措置及びその対象物質に関する情報|url=https://www.env.go.jp/council/content/i_07/900428945.pdf|publisher=[[環境省]]|accessdate=2023-12-10}}</ref>。

水酸化ナトリウムの多くは、電解ソーダ法により製造される。日本では[[1915年]]（大正4年）頃から工業的な製造が始まったが、当時は、同時に生成される[[塩素]]や[[公害]]対策そのものの知見が少なかったために、水酸化ナトリウムの製造工場の労働者や付近の住民に塩素中毒患者が発生した<ref>{{Cite book |和書 |author=下川耿史 家庭総合研究会 編 |title=明治・大正家庭史年表:1868-1925 |publisher=河出書房新社 |year=2000 |page=404 |isbn=4-309-22361-3}}</ref>。

=== 物理的危険性 ===
水酸化ナトリウム自身は不燃性であるものの、[[溶解熱]]が大きいため水酸化ナトリウムを水に溶解させる際に沸点を越えて発熱し高温の高アルカリ溶液を飛散させる危険があり、さらにこの高温の蒸気や飛沫によって周囲の可燃性物質が発火する恐れがある<ref name=HSDB>{{Cite web|title=HAZARDOUS SUBSTANCES DATA BANK (HSDB): SODIUM HYDROXIDE|url=https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/source/hsdb/229|website=[[PubChem]]|publisher=[[アメリカ国立生物工学情報センター]]|accessdate=2023-12-10}}</ref><ref name=CAMEO/>。また、[[湿潤空気]]中で[[アルミニウム]]や[[亜鉛]]などの[[両性 (化学)|両性]]金属と反応して爆発性の[[水素]]ガスを発生させる<ref name=HSDB/>。その他、[[アセトアルデヒド]]や[[アクロレイン]]などの重合性化合物に対して触媒的に働くため、偶発的な接触により激しく反応して高温となり予期せぬ事故が発生する危険性がある<ref name=HSDB/><ref name=CAMEO/>。

=== 規制 ===
水酸化ナトリウムは国際輸送においてクラス8腐食性物質の[[危険物]]として規制されており、固体のものには[[国連番号]]1823<ref>{{Cite web|title=UN/NA 1823: Sodium hydroxide solid|url=https://cameochemicals.noaa.gov/unna/1823|website=CAMEO Chemical|publisher=[[アメリカ海洋大気庁]]|accessdate=2024-12-10}}</ref>、水溶液には国連番号1824が割り振られている<ref>{{Cite web|title=UN/NA 1824: Sodium hydroxide solution|url=https://cameochemicals.noaa.gov/unna/1824|website=CAMEO Chemical|publisher=[[アメリカ海洋大気庁]]|accessdate=2024-12-10}}</ref>。また、日本においては[[毒物及び劇物取締法]]によって劇物に指定されており<ref>{{Cite web|title=毒物及び劇物取締法（昭和二十五年法律第三百三号）（令和四年法律第六十八号による改正）|url=https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000303|website=[[e-Gov法令検索]]|publisher=[[デジタル庁]]|accessdate=2023-12-10}}-別表第二第五十四号</ref>、さらに毒物及び劇物指定令で水酸化ナトリウムを含む製剤も含有率5%以下のものを除き劇物となっている<ref>{{Cite web|title=毒物及び劇物指定令（昭和四十年政令第二号）（令和五年政令第百九十三号による改正）|url=https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000002|website=[[e-Gov法令検索]]|publisher=[[デジタル庁]]|accessdate=2023-12-10}}-第二条第一項第六十八号</ref>。その他、[[水質汚濁防止法]]施行令によって指定物質とされており<ref>{{Cite web|title=水質汚濁防止法施行令（昭和四十六年政令第百八十八号）（令和四年政令第三百九十六号による改正）|url=https://laws.e-gov.go.jp/law/346CO0000000188|website=[[e-Gov法令検索]]|publisher=[[デジタル庁]]|accessdate=2023-12-10}}-第三条の三</ref>、事故などによって公共水域に流出した際には届出することが義務となっている<ref>{{Cite web|title=水質汚濁防止法（昭和四十五年法律第百三十八号）（令和四年法律第六十八号による改正）|url=https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000138|website=[[e-Gov法令検索]]|publisher=[[デジタル庁]]|accessdate=2023-12-10}}-第十四条の二第二項</ref>。アメリカにおいても包括的環境対処・補償・責任法（{{仮リンク|スーパーファンド法|en|Superfund}}）における有害物質に指定されており、その報告基準量は1000[[ポンド (質量)|ポンド]]となっている<ref name=CAMEO>{{Cite web|title=Chemical Datasheet: SODIUM HYDROXIDE, SOLID|url=https://cameochemicals.noaa.gov/chemical/9073|website=CAMEO Chemical|publisher=[[アメリカ海洋大気庁]]|accessdate=2024-12-10}}</ref>。

== 出典 ==
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
* 卜部𠮷庸 『化学の新研究 改訂版』(三省堂 2019年)

== 関連項目 ==
* [[ソーダ工業]]
* [[建染染料]]
* [[電解ソーダ]]
* [[電気化学工業]]

== 外部リンク ==
* [http://www.jsia.gr.jp/ 日本ソーダ工業会]
* {{Wayback|url=https://rika-net.com/contents/cp0100a/contents/3380/3380.html |title=水酸化ナトリウム 理科ねっとわーく（一般公開版） |date=20171003174834}} - 文部科学省 国立教育政策研究所
* [http://kikakurui.com/k8/K8576-2019-01.html 水酸化ナトリウム (試薬) JISK8576:2019]

{{ナトリウムの化合物}}
{{乾燥}}
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:すいさんかなとりうむ}}
[[Category:水酸化物]]
[[Category:ナトリウムの化合物]]
[[Category:劇物]]
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