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求核付加反応
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[[有機化学]]において '''求核付加反応'''(きゅうかくふかはんのう、Nucleophilic addition)とは、[[付加反応]]の一つで、[[化合物]]に[[求核剤]]が付加することによって[[π結合]]が解裂し、新たに2つの[[共有結合]]が生成する反応である<ref>March Jerry; (1885). Advanced Organic Chemistry reactions, mechanisms and structure (3rd ed.). New York: John Wiley & Sons, inc. ISBN 0-471-85472-7</ref>。 求核付加反応を行う化合物は以下のような多重結合を持つものに限定される。 * [[炭素]]-[[ヘテロ原子]]多重結合 - [[カルボニル基]]、[[イミン]]、[[ニトリル]] * 炭素-炭素多重結合 - [[アルケン]]、[[アルキン]] == 炭素-ヘテロ原子への付加 == [[カルボニル基]]や[[ニトリル]]のような炭素-ヘテロ原子多重結合への求核剤の付加は変化に富んでいる。それらの結合は2原子間の電気陰性度の差によって炭素側が正に帯電する。この炭素が求核剤の主なターゲットとなる。 :YH + R<sub>1</sub>R<sub>2</sub>C=O → YR<sub>1</sub>R<sub>2</sub>C-O<sup>-</sup> + H<sup>+</sup> → YR<sub>1</sub>R<sub>2</sub>C-OH このタイプの反応を '''1,2-求核付加''' (1,2-nucleophilic addition) と呼ぶ。この求核攻撃における[[立体化学]]は、両方のアルキル基が異なりかつ[[キレート]]や[[ルイス酸]]のような制御剤を使用しない限り、[[ラセミ体]]の生成物を与える。付加反応に続いて脱離反応がともなう場合があり、[[求核アシル置換反応]]や[[付加脱離反応]]はその例である。 === カルボニル基 === カルボニル基への求核付加反応には以下のようなものがある。 * 水を付加させると[[ジェミナル]][[ジオール]]が生成。([[水和反応]]) * [[アルコール]]を付加させると[[アセタール]]が生成。([[アセタール化]]) * [[ヒドリド]]を付加させると[[アルコール]]が生成。([[有機酸化還元反応|還元]]) * [[アミン]]と[[ホルムアルデヒド]]とカルボニル化合物を反応させるとβ-アミノカルボニル化合物が生成。([[マンニッヒ反応]]) * [[エノラート]]イオンを付加させる[[アルドール反応]]、[[森田・ベイリス・ヒルマン反応]]。 * 有機金属求核剤を付加させる[[グリニャール反応]]、[[バービアー反応]]、[[レフォルマトスキー反応]]。 * [[イリド]]を付加させる[[ウィッティヒ反応]]、[[コーリー・チャイコフスキー反応]]、[[ピーターソン反応]]。 * ホスホン酸カルバニオンを付加させる[[ホーナー・ワズワース・エモンズ反応]]。 * [[ピリジン]]誘導体から発生させた双性イオンを付加させる[[ハミック反応]]。 * [[金属アセチリド|アセチリド]]を付加させる[[ファヴォルスキー反応]]。 === ニトリル === [[ニトリル]]への求核付加反応には以下のようなものがある。 * [[アミン]]または[[カルボン酸]]への[[加水分解]]。 * 有機亜鉛求核剤を付加させる[[ブレーズ反応]]。 * [[アルコール]]を付加させる[[ピナー反応]]。 * ニトリル同士を縮合させる[[ソープ反応]]。 === イミン、他 === [[イミン]]への求核付加反応には以下のようなものがある。 * ヒドリドを付加させ[[アミン]]にする[[エシュバイラー・クラーク反応]]。 * 水を付加させカルボニル化合物にする[[ネフ反応]]。 その他 * [[イソシアネート]]に[[アルコール]]を付加させて[[ウレタン]]を形成する反応。 求核剤がカルボニル中心に攻撃する特定の角度のことを[[:en:Bürgi-Dunitz angle|Bürgi-Dunitz angle]]と呼ぶ。 == 炭素-炭素二重結合への付加 == : <chem>Y-Z + C=C -> Y-C-C-Z</chem> 反応の駆動力となるのは、[[電子不足]]な不飽和系(-C=C-)と求核剤 Y<sup>-</sup> による共有結合の形成である。Y<sup>-</sup> 上の陰電荷は炭素-炭素結合に移動する。 :段階1) <chem>{Y^-} + -C=C(X) -> {Y-C-C(X)^-}-</chem> ステップ2では陰電荷を帯びたカルバニオンと正電荷を帯びた Z<sup>+</sup> とが結合して 2番目の共有結合が形成する。 :段階2) <chem>{Y-C-C(X)^-}- + Z+ -> Y-C-C(X)-Z</chem> 普通のアルケンは求核攻撃の影響を受けにくい。 [[スチレン]]は[[トルエン]]中で[[ナトリウム]]と反応し、[[カルバニオン]]中間体を経て1,3-ジフェニルプロパンを形成する<ref>''Sodium-catalyzed Side Chain Aralkylation of Alkylbenzenes with Styrene'' Herman Pines, Dieter Wunderlich J. Am. Chem. Soc.; 1958; 80(22)6001-6004.</ref>。 :<chem>Ph-CH3 + Na -> Ph-CH2- + NaH</chem> :<chem>Ph-C=CH2 + Ph-CH2- -> Ph-CH2CH2CH2-Ph</chem> 他の例外には[[バレントラップ反応]]がある。また、[[フラーレン]]は反応性のある不飽和二重結合を持ち、[[ビンゲル反応]]のように多くの反応を受ける。 Xがカルボニル基またはカルボキシル基またはシアノ基のときの反応は[[マイケル付加|共役付加反応]]と呼ぶ。置換基Xはその誘起効果によって炭素原子上の陰電荷を安定化する。 Y-Zが活性水素化合物のときの反応は[[マイケル付加]]である。 ペルフルオロアルケンは付加反応を起こしやすい。例えば、[[フッ化セシウム]]や[[フッ化銀(I)]]由来のフッ化物イオンはペルフルオロアルケンに付加してペルフルオロアルキルアニオンを与える。 == 脚注 == <references /> == 関連項目 == * [[付加反応]] * [[求電子付加反応]] * [[求核置換反応]] * [[求核共役付加反応]] * [[親電子置換反応]] {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:きゆうかくふかはんのう}} [[Category:付加反応]]
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