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{{翻訳直後|1=[https://en.wikipedia.org/w/index.php?oldid=911479228 (03:46, 19 August 2019 UTC)]|date=2019年10月}} {{DISPLAYTITLE:氷I<sub>h</sub>相}} [[ファイル:Icecube-detail.jpg|サムネイル|拡大した角氷の詳細を示す写真。氷I<sub>h</sub> は地球で一般的にみられる氷の形である。]] [[ファイル:Phase_Space_of_Ice_Ih.png|サムネイル|他の氷相に関する氷I<sub>h</sub> の相空間]] '''氷I<sub>h</sub>相'''(こおりいちエイチそう、英語では'''ice one h'''と発音、'''one-phase-one'''とも)は、普通の[[氷]]、または凍った[[水の性質|水]]の六角形の結晶形である<ref>{{Cite journal|last=Norman Anderson|title=The Many Phases of Ice|url=http://atom.me.gatech.edu/zhut/Courses/Courses_HarvardCollection/caiwei/phasesofice.pdf|publisher=Iowa State University}}</ref>。[[生物圏]]にあるほとんど全ての氷は氷I<sub>h</sub>であるが、例外として高層大気にときどき存在する[[氷Ic相|氷I<sub id="mwGg">c</sub>]]がわずかにある。氷I<sub>h</sub>は生命の存在と[[気候学|地球気候]]の調整に関する多くの特異な特性を示す。 [[結晶構造]]は[[三角錐|四面体]]の[[結合角]]に近い角度で六方対称を形成する酸素原子により特徴づけられる。氷I<sub>h</sub>は、{{Convert|-268|C|K F|0}}まで安定しており、これは[[X線回折]]<ref name="Rottger">{{Cite journal|last=Rottger|first=K.|last2=Endriss|first2=A.|last3=Ihringer|first3=J.|last4=Doyle|first4=S.|last5=Kuhs|first5=W. F.|year=1994|title=Lattice Constants and Thermal Expansion of H<sub>2</sub>O and D<sub>2</sub>O Ice I<sub>h</sub> Between 10 and 265 K|journal=Acta Crystallogr.|volume=B50|issue=6|pages=644–648|doi=10.1107/S0108768194004933}}</ref>と非常に高解像度の熱膨張測定で証明されている<ref name="Buckingham">{{Cite journal|last=David T. W. Buckingham, J. J. Neumeier, S. H. Masunaga, and Yi-Kuo Yu|year=2018|title=Thermal Expansion of Single-Crystal H<sub>2</sub>O and D<sub>2</sub>O Ice Ih|journal=Physical Review Letters|volume=121|pages=185505|doi=10.1103/PhysRevLett.121.185505}}</ref>。氷I<sub>h</sub>は最大約{{Convert|210|MPa|atm}} の圧力が加えられても安定しており、そこで[[氷III]]や[[氷II]]に転移する<ref>{{Cite journal|last=P. W. Bridgman|year=1912|title=Water, in the Liquid and Five Solid Forms, under Pressure|journal=Proceedings of the American Academy of Arts and Sciences|volume=47|issue=13|pages=441–558|doi=10.2307/20022754|jstor=20022754}}</ref>。 == 物理的特性 == 氷I<sub>h</sub> の密度は0.917 g/cm<sup>3</sup> で[[水の性質|液体の水]]の密度よりも低い。これは固相内の原子間距離を遠ざける[[水素結合]]の存在が原因である<ref>{{Cite book|last=Paula,|first=Peter Atkins,... Julio de|title=Physical chemistry.|date=2010|publisher=W. H. Freeman and Co.|location=New York|isbn=978-1429218122|edition=9th}}</ref>。氷は水に浮かぶが、このことは他の材料と比較すると非常に珍しいことである。固相は通常液相よりも密にきちんと詰まっているため密度が高くなる。湖が凍結すると表面のみ凍結し、湖の底は水の密度が最も高くなる{{Convert|4|C|K F|0}} 近くを維持する。表面がどんなに冷たくても、湖の底には常に{{Convert|4|C|K F|0}}の層がある。水と氷のこの異常な振る舞いにより魚が厳しい冬を生き延びることができる。氷I<sub>h</sub> の密度は約{{Convert|-211|C|K F|0}}までは冷やすと増加し、それ以下になると再び膨張する([[負の熱膨張]])<ref name="Rottger">{{Cite journal|last=Rottger|first=K.|last2=Endriss|first2=A.|last3=Ihringer|first3=J.|last4=Doyle|first4=S.|last5=Kuhs|first5=W. F.|year=1994|title=Lattice Constants and Thermal Expansion of H<sub>2</sub>O and D<sub>2</sub>O Ice I<sub>h</sub> Between 10 and 265 K|journal=Acta Crystallogr.|volume=B50|issue=6|pages=644–648|doi=10.1107/S0108768194004933}}</ref><ref name="Buckingham">{{Cite journal|last=David T. W. Buckingham, J. J. Neumeier, S. H. Masunaga, and Yi-Kuo Yu|year=2018|title=Thermal Expansion of Single-Crystal H<sub>2</sub>O and D<sub>2</sub>O Ice Ih|journal=Physical Review Letters|volume=121|pages=185505|doi=10.1103/PhysRevLett.121.185505}}</ref>。 [[融解熱|融解の潜熱]]は{{Val|5987|u=J|up=mol}}であり、昇華の潜熱は{{Val|50911|u=J|up=mol}}である。高い昇華潜熱は主に[[結晶格子]]内の[[水素結合]]の強さを示している。融解潜熱はずっと小さく、これは0 °C近くの液体水にもかなりの水素結合が含まれているからである。氷I<sub>h</sub> の屈折率は1.31である。 == 結晶構造 == [[ファイル:Cryst_struct_ice.png|サムネイル|250x250ピクセル|氷I<sub>h</sub>の結晶構造。破線は水素結合を表す。]] 通常の氷の受け入れられている[[結晶構造]]は最初1935年に[[ライナス・ポーリング]]により提案された。氷I<sub>h</sub>の構造は概略的にいうと、各頂点に[[酸素]]原子があり[[水素結合]]により形成されたリングの縁を持つ[[平面充填|モザイク状]]の六角形のリングからなるしわ寄せた面の1つである。この面はABABパターンで交互に並んでおり、B面は平面自体と同じ軸に沿ってA面を反射させたものである<ref name="bjerrum">{{Cite journal|last=Bjerrum|first=N|date=11 April 1952|title=Structure and Properties of Ice|journal=Science|volume=115|issue=2989|pages=385–390|bibcode=1952Sci...115..385B|doi=10.1126/science.115.2989.385}}</ref>。各結合に沿った酸素原子間の距離は約275[[ピコメートル|pm]]であり、格子内の結合した2つの酸素原子間で同じである。結晶格子内の結合間の角度は、109.5°の[[三角錐|正四面体角]]に非常に近く、これは水分子(気相中)の水素原子間の角度である105°にも非常に近い。水分子のこの四面体結合角により本質的に結晶格子の異常に低い密度が説明される。結晶格子の体積の増加にはエネルギー的な不利益があるが、格子が四面体角で配置されることは有益なことである。結果として、大きな六角形のリングにより別の水の分子が内部に存在するのに十分な空間が残される。これにより、自然に発生する氷に液体よりも密度が低いという特異な性質が与えられる。四面体の角度で水素結合した六角形のリングは、液体の水が4 °Cで最も密度が高くなるメカニズムでもある. 0 °C付近では液体の水の中に小さな六角形の氷I<sub>h</sub>のような格子が形成され0°Cに近いほどその頻度が高くなる。この効果により水の密度が下がり、構造の形成の頻度が低い4 °Cで最も密度が高くなる。 == 水素の乱雑さ == 結晶格子内の[[水素]]原子は、水素結合にほぼ沿っており、この方法で各々の水分子が保持されている。これは格子内の各酸素原子には2つの隣接する水素があることを意味し、275 pmの結合長に沿って101 pmで隣接している。水素原子が絶対零度まで冷却されると、結晶格子により構造内で凍結した水素原子の位置に相当な量の無秩序が生じる。その結果、結晶構造には格子固有で可能な水素位置の配置数の数により決定される残余[[エントロピー]]が含まれる。これは各酸素原子が2つの水素のみを最も近接するところに持ち、1つの水素原子のみを持つ2つの酸素原子を結合する各水素結合という必要条件を維持しながら形成できる<ref name="bernal">{{Cite journal|last=Bernal|first=J. D.|last2=Fowler, R. H.|date=1 January 1933|title=A Theory of Water and Ionic Solution, with Particular Reference to Hydrogen and Hydroxyl Ions|journal=The Journal of Chemical Physics|volume=1|issue=8|pages=515|bibcode=1933JChPh...1..515B|doi=10.1063/1.1749327}}</ref>。この残余エントロピー''S''<sub>0</sub> は3.5 J mol<sup>−1</sup> K<sup>−1</sup>に等しい<ref>{{Cite journal|last=Pauling|first=Linus|date=1 December 1935|title=The Structure and Entropy of Ice and of Other Crystals with Some Randomness of Atomic Arrangement|journal=Journal of the American Chemical Society|volume=57|issue=12|pages=2680–2684|doi=10.1021/ja01315a102}}</ref>。 最初の原理からこの数を概算する様々な方法がある。水素分子が''N''個与えられたとする。酸素原子は[[2部グラフ|2部]]格子を形成する。それらは2つのセットに分割でき、1つのセットからの酸素原子の全ての隣接するものが他のセットに含まれる。1つのセットの酸素原子に注目すると''N/2''の酸素原子がある。それぞれに4つの水素結合があり、2つの水素は近くに2つの水素が遠くにある。これはこの酸素原子に対して水素の構成が :<math>\tbinom 4 2 = 6</math> だけ可能であることを意味する。よって、これら''N/2''個の原子を満たす6<sup>''N/2''</sup> の構成がある。ここで残りの''N/2''個の酸素原子を考えると一般的に満たされない(つまり、その近くにはきっちり2つの水素原子はない)。それぞれについて、水素結合に沿った水素原子の :<math>2^4 = 16</math> の可能な配置があり、そのうち6つが許されている。そのため、単純に考えると構成の合計数は :<math>6^{N/2} (6/16)^{N/2} = (3/2)^N</math> と予測できる。[[ボルツマンの公式]]を用いると :<math>S_0 = Nk\ln(3/2)</math> となる。ここで<math>k</math>は[[ボルツマン定数]]で、3.37 J mol<sup>−1</sup> K<sup>−1</sup> の値を持ち、計測値と非常に近い。2番目のセットにおける酸素原子の16個の水素構成のうち6個が独立して選択できる(誤りである)と仮定しているため、この推定は「素朴」である。より複雑な方法を使用し、可能な構成の正確な数をより正確に近似し、測定値により近い結果を得ることができる。 対照的に氷IIの構造は水素が秩序だっているため、結晶構造が氷Iの構造に変化した時の3.22 J/molのエントロピー変化を説明するのに役立つ。また、氷Ihの[[斜方晶系]]で水素が秩序だった形をとる氷XIは、低温で最も安定した形と考えられている。 == 脚注 == <references /> == 関連文献 == * N. H. Fletcher, The Chemical Physics of Ice, Cambridge UP (1970) * Victor F. Petrenko and Robert W. Whitworth, Physics of Ice, Oxford UP (1999) * {{Cite web|url=http://www.lsbu.ac.uk/water/ice1h.html|title=Hexagonal ice structure|accessdate=2008-01-02|author=Chaplin, Martin|date=2007-11-11|website=Water Structure and Science}} {{DEFAULTSORT:こおりいちえいちそう}} [[Category:氷]] [[Category:結晶]]
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