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{{出典の明記|date=2023年8月}} '''水酸化物'''(すいさんかぶつ、{{Lang-en|hydroxide}})とは、[[塩 (化学)|塩]]のうち、陰イオンとして[[水酸化物イオン]] (OH<sup>-</sup>) を持つ化合物のこと。陽イオンが金属イオンの場合、一般式は M<sub>x</sub>(OH)<sub>y</sub> と表される。一般に[[塩基]]性([[塩基|アルカリ性]])もしくは両性を持ち、[[水酸化ナトリウム]] (NaOH) など、[[アルカリ金属]]や[[アルカリ土類金属]]の水酸化物は[[強塩基]]性を示す。組成式が水酸化物と相同することから、金属[[酸化物]]の[[水和物]] M<sub>x</sub>O<sub>y</sub>•(H<sub>2</sub>O)<sub>z</sub> を含む場合もある。 アルカリ金属以外の水酸化物は、一般に加熱により水を失い[[酸化物]]となる。 : <chem>M(OH)_\mathit{n} -> MO_{\mathit{n}/2}\ + \frac{\mathit{n}}{2}H2O</chem> 英語の "hydroxide" には[[アルコール]]や[[フェノール]]などの[[ヒドロキシ基]]を持つ有機化合物も含まれるが、日本語の「水酸化物」にはこれらの化合物は含まれない。[[有機化合物]]のヒドロキシ基は[[共有結合]]により母骨格と結びついている。 == 溶解度と塩基強度 == 金属イオンの電荷が小さく[[イオン半径]]の大きいアルカリ金属の水酸化物は、イオン間の[[静電気力]]が小さいため[[水]]に対する[[溶解度]]が大きく、かつ強塩基である。しかし電荷が2価のものでは比較的イオン半径の大きいアルカリ土類金属の水酸化物は幾分水に溶解するが、その他の重金属水酸化物では溶解度も小さく塩基としても弱い。これは静電気力が増大し、かつ[[d軌道]]電子などの影響により金属イオンと水酸化物イオン間の結合が共有結合性を帯びるためである。3価の水酸化物ではより共有結合性が強くなり、溶解度はさらに小さく塩基としても弱い。 水酸化物の[[溶解度積]]と、水酸化物の[[共役酸]]に相当する水和金属イオンの[[酸解離定数]]との間には相関関係が見られる。 {| class="wikitable" style="float:left; text-align: center" ! 水酸化物 !! 化学式 !! 溶解度積 !! 水和イオン !! 水和イオンのp''K''a |- | [[水酸化カルシウム]] || <chem>Ca(OH)2</chem> || 5.5×10<sup>−5</sup> || Ca<sup>2+</sup> || 12.7 |- | [[水酸化マグネシウム]] || <chem>Mg(OH)2</chem> || 1.2×10<sup>−11</sup> || Mg<sup>2+</sup> || 11.4 |- | [[水酸化マンガン]] || <chem>Mn(OH)2</chem> || 2.9×10<sup>−13</sup> || Mn<sup>2+</sup> || 10.6 |- | [[水酸化鉄(II)]] || <chem>Fe(OH)2</chem> || 1.5×10<sup>−16</sup> || Fe<sup>2+</sup> || 9.5 |- | [[水酸化亜鉛]] || <chem>Zn(OH)2</chem> || 4×10<sup>−17</sup> || Zn<sup>2+</sup> || 9.0 |- | [[水酸化銅(II)]] || <chem>Cu(OH)2</chem> || 1.9×10<sup>−20</sup> || Cu<sup>2+</sup> || 7.3 |- | {{link-zh|水酸化ランタン|氫氧化鑭|氢氧化镧}} || <chem>La(OH)3</chem> || 5.2×10<sup>−20</sup> || La<sup>3+</sup> || 9 |- | [[水酸化アルミニウム]] || <chem>Al(OH)3</chem> || 5×10<sup>−33</sup> || Al<sup>3+</sup> || 5.0 |- | [[水酸化鉄(III)]] || <chem>Fe(OH)3</chem> || 2.5×10<sup>−39</sup> || Fe<sup>3+</sup> || 2.2 |} {{-}} 水酸化物の[[溶解平衡]]は以下の式で表され、水に難溶性のものでも酸性水溶液では水酸化物イオンが消費され[[化学平衡|平衡]]が右辺に偏るため溶解する。また溶解度積が小さな水酸化物を形成する金属イオンの水溶液ではより[[水素イオン指数|pH]]が低い水溶液からでも水酸化物を沈殿する。 : <chem>M(OH)_\mathit{n}\ \rightleftarrows\ M^{\mathit{n}+}\ + \mathit{n} OH^-</chem> 水酸化物には強塩基性の水溶液に対し溶解度が増大する、'''両性水酸化物'''と呼ばれるものが存在し、[[水酸化アルミニウム]]および[[水酸化亜鉛]]などはこの性質が著しいが、これは水酸化物に対しより高次の水酸化物イオンの配位が起こりヒドロキシ[[錯体]]を形成することによるもので、程度の違いはあるものの多くの水酸化物に一般的に見られる現象である。 : <chem>M(OH)_\mathit{n}\ + \mathit{m} OH^-\ \rightleftarrows\ M(OH)_{\mathit{n}\mathrm{+}\mathit{m}}{}^\mathit{m-}</chem> == 水酸化物の例 == * [[水酸化アルミニウム]] (Al(OH)<sub>3</sub>) * 水酸化アンモニウム (NH<sub>4</sub>OH) – [[アンモニア]]水 * [[水酸化カリウム]](苛性カリ、KOH) * [[水酸化カルシウム]](消石灰、Ca(OH)<sub>2</sub>) * [[水酸化ナトリウム]](苛性ソーダ、NaOH) * [[水酸化マグネシウム]] (Mg(OH)<sub>2</sub>) * [[水酸化鉄]] * [[水酸化銅(II)]] == 用途 == 水酸化ナトリウムや水酸化カリウムは、酸を[[中和 (化学)|中和]]する安価な塩基として用いられる。 == 水酸化鉱物 == {{See also|鉱物の一覧#水酸化鉱物}} [[鉱物学]]において、主に水酸化物からなる[[鉱物]]を'''水酸化鉱物'''(すいさんかこうぶつ、{{Lang-en-short|hydroxide mineral}})という。[[ダイアスポア]](AlO(OH))、[[針鉄鉱]](FeO(OH))、[[水滑石]](Mg(OH)<sub>2</sub>)、[[ギブス石]](Al(OH)<sub>3</sub>)などがある。 == 関連項目 == {{Commonscat|Hydroxides}} * [[水酸化物イオン]] * [[ヒドロキシ基]] * [[酸化物]] * [[鉱物]]、[[鉱物の一覧]] {{Strunz}} {{Normdaten}} {{Chem-stub}} {{DEFAULTSORT:すいさんかふつ}} [[Category:水酸化物|*]] [[Category:酸素の化合物]] [[Category:塩基]] [[en:Hydroxide#Inorganic hydroxides]]
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